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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科47巻7号

1993年07月発行

雑誌目次

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?

結膜杯細胞とムチン分泌

著者: 杉田新

ページ範囲:P.1331 - P.1331

眼球結膜の上皮細胞間には,未成熟なあるいは成熟した杯細胞(GC)とその開口部が多数観察される。一部の成熟杯細胞は索状〜塊状のムチン(矢印)を分泌している。家兎眼。×2,000

眼科図譜・323

バラのとげ眼内異物の1例

著者: 山岡昭宏 ,   大野敦史 ,   長谷部聡 ,   三好輝行

ページ範囲:P.1332 - P.1333

 緒言 眼内異物としては,鉄片が多いと言われており1),植物異物は比較的まれである。今回筆者らは,前房内にバラのとげを認めた症例を経験したので報告する。

今月の話題

黄斑下手術

著者: 白神史雄

ページ範囲:P.1335 - P.1342

はじめに
 最近,老人性円板状黄斑変性症などの黄斑の網膜下病変に対して,硝子体手術を用いることによって外科的にapproachすることが可能になってきた。その背景には,硝子体手術における手術器械や手技の進歩,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),液体パーフルオロカーボン(PFC)などの臨床応用といった技術的な展開があるが,このような黄斑の網膜下(以後黄斑下)の病変に対して有効な治療法がなかったことも大きく関与している。
 具体的には,中心窩に存在する網膜下新生血管膜(以後中心窩下新生血管膜)を経網膜的に除去したり,網膜細動脈瘤や外傷などいくつかの原因によって生じる網膜下血腫を除去することであるが,こういった黄斑下での外科的操作を sub—macular surgery1)(黄斑下手術)という新しい名称で呼ぶことができる。理論的には,中心窩下新生血管においては,レーザー光で中心窩の網膜を破壊することが避けられない治療より,中心窩の網膜をほとんど障害せずに直接新生血管が除去できるほうが理にかなっているし,また黄斑下の血腫では,自然吸収を待つより,不可逆性の網膜障害が生じる前に血腫を除去したほうがより良好な視機能を保持できるはずである。しかし,現在のところこういった手術はpilot studyの域を出ておらず,長期にわたる自然経過との比較,あるいはレーザー光凝固などの他の治療との比較など行われていないのが現状である。したがって現時点では,この黄斑下手術がひとつの治療法としては確立しているとは言い難いが,今後適応疾患や手術時期などに関してさらに検討を加えていけば,黄斑疾患を取り扱う際に選択すべき治療のひとつとして強力な武器になる可能性を有している。

眼の組織・病理アトラス・81

網膜毛細血管の微細構造

著者: 石橋達朗 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1344 - P.1345

 網膜毛細血管は,基本的には内腔を裏打ちする一層の内皮細胞とその基底板からなるが,しばしば内皮細胞の外側に周皮細胞(周辺細胞)とその基底板を伴っている(図1)。
 内皮細胞は核のある部で厚く,内腔側にやや突出している。細胞膜は他の一般の細胞と同じように約10nmの厚さを持ち,3層構造を示す。内腔側の細胞膜表面はプロテオグリカンに富む糖衣によって覆われている。細胞質には核をはじめ種々の細胞内小器官,フィラメント構造などが存在する。細胞内小器官として,ミトコンドリア,粗面小胞体,リボゾーム,小胞,ライソゾーム,ゴルジ装置,中心小体,Weibel-Palade小体などが存在する。ゴルジ装置や中心小体は核周囲にみられる(図2)。Weibel-Palade小体は,一層の単位膜で囲まれた厚さ約0.1μm,長さ3μmまでの桿状構造物で,内皮細胞に特異的にみられる(図3)。小体の内部には数本から十数本の直径約15nmの管状構造が小体に平行にみられる。この小体は血液凝固因子の一つであるフォンビルブラント因子von Willebrand factor (vWF)の貯蔵部位である。

目でみるCT・MRI眼科学・12

【12】 MRA・SPECT・他

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.1346 - P.1351

 近年の画像検査法の進歩はめざましく,コンピュータを内蔵した装置による検査としてはCTやMRIの他にMRA, SPECT, PET, MRS,MEG, DSA, CRがある。またCTやMRIの応用として三次元CT・MRI, cine mode MRI,dynamic CT・MRI, CT cisternography, CT—guided fine needle biopsyなどがある。いずれも装置の原理や特性を良く理解すれば,眼科領域の疾患についての診断だけでなく,原因追求,病態把握,治療効果の判定などにきわめて有用であり,期待できる。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・55

ジアテルミー凝固をいかに行うか(2)

著者: 松村美代

ページ範囲:P.1352 - P.1353

 ジアテルミー凝固は,網膜裂孔周囲の神経網膜と網膜色素上皮,および脈絡膜に熱傷性炎症をおこして瘢痕によって癒着させる。裂孔原性網膜剥離は網膜裂孔を閉鎖すると復位するが,一時的閉鎖では一部の例外をのぞいて再剥離する。裂孔の永久的閉鎖が凝固の目的である。凝固が不足すると裂孔の永久閉鎖ができず,過剰すぎるとよけいな炎症をおこして増殖性硝子体網膜症の原因にもなる。ジアテルミー凝固は冷凍凝固よりは増殖性硝子体網膜症をおこしにくいといわれる。

臨床報告

一過性角膜混濁を生じた川崎病の1例

著者: 水野敏博 ,   北川和子 ,   桂茂弘

ページ範囲:P.1355 - P.1359

 5か月男児の川崎病治療経過中,全身症状寛解後に,一過性の感冒様症状出現と共に両眼の角膜実質混濁を認めた。混濁は,両眼ほぼ同程度に角膜全体がスリガラス状を呈し,球結膜充血,びまん性表層角膜炎を伴った。非ステロイド系抗炎症剤点眼で,約2週間の間に角膜周辺部より徐々に透明化した。本症例にみたような角膜実質混濁合併の報告は川崎病では少なく,眼症状として稀ではあるが,追加すべき一症状と考えられた。

疼痛で初発した球結膜粘液腫の1例

著者: 小成賢二 ,   鈴木純一 ,   大谷地裕明 ,   上野哲治 ,   中川喬 ,   佐藤昌明

ページ範囲:P.1361 - P.1364

 疼痛を伴った球結膜粘液腫の1例を報告した。54歳女性の左眼上方の球結膜下の平滑な半透明な腫瘍で,組織学的にはアルシアン・ブルーに染色される粘液が豊富で,紡錘形で,細胞質突起をもち,細胞質内に空胞を認める細胞や細網線維を認めた。さらにリンパ球の浸潤と出血がみられ,長期間無症候性に経過した粘液腫に炎症性の疼痛を生じたものと考えられた。腫瘍は全摘出されて,現在まで再発を認めていない。結膜粘液腫の報告は少なく,しかも疼痛を伴う症例はみられず,きわめて稀な1例であった。

腎尿細管障害を伴う前部ぶどう膜炎

著者: 吉川太刀夫 ,   城月裕高 ,   吉川弓夫

ページ範囲:P.1365 - P.1368

 特発性前部ぶどう膜炎93例の炎症の活動期に尿細管障害の最良のマーカーである尿中β2—ミクログロブリンの排泄量を測定した。その結果,両眼性前部ぶどう膜炎31例中の16例(51%)にその異常高値を認めた。同時に測定した尿中微量アルブミン値も同様の傾向を示した。両眼性前部ぶどう膜炎20例の経過観察から,これら尿細管性蛋白は炎症の活動期に高値を示し,副腎皮質ステロイド薬全身投与により炎症の寛解期に有意の減少を示すことが判明した。今回の成績から前部ぶどう膜炎の中でも,特に両眼性のものでは,潜在性の腎尿細管障害を高頻度(50%強)に有することが明らかとなり,両者の相関関係が示唆された。

核分割法による初心者への超音波白内障手術の教育法

著者: 常岡寛 ,   大木孝太郎

ページ範囲:P.1369 - P.1372

 初心者の超音波白内障手術の教育法を確立するため,初心者の手術の特徴と術中の合併症のパターンを検討した。その結果,2手法による核分割法は,模擬眼で練習しやすく術式に計画性をもたせることができるため,従来の前後房法よりも指導しやすい方法であると考えられた。この核分割法を初心者の術式として導入したところ,手術を行う頻度が少ないにもかかわらず術中合併症は初回から少なく,安全に手術を完了することができ,早期に高度な術式を習得することができた。2手法による核分割法は,模擬眼で十分に練習することにより,安全性の高い術式として初心者の手術教育システムに取り入れてよいと思われた。

糖尿病患者における水晶体自発螢光

著者: 西垣昌人 ,   澤田達 ,   杉山哲也 ,   内海隆

ページ範囲:P.1375 - P.1378

 螢光測定法fluorophotometryを用い,糖尿病患者25例43眼(42〜65歳,平均55.0歳)および正常対照者11例19眼(43〜68歳,平均57・6歳)を対象に,水晶体自発螢光ならびに水晶体の光透過性を表わす自発螢光比率を測定したところ,いずれの年代においても糖尿病患者において水晶体自発螢光が増大し,水晶体自発螢光比率が低下していた(p<0.05)。これは糖尿病における白内障出現以前の水晶体の微細な変化を意味しており,糖尿病臨床におけるfluorophotometryの有用性を確認させるものであった。糖尿病の罹病期間,網膜症のstage, HbA1cの値との関連性は得られなかったが,今後同一症例を長期間追跡することにより明らかにすべきものと考えた。

硝子体手術時の散瞳不良例に対するpupillary stretchingの有用性

著者: 池田恒彦 ,   檀上真次 ,   田野保雄

ページ範囲:P.1379 - P.1383

 Pupillary stretchingは硝子体手術時の散瞳不良例に対して十分な瞳孔領が確保でき,裂孔検出率を高めるだけでなく,前部増殖性病変の処理に非常に有用な手術手技である。本法を施行することで,前部増殖性硝子体網膜症や前部硝子体線維血管性増殖などの治療成績が向上するものと思われる。

網膜減張切開・切除術の術後成績

著者: 甘利富士夫 ,   安藤文隆 ,   長坂智子 ,   河合卓哉 ,   笹野久美子 ,   松浦正司

ページ範囲:P.1385 - P.1387

 網膜減張目的で網膜切聞・切除術を施行した33例,35眼について,術前の状態および手術手技がどの程度予後に影響するかを調べるために,予後に影響しそうな項目について統計学的に検討した。その結果,術前視力0.02以上,増殖性硝子体網膜症で90°未満の範囲の切開は成功率が有意に高かった。そして90°未満の切開で術後低眼圧を来した症例はなかった。また術前視力光覚弁,術中の著明な出血,増殖性硝子体網膜症で下方の切開は有意に予後不良因子であった。本術式を選択する際には注意すべき要因と考えられた。

外傷性低眼圧黄斑症に対する手術治療

著者: 久野里佳 ,   雑喉正泰 ,   落合春幸 ,   新井三樹

ページ範囲:P.1397 - P.1401

 56歳男性にみられた外傷性毛様体解離による低眼圧黄斑症の1例を経験した。受傷後,約12週間で低眼圧黄斑症をきたした。約30°の毛様体解離を認め,保存的に経過をみたが,視力低下をきたした発症後4か月めにレーザー光凝固術を2度行った。処置後眼圧は上昇したが,数日で低眼圧となったためジアテルミー凝固術と毛様体解離部直接縫合術を併用して行った。翌日から眼圧は正常化し前房は深くなったが,新たに約30°の毛様体解離を発見した。3か月間経過を観察したが視力低下が進行したため,再度新たな毛様体解離に対して同様の手術を行い,低眼圧黄斑症は軽快した。低眼圧黄斑症の治療は,毛様体解離を完全に閉塞することが大切であると考えられた。

網膜血管の剥離を伴った網膜分離症の1例

著者: 大庭啓介 ,   嵩義則 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1403 - P.1406

 特発性後部硝子体剥離による網膜血管分離を伴った続発性牽引性網膜分離症の1例を報告した。網膜血管剥離の存在は,本症例では網膜分離症の発生機序や進行に硝子体が関与していることを示唆する。

走査レーザー検眼鏡による脈絡膜新生血管の赤外螢光造影

著者: 飯田知弘 ,   萩村徳一 ,   田中隆行 ,   岸章治 ,   村岡兼光

ページ範囲:P.1407 - P.1412

 脈絡膜新生血管の存在が疑われた41眼に,走査レーザー検眼鏡による赤外螢光眼底造影を行った。その結果,脈絡膜新生血管の構築と脈絡膜血管との連絡様式を,それぞれ28眼で確認できた。新生血管網は網目状やコイル状,あるいは枝分れ状の構築として描出され,脈絡膜動脈と流入血管を介して直接に連絡していた。活動期では新生血管網からの螢光漏出があったが,その近傍にある脈絡膜静脈も螢光輝度が強くなり,静脈壁の輪郭が不明瞭となった。新生血管からの螢光漏出の程度はその活動性により異なり,退縮するに従い螢光漏出は弱くなった。これらの知見は,脈絡膜新生血管の解析や治療に新たな可能性を示すものと結論される。

白内障術後の前嚢切開窓面積と前嚢混濁の経時変化

著者: 福島正隆 ,   三島宣彦 ,   藪崎始 ,   江口秀一郎

ページ範囲:P.1415 - P.1419

 白内障手術後,素材とデザインの異なる2種の後房レンズを挿入し,continuous circularcapsulorhexis (CCC)を用いて作成した前嚢切開窓の面積と前嚢混濁の術後変化を経時的に観察した。術後,前嚢切開窓面積は減少していったが,前嚢切開窓径長と切開窓面積の経時変化に,後房レンズによる差はなかった。しかし,シリコーンレンズ挿入眼の前嚢切開窓は,レンズ長軸方向にその長径を一致した楕円形に変化してゆく傾向を認めた。前嚢混濁は後房レンズの種類によらず経時的に増強するが,6週目以降,polymethylmeth—acrylate (PMMA)レンズに比べシリコーンレンズ挿入眼に有意に強い前嚢混濁を認めた。

後部強膜炎による再発性視神経乳頭炎

著者: 今澤光宏 ,   飯島裕幸

ページ範囲:P.1421 - P.1424

 両眼に後部強膜炎による再発性視神経乳頭炎を呈した18歳女性症例を報告した。症例は,右眼の眼痛,毛様充血,視力低下にて発症し,前房内炎症,中心視野欠損と視神経乳頭の発赤腫脹を認め,視神経乳頭炎の像を呈した。MRIで後部強膜の肥厚とこれに接する眼窩組織の高信号輝度を認めたことから後部強膜炎による視神経乳頭炎と診断した。ステロイド剤の全身投与によく反応したが,その約3か月後に両眼に,さらに約3か月後に左眼に視神経乳頭炎を再発し,いずれもステロイド剤全身投与で軽快した。

眼窩腫瘍が疑われた眼窩血栓性静脈炎の臨床病理所見

著者: 大島浩一 ,   田口孝爾 ,   松尾信彦 ,   岡崎博史

ページ範囲:P.1425 - P.1428

 68歳男性に発症した,眼窩血栓性静脈炎の臨床所見と病理所見を報告した。左側の眼球突出と眼球運動制限があり,CTで左眼窩内側に軟部組織様の異常陰影がみられた。臨床所見から左眼窩腫瘍を疑い,摘出した。病理組織学的には,異常に拡張した静脈腔の中に器質化しつつある血栓が存在し,さらに静脈壁に炎症細胞浸潤がみられた。本症例のように,強い炎症を伴う眼窩静脈血栓症の病理報告は稀である。

眼科の控室

診断書の書き方/曙

著者:

ページ範囲:P.1393 - P.1393

 診断書は,あらかじめ書式が用意されているので,必要事項を書き込めばよいだけだと簡単に考えがちですが,いくつかの基本的なルールがあります。
 第一は,「読める字を書くこと」です。手書きの文章であるだけに,判読が困難な字を書いてはなりません。医師の署名も,英文の文書でのサインとは違います。楷書で自分の名を書くのがルールです。また,できるだけ同じ大きさの字で書くようにします。

Group discussion

視神経

著者: 溝上國義

ページ範囲:P.1431 - P.1433

 今回で第2回となる「視神経」グループディスカッションは,約200名の出席者で開催された。特に今回の演題14題中7題は緑内障に関するもので,メイン・テーマは緑内障性視神経障害であったといえる。

文庫の窓から

「豁開活眼晴」に載る内障の針の立て方

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1434 - P.1435

 さきに筆者らは本誌(「臨床眼科」第35〜39巻)に,わが国の“眼科諸流派の秘伝書”と題して,眼科古写本を紹介したが,馬嶋流眼科の古写本には,なお幾種類か伝えられているので,手許にあるものを紹介する。
 ここに掲出の「豁開活眼晴」には2種類あって,それぞれ末葉に以下のような墨の書き入れがある。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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