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臨床報告
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全層角膜移植術後に内皮不全となった症例は,内皮細胞が著明に減少し,病態的には水疱性角膜症と類似していると考えられる。角膜再移植術を施行した24眼の術後経過を,水疱性角膜症の初回手術例23眼と比較検討し,その予後を比較した。移植片累積生存率は再移植例が術後1年で86%,2年で61%,3年で39%と水疱性角膜症の初回手術例より不良であった。再移植例の拒絶反応,緑内障の発生率は50%,38%で水疱性角膜症例の30%,17%に比してより高率であった。再移植例では,術前に角膜内血管侵入がある割合が有意に高く,その範囲も4象限にわたるものも多いことが,高率な拒絶反応の要因と考えられた。拒絶反応が発生しなかった症例における角膜内皮細胞の減少率は,再移植例と水疱性角膜症初回手術例との問に差を認めなかった。拒絶反応に対する対策を十分に行えば,角膜再移植術は移植片混濁例の治療として試みてよいと考えられた。
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