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特集 第47回日本臨床眼科学会講演集(1) 特別講演
落屑緑内障の臨床と病理
著者: 猪俣孟1 田原昭彦1 千々岩妙子1 伊藤憲孝1 清澤玲子1 久保田敏昭1 菅井滋1 杉野拓平1 川原田富朗1 藤澤公彦1 村田敏規1 何偉1 西岡木綿子1 江島哲至1
所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.245 - P.252
文献購入ページに移動落屑緑内障exfoliation galucomaは落屑症候群に伴って発症する原因不明の緑内障である。高齢者の水晶体前嚢の落屑と緑内障の関係はVogt1)によって注目され,水晶体嚢緑内障galucoma capsulareと呼ばれた。その後,水晶体前嚢の病理組織学的検索で,落屑は水晶体前嚢の剥落によるものではないこと,落屑物質は水晶体表面だけでなく,虹彩表面,角膜後面,線維柱帯,虹彩後面,毛様体,チン小帯などにも認められることが明らかにされた。水晶体表面の落屑物質は水晶体嚢偽落屑と呼ばれ2),ガラス吹き工などに認められる真の水晶体嚢落屑と区別されてきたが,落屑物質は眼球内の各組織や眼球外の組織にも認められることから,最近では落屑症候群exfoliation syndromeの名称が用いられる傾向にある。
落屑症候群は世界でもっとも早く高齢化社会をむかえた北欧諸国で高頻度にみられ,その他の国では比較的まれな疾患とされてきた。注意してみると,わが国でも50歳以上の高齢者にみられる開放隅角緑内障の大半は落屑緑内障であり,眼科臨床における重要な疾患のひとつになっている。
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