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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科47巻12号

1993年11月発行

雑誌目次

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・5

神経—メラノサイト複合体

著者: 杉田新

ページ範囲:P.1793 - P.1793

虹彩支質の割断面の走査電顕写真。虹彩メラノサイト(M)は細胞質にぎっしりとメラニン顆粒を含んでいる。虹彩メラノサイトはシュワン細胞(SC)あるいは線維芽細胞(F)により被覆されており,裸で存在することはない。一方,神経線維(NF)を被覆したシュワン細胞が突起をのばして,同時に虹彩メラノサイトをも被覆しているのがよくわかる(太矢印)。線維芽細胞の表面には膠原細線維(細矢印)が絡み合っている。樹脂冷凍割断。ニホンザル。×12,500

眼科図譜・327

両眼性びまん性ぶどう膜メラノサイト増殖症

著者: 牧野伸二 ,   深澤美穂子 ,   中山正

ページ範囲:P.1794 - P.1795

 緒言 Bilateral diffuse uveal melanocyticproliferation (以下BDUMP)は,1982年Barrら1)により,眼外の悪性腫瘍に随伴し,急速な視力障害と網膜色素上皮層レベルの多発性の黄橙色の斑状の病変を呈し,病理学的にぶどう膜メラノサイトの増殖性変化をきたす新しい疾患概念として提唱され,以後Gassら2),Borruatら3)により報告されている。今回筆者らは,BDUMPと考えられた1例を経験したので供覧する。

今月の話題

術中の瞳孔拡大法

著者: 三木大二郎 ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.1797 - P.1799

 白内障手術,網膜剥離手術や硝子体手術などを安全かつ円滑に行う上で,充分な散瞳は必要不可欠である。術前の散瞳不良例や術中の縮瞳に対して,今までにもいくつかの瞳孔拡大法が試みられてきたが,操作の複雑さ,術中合併症など問題点も多い。最近開発されたflexible iris retractorは操作も簡単で,術中合併症も少ない。今までに試みられてきた瞳孔拡大法の問題点とflexible iris retractorの操作法,長所,欠点について述べる。

眼の組織・病理アトラス・85

網膜動脈閉塞症

著者: 猪俣孟 ,   向野利寛

ページ範囲:P.1802 - P.1803

 網膜の動脈は近接した動脈どうしの吻合がない。網膜動脈が閉塞すると,その支配領域の網膜は虚血に陥って,重篤な視力障害をおこす。
 網膜動脈閉塞症retinal artery occlusionは,網膜中心動脈閉塞症central retinal artery occlu—sion,網膜動脈分枝閉塞症branch retinal arteryocclusion,毛様網膜動脈閉塞症cilioretinalartery occlusionに分類される。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・59

エクソプラントの選択と置き方(3)

著者: 樋田哲夫

ページ範囲:P.1806 - P.1808

エクソプラントの材料
 筆者はMIRAgel®を好んで使用している。現在手に入るシリコンスポンジは軟らかすぎて,マットレス縫合糸がスポンジに食い込むわりに強膜の内陥が少ない。均一なバックル効果を得るにはマットレス縫合の数が余計に必要という感じがする。これに対して,MIRAgel®の硬さと弾力性は非常に扱い易い。ただし,この材料は数年以上たっと何らかの化学構造変化により若干膨張することが開発者ら自身によって最近報告され,インプラントに使用するには問題があることが指摘されている。筆者は症例によってはシリコンタイヤとバンドを使用している。
 大きさはMIRAgel®は3, 4, 5mmの円柱と5×3mm,7×3.25mmの楕円(#903〜907),シリコンタイヤのうち強膜床9mmの#287,#240,#270のバンドとスリーブを常備している。これ以上大きなバックルが必要と思われる場合,極めて前方の裂孔の場合などには別の材料を使用してインプラントを行うか,硝子体手術で対処している。

臨床報告

白内障術後の乱視矯正角膜切開術と角膜形状変化

著者: 石井清 ,   宮田和典

ページ範囲:P.1817 - P.1822

 乱視矯正角膜切開術(asitigmatic kerato—tomy,以下AK)後早期の角膜形状変化を角膜形状解析装置(TMS-1:Computed Anatomy社)により検討した。
 対象は白内障術後6か月以上経過し,2.5D以上の倒乱視があり,眼鏡による矯正に不満を抱いている10症例11眼とした。術式は,光学領域を直径6mmとし,強主径線方向の接線に沿って4mm幅のtransverse relaxing incisionをダイアモンドナイフを用いて2か所に行った。切開の深さは角膜中心の最小角膜厚とした。
 AK術後,強主径線方向のflat化と,弱主径線方向のsteep化と,さらに切開の両端において屈折力の増強する部位がみられた。光学領域内では,角膜中央部ほど屈折力の均一化がみられた。

黄斑裂孔網膜剥離に対する硝子体手術

著者: 上野眞 ,   加藤勝 ,   川村洋行 ,   三浦嘉久

ページ範囲:P.1825 - P.1829

 黄斑裂孔網膜剥離12例12眼に硝子体手術を行った。全例女性で,56〜84歳,観察期間3〜46か月。高度近視が11眼,増殖膜を伴う正視が1眼。初回術式は,ガスタンポナーデ4眼,硝子体手術7眼,裂孔不明の1眼に輪状締結を行った。硝子体手術とガスタンポナーデで7眼中6眼が復位,1眼はシリコンタンポナーデで復位した。シリコンタンポナーデを行った5眼中2眼が復位した。残りの1眼は黄斑バックルで復位し,1眼は後極に剥離が残存,1眼は術中脈絡膜出血のため復位しなかった。復位した10眼中8眼に光凝固を追加した。深い後ぶどう腫を持つ2眼ではシリコンタンポナーデ後に後極に剥離が残存し,黄斑バックルの適応であったと考えられた。

脱臼水晶体の摘出手術法

著者: 雑賀司珠也 ,   小畑栄 ,   山中修 ,   岡田由香 ,   上野山謙四郎

ページ範囲:P.1831 - P.1834

 5例の脱臼水晶体を手術的に治療したので,その術式を記載した。硝子体切除を併用し,水晶体を輪部創から摘出,または眼内で破砕,切除した。完全脱臼水晶体のうち1例では,パーフルオロカーボンで水晶体を浮遊させて輪部切開創から摘出した。パーフルオロカーボンを用いた手技は術中合併症もなく,容易に行え,有用な方法であると思われた。

本態性血小板血症に合併した網膜中心静脈閉塞症の1例

著者: 宮崎朋子 ,   石津衞

ページ範囲:P.1837 - P.1841

 網膜中心静脈閉塞症(うっ血型)をきたした41歳の女性が精査の結果,本態性血小板血症と診断された。赤血球数は正常で,白血球数は軽度増加,血小板数は150.8万/mm3と著しく増加していた。骨髄生検像は,hypercellular marrowで巨核球系細胞の増多やplatelet clumpがみられた。αインターフェロンによる治療の結果,眼底所見は改善した。
 血小板増多に起因する血栓は,網膜血管の閉塞を起こしにくいといわれているが,本症例では慢性関節リウマチが,網膜中心静脈閉塞症の発症に寄与したと考えられる。

アルドースリダクターゼ阻害薬点眼の前房蛋白濃度に対する効果

著者: 加藤聡 ,   大鹿哲郎 ,   船津英陽 ,   山下英俊 ,   澤充

ページ範囲:P.1843 - P.1847

 糖尿病患者の前房蛋白濃度に対するアルドースリダクターゼ阻害薬(以下ARI)点眼液の効果を検討した。糖尿病患者37例74眼をARI点眼群とプラセボ点眼群とに無作意に分け,3か月間1日4回点眼し,フレアー・セルメーターで経時的に測定した。糖尿病網膜症のない群(第1群),福田分類AI期(第2群),AII期以上およびB期(第3群)に分け,分散分析(analysis ofvariance,以下ANOVA)ならびに群間のt—検定を行うと,第2群においてARI点眼薬の前房蛋白濃度抑制効果がみられた(ANOVA, p<0.05)。全例での解析,ならびに第1・3群での解析では,ANOVAによるARI点眼薬の効果はみられなかったが,第3群のARI群の前房蛋白濃度は,4週以降でプラセボ群より低い値となった(p<0.01)。ARI点眼薬は,糖尿病による初期の血液房水柵障害に有効であると考えた。

赤外螢光眼底造影による可動性血管

著者: 武藤勉 ,   桜井真理 ,   高久容一 ,   玉井信

ページ範囲:P.1857 - P.1860

 赤外螢光眼底造影(以下IA)は近赤外光領域を励起光と観察光とするため,黄斑部のキサントフィルや網膜色素上皮に阻害されることなく脈絡膜血管を生体観察できる。しかし,網脈絡膜に変性や萎縮をきたして菲薄化した場合に観察される血管が,はたして脈絡膜血管なのか,その由来を論じたものはない。
 筆者らは,強度近視眼の変性萎縮領域に可動性血管を認めた。IAの結果,眼球の向きにより可動性血管の走行形態が変化することから,眼球に進入する後毛様動脈を観察していると考えた。

中心性漿液性網脈絡膜症を併発した真性小眼球の1例

著者: 新城光宏 ,   中津彩子 ,   和田優子 ,   近藤武久

ページ範囲:P.1861 - P.1865

 高度遠視をともなう27歳の真性小眼球の男性の片眼に,後極部網膜に限局した漿液性網膜剥離をみた。螢光眼底造影所見およびレーザー網膜凝固術に対する良好な反応から,本症例では中心性漿液性網脈絡膜症と同一の病態が存在したものと考えられたが,単に中心性漿液性網脈絡膜症と考えるには視力低下が顕著であった。
 両眼の後極部網膜皺襞や周辺部網膜血管の拡張蛇行がみられたほか,広範な網膜浮腫が存在したことから,本症例ではuveal effusionを伴う真性小眼球の症例と同様,肥厚した強膜内で渦静脈が圧迫されることによる脈絡膜血管の循環障害,あるいは肥厚した強膜による脈絡膜血管外液の眼外への流出経路の障害が潜在し,これを背景とする網膜色素上皮のなんらかの機能障害をきたしている可能性が考えられた。

眼底後極に限局した梅毒性脈絡網膜炎の1例

著者: 岩渕薫子 ,   町田拓幸 ,   上野眞

ページ範囲:P.1867 - P.1870

 黄斑部に限局した梅毒性脈絡網膜炎を報告した。症例は51歳男性。右眼の視力低下と中心暗点を自覚し,黄斑部に約2乳頭径の灰黄色混濁が見られたため当科を紹介された。視力は,右0.3,左1.0。前房,硝子体に炎症所見はなかった。螢光眼底造影では初期から混濁網膜に不規則な過螢光が出現し,後期には組織染が示された。乳頭からの軽度の螢光漏出と静脈の壁染色が見られた。血液検査でTreponema pallidum hema—gglutination test 20, 480倍,Venereal diseaseresearch laboratory test 16倍であり,急性梅毒と考えられた。アンピシリン1日2gの投与を4週間行った。右眼黄斑部に軽度の色素上皮障害が残存したが,視力は1.2まで回復した。

涙腺腫瘤により発見されたシェーグレン症候群の1例

著者: 齊藤昭雄 ,   堀田喜裕 ,   小林千博 ,   金井淳 ,   加藤和男 ,   沖坂重邦 ,   山本泰一 ,   桑原紀之

ページ範囲:P.1871 - P.1874

 症例は21歳女性。無痛性の右上眼瞼腫脹にて来院した。CTなどにより涙腺腫瘤を疑い,右涙腺腫瘤摘出術を施行した。摘出標本に著しいリンパ球浸潤と腺上皮の島状増生を認め,さらに小唾液腺生検,耳下腺造影,免疫学的検索をすすめ,同様の組織所見,耳下腺造影によるapple treelesion,抗SS-A抗体陽性の結果が得られ,シェーグレン症候群と確定診断できた。シェーグレン症候群の初発症状は眼の異物感や灼熱感などの眼乾燥症状および口渇症状などが多いが,本症例のような上眼瞼の腫瘤病変でも本症を念頭におく必要がある。

原発性シェーグレン症候群の涙液ラクトフェリン

著者: 檀上幸孝 ,   李三榮 ,   堀本幸嗣 ,   濱野孝

ページ範囲:P.1875 - P.1880

 確定診断された原発性シェーグレン症候群50例を対象としてラクトプレート®を用いて涙液ラクトフェリン濃度を測定した。平均値は1.08±0.86mg/mlで角結膜ローズベンガル染色スコアとの間に相関係数−0.6929と強い負の相関を認めた。涙腺生検が行われた2眼において涙液ラクトフェリン濃度は涙腺組織の状態をよく反映していた。原発性シェーグレン症候群のドライアイ診断におけるラクトプレート®の感度は72.2%,特異性は78.6%,偽陽性率は21,4%,偽陰性率は27.8%であった。ラクトプレート®による涙液ラクトフェリン濃度の測定は原発性シェーグレン症候群のドライアイ診断に有用である。

エキシマレーザー屈折矯正角膜切除の角膜内皮細胞への影響

著者: 天野史郎 ,   清水公也

ページ範囲:P.1883 - P.1886

 エキシマレーザー屈折矯正角膜切除photorefractive keratectomy (以下PRK)の角膜内皮細胞に対する影響をスペキュラーマイクロスコープを用いて検討した。PRKを施行した20例26眼の術前と術後1か月目に角膜内皮細胞のスペキュラー像をスペキュラーマイクロスコープを用いて撮影した。角膜内皮細胞の平均密度±標準偏差は術前3221±216/mm2,術後1か月3233±240/mm2,変動係数は術前0.24±0.09,術後1か月0.23±0.05であった。平均細胞密度,変動係数とも術前後で有意な差はなかった。スペキュラーマイクロスコープによる術後1か月の観察では,PRKによる角膜内皮細胞への明らかな傷害は認められなかった。

非接触型眼圧計による眼内レンズ移植後早期眼圧測定の妥当性

著者: 高橋信夫 ,   大山充徳 ,   村山禎一郎

ページ範囲:P.1887 - P.1890

 白内障,眼内レンズ移植後早期の眼圧を非接触型眼圧計(以下NCT)によって測定することの妥当性を検証するため,59例62眼に対して手術を行い,術前,術6〜8時間後,術翌日,術2日後の眼圧を,NCTとゴールドマン圧平眼圧計(以下GAT)とで測定し,その相関を検討した。
 1.術後6〜8時間から2日目までの眼圧は術前にくらべ有意に上昇した。
 2.NCTの値はGATの値に高い相関を示した。
 3.NCTの値はGATの値よりやや低い傾向にあった。
 4.眼圧測定による合併症はなかった。

カラー臨床報告

高感度ビデオカメラによる硝子体ゲルの撮影

著者: 岸章治 ,   横塚健一 ,   丸山泰弘

ページ範囲:P.1809 - P.1813

 フォトスリットにcharge coupled device(以下CCD)ビデオカメラを搭載した装置を使い,スーパーフィールド非接触型レンズを用いて,硝子体のゲルの構造をかなり満足できる形で写真に記録することができた。これによって,従来,観察はできても撮影のできなかった硝子体ポケットや,後部硝子体剥離にともなう黄斑前硝子体の変化,赤道変性や網膜裂孔と硝子体の関係などが,客観的な写真として記録できた。画像をCCDにより電気信号に転換して記録することは,その高感度性のみならず,画像の増感,保存,複製に有用であった。

眼科の控室

白衣/霰

著者:

ページ範囲:P.1856 - P.1856

 医師は白衣を着て診療するのが建て前です。医療施設によっては,白衣のスタイルが決まっているところもありますが,たいがいは各自が適当に選んでいるようです。
 白衣には二つの目的があります。一つは「医師らしく見えること」であり,もう一つは,清潔であることです。

文庫の窓から

麻嶋灌頂小鏡一紙

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1892 - P.1893

 麻嶋流眼科の治療法は仏法僧の鳴き声で有名な,三河国宝来寺(愛知県南設楽郡鳳来町。真言宗,鳳来寺。大宝3年利修仙人開創と伝えられる)の薬師如来(峯薬師。日本三薬師のひとつ)の霊告によって伝授されたと記されている(「麻嶋灌頂小鏡之書」「麻嶋灌頂小鏡眼病口傳書」)のが一般的であるが,その後の伝援の系統も一様ではないように思われる。本書は紫野,大督寺(京都紫野大徳寺町。臨済宗大徳寺派の本山。大澄国師妙超開山。1319年,赤松則村開基)より伝授された秘方といわれるが,その内容を略述する。
 本書はおよそ80葉,全1冊(四周双辺,毎半葉10行,木版用箋,24.0×15.7cm)よりなり,漢字,片仮名混りの和文にて精写されたものであるが,その内容は他の「麻嶋灌頂小鏡之巻」とは趣を異にしている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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