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文献概要
連載 眼の組織・病理アトラス・83
網膜有髄神経線維
著者: 向野利彦 猪俣孟1
所属機関: 1九州大学
ページ範囲:P.1564 - P.1565
文献購入ページに移動検眼鏡的には白い刷毛で掃いたような網膜の混濁が,網膜神経線維の走行に沿ってみられる。症例の約80%で,網膜有髄神経線維は視神経乳頭から連続して扇形に広がるが(図1),乳頭から離れた位置に出現することもある(図2)。有髄神経線維の部は均一でなく,通常辺縁が疎で,中央が密である。辺縁部では個々の神経線維束を確認できる。ときに細隙状あるいは斑状の正常色調の網膜が有髄神経線維の中にみられることや,網膜血管が部分的に覆われることがある。視野検査で網膜有髄神経線維に相当する部に絶対暗点が検出できるが,視野欠損を自覚していることは少ない。網膜有髄神経線維の診断は,検眼鏡的に容易であるが,乳頭から離れた有髄神経線維は軟性白斑と鑑別を要する。螢光眼底造影では網膜有髄神経線維は背景螢光を遮蔽し,病巣部への螢光色素の漏出がみられない。視神経萎縮や網膜病変のために網膜神経線維が損傷されると徐々に消失することがある。
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