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臨床報告
急性網膜壊死での網膜循環閉塞と再開
著者: 磯野博明1 清水良1
所属機関: 1群馬大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.721 - P.727
文献購入ページに移動 典型的な発症をみた急性網膜壊死の24歳男子の1例につき,後極部網膜毛細血管の循環動態の経過を,螢光眼底造影で追跡した。右眼は,すでに本症により眼球癆となっており,今回は左眼に発症した。発症時,後極部の網膜血管床はよく保たれており,網膜の壊死は周辺部にとどまっていたが,4週後に後極部の血管床は広範囲に閉塞した。その後,閉塞域に血行の再開が起こり,発症6か月後には閉塞域は消失した。閉塞域に現れた血管は静脈由来であり,螢光造影上軽度の漏出がある粗な血管網で,閉塞域に接する部位では先端がループ状であった。この血行再開の様式は,糖尿病網膜症の閉塞域にみられる網膜内新生血管と同様であった。本例から,壊死の及ばない後極部網膜に可逆性の血管床閉塞が起こり得ることが示された。
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