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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科47巻9号

1993年09月発行

文献概要

連載 眼の組織・病理アトラス・83

網膜有髄神経線維

著者: 向野利彦 猪俣孟1

所属機関: 1九州大学

ページ範囲:P.1564 - P.1565

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 網膜有髄神経線維myelinated nerve fiber of the retinaは網膜神経線維の一部が髄鞘をもつ有髄神経線維となっている眼先天異常である(図1,2)。正常では網膜神経線維は,視神経球後部から後方では髄鞘をもっているが,篩状板部から眼内では無髄である。そのため,検眼鏡的に乳頭から放射状に走る網膜神経線維の走行を追跡することができるが,網膜はほぼ透明である。この先天異常では,検眼鏡的に眼内の網膜神経線維の一部が白色羽毛状を呈する。発症頻度は全人口の約0.5%で,性差はなく,そのうちの約20%が両眼性である。
 検眼鏡的には白い刷毛で掃いたような網膜の混濁が,網膜神経線維の走行に沿ってみられる。症例の約80%で,網膜有髄神経線維は視神経乳頭から連続して扇形に広がるが(図1),乳頭から離れた位置に出現することもある(図2)。有髄神経線維の部は均一でなく,通常辺縁が疎で,中央が密である。辺縁部では個々の神経線維束を確認できる。ときに細隙状あるいは斑状の正常色調の網膜が有髄神経線維の中にみられることや,網膜血管が部分的に覆われることがある。視野検査で網膜有髄神経線維に相当する部に絶対暗点が検出できるが,視野欠損を自覚していることは少ない。網膜有髄神経線維の診断は,検眼鏡的に容易であるが,乳頭から離れた有髄神経線維は軟性白斑と鑑別を要する。螢光眼底造影では網膜有髄神経線維は背景螢光を遮蔽し,病巣部への螢光色素の漏出がみられない。視神経萎縮や網膜病変のために網膜神経線維が損傷されると徐々に消失することがある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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