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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科48巻13号

1994年12月発行

雑誌目次

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・18

虹彩クランプ細胞

著者: 杉田新

ページ範囲:P.1921 - P.1921

虹彩前面にみられたクランプ細胞の走査電顕写真。クランプ細胞は球形で,表面には多数の,ひだ状の細胞質突起がみられる。矢印は細長い糸状の細胞質突起を示す。ニホンザル。×20,500

眼の組織・病理アトラス・98

シェーグレン症候群

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1922 - P.1923

 シェーグレン症候群は,涙腺や唾液腺の慢性炎症によって乾性角結膜炎keratoconjunctivitissiccaや口内乾燥症xerostomiaを起こす原因不明の自己免疫疾患である。45〜60歳の女性に好発する。女性は男性の約10倍頻度が高い。
 本症は,全身の結合組織病,特に慢性関節リウマチ,SLE (全身性エリテマトーデスsystemiclupus erythematosus),結節性多発性動脈炎などを伴わない原発性シェーグレン症候群primarySjögren's syndromeと,全身の結合組織病に伴って発症する続発性シェーグレン症候群secondarySjögren's syndromeとに分けられる。原発性シェーグレン症候群はHLA-B8やHLA-DR3の頻度が高く,続発性シェーグレン症候群ではHLA-DR4の頻度が高い。最初は眼と口腔内の乾燥症状だけで,原発性と思われていたものが,10年以上経過して,種々の結合組織病を発症することがあるので,原発性と続発性を明確に区別できないこともある。患者の70%に抗核抗体が陽性で,50%にリウマチ因子が陽性である。近年,シェーグレン症候群の原因として,EBV (EBウイルスEbstein-Barr virus)の感染が注目されている。

今月の話題

エキシマレーザーによる角膜手術

著者: 大橋裕一

ページ範囲:P.1925 - P.1929

 フッ化アルゴンにより生み出される193nmエキシマレーザーを用いた角膜手術は,異端と見られがちであった角膜屈折矯正手術を時代の寵児に持ち上げた原動力である。現在,わが国でも治験が進行中であり,正式認可される日も近いと思われる。この総説ではPRK (photorefractive keratectomy)を中心に,臨床に役立つエキシマレーザーのABCを紹介したい。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・72

角膜切開による白内障手術(1)—切開

著者: 小松真理

ページ範囲:P.1930 - P.1932

角膜切開白内障手術の適応
 白内障手術に伴う角膜乱視を減らし早期の視力回復を計る目的では,従来より強膜外方からの自己閉鎖創切開が広く行われてきた。しかし,切開が小さくなればなるほど自己閉鎖創作成に伴う結膜や強膜に対する侵襲が相対的に過剰なのではないか,透明角膜を切開してもよいのではないか,と考えられるようになった。これが角膜切開clear corneal incisionによる白内障手術が始められたきっかけである。その主な利点は,結膜を温存したい緑内障眼の白内障手術や,出血傾向のある症例にも問題がなく応用でき,また全ての手術操作が容易であることである。しかし,角膜切開にはボーマン膜を切断するという欠点があり,このため,大きい切開では角膜形状の不安定をまねくことになる。また,球結膜の覆いがないことから,縫合糸に対する異物反応や術後感染の懸念という点からは不利な立場にある。したがって,角膜切開の利点が欠点を上回る場合,あるいは強膜からの自己閉鎖創切開を凌駕する可能性のある角膜切開とは,あくまでfoldable眼内レンズ(intraocular lens:IOL)の使用を前提とする自己閉鎖機能をもった小切開に限られる。

臨床報告

マイボーム腺からの分泌物と涙液

著者: 李三榮 ,   荒木かおり ,   濱野孝

ページ範囲:P.1941 - P.1944

 涙液の脂質層が厚くなると,涙液最表層の網目状構造は消失し,干渉色が観察される。今回筆者らは,正常者56例109眼およびドライアイ患者41例82眼の涙液を非接触スペキュラーマイクロスコープを用いて観察し,涙液最表層の状態と涙液量の関係について検討した。涙液最表層は脂質層の状態により4段階に分類し,涙液量はシルマーテスト第1法を用いて測定した。干渉色が著しいgrade 4の涙液量は,網目状構造のgrad 1および反射光量が増加し色調が黄色味を帯びるgrade 2の涙液量に比べて有意に低下していた(p<0.05)。涙液量が低下すると,正常な涙液交換が行われなくなり,涙液全体に占める脂質層の割合が増加すると考えられる。

脳偽腫瘍2症例の治療経過

著者: 勝田聡 ,   大塚賢二 ,   大谷地裕明 ,   五十嵐保男 ,   中川喬

ページ範囲:P.1945 - P.1949

 脳偽腫瘍は,頭蓋内圧は充進するが神経放射線学的に占拠性病変や脳室拡大はなく,脳脊髄圧の亢進,乳頭浮腫と視野欠損を伴う症候群である。今回筆者らは,視神経鞘減圧術を施行した1例と,早期発見のため現在保存療法中の1例を経験した。症例1は39歳の女性で,原因不明の脳圧亢進および外転神経麻痺にて当科受診。両眼に高度のうっ血乳頭と求心性視野欠損を認め脳脊髄圧は380mmH2Oであった。諸検査の結果,脳偽腫瘍と診断し腰椎腹膜シャント術を行ったが視力低下が進行し,左視神経鞘減圧術を行った。術後4か月を経た現在,他眼のみ視力の回復が得られた。症例2は27歳の女性で,頭痛および眼痛にて当科受診。左眼のうっ血乳頭と視野欠損を認め脳脊髄圧は270mmH2Oであった。脳偽腫瘍の診断にて炭酸脱水素酵素阻害剤内服を開始し,頭痛,うっ血乳頭の軽減と視野欠損の進行の停止がみられ,現在経過観察中である。
 今回,脳偽腫瘍の早期例および進行例における治療経過につき,若干の考察を加え報告する。

先天前眼部ぶどう腫を呈したPeters奇形の病理組織学的検討

著者: 尾山直子 ,   三木恵美子 ,   谷野富彦 ,   東範行

ページ範囲:P.1951 - P.1955

 先天前眼部ぶどう腫を呈したPeters奇形の病理組織を,免疫組織化学的方法も含め光学顕微鏡的,電子顕微鏡的に検討した。
 症例は2か月,男児で,両眼にPeters奇形があり,左眼は,前眼部ぶどう腫を呈していた。全身的には,顎骨形成不全,心室中隔欠損等の合併症を伴っていた。角膜穿孔のため摘出した左眼球を,組織化学的,電子顕微鏡的に検討した。角膜中央は大部分デスメ膜や内皮を欠き,虹彩は明らかでなくその裏面に一層の色素細胞をみるのみであった。一方角膜周辺部では一部にデスメ膜や内皮がみられ,前眼部の形成異常は中央部に比べて比較的軽度であった。さらに,グリコサミノグリカンに関して免疫組織化学的に検討すると,ケラタン硫酸は角膜輪部から強膜前部にかけて存在しており,その分布異常は,鋸状縁を越えた部の強膜にまで及んでいた。本症例の発生機転には神経堤細胞の遊走異常が関与していると考えられ,その範囲はかなり広汎であることが示唆された。

イトラコナゾール内服による内因性真菌性眼内炎の治療

著者: 染谷美幸 ,   石橋康久 ,   岡田克樹 ,   太刀川貴子 ,   藤沢佐代子 ,   高沢朗子 ,   ニュンアウン・キョ ,   宮永嘉隆

ページ範囲:P.1957 - P.1961

 トリアゾール系の抗真菌薬であるイトラコナゾールを用いて,内因性真菌性眼内炎の4例を治療した。全例に有効であり,重篤な副作用はなかった。病期のある程度進んだものに対しても,この抗真菌薬の全身投与のみで治癒させることができた。視力予後が悪い例は,網脈絡膜病変が黄斑部付近に存在するか,あるいは網膜剥離や高度の硝子体混濁を呈するような病期の進んだ時期になって診断された場合であった。発症が予想される患者に対して,他科とも協力し眼科の定期的な検査を行い,早期発見,早期治療が第一であると考えられた。

増殖糖尿病網膜症における硝子体手術術後硝子体出血因子の検討

著者: 橋本浩隆 ,   吉田紳一郎 ,   筑田真 ,   小原喜隆

ページ範囲:P.1973 - P.1976

 増殖糖尿病網膜症に硝子体手術を行い,術後早期に硝子体出血をきたした25例28眼から再出血の危険因子を追求するために全身的因子と眼局所危険因子を分析した。対照は硝子体出血のない35例38眼とした。全身的因子は年齢,性別,罹病期間,血糖コントロール法,HbA1c,血圧,出血時間,血小板数,赤血球数,血漿クレアチニン,血漿アルブミンを,眼局所因子は増殖膜処理,網膜減張切開,術前網膜剥離,タンポナーデ,術前光凝固,術中光凝固,術前硝子体出血,術後眼圧上昇,虹彩新生血管,水晶体,の有無について検討した。危険因子は若年,男性,術前光凝固未施行,術後眼圧上昇であった。これらの因子を伴う症例では眼底の厳重な観察が必要と考えた。

エキシマレーザー近視矯正角膜切除術後のコントラスト感度

著者: 高橋由美子 ,   天野史郎 ,   清水公也

ページ範囲:P.1977 - P.1982

 エキシマレーザー近視矯正角膜切除術(PRK)後のコントラスト感度を測定し,正常眼とハードコンタクトレンズ(HCL)装用眼との比較を行った。またPRK術後の角膜上皮下混濁と照射ずれの2つの因子のコントラスト感度への影響について検討した。その結果,PRK後のコントラスト感度は正常眼およびHCL装用眼と比べ有意に低下していた。PRK後の角膜上皮下混濁に関しては,混濁が強い群では弱い群と比較して,コントラスト感度が低下しており,上皮下混濁の軽減がPRK後の視機能の維持に重要であると考えられた。レーザーの照射ずれに関しては,コントラスト感度との間に有意な相関を認めなかった。

網膜色素線条症の赤外螢光眼底造影像

著者: 鈴木水音 ,   酒井達朗 ,   安田秀彦 ,   戸張幾生

ページ範囲:P.1985 - P.1988

 網膜色素線条症2例4眼に対し赤外螢光眼底造影を行い,その造影像について検討した。フルオレセイン螢光眼底造影では,造影早期から色素線条の一部分が過螢光となり,造影後期まで持続した。赤外螢光眼底造影では,ほぼ色素線条に一致した部位が低螢光となり,その範囲は明確に同定できた。黄斑合併症を伴う症例では,脈絡膜新生血管を同定することができ,治療上有効であった。赤外螢光眼底造影法は,網膜色素線条症に対して有効な検査方法であると思われた。

全層性黄斑円孔に対する硝子体手術術式の改良

著者: 直井信久 ,   松浦義史 ,   新井三樹 ,   澤田惇

ページ範囲:P.1989 - P.1994

 黄斑円孔手術時に円孔底の網膜色素上皮除去の併用で円孔縁閉鎖率が向上することを見いだし,本法を全層性黄斑円孔14例16眼に応用した。対象はGass分類3期11眼,4期5眼で,円孔形成から硝子体手術までの期間は1〜120か月(平均21.8か月),年齢は51〜88歳(平均67.9歳),術後観察期間は2〜10か月(平均5.2か月)であった。手術はKellyらの方法で黄斑円孔に対する硝子体手術を行う際,円孔底の色素上皮をシリコンカニューラで吸引するか,21ゲージ針で掻爬する操作を追加した。最終観察時に14眼(88%)で円孔縁の閉鎖を得た。2段階以上の視力改善が8眼(50%)で,不変が8眼(50%),2段階以上の悪化をみた症例はなかった。円孔が閉鎖した14眼中,術後視力が0.7以上となったものが5眼(36%),0.3以上であったものが9眼(64%)であった。

カラー臨床報告

糖尿病網膜症に対する早期硝子体手術の術後経過

著者: 五味文 ,   恵美和幸 ,   本倉雅信

ページ範囲:P.1933 - P.1937

 早期硝子体手術を行った増殖糖尿病網膜症症例32眼の視力経過を検討した。手術適応から,硝子体出血など出血を伴った出血群と,黄斑牽引など出血を伴わない非出血群に分類すると,術後1年の矯正視力が0.5以上の症例の割合は,出血群70%,非出血群56%とともに良好であり,約半数の例では術前3か月と比較しても視力が向上していた。しかし非出血群では術後の視力回復の不良な例があり,これは手術施行の明確なきっかけがなく,適切な硝子体手術時期を逸したためと考えられた。したがって,非出血群ではより良好な視力保持の点から,さらに早期の手術が望ましいと考えられた。

眼科の控室

病気の予後

著者:

ページ範囲:P.1966 - P.1966

 眼科でも臨床を2年もすれば,大概の疾患は診断ができるようになります。「これで眼科のことはわかった」という気になりがちですが,これで慢心してはいけません。
 病気の診断では,「いまなにがあるか」が出発点ですが,その次に必要なのが,「どのような経過でこうなったのか」ということです。これは過去の経過だけでなく,病因も含まれます。たとえば糖尿病網膜症ならば,「いつごろから血糖値が上昇しはじめたのか」を眼底所見から考えるわけです。

マイアミ留学記・その8

私の憧れの生活

著者: 谷原秀信

ページ範囲:P.1969 - P.1969

 はや留学も残り少なくなってきました。私の留学先である現在の研究室での毎日はとても楽しく,皆が一所懸命に研究しながらも互いに助け合う雰囲気があって,非常に気に入っています。他の研究室の先生方とも,皆でわいわいにぎやかに毎日暮らしていると,現在がわりと私の憧れていた生活に近いんじゃないか,と感じます。
 そもそも学生時代に勉強嫌いで遊びほうけていた私が,研究に憧れたきっかけを思い起こすに,学生時代のあまりにも怠惰な生活を反省したことに加えて,どうも恩師の2人の影響が強いような気がします。私が研修医のときに,モーニングカンファレンスなるものがあって,土曜日の朝早くからスタッフと大学院生の一部が集まって最新の研究論文を読んでいました。皆が眠そうななかに教授がうれしそうに,にこにこして聞いているのを見て,こんなに楽しそうに毎日を暮らせるなら研究もよいなあ,と思ったのがひとつ。次に市中病院に赴任してから,臨床家として名高い部長先生が,ものすごく楽しい思い出として研究していた頃のことをいつも話してくれていたのがもうひとつ。どうもこのふたつの印象が,研究に対する私の理想像を決定づけたように思います。わが家の猫がマイアミの家の中を走り回るのを眺めていて私の理想が,①眠たくなったら寝る②眼が醒めたら猫が猫じゃらしで遊ぶように娯楽として仕事を楽しむ③お腹がへったらごはんを食べる という単純なものだと悟りました(図)。

文庫の窓から

延壽撮要(1巻,曲直瀬玄朔著)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1998 - P.1999

『上古の人は無為無事にして自然に養生の道に合す。中古にいたりて人の智慧盛にして善悪をわかち,名利を専とし衣服をかさり,酒色をこのみ,形神を労す,故に天年をつくさずしてはやくほろぶ。云々…,養生の道ひろく言へば千言万句,約していへば惟これ三事のみ,養神氣,遠色慾,節飲食也,此事易簡なれども,人これをきかず,もし聞く人あれども,其身に行うことなし云々…,是よりさき養生の書あまた異朝よりきたるといへども,俚俗の者たやすくわきまへがたし,故に古今の書を互見し萃を抜,要を撮て倭俗の辞にて是をのぶ。庶幾田父里嫗にいたるまで,あまねく此道を聞て,常におこないつつしみ,身心安楽にして寿域にいたらむことを』
 これは「延寿撮要」の“養生之総論”に所載された記述の一部であるが,本書が成立した16世紀の後半,当時,養生の道がどのようにとらえられていたか,本書を通して考えてみたいと思う。
 本書は曲直瀬玄朔(1549〜1631)著に係る,慶長4年(1599)玄朔自身の蹟が入った古活字版で,その刊記に,慶長巳亥立夏之節,法印玄朔,意齋道啓刊行,とあるが,元和年間の古活字版と認められる(川瀬一馬氏)ものである。全1巻1冊44葉(25.8×17.0,m),丹表紙,毎半葉9行,毎行字数不定,平仮名交り和文。
 本書の内容はその総目録によると以下の通りである。

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臨床眼科 第48巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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