icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科48巻4号

1994年04月発行

雑誌目次

特集 第47回日本臨床眼科学会講演集(2) 学会原著

背景要因が異なる多発性後極部網膜色素上皮症の3例

著者: 伊比健児 ,   纐纈有子 ,   松村謙一郎 ,   秋谷忍 ,   江島哲至

ページ範囲:P.529 - P.532

 多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE)の発症に関して,全身的に異なる背景要因をもった3症例を報告した。症例1は44歳の男性で,トキソプラズマ抗体価,好酸球,血中IgEなどが高値であった。症例2は大動脈弁閉鎖不全・狭窄,慢性腎不全,糖尿病を有する53歳の女性で,右眼眼内レンズ移植術約1か月後に発症した。腕網膜時間,網膜内循環時間の延長を認めた。症例3は若年期より高血圧,腎障害を有する39歳の男性で,滲出斑周囲の螢光色素の脈絡膜充盈の著しい遅延を認めた。MPPEの発症には免疫アレルギー脈絡膜循環障害,腎障害なども関与する可能性があると考察した。

インターフェロン投与患者にみられた眼合併症

著者: 二見壽子 ,   中馬智巳 ,   直井信久 ,   澤田惇 ,   重平正文 ,   坪内博仁

ページ範囲:P.533 - P.537

 インターフェロン投与を受けた患者74名に眼底検査を行った。45名(61%)にインターフェロンによると思われる網膜出血や軟性白斑の出現がみられた。発症は投与開始2週間から1か月の間に最も多くみられ,3か月以内にほとんど発症した。眼底病変は自然消退傾向があり,網膜動脈分枝閉塞症の1例を除いて中心視力の低下した例はなかった。発症要因の一つとして血球減少率を検討したが,発症群と非発症群の間に統計学的に有意差は認められなかった。また基礎疾患では糖尿病を持つ患者で眼合併症が高率にみられた。

メチシリン耐性黄色ぶどう球菌による術後眼内炎の1例

著者: 尾上晋吾 ,   宮崎茂雄 ,   岩崎嘉秀 ,   杉浦雄介 ,   下奥仁

ページ範囲:P.539 - P.542

 90歳の男性。水晶体嚢外摘出術と人工水晶体挿入術後に,メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)による眼内炎が生じた。術後4日目に豚脂様角膜後面沈着と前房内のフィブリン反応が生じ,6日目には,角膜輪部に手術創につながる角膜浸潤巣や前房蓄膿が出現した。眼痛や眼瞼結膜浮腫はなく,前眼部の刺激症状は乏しかった。細菌性眼内炎が疑われ,前房洗浄と硝子体切除,部分的後嚢切除を行った。術中得られた角膜後面白色塊状物と前房中のフィブリン塊からMRSAが検出された。感染経路は不明であった。イミペネムとミノサイクリンの2剤併用を行い,眼内炎は消退した。

ダイオードレーザーによる網膜芽細胞腫の光凝固

著者: 佐野秀一 ,   関戸信雄 ,   箕田健生

ページ範囲:P.543 - P.547

 網膜芽細胞腫3例4眼11腫瘍に対しダィオードレーザー(波長800nm)による光凝固を行った。ダイオードレーザー光凝固装置を手術用顕微鏡に接続し,患児は全身麻酔下に仰臥位の姿勢とし,比較的大きなスポットサイズで低出力,長時間の条件で主として腫瘍本体の直接凝固を行った。11腫瘍中9腫瘍は1〜2回の光凝固で瘢痕化した。1腫瘍は7乳頭径と大きかったため放射線外照射と化学療法を併用し計4回の凝固を行った。1腫瘍は2乳頭径の大きさであったが再発し,再度光凝固を行った。ダイオードレーザーの波長は近赤外領域であるため組織深達性がよく,腫瘍の直接凝固に有効な手段であると思われた。

網膜症軽微で白内障の重症な糖尿病

著者: 小川月彦 ,   小川恵 ,   谷口寛恭 ,   宮村紀毅 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.549 - P.551

 糖尿病患者で視力低下の原因が,明らかに網膜症でなく白内障による患者14名の臨床像について調査した。網膜症軽微で白内障重症の糖尿病患者の特徴は,①若年糖尿病の傾向がある,②糖尿病の存在は,白内障進行に強く影響している,③糖尿病は,加齢による白内障の進行を,加速する可能性がある,④血糖コントロールと白内障進行は,相関しない,などであった。糖尿病による,白内障の発症・進行・程度を左右する因子が存在すると考えられた。

Photostress recovery testによる強度近視眼黄斑部機能の初期変化

著者: 世古裕子 ,   伊藤睦子 ,   船田みどり ,   所敬

ページ範囲:P.553 - P.556

 強度近視眼の黄斑部機能の初期変化を知るためにphotostress recovery testを行った。強度近視群は,屈折度が8.25D以上,矯正視力が1.0以上で豹紋状眼底以外に病的眼底所見のない30名47眼,コントロール群は,強度近視群と類似の年齢分布をもつ屈折度が正視から中等度近視の20名40眼とし,光源にはガイドナンバー42のストロボを用いた。両群ともに加齢に伴ってphotostress recovery timeは延長する傾向がみられ,特にコントロール群では相関があった。さらに20,30,40歳台の各年齢層別に比較すると強度近視群ではコントロール群と比較して有意に延長していた。検眼鏡的に変化のない強度近視眼の黄斑部において光照射後の回復に関与する機能に異常があることが示唆された。

内頸動脈循環不全における眼所見—網膜動脈閉塞症について

著者: 別府英明 ,   井上正則 ,   文順永 ,   坂井智代

ページ範囲:P.557 - P.560

 網膜動脈閉塞症は一般に高齢者の片眼に突発し,原因としてアテローム性血管変化など全身性の疾患が関与していることが多い。そのなかで内頸動脈アテロームは近年増加しつつあり,その急性所見として網膜動脈閉塞症を発生する。今回,筆者らは,内頸動脈循環不全を基礎疾患に持つ網膜動脈閉塞症の5症例を経験した。5症例中4症例はコレステリンプラークの所見,脳梗塞,一過性黒内障発作の既往などから塞栓による機序が最も考えられた。2症例において虹彩ルベオーシスが発症したが,いずれも網膜動脈閉塞症発症後であり著明な眼圧上昇は認めなかった。眼血流の急速な低下など,塞栓以外の機序による可能性も否定できないが,今後の検討が必要である。

加齢性黄斑変性における脈絡膜新生血管に対するインドシアニングリーン螢光眼底造影所見

著者: 今本量久 ,   尾花明 ,   森脇光康 ,   白木邦彦 ,   三木徳彦 ,   杉野公彦

ページ範囲:P.561 - P.564

 加齢性黄斑変性における脈絡膜新生血管病巣のインドシアニングリーン螢光眼底造影所見を,既に報告した新生血管病巣の網膜色素上皮の柵機能障害の有無,線維化の程度による分類に従って整理した。その結果,以下のことが再確認された。網膜色素上皮下の新生血管は時間の経過とともに明るい螢光を示し,その部位が判定できるが,後期にはむしろ螢光は弱まる傾向にあった。色素上皮の柵機能が障害され,網膜下に伸展した新生血管は,ほとんどの症例で初期より輪郭が造影され,後期では色素漏出を伴う強い螢光がみられた。線維性変化を伴う増殖組織は軽度明るく造影され,そのうち透過性の高い新生血管では明らかな色素漏出がみられた。瘢痕化がさらに進むと増殖組織は造影されなくなり,後期ではむしろ低螢光になった。しかし大型の色素上皮剥離を伴う病巣の場合は,色素上皮下に新生血管から旺盛な色素漏出を来し,他の1期の症例と異なった所見を呈した。

脈絡膜新生血管板の栄養血管に対する光凝固

著者: 川村昭之 ,   湯沢美都子 ,   正田美穂 ,   佐藤幸裕 ,   中島正巳 ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.565 - P.568

 赤外螢光眼底造影で栄養血管を検出できた中心窩脈絡膜新生血管に対し,栄養血管に対する光凝固を施行し,その有用性を検討した。その結果.8眼中5眼で脈絡膜新生血管は退縮した。3眼では凝固直後に螢光眼底造影で脈絡膜新生血管からの螢光漏出の減少が認められたが,脈絡膜新生血管が退縮しないため新生血管全体に光凝固を施行した。栄養血管の光凝固により眼底所見の悪化したものはなく,また,視力の低下したものもなかった。以上の結果から中心窩脈絡膜新生血管を有する症例では,赤外螢光眼底造影で栄養血管が造影された場合,新生血管全体を光凝固する前に栄養血管に対する光凝固を試みてよいと考えた。

原田病のインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影所見

著者: 政岡則夫 ,   安岡一夫 ,   上野脩幸

ページ範囲:P.569 - P.572

 脈絡膜の観察にはフルオレセイン螢光眼底造影(以下FAG)よりインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影(以下IA)が優れている。FAGでのぶどう膜炎の観察では主に網膜と視神経の状態をとらえているにすぎない。今回筆者らは原田病の2症例にトプコン社製50IAを用いてIAを施行した。FAGでは不明であった脈絡膜中大血管像の減少と脈絡膜中大血管からの螢光漏出を認め,経過を追うことができた。前者は炎症産物によるブロックによると考えられ,臨床像の回復とともに改善した。後者は脈絡膜中大血管の障害が起きていることを示し,一部残存した。これよりIAは原田病の経過観察と治療効果の判定に有用であると考えた。

日本における緑内障の医療経済

著者: 細田源浩 ,   塚原重雄 ,   浅香昭雄 ,   平野光昭 ,   今村義男

ページ範囲:P.573 - P.577

 緑内障は現在でも失明原因の上位にある疾患である。緑内障患者が失明のために就労が差し支えると,その経済的損失は莫大なものになることは明らかである。そこで緑内障から生じる経済的代価を緑内障に関わる直接的費用(医療費,リハビリテーション費用,養護費),および緑内障患者による視力障害のために生じる間接的費用(逸失利益)として算出した。その結果,緑内障で治療を受けている患者数は38万人,緑内障による失明者は4万3000人と推計された。緑内障にかかる直接費用は11施設のデータから598億円,厚生省のデータからは527億円と推計された。緑内障による失明者の逸失利益(間接的費用)は620億円と推計された。

甲状腺眼症にみられた高眼圧

著者: 吉川啓司 ,   小山内登志 ,   井上トヨ子 ,   井上洋一

ページ範囲:P.579 - P.582

 ゴールドマン圧平眼圧計による眼圧測定で21mmHg以上の高眼圧が検出された40例66眼の甲状腺眼症に対してCTスキャンによる眼窩水平断,冠状断の撮影を行った。対象66眼中60眼(91%)では少なくとも1筋以上の筋肥大を認めた。対象の眼圧(平均24.0±3.0mmHg)は筋肥大のない25例25眼の平均眼圧(17.1±2.4mmHg)に比べ明らかに高値を示した(p<0.01)。筋肥大を認めた60眼では下直筋,上直筋のいずれかまたは両者の肥大があった。正面位での眼圧(平均23.4±4.6mmHg)が下方視(平均19.1±3.1mmHg)に比べ明らかに高値を示した(p<0.01)ことから,外眼筋肥大がもたらす垂直方向の眼球運動障害と高眼圧に関連があることが推定された。

低眼圧緑内障患者における視野悪化例

著者: 太田亜紀子 ,   関伶子 ,   張替涼子

ページ範囲:P.583 - P.585

 当科外来において低眼圧緑内障と診断された症例28例50眼を悪化例,不変例に分け,初診時の視野所見,視神経乳頭所見,眼圧などにつき検討した。28例50眼のうち,不変例は22例35眼,悪化例は13例15眼で,初回視野検査が,Ⅰ期・Ⅱ期の初期緑内障に悪化が多くみられた。視神経乳頭所見ではnotch,乳頭出血は悪化例に有意に多く,外来平均眼圧15mmHg以上で悪化例が有意に多かった。しかし,10mmHg前後の低眼圧群でも悪化例があり,基本的には視神経乳頭の局在的変化が存在し,それに眼圧が視野悪化に関与していることが示唆された。

嚢性緑内障に対する隅角光凝固術の効果

著者: 早見宏之 ,   新田耕治 ,   福尾吉史 ,   武田憲夫 ,   窪田靖夫

ページ範囲:P.587 - P.590

 点眼治療のみでは眼圧コントロールが不良な嚢性緑内障13例18眼に対し,lasertrabeculoplasty (LTP)を行って,眼圧下降効果,合併症,視野変化などについて,同様に行った原発開放隅角緑内障14例18眼の結果と比較した。照射は隅角1/4周に25〜30発,50μm,出力500〜600mW,時間0.1秒で行った。LTP術後の生命表法による眼圧コントロール確率は嚢性緑内障群で89%(30か月),原発隅角開放緑内障群で69%(36か月)であった。LTPは中出力の照射でも,特に視野変化の軽い高齢者の嚢性緑内障には有効であり,点眼治療のみで眼圧下降が不十分な場合には,観血的手術に先立って試みてよい治療である。しかし,視野変化の進行例への適用には慎重でなければならない。

涙嚢部悪性腫瘍の1例

著者: 国吉一樹 ,   中尾雄三 ,   大鳥利文 ,   上石弘 ,   大薗澄江 ,   橋本重夫

ページ範囲:P.591 - P.594

 涙嚢部に原発した扁平上皮癌の1例の臨床経過について報告した。症例は78歳女性で,左涙嚢部に腫脹を認めた。生検で扁平上皮癌の診断を得た。左涙嚢部に一致して弾性硬,表面整で,可動性に乏しい直径約2cmの腫瘤を触知した。CT, MRI検査では同部に直径1.5cmの充実性の腫瘍陰影を認めた。眼窩内容除去術および側頭筋皮弁術を施行した。病理学的には扁平上皮癌であった。術後,左下顎部に小指頭大の腫瘤が出現したため,摘出した。病理学的には扁平上皮癌で,リンパ節転移と思われた。

マイトマイシンCを用いた翼状片手術による治療成績

著者: 前谷悟 ,   中西清二 ,   守屋伸一 ,   奥田隆章 ,   清水一弘 ,   黒田真一朗 ,   岸浩子 ,   永田誠

ページ範囲:P.595 - P.597

 翼状片手術中にマイトマイシンC (以下MMC)を用いる方法を考え,A, Bの2施設で手術を行い,術後6か月以上経過観察した45例47眼の結果を報告した。A施設では結膜弁移植法を行い,翼状片組織を除去後,露出した強膜上に0.02mgMMCを浸したMQAの切片を3分間付着させ,生理食塩水50mlで洗い流し,結膜弁を移植した。B施設では強膜露出法を行い,同様に強膜上にMQAの切片を5分間付着させ,生理食塩水250mlで洗い流した。結果として,再発眼はB施設の1眼のみで,MMC使用による合併症は,全く見られなかった。本方法は,簡便かつ安全で,再発予防に有用なため,今後活用すべき手術方法と思われた。

アトピー性皮膚炎患者の角膜内皮変化

著者: 河野琢哉 ,   大久保潔 ,   鉄本員章 ,   中川直之 ,   清水良輔

ページ範囲:P.599 - P.602

 アトピー性皮膚炎(以下,AD)患者81例150眼の角膜内皮の状態を同年齢健常人と比較した。さらに白内障および網膜病変の有無や血清IgE値と角膜内皮変化との相関を調べた。
 AD患者は,同年齢健常人と比較し,平均細胞密度,平均細胞面積には有意差はなかったが,有意な六角形細胞出現率の低下,変動係数の増大を認めた(p<0.01)。AD患者で血清IgE値が10,000IU/ml以上の高値群と150 IU/ml以下の正常群との比較ではいずれのパラメーターも有意差はなかった。白内障群と網膜病変群では白内障,網膜病変のともにない群に比べ,有意な六角形細胞出現率の低下,変動係数の増大を認めた(p<0.05)。
 AD患者では網膜病変や白内障合併例で角膜内皮変化が特に強い傾向があった。

Sclerocorneaの角膜,強膜および前部ぶどう膜の組織

著者: 水谷英之 ,   吉本弘志 ,   関根美穂 ,   前田修司 ,   三上規

ページ範囲:P.603 - P.607

 臨床的にsclerocorneaと診断された1歳3か月男児の左眼に対し,眼球内容除去術を行い,摘出した角膜,強膜,前部ぶどう膜を組織学的に検討した。角膜周辺部では角膜内皮細胞およびデスメ膜(Descemet's membrane)の存在を認めたが,中央部においては欠損していた。シュレム管(canal of Schlemm)および線維柱帯は欠損していた。虹彩様組織が痕跡的に存在しており,その表面は水晶体側のみならず前房側も2重の色素上皮細胞により覆われていた。虹彩様組織の内部は平滑筋と血管で充満していた。一部で角膜と虹彩様組織の解離不全が認められ,その接合部にデスメ膜の存在を認めた。

着色眼内レンズの視機能

著者: 丹羽一司 ,   吉野幸夫 ,   所敬

ページ範囲:P.609 - P.612

 紫外線吸収眼内レンズとこれに黄色色素を添加した着色眼内レンズの視機能を,コントラスト感度およびそのグレア防止効果によって比較した。対象の年齢分布をほぼ同一に,また瞳孔径を人工瞳孔を用いて3mmと一定にすることにより,IOLのエッジの状態,positioning holeなどの相違による影響を除去し,青色光カットの効果を評価した。この結果,IOLの可視光線短波長領域のカットは明所視・薄明視において主として中間空間周波数領域のコントラスト弁別能を向上させること,また特にdirectional grareを軽減させることが確認された。

円錐角膜に対するディスポーザブルソフトコンタクトレンズとハードコンタクトレンズの組合せ処方—角膜形状に及ぼす影響について

著者: 佐野研二 ,   北澤世志博 ,   所敬

ページ範囲:P.613 - P.615

 円錐角膜4例6眼に,ディスポーザブルソフトコンタクトレンズ(以下DSCL)とハードコンタクトレンズ(以下HCL)の組合せ処方(piggyback lens system)を行った。そして,処方時,処方1年前および1年後の角膜形状をコニコイド曲線X2+(Q+1) Y2−2RY=0に近似し,円錐角膜形状異常程度を表すlndex K=−(Q/R)×103で円錐角膜形状の変化を評価した。その結果,1年間のIndex Kの変化量はpiggyback lens sys-temで−138.8±122.0,HGL単独装用で−64.2±88.6となり,DSCLを用いたpiggyback lenssystemの角膜形状改善効果は,少なくともHCL単独装用に匹敵するものと思われた。

脊髄小脳変性症と交代型skew deviation

著者: 田辺由紀夫 ,   中島裕美 ,   加島陽二 ,   石川弘

ページ範囲:P.617 - P.619

 脊髄小脳変性症に交代型skew deviationを認めた10症例について検討した。脊髄小脳変性症による神経症状が出現してから本症候による複視が発現するまでの期間が,10症例のうち5症例で1年以内であったことから,交代型skew devia—tionが脊髄小脳変性症の初期症状のひとつとして捉えられると考えた。また,交代型skew deviationの責任病巣として従来は中脳水道近傍が重要視されているが,今回の10症例では随伴症候から小脳や下部脳幹がその責任病巣と考えられ,両者のいずれの病変でも起こり得ることが推察された。

学術展示

慢性涙嚢炎に対する軟膏注入の試み

著者: 前田清二 ,   中村秀夫 ,   佐藤直樹 ,   櫻木章三

ページ範囲:P.622 - P.623

 緒言 慢性涙嚢炎の治療として抗生剤の涙嚢洗浄や点眼が主となるが,難治のため,これらの長期投与により菌交代現象や多剤耐性菌の形成が問題になっている。今回筆者らは涙嚢に軟膏注入を試みた1症例について報告する。

翼状片頭部に発生した平滑筋肉腫の1例

著者: 岡田浩輔 ,   前野亜矢 ,   宮原章拓 ,   林大助 ,   島一郎 ,   尾関信泰

ページ範囲:P.624 - P.625

 緒言 平滑筋肉腫は胃,小腸などに見られる悪性腫瘍であるが,眼科領域,特に結膜に発生する平滑筋肉腫は極めて稀で,本邦における報告はない。今回筆者らは翼状片頭部に発生した平滑筋肉腫の1例を経験したので,臨床所見および病理所見について報告する。

角膜内皮検査用レンズによる角膜上皮細胞の観察法

著者: 三方修 ,   坂田実紀 ,   植田俊彦 ,   坪田一男 ,   小出良平

ページ範囲:P.626 - P.627

 緒言 角膜の上皮欠損が生じた場合,上皮細胞は伸展・移動と細胞増殖によって再生,修復される。したがって角膜上皮細胞の観察をすることは,関連疾患や病態の経過・予後を推測するのに重要である。現在臨床的に使用されているのはspecular microscope用レンズ(レインボー社製,以下SMレンズ)を装着し観察する方法である1)。そこで今回は,角膜上皮の観察撮影を角膜内皮検査用レンズ(トーメー社製Endo-lens®,以下Endo-lens)を用いて通常のスリットランプで観察する方法と,従来のSMレンズを用いた場合とを比較検討した。

涙点栓子挿入による乏涙症の治療成績

著者: 太田啓雄 ,   広瀬浩士 ,   粟屋忍 ,   平野啓治 ,   田辺詔子 ,   平野潤三 ,   市川一夫 ,   永田茂樹

ページ範囲:P.628 - P.629

 緒言 乏涙症は口常診療でしばしば遭遇する疾患であり,角結膜にさまざまな症状を来す。これまで一般的には頻回点眼,あるいは涙点閉鎖などが行われてきており,特に涙点閉鎖法は自覚的に改善度が高い1)。しかしゼラチンロッドは効果は期待できるものの2),管理が煩わしく,またシリコン製の涙点栓子は大きさや形が合わないものが多かった。今回筆者らはそれらに改良を加えたフランスF.C.I.社の涙点栓子を多施設において臨床治験し,その有効性と安全性を検討した。

新型涙点栓子による涙液分泌減少症の治療

著者: 高橋政代 ,   千原悦夫 ,   本田孔士 ,   落合優子 ,   砂川光子 ,   三浦昌生 ,   吉田晴子 ,   伊藤邦生 ,   上野聡樹 ,   本田治

ページ範囲:P.630 - P.632

 緒言 シェーグレン症候群などにより涙液分泌が減少する涙液分泌減少症(以下,乏涙症)は,頻度の高い疾患であるが,現在の主な治療法である点眼治療では症状の軽快しない重症例も多い1,2)。近年開発された種々の涙点栓子による涙点一時閉鎖法は自他覚症状の改善度が高く,可逆的な治療で副作用も少ないが3),わが国ではまだ広く実用化されていない。
 今回筆者らは新しい形状の涙点栓子の臨床試験を行い,その効果および安全性について検討した。

超音波水晶体乳化吸引術における創口温度の変化

著者: 永原幸 ,   清水公也

ページ範囲:P.634 - P.635

 緒言 超音波操作による創口の熱変性は強い乱視を引き起こすほかに創口閉鎖不全を生じ,前房形成不全,虹彩嵌頓,感染など術後合併症の原因となり得る。筆者らは創口温度と灌流量の関連を明らかにし,温度変化に関する因子について報告した1)。今回は形状,材質の異なるスリーブと灌流量,創口温度との関連について検討した。

翼状片術前術後の角膜トポグラフィーによる角膜形状解析

著者: 田中俊朗 ,   深作秀春

ページ範囲:P.636 - P.637

 緒言 翼状片(直接瞳孔領を被覆していないものに限る)が,不整乱視を引き起こし,視力低下を引き起こすことは,従来から漠然と知られている。オートケラトメーターでの乱視測定は,角膜上の数点(最大5点)の値により角膜乱視を対称的なモデル眼に近似して測定する。このため,非対称的な角膜不整乱視の測定はオートケラトメーターでは行えない。また従来のフォトケラトスコープでは,不整乱視の推測はできるが,どの程度屈折に影響を及ぼしているかという定量はできない。近年,角膜上の約6,000点の屈折力から角膜形状をより詳しく測定できる角膜トポグラフィーが開発された。今回,筆者らは角膜トポグラフィーを用い,翼状片術前術後の角膜形状変化を視力との関連で考察した。実際の症例3例の角膜トポグラフィーの変化を提示し,関連して翼状片手術術前術後の視力変化につき報告する。

球後麻酔が原因と考えられる眼球運動障害を生じた3症例

著者: 高尾宗之 ,   大平明彦 ,   山上聡 ,   河田博

ページ範囲:P.638 - P.639

 緒言 白内障術後合併症として稀に複視が出現することがある。その発生機序としては,①術前より存在していた複視が白内障により自覚されなかったもの,②白内障による長期の視機能障害の結果発生したもの,③制御糸,その他手術時の外傷によるもの,④無水晶体眼,偽水晶体眼による不等像視などの光学的問題によるもの,などが挙げられている。最近,球後麻酔による外眼筋の直接の障害が原因となった症例が報告されている1)。このような症例は本邦ではまだ報告されていない。今回筆者らはこれに相当すると考えられる3症例を経験したので報告する。

不同視弱視に下垂体腺腫が合併した1例

著者: 中馬秀樹 ,   尾崎峯生 ,   澤田惇

ページ範囲:P.640 - P.641

 緒言 日常診療でよく遭遇する疾患のなかに,ほかの思わぬ疾患が隠されていることがある。筆者らは,過去に不同視弱視としての診断治療を受け,のちに下垂体腺腫の存在が確認された1例を経験したので報告する。

複視が主症状の蝶形骨洞嚢胞例

著者: 小沢勝子 ,   横田明

ページ範囲:P.642 - P.643

 緒言 蝶形骨洞嚢胞の主症状は頭痛と眼症状であるために,眼科を最初に受診することが多い。従来の蝶形骨洞嚢胞の報告はほとんどが視機能障害例であり,眼球運動障害のみの時期に発見された症例報告は眼瞼下垂と眼球運動障害をきたした西村ら1)の1例のみである。他方,眼球運動障害をきたす原因として脳神経外科的疾患の占める割合が多いので,鑑別診断が重要である。複視のみを症状とし,MRIが早期診断に有用で,蝶形骨洞開放術により眼症状が軽快した症例を経験したので報告する。

小切開用眼内レンズの嚢内固定に関する検討

著者: 吉田紳一郎 ,   目谷千聡 ,   筑田真 ,   小原喜隆

ページ範囲:P.644 - P.645

 緒言 小切開創からの白内障手術が多くなり,それに伴ってさまざまな機質および形状の,小切開創から挿入可能な眼内レンズが開発されている。嚢内に挿入された小切開用眼内レンズの安定性を知ることは術後の視機能を管理するために重要である。今回は前嚢切開の大きさと眼内レンズの傾斜および偏心の関係について検討した。

眼合併症の有無による白内障術前術後のコントラスト視力

著者: ビッセン宮島弘子 ,   原恵美子 ,   勝海修

ページ範囲:P.646 - P.647

 緒言 白内障術前,術後の視機能評価法として,高コントラスト視標による視力検査だけでは十分でないことが注目されている。今回,WangのVariable—Ccntrast Visual Acuity Charts(VCVAC)(図1)を用いて,水晶体混濁以外に眼合併症を伴わない白内障眼と眼合併症のある白内障眼の術前,術後の低〜高コントラスト視力を測定し,両群の改善度を比較するとともに,眼合併症の有無を術前のコントラスト視力検査で予測することができるか検討した。

ぶどう膜炎患者に対する眼内レンズ移植

著者: 樋口眞琴 ,   猪野健二郎 ,   石丸裕晃 ,   山本登紀子 ,   大塚秀勇

ページ範囲:P.648 - P.649

 緒言 ぶどう膜炎を有する患者の白内障手術に際しては,術式の選択や眼内レンズ(IOL)の可否について苦慮することが多い。筆者らはぶどう膜炎を有する患者へのIOLの適否を調べる目的で,当院でIOL移植を行ったぶどう膜炎患者について検討してみた。

白内障手術におけるクロニジン前投薬の有用性:経口投与による眼圧と循環動態に及ぼす影響

著者: 平岩薫子 ,   寺崎浩子 ,   粟屋忍 ,   吉岡均 ,   三毛紀夫 ,   小松徹

ページ範囲:P.650 - P.651

 緒言 クロニジンは交感神経作動薬のα2—agonistで一般には血圧下降剤として使用されているが,眼圧下降作用と鎮静作用についても注目されている1)。今回筆者らは白内障手術の前投薬に本薬剤を使用し,眼圧と循環動態に及ぼす影響について,従来筆者らが用いてきた前投薬との比較検討を行ったので報告する。

レーベル粟粒血管瘤に対する治療成績

著者: 野村昌弘 ,   桂弘 ,   熊谷謙次郎

ページ範囲:P.652 - P.654

 緒言 レーベル粟粒血管瘤は,1912年Leber1)が発表した,網膜の小血管瘤が多発し,それに伴った輪状網膜症を主徴とする疾患である。血管病変からコーツ病の軽症例と考えられており2),治療には光凝固が有効であるとされているが2〜5),本疾患に対する報告は少ない。今回筆者らはレーベル粟粒血管瘤に対する治療成績を検討したので報告する。

後房レンズ毛様溝縫着術施行例の長期経過観察結果

著者: 篠原光太郎 ,   佐渡一成 ,   篠原泉 ,   澤崎嘉昭 ,   太田俊彦 ,   金井淳

ページ範囲:P.655 - P.657

 緒言 近年,眼内レンズ挿入術は,白内障術後の視力矯正方法として広く普及し,術後無水晶体眼に対する二次的挿入手術も増加する傾向にある。従来,後嚢のない症例では前房レンズ挿入が行われてきたが,角膜内皮障害,続発緑内障,瞳孔変形などの術後合併症の問題が注目される1)ようになり,後房レンズ毛様溝縫着術が普及しつつある。筆者らは,第15回日本眼科手術学会において,本法(Lewisの原法;図1)施行例の術後短期(平均観察期間5.5か月)の角膜内皮減少率,合併症について報告した。今回は,本法の長期予後(平均観察期間16.2か月)につき検討を行い,若干の知見を得たので報告する。

皮疹のない眼部帯状庖疹

著者: 花尻眞智子 ,   松本年弘 ,   秦野寛 ,   大野重昭

ページ範囲:P.658 - P.660

 緒言 眼部帯状庖疹は三叉神経領域に典型的な皮疹を認めれば診断は比較的容易であるが,一方,皮疹を伴わない眼部帯状庖疹(zoster sine herpete)も存在している。本疾患の原因ウイルス(varicella zoster virus:VZV)の分離は非常に困難であるため,現時点では本症の診断はウイルスの血清抗体価に依存するところが極めて大きい。今回筆者らは,VZVの血清抗体価と臨床症状から皮疹なしの眼部帯状抱疹を疑った症例について,症例数,性別,平均年齢,臨床症状などを,皮疹を伴う眼部帯状庖疹の症例と比較検討したので報告する。

白皮症患者の白内障術後に発症した眼サルコイドーシスの1例

著者: 三浦惠子 ,   三浦嘉久 ,   小野寺貴子 ,   岩橋春恵 ,   上野眞

ページ範囲:P.662 - P.663

 緒言 サルコイドーシス(以下,サ症)は若年層に好発する,原因不明の全身性肉芽腫疾患である。本症では細胞性免疫の低下・体液性免疫の異常も存在し,その免疫学的動態は複雑で他の免疫学的異常を来す疾患との合併が知られている。今回筆者らは,ぶどう膜炎の既往のない74歳の白皮症患者の片眼白内障術後に両眼にぶどう膜炎が発症し,眼サ症と診断した症例を経験したので報告する。

北大眼科における最近のベーチェット病の動向

著者: 古館直樹 ,   小竹聡 ,   笹本洋一 ,   合田千穂

ページ範囲:P.664 - P.665

 緒言 ベーチェット病は,全国的に発病率の減少や不全型の増加,症状の軽症化が報告されている1)。当科においては1987年以後,新患数の減少傾向が見られた2)。そこで,当科における最近のベーチェット病の動向について調査し,過去の調査と比較検討した。

ベーチェット病における補体分解産物C4a

著者: 呉朋子 ,   小暮美津子 ,   福田尚子

ページ範囲:P.666 - P.667

 緒言 活性化された補体のフラグメントのなかで,C3a,C4a,C5aはアナフィラトキシン活性や多核白血球遊走活性を有することが知られている。ベーチェット病における補体について,また,C3a,C5a値と臨床像との関連性については以前報告した1,2)。今回はさらにC4aの値を測定し,本症の病態形成に対する補体の関与を検討したので報告する。

脈絡膜転移で発見され,内科的治療により著明な寛解を得た肺癌の1例

著者: 阿佐美知栄 ,   三浦昌生 ,   川崎茂 ,   寺田裕美 ,   北村拓也 ,   大塚真砂子 ,   吉田晴子

ページ範囲:P.668 - P.670

 緒言 近年報告されている肺癌の脈絡膜転移腫瘍の多くは,腺癌や扁平上皮癌である。今回,筆者らは眼症状にて発見された肺小細胞癌の多発性頭蓋内転移例を経験し,しかも,本例は化学療法・放射線療法により脈絡膜腫瘍を含む頭蓋内転移巣の消退,肺原発巣の著明な縮小をみた。患者は遅発性肝転移により死亡したが,剖検を得ることができたので,報告する。

脈絡膜骨腫に対する赤外螢光眼底造影と長期治療経過

著者: 鈴木水音 ,   戸張幾生

ページ範囲:P.672 - P.673

 緒言 脈絡膜骨腫は,成因は不明で有効な治療法もなく進行性であるとされている1,2)。今回筆者らは,9年間にわたって経過観察を行うことのできた1症例に対し,その光凝固治療経過および赤外螢光眼底造影像について検討を加えたので報告する。

感染性心内膜炎に合併した眼病変

著者: 丸山耕一 ,   中尾雄三 ,   阿部考助 ,   松本長太 ,   三島弘 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.674 - P.675

 緒言 感染性心内膜炎においては,Roth斑を含む眼底出血や軟性白斑の出現などの眼病変が合併することがあると報告されている1)。今回筆者らは1992年11月〜1993年9月に近畿大学医学部附属病院眼科に紹介された感染性心内膜炎の症例8例(男性2例,女性6例)について眼科学的精査を行い,臨床経過を含め,その眼所見について検討した。

糖尿病性黄斑症に対する光凝固.視力良好例に対する予防的照射の検討

著者: 大越貴志子 ,   草野良明 ,   四蔵裕実 ,   山口達夫

ページ範囲:P.676 - P.678

 緒言 糖尿病性網膜症に対する黄斑部光凝固が視力低下に有効であることは米国のEarly Treatment of Diabetic Retinopathy Study (ETDRS)1)などにより既に報告されているが,本邦では視力が不良な症例での報告がほとんどで,視力が良好な症例を対象に含めた報告例2,3)は少ない。筆者ら2)は糖尿病性黄斑症に対する光凝固が,視力の維持もしくは改善に有効であることを既に報告した。今回は視力の良好な症例に対し予防的に黄斑部光凝固を行い,光凝固が視力維持に果たす役割につき調査,検討を行った。

ICG螢光眼底での加齢性変化と思われる脈絡膜血管の不整

著者: 張野正誉 ,   北西久仁子 ,   大島佑介 ,   岩橋佳子 ,   小川憲治

ページ範囲:P.680 - P.681

 緒言 インドシアニングリーン螢光眼底造影(ICG)が一般臨床に用いられるようになった1)が,まだまだ読影について不明な所も多い。ICGでは主に脈絡膜の中・大血管が造影されるが,正常では血管の輪郭は明瞭で滑らかな走行を示し,壁は平滑にみえる。これに対し,ときに脈絡膜血管が平滑な走行ではなく,不規則に断裂したり拡張したように観察されることがある。このパターンと,加齢や加齢性黄斑変性(ARMD)との関係が疑われたので報告する。

網膜剥離手術における針と糸の改良および黄斑バックル手術に対する持針器の試作

著者: 佐賀徳博 ,   津田久仁子

ページ範囲:P.682 - P.683

 緒言 筆者らは,いままで北大眼科における裂孔原性網膜剥離の手術成績および黄斑円孔ガスタンポナーデによる治療成績について報告した1,2)。今回は,当科で剥離手術の際に使用している糸と針,主として黄斑バックル手術に対する持針器について報告する。

シリコーンオイル注入81眼の検討

著者: 野末順 ,   二宮久子 ,   小林康彦 ,   田中稔

ページ範囲:P.684 - P.685

 緒言 難治性網膜剥離に対して長時間のタンポナーデ効果を期待できるシリコーンオイル(silicone oil:SO)が使用されるが,術後の合併症1,2)を考えるとその使用は大きな制限をうける。今回,筆者らはSO注入を余儀なくされた81眼の難治症例について検討し,SO注入の適応,合併症,抜去の時期について若干の考察を加えたので報告する。

大動脈炎症候群に両眼の虚血性視神経症を合併した1例

著者: 重藤真理子 ,   五島優子 ,   山名敏子 ,   山田賢明 ,   高橋信

ページ範囲:P.686 - P.687

 緒言 大動脈炎症候群では,網膜毛細血管瘤,網膜血管の吻合,視神経乳頭上の花冠状吻合,虹彩の血管新生,白内障などがみられ,眼虚血症状が徐々に進行する1)。また,網膜中心動脈閉塞症や虚血性視神経症を合併し急激な視力低下をきたすこともある2〜4)。筆者らは,片眼に後部虚血性視神経症,他眼に前部虚血性視神経症を合併した症例を経験した。

腎移植後,網膜下輪状白色混濁を生じた中心性脈絡網膜症の1例

著者: 酒井裕子 ,   岩城陽一 ,   吉村ひろみ

ページ範囲:P.688 - P.689

 緒言 中心性脈絡網膜症は,ときに白色の輪状混濁を伴うことがあると報告されている1)。今回筆者らは,中心性脈絡網膜症の経過中に腎移植が行われ,その後,その網膜剥離の範囲内に網膜下輪状白色混濁を生じた1例を経験したので報告する。

新生血管黄斑症を伴った眼結核の1例

著者: 沼田このみ ,   山田成明 ,   安田敏彦 ,   渡辺彰 ,   片山寿夫

ページ範囲:P.690 - P.691

 緒言 眼結核は抗結核剤の出現により肺結核とともに激減したとされている1)。しかし今日でも一定数の患者は発生しており,その多彩な病変ゆえに診断が困難な場合や治療に苦慮することもある。今回は肺の粟粒結核および結核性腸腰筋炎に伴い発症し,新生血管黄斑症を呈していた眼結核の1例を経験したのでここに報告する。

インターフェロン投与中に全眼球炎をきたした1例

著者: 吉利尚 ,   三枝圭 ,   渡辺朗 ,   北原健二 ,   山田弘徳 ,   溝渕杏子 ,   磯貝行秀

ページ範囲:P.692 - P.693

 緒言 近年,C型肝炎に対するインターフェロン療法の普及により,その眼合併症として網膜症に関する報告が散見されるようになったが,重篤な眼障害をきたした報告はみられない。今回,慢性肝炎に対するインターフェロン投与中に全眼球炎をきたし,眼球摘出に至った症例を経験したので報告する。

周産期サイトメガロウイルス感染症を合併しPeters' anomalyの1例

著者: 初川嘉一 ,   小池仁 ,   住田裕 ,   細谷比左志 ,   浜田陽

ページ範囲:P.694 - P.695

 緒言 未熟児が周産期にウイルス感染に罹ると,先天性感染に極めて近い症状を呈すると考えられる。筆者らは,超未熟児で出生したPeters奇形の症例が周産期にサイトメガロウイルス(CMV)に感染したため,先天性CMV感染症に極めて近い所見と多彩な臨床症状を呈した1例を経験したので報告する。

Waardenburg症候群6症例の視機能

著者: 鈴木祐子 ,   粟屋忍 ,   矢ケ﨑悌司 ,   林啓子 ,   近藤峰生 ,   海田政英

ページ範囲:P.696 - P.697

 緒言 Waardenburg症候群は,①内眼角と涙点の側方偏位②鼻根部拡大,③正中部眉毛の過形成④部分または全体の虹彩異色症⑤両側または片側の先天性聾⑥前頭部白髪の6主徴を特徴とする常染色体優性遺伝形式をとることが多い先天異常である。本邦でも多数の報告があるが,複数例の視機能を検討したものは少なく,特に立体視に関して言及された症例は湖崎ら1)の3例のみである。今回筆者らは本症候群の6例につき視力,眼位,立体視,眼科的所見などを経過観察する機会を得たので比較検討した。

マイトマイシンC併用ジヌソトミー変法手術

著者: 上野聡樹 ,   青山裕美子 ,   北尾義美 ,   古川真理子 ,   宮代美樹 ,   伊藤邦生

ページ範囲:P.698 - P.699

 緒言 開放隅角緑内障に対する手術法はトラベクレクトミーとトラベクロトミーに二分される現況である。前者は濾過かつ開放手術であり,眼圧下降効果が高い半面,重篤合併症が高率に発生する。閉鎖手術である後者にはそのような合併症は少ないものの,眼圧下降効果の点では前者に劣る。低眼圧緑内障など眼圧下降効果が強く要求される場合,これら両者の利点を併せ持つ手術が必要とされる。その条件を満たし得る手術がジヌソトミーと考えられるが,操作の困難さに加え,濾過効果の持続時間が短いという欠点が指摘されている。以上から,ジヌソトミー手術を容易にする手技・器具を開発し,濾過効果持続のためマイトマイシンC(MMC)を併用した新しい緑内障手術を試みた。

Polymerase chain reaction法で単純ヘルペスウイルスDNAを検出した角膜内皮炎の1例

著者: 森文彦 ,   太田勲男 ,   高橋正年 ,   古屋文康 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.700 - P.701

 緒言 角膜内皮炎は,角膜内皮細胞が特異的に免疫学的な傷害を受けている病態とされている1)。近年,大橋ら2)により臨床病型分類が試みられ,その病型の一部にはヘルペスウイルス感染の関与が示唆されている。しかし,局所のウイルス感染を証明した例はpolymer—ase chain reaction (以下PCR)法を用いたOhashiら3)りの報告などに限られる。今回,筆者らは臨床的に角膜内皮炎と診断した患者の前房水から,PCR法によって単純ヘルペスウイルス(HSV)のDNAを検出したので報告する。

眼球突出で発見されたGraves病と甲状腺乳頭癌の合併例

著者: 中堀裕子 ,   杉浦寅男 ,   山本節

ページ範囲:P.702 - P.703

 緒言 筆者らは,いわゆるGraves病の眼徴候を呈し,精査の結果,診断に至った若年男性のeuthyroidGraves病と甲状腺乳頭癌の合併例を経験した。甲状腺癌合併例では,Graves病のみの場合に比し,眼症状出現の頻度は低く,男性例は少ないと報告されており1),本例は稀な症例と考えられる。

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・10

偽落屑症候群の毛様小帯

著者: 杉田新

ページ範囲:P.513 - P.513

偽落屑症候群の毛様小帯の走査電顕写真。毛様小帯の小帯線維(矢印)に偽落屑物質が沈着している。偽落屑物質は絨毛様の外観を呈しており,拡大して観察すると細線維の集合から成っているのがわかる。人眼。 ×1,500

眼の組織・病理アトラス・90

網膜毛細血管の閉塞

著者: 石橋達朗 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.514 - P.515

 網膜毛細血管の閉塞は糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症,ベーチェット病,大動脈炎症候群,全身性エリテマトーデス(SLE)など種々の疾患で起こる。
 網膜毛細血管の閉塞を検眼鏡で確認することは困難であるが,螢光眼底造影を行うと螢光色素の充盈欠損域として認められる(図1)。閉塞は可逆的なものと,不可逆的なものとに分けられる。不可逆的な閉塞が進行すると,閉塞部の周囲から新生血管が発生する。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・64

巨大裂孔をどうするか

著者: 松村美代

ページ範囲:P.518 - P.520

 巨大裂孔網膜剥離は重度の増殖性硝子体網膜症を伴いやすいが,ほとんど剥離のない状態で発見される場合もあり,網膜剥離の程度,増殖の程度によって対応が異なる。

今月の話題

特発性黄斑円孔の手術療法

著者: 佐藤幸裕

ページ範囲:P.521 - P.527

 従来,特発性黄斑円孔は治療の対象にならない疾患とされてきた。しかし,ここ数年の間に切迫黄斑円孔の病態や全層黄斑円孔形成の病因の解明,切迫黄斑円孔や全層黄斑円孔に対する硝子体手術,さらにTGF—β2の臨床応用と,黄斑円孔の診断や治療に関する研究が次々と報告され,いまや黄斑円孔は治療可能な疾患に含まれるようになった。本稿ではこれらの治療法の開発の経過と現状,手術手技と症例を供覧する。

眼科の控室

診察優先

著者:

ページ範囲:P.706 - P.706

 外来では,患者さんの診察の順番は,普通は予約順か到着順になっています。
 公平を目指すのならこれでOKなのですが,疾患によっては,急がなければならない場合が出てきます。
 他の患者さんをさしおいても,是非にと早く診てほしいのが2つあります。第1は,外傷などの急患です。緑内障の急性発作もこれに含まれます。第2は,未熟児を含む乳児がそれです。理由は簡単で,そもそも病院は乳幼児の来るところではないからです。雑菌などに触れる機会をできるだけ少なくするために,乳幼児は,病院にいる時間をなるべく短くしたいのです。

臨床報告

網膜中心動脈閉塞症の病型と視力予後

著者: 萩村徳一 ,   岸章治 ,   飯田知弘

ページ範囲:P.715 - P.719

 網膜中心動脈閉塞症22眼で,視力の予後につき眼底所見,初診までの時間,治療効果について検討した。追跡期間は,最短1か月,最長15か月,平均5.1か月であり,視力は,初診時,終診時ともに2峰性の分布をしていた。最終視力が0.01以下であった群では,全例が初診時に網膜に著明な混濁があった。最終視力が0.4以上であった群では,初診時に混濁の程度が軽いか,または軟性白斑が多発していた。初診までの時間と治療内容については両群に差異はなかった。本症の視力予後にもっとも関係する要素は網膜虚血の程度,すなわち初診時視力であり,初診時に0.1以上の群では最終視力が良好であった。初診時に軟性白斑が多発していた症例では,網膜動脈の閉塞の程度が軽度であると推定され,視力予後は良好であった。

急性網膜壊死での網膜循環閉塞と再開

著者: 磯野博明 ,   清水良

ページ範囲:P.721 - P.727

 典型的な発症をみた急性網膜壊死の24歳男子の1例につき,後極部網膜毛細血管の循環動態の経過を,螢光眼底造影で追跡した。右眼は,すでに本症により眼球癆となっており,今回は左眼に発症した。発症時,後極部の網膜血管床はよく保たれており,網膜の壊死は周辺部にとどまっていたが,4週後に後極部の血管床は広範囲に閉塞した。その後,閉塞域に血行の再開が起こり,発症6か月後には閉塞域は消失した。閉塞域に現れた血管は静脈由来であり,螢光造影上軽度の漏出がある粗な血管網で,閉塞域に接する部位では先端がループ状であった。この血行再開の様式は,糖尿病網膜症の閉塞域にみられる網膜内新生血管と同様であった。本例から,壊死の及ばない後極部網膜に可逆性の血管床閉塞が起こり得ることが示された。

脈絡膜剥離を合併した特発性頸動脈海綿静脈洞瘻の1例

著者: 北澤世志博 ,   星合純 ,   吉野幸夫 ,   清澤源弘 ,   佐野圭司

ページ範囲:P.729 - P.733

 右結膜充血,眼球突出および視力低下を主訴として来院した77歳女性の特発性頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の1例を経験した。本症例は,本邦ではまだ2例と報告の少ない脈絡膜剥離を合併していた。特発性CCFに脈絡膜剥離が合併する機序は,上昇した海綿静脈洞圧の伝達により,脈絡膜から渦静脈への環流障害が起こるためと考えられている。本症例では,螢光眼底造影により,脈絡膜の循環障害が認められた。しかし,特発性CCFによく見られる上眼静脈の拡張は,著明ではなかった。したがって本症に脈絡膜剥離が合併した機序は,上昇した海綿静脈洞圧の伝達のみならず,眼窩内静脈に血栓が形成された可能性も示唆された。本症は,対症療法にて保存的に経過観察していたところ,硬膜動静脈奇形の縮小に伴い脈絡膜剥離を含む眼症の自然軽快が得られた。

高齢者に見られた多発性後極部網膜色素上皮症

著者: 上野眞 ,   町田拓幸 ,   三浦嘉久

ページ範囲:P.735 - P.738

 高齢者に見られた多発性後極部網膜色素上皮症を報告した。症例は80歳男性。右眼の黄斑部漿液性網膜剥離で発症し,下方の網膜剥離を生じた。裂孔は発見されず,眼内には炎症所見はなかった。網膜下液は体位変換によって移動した。螢光眼底造影で後極に色素上皮剥離と螢光漏出点が見られた。漏出点に対してレーザー光凝固を行ったが,経過中に新しい螢光漏出点が出現したため光凝固を追加し,網膜剥離は消失した。左眼後極には網脈絡膜萎縮巣が見られたが漏出はなかった。

ぶどう膜炎症例への眼内レンズ挿入術

著者: 沖波聡 ,   廣石悟朗 ,   齊藤伊三雄 ,   岩城正佳 ,   荻野誠周 ,   松村美代 ,   大平明弘 ,   田辺晶代 ,   清水恵美子 ,   安吉弘毅 ,   砂川光子 ,   原田隆文 ,   天野浩之 ,   根木昭 ,   直井信久 ,   松村哲 ,   山川良治

ページ範囲:P.739 - P.744

 ぶどう膜炎の併発白内障45例57眼に対して眼内レンズ挿入術を行い,67%で0.5以上の視力が得られた。フィブリンが33%に出現し,16%でぶどう膜炎が再燃した。術後の虹彩炎は平均3.8か月後まで続いた。ぶどう膜炎の既往があった症例に眼内レンズを挿入する場合は,炎症が6か月以上治まっていることが必要であると思われる。現在活動性である場合は眼内レンズ挿入手術は禁忌と考えるほうがよい。

老人性円板状黄斑変性症に対する赤外螢光眼底造影と治療成績

著者: 鈴木水音 ,   安田秀彦 ,   戸張幾生

ページ範囲:P.745 - P.748

 赤外螢光眼底造影は,老人性円板状黄斑変性症における脈絡膜新生血管の検出において有効な検査方法であり,本法を用いることによって光凝固治療の適応範囲が広がった。しかし,老人性円板状黄斑変性症に対する光凝固治療には「新生血管の残存・再発」という問題があり,その治療成績は必ずしも良好とはいえない。そこで,自験例をもとに治療成績向上のための因子について検討した。赤外螢光眼底造影によって31眼中29眼で脈絡膜新生血管を検出できた。中心窩に新生血管の存在する2眼を除いた27眼に光凝固治療を行った。そのうち11眼に新生血管の再発を認め,追加凝固を必要とした。確実な光凝固によって脈絡膜新生血管を閉塞させるため,治療後も繰り返し定期的に螢光眼底造影と赤外螢光眼底造影を組み合せ経過観察を行うべきと思われた。

広島大学緑内障外来における病診連携の問題点

著者: 保手浜靖之 ,   三嶋弘 ,   伊野本貴子

ページ範囲:P.749 - P.752

 緑内障診療における病診連携の現状と問題点を明らかにする目的で,広島大学緑内障外来とその関連地域の患者と紹介医にアンケート調査を行った。その結果,紹介元に戻っていない患者の存在が問題点としてあげられた。患者還元を妨げている要因として,手術後の患者が多いことに加え,大学病院に最新の医療技術を期待する患者の大病院志向があることがわかった。診療所での治療が困難な緑内障の症例が多数紹介されていることから,大学病院は,高度な手術治療を行う高次医療機関としての役割を期待されていると考えられた。診療所から診療情報の提供を望む意見が多く,病診連携の上で重要な情報交換に,なお多くの問題点が存在することがわかった。

内因性真菌性眼内炎に対する硝子体手術

著者: 川添真理子 ,   沖波聡 ,   齋藤伊三雄 ,   荻野誠周 ,   水谷聡 ,   直井信久 ,   松村美代 ,   根木昭 ,   奥平晃久 ,   原田隆文 ,   山川良治 ,   長浜宗信

ページ範囲:P.753 - P.757

 硝子体混濁の除去や牽引性網膜剥離の復位を目的として硝子体手術を施行した内因性真菌性眼内炎の22例30眼について検討した。硝子体混濁が軽度,中等度であれば視力の改善が得られたが,発症から長期間経過して硝子体混濁が高度になったものや牽引性網膜剥離の症例は視力の改善が得られなかった。抗真菌薬を投与しても硝子体混濁が増強してくる時には,早期に硝子体手術を行うほうがよいと考えられた。

高度な下眼瞼外反症2例の手術経験

著者: 籠谷保明 ,   中橋康治 ,   井上正則 ,   田原真也

ページ範囲:P.759 - P.762

 2例の高度な下眼瞼外反症に形成手術を行った。1例は加齢による両側の外反症で,他の1例は交通事故による下眼瞼裂傷後に生じた外反症であった。前者の右下眼瞼外反は中等度で,2か所で楔状切除を加える瞼板短縮術により良好な改善が得られた。同例の左下眼瞼外反は高度で,右同様の楔状切除でいったんは改善したが増悪し,耳介軟骨を用いた矯正術を行うことで外反は改善された。後者は受傷後の不適切な一期的縫合による瞼球癒着があり,約3か月間瞼板が反転した状態であった。支持組織の補填目的で耳介軟骨移植を行い良好な結果が得られた。このように外反程度が高度であり,支持組織の弛緩を伴った場合,今回用いた術式は有用であると思われた。

全層角膜移植術に対するシクロスポリン全身投与の効果

著者: 山上聡 ,   大矢智博 ,   水流忠彦 ,   小笠原勝則 ,   鈴木雅信 ,   豊原弘吉 ,   木村内子 ,   宮田和典 ,   佐藤孜 ,   澤充

ページ範囲:P.763 - P.767

 拒絶反応ハイリスクと考えられる全層角膜移植術施行例24例26眼に対し,シクロスポリン全身投与の効果および副作用について検討した。投与は,術直後から1日5mg/kgを2週間,その後3mg/kgとして最低3か月以上行った。内皮型拒絶反応を起こしたものは投与中に1眼,投与中止後に1眼で,上皮型拒絶反応を起こした症例はなかった。副作用としては,一過性BUNまたはクレアチニン値上昇が6例,GOTまたはGPT値の上昇が4例,投与後とBUN上昇継続が1例あったが,重篤な副作用はなかった。シクロスポリン全身投与は,拒絶反応ハイリスク全層角膜移植例に対し,副作用に十分注意しつつ試みる価値があると考えられた。

カラー臨床報告

輪部から発生した再発性角膜上皮混濁の1例

著者: 宇野敏彦 ,   大橋裕一 ,   井上幸次 ,   姚玉峰 ,   石井康雄

ページ範囲:P.709 - P.713

 角膜上皮の幹細胞は輪部に存在し,輪部から供給された上皮細胞は角膜中央部に向かって移動するとされている(XYZ理論)。このような角膜上皮細胞の維持に関して示唆を与えてくれる症例を経験した。症例は33歳男性。初診時,右眼に特異な形態をした角膜上皮混濁を認め,その一部は2時方向の輪部に達していた。混濁上皮を擦過したが,2年後には初診時と同じ形態で再発していた。再度擦過したが,その後,輪部より混濁上皮が角膜中央部に移動するのが認められた。混濁上皮は組織学的には細胞壊死の状態であった。混濁上皮の動きは,恒常状態の角膜上皮細胞の動態をある程度反映したものと考えられた。

Group Discussion

視野

著者: 松本長太

ページ範囲:P.771 - P.772

 今年で視野グループディスカッションも13回目となった。今回は計13題の演題に対し活発な討論がなされた。座長は北原健二教授(東京慈恵医大),溝上國義助教授(神戸大),白土城照講師(東大)にお願いした。演題発表は検査法1,検査法2,緑内障,神経眼科の順に進めた。

地域予防眼科

著者: 山田宏圖 ,   赤松恒彦

ページ範囲:P.773 - P.774

 本年はフリーに演題の募集をした。また,元WHOの眼科専門官であり,現在も非常勤でWHOのテクニカルアドバイザーとして活躍しておられる,紺山和一先生に特別講演を依頼した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?