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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科48巻11号

1994年10月発行

文献概要

Ojo

嚢外摘出術か超音波白内障手術か

著者: 松村美代1

所属機関: 1永田眼科

ページ範囲:P.143 - P.143

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 高齢患者の手術の要点のひとつは,手術時間をなるべく短くしてあげることである。長時間じっとしていることの精神的緊張は大きく,術中に不隠状態になることがある。これは実は案外術前に予測しにくいのである。平常時は安定している人でも手術という緊張時はまた別で,子供のように聞き分けがなくなることがある。前後左右に揺れる頭を両横から支えて手術ということにもなりかねない。かといって高齢者は鎮静剤の使い方も難しい。効きすぎて呆けることはよくあることである。鎮静剤は使わず,術前によくよく話をして不安を除き,なおかつ術中もゆったりと話しかけながら,術者の手は的確に迅速に動いて早く終わる。そして術後は安静を強いず,普通通りに生活させてあげるのがよい。この面から考えると自己閉鎖創超音波白内障手術が最もよい。通常は今のところこれに勝るものはない。
 術後の視機能についてはどうか?超音波白内障手術は嚢外摘出術に比べて術後早期から安定した視機能が得られ,術後炎症も軽いことはよくわかっている。通常は,である。通常でなかったらどうなるか?非常に硬い核で超音波時間が長くなったら?一般に高齢者は内皮細胞が少ないはずである。割れた核の角で後嚢が損傷したら?高齢者の後嚢は弱い。小さな亀裂もすぐ大きく拡がる。おまけに硝子体の変性も進んでいて硬い核は落ちやすい。落ちたら硝子体手術の装備をしてとればよいのだが明らかに手術時間が延長する。硬い核の大きな破片ならなおさらである。患者は不隠になるかもしれない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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