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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科47巻2号

1993年02月発行

雑誌目次

連載 眼の組織・病理アトラス・76

ブルッフ膜の加齢変化

著者: 石橋達朗 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.126 - P.127

 ブルッフ膜Bruch's membraneは脈絡膜の構成成分のひとつで,もっとも網膜側に位置し,網膜色素上皮細胞と脈絡膜毛細血管内皮細胞の間に存在する細胞外組織である。厚さは約2μmで,透過型電子顕微鏡を用いると,網膜側から順に,網膜色素上皮細胞の基底板,内側膠原線維層,弾性線維層,外側膠原線維層,脈絡膜毛細血管内皮細胞の基底板の5層が区別できる(図1)。
 ブルッフ膜を構成するコラーゲンとして,網膜色素上皮細胞および脈絡膜毛細血管内皮細胞の基底板には主にⅣ型およびⅤ型コラーゲン,内側および外側膠原線維層にはⅠ型およびⅢ型コラーゲンの存在が証明されている。また,弾性線維層にはⅥ型コラーゲンがみられる。糖蛋白質としては,フィブロネクチンがブルッフ膜の全層に,ラミニンが基底板に認められる。プロテオグリカンでは,ヘパラン硫酸が全層にわたって存在する。

眼科図譜・318

特発性虹彩嚢腫の1例

著者: 田野幸子 ,   砂川光子

ページ範囲:P.128 - P.130

 緒言 虹彩嚢腫は先天性嚢腫と後天性嚢腫に大別され,後者のなかでは手術や外傷の後に発生する外傷性嚢腫が多く,特発性嚢腫は本邦において31例の報告しかない1〜4)。今回筆者らは,特発性虹彩嚢腫と考えられる虹彩嚢腫の1例を経験したのでここに報告する。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・50

裂孔原性網膜剥離に対する一次的硝子体手術

著者: 荻野誠周

ページ範囲:P.136 - P.137

 裂孔原性網膜剥離は経強膜的アプローチ—いわゆるコンベンショナルな方法,あるいは強膜バックリング手術といわれる方法—でその90〜95%が復位をえられる。しかしその中には経強膜アプローチでは難症なものが含まれる。手術時間は長くなり,さまざまな併発症を起こしやすい,すなわち術者間でそして同一術者においてもそれ以外の症例とで復位成績が大きく異なり,もっと細かくみればたとえ復位しても視力成績したがって他の視機能成績も大きく異なる結果になるような症例がある。そのような症例には硝子体手術法を応用して経硝子体的にアプローチすれば,手術時間を短縮させ,併発症を減らし,復位成績を上昇させ,よりよい術後視機能をえることができる。

今月の話題

小児の眼窩疾患

著者: 中村裕 ,   木村肇二郎 ,   平形寿孝

ページ範囲:P.140 - P.143

はじめに
 小児眼窩疾患の多数例についての統計的観察の報告は,筆者らが渉猟した限りでは国内にはない。そこで今回筆者らは慶大眼科における小児の眼窩疾患の多症例について統計的に観察した結果,若干の知見を得たので報告する。
 今回対象としたのは,1974年1月1日から1990年12月31日までの17年間に慶大眼科外来を受診した,15歳以下の小児の眼窩疾患175例である。それらについて,1)性別,年齢別頻度,2)系統別疾患群の内容,治療および予後,3)1974年から79年までの6年間と80年から90年までの11年間の疾患内容の変遷,について検討した。

目でみるCT・MRI眼科学・8

[8]視交叉とその近傍疾患(2)

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.145 - P.149

4.鞍上部胚細胞腫(図1)
 異所性松果体腫とも呼ばれ,脳内では鞍上部や脳室壁に発生する。両耳側半盲の正中経線は不規則な虫喰い状を示すことが多く,尿崩症,痩せ,思春期早発がみられる。CTでは高吸収域で造影剤により増強される。MRIのT1強調画像では視床下部,下垂体茎,視交叉に腫瘍が浸潤して脳灰白質と等信号輝度になる。造影剤のGd-DTPAで増強される。

臨床報告

両眼に同時発症した周辺部角膜炎の1症例

著者: 伴由利子 ,   根来良夫 ,   田辺稔邦 ,   北川厚子

ページ範囲:P.151 - P.154

 31歳男子の両眼鼻側角膜周辺部に,激しい眼痛が先行した後,潰瘍を伴った白色混濁が左右対称的に現れたが,消炎剤,ヘパリンなどの使用により急速に治癒に向かった症例を経験した。眼痛が出現する4日前に38℃近くまで発熱していたことや,結膜や眼瞼に細菌感染を疑わせる所見がなかったこと,結膜嚢細菌培養が陰性であったことなどから,上気道感染が関与した細胞毒によって角膜にもたらされた急性の免疫反応と考えられた。

白内障手術合併症と考えられる角膜辺縁潰瘍

著者: 岡田由香 ,   雑賀司珠也 ,   上野山さち ,   橋爪奈津子 ,   上野山謙四郎

ページ範囲:P.157 - P.160

 筆者らは,嚢外水晶体摘出および後房眼内レンズ挿入術後数か月から1年を経て上方輪部角結膜移行部に角膜辺縁潰瘍を発症した3例を経験した。3例中2例は創を8-0シルクで縫合,他の1例は8-0ポリグラクチンを使用していた。3例中2例は,ステロイドの全身および局所投与にて治癒傾向を認めないため,結膜切除術を施行し,治癒した。他の1例は,ステロイドの全身および局所投与にて軽快した。ステロイドが有効であったことから本症発症に炎症あるいは免疫反応が関与していたことが示唆された。また,縫合糸(シルク,ポリグラクチン)に対する組織反応が関与している可能性も否定できないと考えられた。

テノン嚢内麻酔による白内障眼内レンズ手術

著者: 常岡寛 ,   大木孝太郎 ,   谷内修

ページ範囲:P.161 - P.165

 麻酔による患者への侵襲を最小限にする目的で,1990年4月より点眼およびテノン嚢内麻酔のみによる白内障眼内レンズ手術を導入し,現在までに1,800件以上の症例を経験した。2%リドカイン約1mlを1時の位置のテノン嚢内に注入するのみであり,眼球運動は抑制されないが,麻酔による疼痛が少なく血圧の上昇や不整脈の出現などがないこと,麻酔による合併症がなく重篤な術中合併症もないこと,少量の投与で確実な鎮痛効果が得られること,60分以上の効果があり初心者の手術にも利用できることなどから,テノン嚢内麻酔は従来の球後麻酔に代わる有用な麻酔法と思われる。

トリアムシノロンアセトニドの前部テノン嚢下注射後に眼圧が上昇した3例

著者: 園田康平 ,   木村一賢 ,   桝本美樹 ,   坂本泰二 ,   田原昭彦 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.167 - P.171

 難治性のぶどう膜炎に対してトリアムシノロンアセトニド(T-A)の前部テノン嚢下注射を行い,その後に眼圧が上昇した3症例を経験した。3例中2例では,T-Aの外科的な除去が必要であった。
 症例1は12歳の女児。両眼の原因不明のぶどう膜炎の診断で,右眼にT-Aの前部テノン嚢下注射を受けた。1か月後に右眼の眼圧のみが上昇した。右眼の高眼圧は約9か月間持続し,前部テノン嚢下のT-Aが完全に消失するとともに眼圧は正常に回復した。
 症例2は16歳の女児。両眼の周辺部ぶどう膜炎の診断で,2回にわたり右眼に各々T-Aの前部テノン嚢下注射を受けた。1か月後に右眼の眼圧のみが上昇した。T-Aの除去後,眼圧は正常化した。
 症例3は43歳の男性。ベーチェット病の診断で,右眼にT-Aの前部テノン嚢下注射を受けた。その後,右眼の高眼圧が持続した。T-Aを除去すると,眼圧は正常になった。

ぶどう膜炎患者における抗犬蛔虫抗体の陽性率

著者: 藤井節子 ,   多田玲 ,   中川やよい ,   竺原由紀 ,   藤岡佐由里 ,   春田恭照 ,   湯浅武之助

ページ範囲:P.173 - P.176

 ぶどう膜炎の初診患者110例について,免疫電気泳動法,およびELISAを用いて血清中の抗犬蛔虫抗体を測定したところ,25例(23%)が抗犬蛔虫抗体保持者であり,臨床症状をも考慮して6例(5.5%)を眼犬蛔虫症と診断した。病型別では,中間部ぶどう膜炎の38%,限局性後部ぶどう膜炎の30%が眼犬蛔虫症であった。抗犬蛔虫抗体陽性例の男女比は約2:1で,男性に多く,年齢分布では,10歳以上の各年齢層に認められた。抗体陽性者のうち,ペットの飼育歴をもつものは47%,生肉摂取の生活歴をもつものは41%,これらのいずれかを有するものは82%であった。

特発性黄斑上膜の硝子体手術と網膜感度測定による評価

著者: 北川桂子 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.177 - P.182

 18例18眼の特発性黄斑上膜に硝子体手術を行い,オクトパスプログラム61による網膜感度測定を術前,術後1, 3, 6, 12か月に行った。術前は網膜感度と視力がよく相関しており,術後は網膜感度の改善と視力の改善がよく相関していた。視力は術前よりも低下した例はなかったが,網膜感度の低下したものがあり,視力改善にもかかわらず網膜感度の低下したものが4眼22.2%に存在した。

MRIが診断に有用であった悪性腫瘍の頭蓋内転移例

著者: 大黒浩 ,   響徹 ,   橋本雅人 ,   大谷地裕明 ,   五十嵐保男 ,   中川喬 ,   永倉久泰 ,   秋葉英成

ページ範囲:P.184 - P.186

 CT検査で異常所見が認められず,MRIで初めて頭蓋内転移を認めた乳癌患者の1症例を経験した。7年前に根治的乳房切除を受けた49歳女性で,最近うっ血乳頭および外転神経麻痺などの脳圧亢進症状を訴え来院した。両眼のうっ血乳頭および外転神経麻痺を認めた。CT検査では異常がなく,MRIのT1強調像で髄膜表面に腫瘍像を確認しえた。悪性腫瘍の頭蓋内転移が疑われた場合,CTだけでなく積極的にMRIを行う必要があると考えられた。

切迫早産治療中に硝子体出血と網脈絡膜出血が生じた1例

著者: 高原真理子 ,   松原明子 ,   芝田理絵 ,   秋澤尉子 ,   川田晃 ,   和田順子

ページ範囲:P.191 - P.194

 妊娠中毒症の既往がなく,双胎妊娠の切迫早産治療中に眼底出血をきたした症例を報告した。症例は,25歳で,双胎妊娠30週2日,子宮収縮抑制のためにβ2-stimulantである塩酸リトドリン(ウテメリン®)の内服投与を15〜20mg/日で開始した。16日目,腹緊増強したため内服から点滴静注48mg/日に切り換えたところ,まもなく右眼に硝子体出血,網膜出血,脈絡膜出血をきたした。螢光眼底検査では,網膜血管系には異常はみられなかった。塩酸リトドリンの投与は,低血圧,頻脈,心拍出量の増加,総頸動脈血流量の増加,血漿量の増加作用があり,本症例では血小板数の軽度減少がみられた。これらが誘因となって眼底に破綻性の出血を起こしたと思われた。文献上β2-stimulantによる眼合併症の報告はなく,珍しい症例と考えられた。

白血病細胞の眼内浸潤で初発した成人T細胞白血病の1例

著者: 内田ひとみ ,   向野利彦 ,   猪俣孟 ,   堂浦克巳 ,   福島茂

ページ範囲:P.195 - P.198

 白血病細胞の眼内浸潤で初発した成人T細胞白血病(ATL)の1例を報告した。
 症例は宮崎県在住の38歳男性である。右眼網膜の広範な滲出性病変および眼内炎様症状による視力低下で初発し,後に左眼にも限局性滲出性病変が生じた。経過中に精神症状を示し,3か月の経過で死亡した。死亡する5日前に初めて末梢血にATL細胞の出現を確認した。剖検で,眼球,中枢神経,リンパ節,その他諸臓器に特異なATL細胞の浸潤を認めた。本症例の眼症状と精神症状はATLの細胞浸潤によるものと診断した。

サルコイドーシスによる視神経乳頭肉芽腫の2例

著者: 玉井一司 ,   白井正一郎 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.199 - P.203

 サルコイドーシスによる片眼性視神経乳頭肉芽腫の2例を経験した。症例1は17歳の女性で,左眼乳頭部に網膜浮腫を伴った肉芽腫様腫瘤がみられた。経気管支肺生検で非乾酪性肉芽腫があり,サルコイドーシスと診断された。症例2は65歳の男性で,右眼乳頭部に網膜出血を伴った肉芽腫様腫瘤がみられた。初期には全身的にサルコイドーシスの所見はなかったが,初診6か月後に血清アンジオテンシン変換酵素が異常高値を示し,経気管支肺胞洗浄でリンパ球増多がみられ,サルコイドーシスと診断された。2例とも副腎皮質ステロイド剤の全身投与が有効であった。乳頭部の原因不明の肉芽腫様病変ではサルコイドーシスを疑い,全身検索を繰り返す必要がある。

Polymerase chain reaction法により単純ヘルペス1型DNAを検出した桐沢型ぶどう膜炎3症例

著者: 西脇弘一 ,   根木昭 ,   竹岡加陽 ,   宮西節子 ,   寺内博夫

ページ範囲:P.205 - P.209

 初期治療の終了した桐沢型ぶどう膜炎の再発例3例から前房水と硝子体液を採取しpolymerase chain reaction (PCR)法を行い,ドットブロッティング法またはサザンブロッティング法にて全例に単純ヘルペスウイルス1型DNAを検出した。サイトメガロウイルス,水痘—帯状ヘルペスウイルスDNAは検出されなかった。
 PCR法は微量なDNAを検出するのに優れているが,特に眼疾患の前房水や硝子体液のように検体が微量な場合には非常に有効な方法である。またPCR法は検体を処理し結果を得るまでに5〜6時間程であり,迅速な診断および治療の開始が要求される本症には特に有用である。

巨大裂孔による網膜剥離の手術成績

著者: 白紙靖之 ,   湖崎淳 ,   岡見豊一 ,   西村哲哉 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.211 - P.217

 最近5年間に当科にて経験した巨大裂孔による網膜剥離の12症例12眼の手術術式および治療成績について検討した。初回手術はscleralbucklingを基本術式として7眼に行い,裂孔縁が翻転していて可動性のあった2眼にはガス注入後scleral buckling,裂孔縁が翻転し可動性のなかった2眼,増殖性硝子体網膜症を伴っていた1眼の計3眼に初回から硝子体手術を行った。網膜の復位は平均27か月の経過観察では92%(12眼中11眼)の良好な復位成績が得られた。術後合併症としてはmacular puckerが4眼,増殖性硝子体網膜症が2眼あった。巨大裂孔に対する手術はこれらの術式を選択して行えば良好な治療成績が得られると思われた。

先天性Brown症候群の手術治療の1例

著者: 藤本美子 ,   長谷部聡 ,   渡辺聖 ,   岡野正樹 ,   大月洋

ページ範囲:P.219 - P.222

 内上転障害と著しいface turnを認めた先天性の3歳女児のBrown症候群に対して上斜筋減弱術を行った。右眼の内上転障害と左へ10°〜20°のface turnがあり,全麻下で行ったforcedduction testで右眼内上転方向に抵抗があったため,Brown症候群と確定し,右眼上斜筋を10mm後転した。内上転障害の改善が得られず,手術後18日目に右上斜筋腱のtenectomyを追加した。再手術後,内上転障害は消失したが,医原性の上斜筋麻痺と思われる右眼の上斜視が出現した。

小脳性運動失調に伴う錐体杆体ジストロフィの2症例

著者: 糸井素純 ,   早川むつ子 ,   佐久間仁 ,   簗島謙次 ,   近藤智善 ,   杉田之宏 ,   西克典 ,   金井淳

ページ範囲:P.225 - P.230

 脊髄小脳変性症に視力障害を伴う2症例について電気生理学的検査,心理物理学的検査を中心に検討し,錐体杆体ジストロフィと考えられた。症例1は脳神経内科でオリーブ・橋・小脳萎縮症と診断され,視力障害があった。症例2は先に眼科で錐体杆体ジストロフィと診断し,構音障害のために脳神経内科的検査を進め,脊髄小脳変性症と診断された。眼底所見は,症例1では乳頭耳側の軽度蒼白化と網膜動脈の軽度狭細化のみがあり,症例2では白点を伴う黄斑部円形萎縮巣と中間周辺部に白点を伴う顆粒状びまん性の淡い色素沈着があった。錐体杆体ジストロフィの眼底所見の多様性が示唆された。従来,変性性神経疾患に合併し,無色素性や分類不能または非定型的網膜色素変性症とされていたなかに,錐体杆体ジストロフィが含まれていた可能性が考えられる。また,錐体杆体ジストロフィのなかには,このような神経学的異常の合併例があることを念頭におく必要性がある。

Lost medial rectus muscleに対する修復の1例

著者: 岡野内俊雄 ,   大月洋 ,   河西葉子 ,   長谷部聡 ,   宮崎義則

ページ範囲:P.233 - P.236

 Lost medial rectus muscleに対して,再手術により,筋の回収と修復を行った。症例は生後3か月から外斜視があり,9歳時に左眼斜視手術が施行されたが,術中に内直筋のmuscle lossを生じた。強い外斜視と左眼の内転制限があった。2回の再手術を行った。初回手術では,強膜上に内直筋は認められなかった。2回目の手術で,結膜弁側に癒着したテノン組織中に内直筋を確認して,前転再縫着した。Muscle lossから3年近く経過していたが,術後,外斜視の軽減と内転制限の著明な改善を得ることができた。

カラー臨床報告

若年性関節リウマチに併発した多発性網膜下滲出斑を伴うぶどう膜炎の1例

著者: 関根伸子 ,   竹田宗泰 ,   鈴木純一

ページ範囲:P.131 - P.134

 若年性関節リウマチに併発した多発性網膜下滲出斑を伴うぶどう膜炎で,長期の経過観察を行った1例を報告する。
 症例は11歳女児。初診時,両眼に虹彩毛様体炎を認め,眼底には視神経乳頭の充血と浮腫,後極部から中間周辺部にかけて1/3〜2/3乳頭径大の黄白色の網膜下滲出斑を散在性に認めた。螢光眼底造影では乳頭および網膜血管からの色素漏出がみられ,また滲出斑の一部は初期から後期まで境界不鮮明な低螢光を示した。副腎皮質ステロイドの点眼,内服およびアスピリンの内服を行い,虹彩毛様体炎と滲出斑の消失を得た。3年後に再発を一度認めたが,その後9年間は再発がない。眼底には色素を伴う瘢痕病巣,硬性ドルーゼン様網膜下沈着物を残している。

眼科の控室

はじめに/細隙灯顕微鏡の選び方

著者:

ページ範囲:P.190 - P.190

 「臨床眼科」では,この欄を新しくはじめることになりました。
 眼科医として一人前になるまでには,医局の兄弟子からマンツーマンで教わるというのが従来のしきたりでした。診療器械の使い方,ムンテラの仕方から診断書の書き方,子供を泣かせないで診察するコツ,血管拡張剤は本当に効くのかなど,覚えることはゴマンとあります。

Group discussion

眼先天異常

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.239 - P.240

1.Neurofibromatosis−1の38症例の眼科的所見宮川真弓・他(島根医科大)
 NF−1の38症例(男18名,女20名)を調べた。NF−1の家族歴は18症例にみられた。初診時主訴は眼瞼腫瘤や下垂が多かった。眼科的所見では,虹彩Lischnodulesが97%に,眼瞼腫瘤や下垂が42%に,視神経乳頭蒼白が11%に,optic nerve gliomaが5%にみられた。欧米の文献によればNF−1の約15%にopticnerve gliomaがみられると報告されている。しかし,本邦ではその頻度は比較的少なかった。

眼科と東洋医学

著者: 竹田眞

ページ範囲:P.241 - P.242

 本年は12題の演題が集まり,参加の先生は100名前後でした。目を疑いたくなるような症例,手厳しい質問,熱心な討論が繰り広げられました。以下発表順に御紹介します。

文庫の窓から

本邦試視力表の種々(その3)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.244 - P.245

日本の視力表は多種におよんでいるが,また,その視標といろいろな種類が考案され,その主なものとして,1)方向を判別させる視標
 ランドルト環,井上鉤,E視標,六六環,市松模様,点群,指影絵,双魚視標
2)形を識別させる視標
 片かな,平かな,数字,ローマ字,4点群,賽の目,動物影絵,線画
 (『日本眼科全書』7〔1〕視力,による)などが採用されている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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