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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科48巻5号

1994年05月発行

雑誌目次

特集 第47回日本臨床眼科学会講演集(3) 学会原著

東邦大学NICUにおける未熟児網膜症の現況

著者: 久保田芳美 ,   杤久保哲男 ,   河本道次 ,   清水光政 ,   多田裕

ページ範囲:P.801 - P.804

 1981年2月〜1992年3月に東邦大学NICUに入院した2,500g未満,1,849例中,眼科検査を施行した1,063例の未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)発症の動向と治療に関して検討した。
 対象1,063例中,ROP発症率は171例(16.1%),要治療例は32例(3.0%)であった。近年では出生体重1,000g以上,在胎週数29週以上のROP発症率と重症例は明らかに減少した。要治療例は減少傾向にあった。
 ROPのより低体重化と要治療例の減少は未熟児管理の質的向上に関連していると推察された。

老人性円板状黄斑変性症の中心窩下脈絡膜新生血管に対する光凝固の長期成績

著者: 白神史雄 ,   横江志保 ,   尾嶋有美 ,   奥田芳昭 ,   松尾信彦

ページ範囲:P.805 - P.809

 老人性円板状黄斑変性症の中心窩下脈絡膜新生血管に対する光凝固の長期成績を検討した。対象は,凝固後3年以上経過観察できた12例12眼である。最終視力が凝固前と比較して改善したのは12眼中5眼,不変が5眼,悪化は2眼であった。視力の大きな変化はほとんどが凝固後1年以内であった。最終的にほとんどは0.1以下で,うち7眼(58%)が0.06〜0.1の範囲にあった。新生血管の再発は4眼に生じたが,すべて再凝固で閉塞できた。活動性の遺残血管がある1眼を除いた11眼で,新生血管の退縮と瘢痕化が得られた。

透析糖尿病患者に対する硝子体手術成績

著者: 島田宏之 ,   佐藤幸裕 ,   松井瑞夫 ,   瀬戸博美

ページ範囲:P.811 - P.815

 透析患者18例26眼と,非透析患者102例136眼の増殖糖尿病網膜症に対して硝子体手術を行った。透析例,非透析例は,さらに網膜剥離群と非網膜剥離群の2群に分けて比較検討した。透析例の術後視力改善率は,非網膜剥離群で13眼中11眼(85%),網膜剥離群で13眼中4眼(31%)で,両群の間には有意差がみられた(P<0.02)。視力改善率は,透析例の非網膜剥離群(85%)と非透析例の非網膜剥離群(89%)の間に有意差はみられなかった。透析例では,網膜剥離群の6眼(46%)は最終的に失明したが,非網膜剥離群では失明例はなかった。手術後のフィブリン析出,血管新生緑内障,硝子体出血の発現率は,非透析例のほうが透析例より有意に少なかった。また,このような術後合併症は,透析例では,非網膜剥離群のほうが網膜剥離群より有意に少なかった。以上の結果から,透析例の非網膜剥離群は積極的な硝子体手術の適応となるが,透析例の網膜剥離群は予後不良のため積極的な手術適応とはならないと考えた。

von Recklinghausen病患者における虹彩結節の臨床的意義

著者: 臼杵祥江 ,   本村幸子 ,   河島智子 ,   大塚藤男

ページ範囲:P.817 - P.820

 von Recklinghausen病での虹彩結節の臨床的意義につき長期的観察結果より検討した。過去12年間の70例140眼(男性30例,女性40例),3か月〜87歳の本症と診断された患者とカフェ・オ・レ斑のある小児を対象とした。虹彩結節は56例63眼(8096)で,最年少は3か月の男児であった。10歳未満では男女ともその2/3に,11〜50歳では全例にみられた。初診時に虹彩結節がない11例中10例でその後出現した。長期間観察者では他に経過観察を要する眼症状の合併をみた。本症の臨床所見で虹彩結節はカフェ・オ・レ斑の次に高頻度にみられ,神経線維腫出現以前にみられる場合もあり,小児や疑診例の診断に有用である結果となった。

涙腺多形腺腫における抗体およびレクチン結合部の検討

著者: 石川誠 ,   藤盛圭太 ,   小関武

ページ範囲:P.821 - P.824

 涙腺に発生した良性多形腺腫の1例について,7種類の抗体と8種類のレクチンを作用させ,組織化学的性質について検討した。その結果,抗epithelial membrane antigen抗体とglycine maxは多形腺腫の上皮性成分に,抗glial fibrillary acidic protein抗体とgriffonia simplicifolia 2は間葉性成分に,抗ケラチン抗体と抗ビメンチン抗体およびgriffonia simplicifolia 1 と arachis hypogaeaは両方の成分に結合した。
 以上の結果,レクチンは抗体同様,良性多形腺腫の構成成分を染め分け得ることが明らかになった。またgriffOnia simplicifoiia 2は,腫瘍関連抗原であるglial fibrillary acidic protein様物質を認識している可能性がある。

転移性脈絡膜腫瘍7例の検討

著者: 高橋伊満子 ,   二宮久子 ,   小林康彦 ,   田中稔 ,   富永滋 ,   石和久

ページ範囲:P.825 - P.828

 転移性脈絡膜腫瘍の自験例7例を検討した。その頻度は当科における眼科領域の悪性腫瘍性疾患の23%にあたり,発症は50〜70歳台で,男性2例,女性5例であった。右眼,左眼ともに3例で両眼性のものは1例。原発巣は肺癌4例,乳癌,胃癌,子宮癌が各1例であった。眼症状を初発としたものは3例で,いずれも肺癌の症例であった。全例でそれぞれの腫瘍マーカーが異常値を示し,初診時より10日〜10か月の間に5例が死亡していた。今後より正確な検討を加えるためには,担癌患者に対してprospective studyを施行することが重要と思われた。

緑内障統合的画像解析の試み

著者: 杉山昭洋 ,   山田重喜 ,   可児一孝

ページ範囲:P.829 - P.833

 筆者らは緑内障性変化の自動検出のため,緑内障統合的画像解析システムを開発した。システムは視神経座標設定部(乳頭,黄斑,視神経線維走行から決定される一種の曲線座標系)と緑内障パラメータを提供する5つの解析部,すなわち視野解析部,nerve fiber bundle defect解析部,蒼白部分布解析部,乳頭上血管屈曲解析部,そして各パラメータを視神経座標上で比較する統合解析部から構成されている。緑内障画像に対しての実験の結果,特定視神経方向にパラメータのピークの重複が出現した。当システムが,緑内障の評価に対し有効であると思われた。

高血糖状態誘発による屈折異常の発現

著者: 古嶋正俊 ,   今泉雅資 ,   中塚和夫

ページ範囲:P.835 - P.838

 若年性糖尿病患者の糖負荷試験で,調節麻痺眼にも近視化と眼圧降下が生じる。こうした屈折調節系の変化が高血糖に基づくものか否かを明らかにする目的で,調節麻痺剤点眼処置をした若年健常人5名に経口糖負荷を行い,血液生化学と屈折調節系の変化を調べた。糖負荷により,血糖値と血漿浸透圧が上昇し,眼圧の降下,屈折度の近視化,浅前房化,水晶体の肥厚が生じた。近視化の程度は,調節麻痺による残余調節力以上の変化を示した。負荷後の血糖値正常化に伴い,眼圧は正常化し,近視化も改善した。以上の結果から,高血糖に伴う近視化は,眼圧降下によって生じたチン小帯張力の減少が誘発した水晶体肥厚に基づくと推論された。遠視化は血糖正常化に伴う近視化の改善によると考えられた。

正常者の眼窩形態

著者: 母坪雅子 ,   大庭正裕 ,   小笠原一男 ,   木井利明 ,   中川喬

ページ範囲:P.839 - P.842

 正常者の眼窩の形態を,CT画像を用いて検討した。15歳以下の小児例と16歳以上の症例間に,眼窩軸角,眼窩口横径,篩骨洞横径,両水晶体中央間距離に統計学的有意差を認め,眼窩の発達とともに,眼窩は開散位方向へ変化することが推測された。水晶体中央間距離が眼窩口横径,篩骨洞横径と高い相関を示し,眼窩軸角とも正の相関を示したことより,眼窩口横径,篩骨洞横径の発達が,水晶体中央間距離を大きくさせ,同時に眼窩を開散位方向へ変化させていくことが推測された。また,水晶体中央間距離に性差をつくる要因として,篩骨洞横径の関与が大きいことが推測された。

遊泳用プールの腰洗い槽の塩素消毒の粘膜と皮膚に及ぼす影響

著者: 高柳泰世 ,   長屋幸郎 ,   松本義也 ,   大橋勝

ページ範囲:P.843 - P.846

 遊泳用プールの遊離残留塩素濃度は0.4mg/l以上,1.0mg/l以下であることが望ましいとされている1)。さらに遊泳前に用いる腰洗い槽の塩素濃度は,50〜100mg/lとされてきた。今回,この高濃度塩素消毒による粘膜と皮膚への障害を懸念し,その影響について検討した。培養正常ヒト表皮ケラチノサイトを用いた実験では,遊離残留塩素濃度100mg/lでは約50%の生存率で,強い細胞毒性が認められた。遊離残留塩素濃度100mg/lの腰洗い槽では,陰部の粘膜とともに臀部の皮膚にビランや裂傷がある子供では,皮膚障害が起こる可能性があることをうかがわせる。殺菌のためだけに塩素濃度を高くすることには問題があると考えられた。

PCR法を用いた涙液における帯状ヘルペスウイルスの証明

著者: 小早川信一郎 ,   河本道次 ,   秋山朋代

ページ範囲:P.847 - P.849

 帯状ヘルペス性角膜炎の2症例の涙液から,polymerase chain reaction (PCR)法を用いてより簡便に,帯状ヘルペスウイルス(varicella—zoster virus:VZV)の検出を試みた。
 方法は,2症例の涙液をシルマー試験紙2枚を重ねて採取し,Sepa-GeneにてDNAを抽出した。PCR後,PCR産物を電気泳動した結果,642 bpにバンドが検出され,VZVの存在が確認された。シルマー試験紙を用いた本法は,DNAの抽出,PCR,アガロース電気泳動の過程を委託にて行うため,極めて簡便であり臨床上有意義なものになり得る。

毛様溝縫着眼内レンズ脱落のエンドスコープ使用による再手術例

著者: 妹尾正 ,   飯田享司 ,   旭英幸

ページ範囲:P.851 - P.853

 70歳の男性に水晶体超音波乳化吸引術施行の際,後嚢破損のため眼内レンズ(IOL)を挿入せず,1年後に後房レンズ毛様溝縫着術を施行した。1年経過してIOLが脱落した。エンドスコープを用いIOL再縫着と眼内の観察を行った。IOLには混濁硝子体が絡んでおり,周辺部網膜は牽引性の剥離を起こしていた。充分な硝子体切除を行うことにより剥離網膜は復位し,経過良好である。後房レンズ毛様溝縫着術施行の際には,充分な硝子体切除,およびエンドスコープなどによる確実な毛様溝固定が必要であると思われた。

外眼筋に発生する腫瘍の超音波像

著者: 柊山剰 ,   尾崎峯生 ,   直井信久 ,   澤田惇

ページ範囲:P.855 - P.859

 筆者らは外眼筋に発生したリンパ系腫瘍および眼窩偽腫瘍と思われる4症例を経験した。症例はすべて女性で病変は上直筋—上眼瞼挙筋群に存在した。これらの症例に関し超音波検査とCT,MRI検査とを比較検討した結果,超音波検査はその診断および治療に対する変化をより早く詳細に把握できることがわかったが,眼窩深部および眼瞼部(水浸法を除く)の病変の検索は不可能でありCTおよびMRIとの相補的診断が必要であると思われた。

眼内灌流液温度の白内障術後への影響

著者: 辻雅裕 ,   直井信久 ,   齋藤真美 ,   竹田欣也 ,   澤田惇

ページ範囲:P.861 - P.863

 眼内灌流液温度が白内障術後炎症に与える影響を調べるため,室温(20〜21℃),冷却(3〜4℃)の2種類の灌流液を無作為に使用し,術後炎症の指標として前房内細胞,前房内蛋白濃度をレーザーフレアセルメーターで測定し比較検討した。術前,術後に合併症のない群(室温27眼,冷却19眼),合併症を認めた群(室温7眼,冷却10眼)のいずれでも,術後1〜9日および14日,28日後の前房内細胞,前房蛋白濃度に室温,冷却による統計学的な有意差はなかった。白内障の術後炎症に関して,眼内灌流液を冷却しても,術後前房内炎症は軽減されなかった。

光学的非接触術中眼軸長測定法

著者: 平井宏明

ページ範囲:P.865 - P.868

 挿入眼内レンズ屈折力の予測精度を向上させる目的で,光学的手法による非接触術中眼軸長測定法を開発し,眼内レンズ一次挿入例57例に適用した。この方法は,白内障術中に無水晶体眼の屈折度を手持ちオートレフラクトメータとハードコンタクトレンズとを用いて測定し,その値から遠点を求め,光線追跡法で網膜位置を決め,眼軸長を求める方法である。従来の超音波法と同等の精度で測定することが確認でき,患者の固視が困難な例ではより優れた精度が得られた。術前に従来の方法による眼軸長測定が困難な例でも適用でき,挿入眼内レンズ屈折力決定の精度向上に寄与できると考えられた。

高度近視白内障手術時の術後目標近視度と患者の満足度

著者: 鳥居良彦 ,   長坂智子 ,   河合卓哉 ,   笹野久美子 ,   福本勝也 ,   安藤文隆

ページ範囲:P.869 - P.872

 過去4年間に白内障手術を施行し,後房レンズを移植した高度近視患者77名109眼につき,手術成績を検討した。またアンケート調査を実施し,その満足度についても検討した。術後屈折度は−5D前後に設定して手術を施行した。術後網膜剥離の発症は後嚢切開後に1例であった。アンケート結果では,87%で遠くは見やすくなったと答え,近見時は,62%で眼鏡を使用しなくてもよく,87%で手術をしてよかったと答え,満足度は高かった。術後合併症の頻度は低く,高度近視眼にも,術後屈折度を−5D前後に設定された後房レンズ移植は有用であると考えられる。

無硝子体眼白内障に対する眼内レンズ挿入手術

著者: 内田英哉 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.873 - P.876

 硝子体手術後の無硝子体眼白内障手術99例108眼に眼内レンズを挿入した。糖尿病網膜症53眼,糖尿病網膜症以外55眼。硝子体手術から白内障手術までの期間は21±14か月,術後経過観察期間は17±13か月。水晶体嚢外摘出術16眼水晶体超音波乳化吸引術92眼であった。術中併発症は,前房出血6眼,後嚢破損9眼,チン小帯離断3眼,核硝子体腔落下2眼,前房形成不良2眼術後併発症は,フィブリン反応24眼,虹彩後癒着15眼,一過性眼圧上昇8眼,網膜剥離1眼,後発白内障20眼,緑内障8眼,瞳孔偏位2眼,硝子体再手術を要した硝子体出血2眼を認めた。無硝子体眼白内障手術は,超音波乳化吸引術が術後併発症も少なく適していると考えられた。

MRIにおける外眼筋信号強度の不均一性

著者: 村田正敏 ,   高橋茂樹 ,   渡邊奈美

ページ範囲:P.877 - P.879

 正常の外眼筋は,MRI上,信号強度が中心部と辺縁部では異なって描出されることがあり,ドーナツ様の二重構造が認められる。筆者らは外眼筋の信号強度の不均一性に着目し,正常および甲状腺眼症の眼筋肥厚例にみられる二重構造について検討した。対象は正常例10例,甲状腺眼症8例である。撮像断面は冠状断とし,左右の4直筋について検討を行った。正常例では二重構造が73%にみられ,甲状腺眼症の眼筋肥厚例では15%で均一な信号強度を示した。この二重構造の不明瞭化は,外眼筋の炎症,浮腫が関与しているものと思われ,今後さらに症例を重ね,検討が必要と思われた。

学術展示

花粉症のアレルゲンの検討

著者: 秦野寛 ,   望月昭彦

ページ範囲:P.882 - P.883

 緒言 人のアレルギー性結膜炎を生じる花粉が何かについては,スギを除いてその実態はあまり知られていない。そこで,筆者らは結膜炎を起こす花粉アレルゲンについて,従来からアレルギーを起こすことが知られている4つの樹木ないし雑草の花粉アレルゲンについて,その重要性を比較検討した。

結膜組織における好酸球反応の組織学的検討

著者: 庄司純 ,   稲田紀子 ,   高浦典子 ,   澤充

ページ範囲:P.884 - P.885

 緒言 アレルギー性結膜炎に代表されるⅠ型アレルギー反応では,肥満細胞の脱顆粒による即時相(early phase reaction:EPR)と,好酸球を主体とする炎症反応による遅発相(late phase reaction:LPR)に分かれることが明らかになってきた1)。このうち,好酸球は,組織障害や組織炎症の慢性化に関与していると考えられている。今回筆者らは,アレルギーモデルをモルモットで作成し,組織中に起こっているアレルギー性炎症の病態が臨床応用が可能な涙液細胞診にどの程度反映されるかを比較検討したので報告する。

急性涙嚢炎に対する経涙小管ドレナージ法

著者: 岩見千丈 ,   妹尾佳平

ページ範囲:P.886 - P.887

 緒言 従来,急性涙嚢炎に対する治療の基本は全身化学療法であった1〜2)。涙嚢からのドレナージが必要となったときは,経皮的切開により排膿が行われてきた1〜3)。筆者らは,本症における涙小管の閉塞は機能的なものと考え,シリコーンチューブによる涙小管を経由した排膿法を考案し,その治療効果を検討した。

耳介軟骨を用いた眼瞼形成術

著者: 戸塚清一 ,   中沢孝則 ,   佐野秀一 ,   箕田健生 ,   野原雅彦

ページ範囲:P.888 - P.889

 緒言 眼瞼腫瘍の外科的切除術は,眼瞼形成術と表裏一体にある。眼瞼形成時の代用瞼板には,他の瞼板,軟骨,保存強膜,凍結乾燥硬膜などが用いられている。軟骨としては鼻中隔軟骨に加え,近年耳介軟骨の利用が報告されてきている1)
 耳介軟骨は鼻中隔軟骨に比し採取しやすい場所にあり,われわれ眼科医にとり用いやすい軟骨と考える。耳介軟骨を用いた眼瞼形成につき報告する。

強膜炎により発見されたWegener肉芽腫症の1例

著者: 門野裕子 ,   助川祥一 ,   大川晴美 ,   手塚聡一 ,   宮永嘉隆

ページ範囲:P.890 - P.891

 緒言 Wegener肉芽腫症は,気道の壊死性肉芽腫性炎症,全身の血管炎,糸球体腎炎を特徴とする臨床的にも病理学的にも特異な病像を呈する疾患である。眼症状も高率に合併することが知られているが1〜4),今回筆者らは,強膜炎により発見された1症例を経験したので,報告する。

翼状片手術の治療成績と術後合併症

著者: 杉村光子 ,   佐々木淳子 ,   八代成子 ,   木全奈都子 ,   吉野圭子

ページ範囲:P.892 - P.894

 緒言 翼状片には,再発を防ぐため様々な手術方法と後療法が行われている。筆者らは,1989年11月から翼状片に対し強膜露出法を採用してきたが,再発症例を複数経験したため,後療法として1990年7月より術後0.04%マイトマイシンC (以下MMC)1日3回3日間の点眼を試みた。その後,術式も江口式結膜弁移植法(以下江口法)1),結膜遊離弁移植法(以下遊離弁移植法)と変更し経過観察してきた。今回,翼状片の再発および術後合併症について検討したので報告する。

治療的角膜移植の統計的観察

著者: 上杉祐子 ,   中安清夫 ,   金井淳

ページ範囲:P.896 - P.898

 緒言 角膜移植には視力回復を目的とする光学的角膜移植の他,角膜の補強や病巣の除去を目的とする治療的角膜移植があるが,治療的角膜移植についての報告は比較的少ない1〜3)。筆者らは角膜穿孔のおそれのあるもの,または穿孔したもの,あるいは活動期の角膜潰瘍に対する角膜移植を治療的角膜移植とし,当科にて角膜移植を行った症例につき検討を加えた。

超音波水晶体乳化吸引術における角膜内皮保護

著者: 永原幸 ,   清水公也

ページ範囲:P.900 - P.901

 緒言 擦過による角膜内皮障害が問題となる水晶体嚢外摘出術で,粘弾性物質が角膜内皮障害を緩和することは周知の点である。筆者らは灌流と吸引が加わる超音波操作中は,前房内に残留する粘弾性物質が角膜内皮の保護に有用であることを報告した1)。今回,分子量の異なる2種類の粘弾性物質に関し,さらに症例数を増やし,臨床における術後成績を比較検討した。

輻輳不全に対する輻輳練習の効果

著者: 福島正隆 ,   大平明彦 ,   籾木伊津穂

ページ範囲:P.902 - P.904

 緒言 輻輳不全に対する治療として輻輳練習が効果的であることは,定性的な検討によって知られている1)。しかし輻輳練習が実際の輻輳運動のダイナミズムにどのような影響を与えるかは知られていない。今回筆者らは,ステップ刺激に対する輻輳運動を輻輳練習前後に記録して,この点を定量的に分析した。

器質的眼疾患をもつ小児の屈折異常の傾向および遮蔽訓練の効果

著者: 松本直樹 ,   不二門尚 ,   切通彰 ,   大路正人 ,   下村嘉一 ,   山本良 ,   田野保雄

ページ範囲:P.906 - P.907

 緒言 小児期に器質的眼疾患がある場合,屈折異常を伴った視力障害を認めることがある1)。また近年,動物モデルにおいて,成長期の網膜像のボケが,近視化を促すとの報告がある2,3)。このような観点から,小児期に器質的眼疾患を有し,視力低下が片眼性に認められた症例について,屈折異常の傾向を調べた。また視力低下眼に対して屈折矯正および遮蔽訓練を行った症例について,その効果について検討を加えた。

メラノサイトーマに緑内障を合併した1例

著者: 村田豊隆 ,   佐々本研二 ,   井関潤子

ページ範囲:P.908 - P.909

 緒言 メラノサイトーマは眼科領域では稀な疾患であり,良性の色素性腫瘍である。今回筆者らは,メラノサイトーマに緑内障とその原因と考えられる前眼部の形態異常を合併した症例を経験したので報告する。

初級者以上,上級者未満の超音波白内障手術の現況とその検討

著者: 兜坂法文 ,   西垣昌人 ,   清水一弘 ,   濱田潤 ,   中島正之 ,   岩崎義弘 ,   小泉閑 ,   酒井亮一 ,   小嶌美恵子 ,   佐藤文平

ページ範囲:P.910 - P.911

 緒言 超音波白内障手術(phacoemulsification aspiration:PEA)の熟練者による卓越した手技はこれまで数多く報告されている1,2)。また初心者への教育法,その成績についての報告も散見される3〜5)。しかし,白内障術者の大多数を占めると思われる両者の中間層術者の手術現況についての報告はほとんどなく,この成績を調査し検討することは意義あることと考える。

網膜中心静脈分枝閉塞症の黄斑浮腫の遷延に対する光凝固

著者: 大越貴志子 ,   草野良明 ,   四蔵裕実 ,   山口達夫

ページ範囲:P.912 - P.913

 緒言 網膜中心静脈分枝閉塞症(Branch retinal vein occlusion:BVO)において黄斑浮腫が遷延した場合,レーザーによる黄斑部のgrid照射が有効であることは米国のBranch Vein Occlusion Studyなど1,2)により既に報告されている。しかし本邦では比較的早期に閉塞部位の播種状光凝固を行うにとどまり,陳旧例における黄斑部照射は積極的には行われていない。今回,1年3か月以上経過した網膜中心静脈分枝閉塞症において,黄斑の浮腫が遷延し視力改善が得られない症例に対し黄斑部にgrid照射を行い,比較的良好な結果を得たので報告する。

亜急性壊死性リンパ節炎にぶどう膜炎を合併した1例

著者: 太田眞理子 ,   池田誠宏 ,   佐藤圭子 ,   徳山孝展 ,   天津純子 ,   阪上賀伴

ページ範囲:P.914 - P.915

 緒言 亜急性壊死性リンパ節炎は病理組織学的に特異な壊死巣を伴うリンパ節炎として,疾患概念が1972年に菊地1),藤本ら2)により初めて提唱された疾患である。本疾患は発熱と表在リンパ節腫大を主徴とし,白血球減少を伴い,患者の多くは20歳台,30歳台の女性である。発症機序についてはウイルス説や免疫異常説などが唱えられているが明らかではない。予後良好であるが治療法が確立されていないために,臨床症状が遷延する症例も稀ではない。今回本疾患にぶどう膜炎を合併した症例を経験したので報告する。

切迫および早期黄斑円孔に対する硝子体手術

著者: 本倉雅信 ,   恵美和幸 ,   五味文 ,   今居寅男

ページ範囲:P.916 - P.917

 緒言 Gass1)が特発性黄斑円孔の切迫段階での予防的硝子体手術の可能性を提唱して以来,その有効性は確認されつつある。当院での切迫および早期黄斑円孔に対する予防的硝子体手術成績を検討したので報告する。

著明な滲出性眼底病変のみられたサルコイドーシス4例

著者: 西田佳央 ,   原田敬志 ,   永田篤 ,   新美勝彦 ,   馬嶋慶直

ページ範囲:P.918 - P.919

 緒言 サルコイドーシスの眼底所見のうち,輪状網膜症を想起させる滲出斑が出現することはきわめて珍しく,筆者らの知る限り,2篇の報告があるにすぎない1,2)。1987〜1991年にかけて,このような特徴を備える4症例を経験し,2〜6年経過を観察した。その結果を述べ,考察を加える。

抗マラリア薬の誤った予防内服により発症したStevens-Johnson症候群の1例

著者: 清水直子 ,   戸田和重 ,   郡司久人 ,   北原健二 ,   大友弘士 ,   浜田篤郎

ページ範囲:P.920 - P.922

 緒言 Stevens-Johnson症候群(以下S-J症候群)は多形滲出性紅斑に重篤な角結膜炎を伴い,乾性角結膜炎や瞼球癒着などの後遺症を残すことがある。今回筆者らは誤ったマラリアの予防内服により発症したS—J症候群の1例を経験し,良好な治療結果を得たので報告する。

未熟児網膜症に対する光凝固治療後の中心視野

著者: 山岸直矢 ,   菅沢英彦 ,   永田誠 ,   根木昭

ページ範囲:P.924 - P.926

 緒言 未熟児網膜症重症活動期病変に対する光凝固療法の目標は,重症瘢痕を避けるだけではなく,良好な視機能の保持に置かなければならない。筆者ら1〜4)は,未熟児網膜症に対して行ったキセノン光凝固の後,経過観察した症例の視機能について一連の報告を行った。未熟児網膜症治療後の症例の静的視野については,まとまった報告はいまだなされていない。今回は静的視野によって中心視野を計測し検討を加えた。

螢光眼底写真で初めて確認された網膜中心静脈分枝閉塞症の前駆病変

著者: 小堀和子 ,   吉本弘志

ページ範囲:P.927 - P.929

 緒言 糖尿病網膜症もしくは陳旧性の網膜中心静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion:BRVO)の経過観察中,新たにBRVOを発症した患者につき螢光眼底写真(fluorescein angiography:FAG)を再検討したところ,3例で発症前に閉塞静脈に一致した螢光漏出が確認され,本症の前駆病変と考えられたので報告する。

正常者の網脈絡膜循環遅延

著者: 上村健太郎 ,   渡辺憲子

ページ範囲:P.930 - P.932

 緒言 筆者らが経験した症例から,螢光眼底撮影(fluorescein angiography:FAG)で網脈絡膜循環遅延があらわれやすい撮影方法があると考えられた。その原理を探るために,正常者に撮影条件を少しずつ変えながら日時をずらして7回FAGを撮影したところ,正常者でも網脈絡膜循環遅延がおきることが確認されたので報告する。

特発性脈絡膜剥離の1例

著者: 中松哲朗 ,   福田成彦 ,   永岡信一郎 ,   沖波聡

ページ範囲:P.934 - P.935

 緒言 脈絡膜剥離は,内眼手術や眼外傷後,眼内の炎症疾患,あるいは強膜肥厚を伴う疾患などにしばしば合併するが,原因不明のいわゆる特発性脈絡膜剥離は比較的稀な疾患であり,uveal effusionとの異同については現在定説をみない。
 今回筆者らは,中年女性の片眼に発症した特発性脈絡膜剥離を経験したので報告し,uveal effusionとの相違について若干の考察を加える。

急性網膜色素上皮炎の3症例

著者: 山崎俊秀 ,   初田高明 ,   宮谷博史

ページ範囲:P.936 - P.937

 緒言 Krillら1)が1972年にacute retinal pigment epithelitis (急性網膜色素上皮炎)を報告して以来,国内でも急性網膜色素上皮炎の報告が散見される3〜5)。今回,経過の異なる3例の急性網膜色素上皮炎と思われる症例を経験したので報告する。

網膜色素上皮症の疫学的検討

著者: 森博之 ,   米本淳一 ,   高野雅彦 ,   大野重昭

ページ範囲:P.938 - P.939

 緒言 網膜色素上皮症は網膜色素上皮に急性あるいは亜急性に,炎症または炎症様病変を生じ,感覚網膜に障害を及ぼす一連の疾患群である1)。本症には,これまで数種類の疾患が知られている。しかし,その発症機序は不明のものが多く,疫学の報告も少ない。今回本症の疫学的特徴について検討したので報告する。

網膜上膜切除術の術後成績

著者: 山中佐智 ,   戸倉敬雄 ,   南後健一 ,   西村哲哉 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.940 - P.941

 緒言 網膜上膜の治療には硝子体手術による膜の切除が行われる1)。手術成績は良好であるが,術後変視症の残存や一旦改善した視力の再低下を訴える症例もある1,2)。手術の術後成績と共に患者の満足感はどのようであるかを調査し,両者を比較検討した。

川崎医科大学附属病院における出生体重1,000g未満の未熟児網膜症の眼科管理

著者: 波柴礼恵 ,   市橋宏亮 ,   田淵昭雄 ,   伊藤有里

ページ範囲:P.942 - P.944

 緒言 近年,未熟児医療の進歩に伴い出生体重1,000g未満の超未熟児の救命率が増加している。このため超未熟児の未熟児網膜症(以下網膜症)に接する機会も多くなってきている。しかし,全身状態が不安定な超未熟児の眼の診察や治療を行うことは極めて難しい。今回,筆者らはその眼科的管理の最も困難である超未熟児の網膜症の発生状況およびその治療法について検討したので報告する。

人工肺サーファクタント補充療法と未熟児網膜症

著者: 高橋亜紀 ,   馬嶋昭生 ,   鈴木千尋

ページ範囲:P.946 - P.947

 緒言 人工肺サーファクタント補充療法は新生児呼吸障害,なかでも呼吸窮迫症候群に劇的な効果を示し,現在広く行われている。しかし未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)に対する人工肺サーファクタント補充療法の影響は,まだ不明な点が多い。今回,同療法の導入前と確立後の両期間での低出生体重児のROP発症率と進行度の比較,およびサーファクタント投与によるROP発症への影響の有無について検討したので報告する。

網膜静脈閉塞症に対するプロウロキナーゼ(GE−0943)による線溶療法—その1.投与量設定の検討

著者: 小川憲治 ,   張野正誉 ,   石本一郎 ,   田野保雄

ページ範囲:P.948 - P.949

 緒言 プロウロキナーゼ(Pro-Urokinase,以下Pro-UK)は組織プラスミノーゲンアクチベータ(t—PA)と同様にフィブリン親和性を有し,流血中では線溶作用をほとんど発揮せず,血栓形成部位でおもにその効果を発揮する新しい血栓溶解剤である。そして,同剤は急性心筋梗塞の血栓溶解に使用され,ウロキナーゼ以上の臨床効果が認められている1)。しかし,網膜静脈閉塞症に対する臨床応用の報告はまだない。今回,Pro-UKを網膜静脈閉塞症症例に投与し,投与用量の検討を試みたのでここに報告する。

中心静脈高カロリー輸液装着者の定期的眼底検査

著者: 日高章雄 ,   二宮久子 ,   小林康彦 ,   田中稔

ページ範囲:P.950 - P.951

 緒言 近年,医療の進歩に伴い,血液疾患やその他の免疫機能の低下した患者や術前術後の患者の栄養管理に中心静脈高カロリー輸液(intravenous hyper—alimentation:IVH)が多用されるようになっている。この際,留置されるカテーテルの真菌感染に続発して真菌血症を生じ,さらに深在性真菌感染症が発症する。内因性真菌性眼内炎はその代表的なもので,放置すれば失明に至る場合も少なくない疾患である。
 本症は臨床的には,特有な網膜の白色滲出斑と雪玉様硝子体混濁から診断は比較的容易である。また細菌性のものに比べ進行速度が遅いため,早期に発見され適切な治療が行われれば,全身状態にもよるが,比較的よい視力を保つことも可能である。現在まで筆者らは62眼の本症を経験し,早期発見の重要性を強調してきた1)。したがって真菌性眼内炎による視力障害を最小限にするために,他科との協力のもとに本症の早期診断,早期治療を行うことは大変重要であると思われる。今回筆者らは,IVH装着患者の真菌性眼内炎の発症について,その頻度および危険因子について検討し早期診断,早期治療について報告する。

近畿大学式中心フリッカー値測定器の正常値

著者: 岩垣厚志 ,   尾辻理 ,   奥山幸子 ,   松本長太 ,   中尾雄三 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.952 - P.953

 緒言 中心フリッカー値(フリッカー融合頻度criti—cal fusion frequency,以下中心CFF)の測定は,視神経疾患の診断,経過観察に極めて有用である1)。今回筆者らは,阪大式中心フリッカー値測定器のセクターディスクのサーボ機能に小改良を加え,刺激光のブリッカーの頻度を直接測定する回路を付けた近大式中心フリッカー値測定器2)を使用し,正常人における中心CFFの再検討を行った。

22年後に再燃した眼球鉄症の1例

著者: 寺田裕美 ,   三浦昌生 ,   北村拓也 ,   阿佐美知栄 ,   川崎茂 ,   吉田晴子

ページ範囲:P.954 - P.955

 緒言 眼球鉄症は鉄イオンが眼組織に沈着するために細胞の代謝が障害される,視力予後の不良な病態である。今回,筆者らは22年後に再燃した眼内鉄片異物の1症例について経験したので報告する。

CT画像構成法を用いた眼内異物の診断

著者: 河合憲司 ,   塩谷滝雄

ページ範囲:P.956 - P.957

 緒言 眼内異物症例は緊急手術が多く,術前検査不充分のまま手術を行うことがあり,また硝子体混濁や外傷性白内障を伴う透見不能例や,X線上異物が確定できない症例に対しCT検査を用いることは,異物の局在を確定するばかりでなく,飛入創と,異物の位置関係より飛入方向を決定することが容易である。今回筆者らは,この検査方法の有用性を検討し,ここに報告する。

先天性無眼球症のMR像

著者: 本多あかね ,   嵩義則 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.960 - P.961

 緒言 臨床的に,一見して眼球が認められない場合を無眼球症と呼んでいるが,実際には真の無眼球症であることはごく稀で,臨床的無眼球症であることがほとんどである1)。今回,筆者らは,視診上,両側の眼球が認められず,眼窩MRIでも眼球構造が認められなかった症例を経験した。先天性無眼球症の診断には,眼窩内の軟部組織,外眼筋,視神経などの詳細な検索が必要であり,この症例でも従来のCTなどの画像診断に比べてMRIが非常に有用であったので報告する。

Incontinentia pigmenti achromiansの1例

著者: 李昌厚 ,   池田誠宏 ,   岩崎哲也 ,   佐藤圭子 ,   深井和吉

ページ範囲:P.962 - P.963

 緒言 Incontinentia pigmenti achromians (IPA)は1951年,伊藤1)が初めて報告して以来,現在までに約100例の報告を見るのみである。本症は特異な皮膚症状を呈し,その合併症として中枢神経系,眼,筋骨格系の異常などのさまざまな先天異常が報告されている2)。今回筆者らは,特異な眼底所見を呈したIPAの1例を経験したので報告する。

Marshall症候群に後極部網脈絡膜萎縮を伴った1例

著者: 佐々木秀次 ,   草刈匡世 ,   世古裕子 ,   土信田久美子 ,   玉木光子 ,   吉野幸夫

ページ範囲:P.964 - P.965

 緒言 Marshall症候群は常染色体優性遺伝による外胚葉系の発生異常といわれ,全身所見としては,低身長・鞍鼻・難聴が知られている。また眼所見としては強度近視・白内障が高頻度に認められるが,本邦においては報告例はない。今回筆者らは,本症候群に,後極部網脈絡膜萎縮を伴った1例を経験したので報告する。

続発性網膜剥離を合併した妊娠中毒症の1例

著者: 岩崎哲也 ,   池田誠宏 ,   松山久美子 ,   佐藤圭子 ,   山本久美夫

ページ範囲:P.966 - P.967

 緒言 妊娠中毒症の眼合併症として,網膜循環障害および脈絡膜循環障害が知られている。今回,高度の脈絡膜循環障害を呈し,胞状の網膜剥離を続発した1例を経験したので報告する。

瞳孔不同で発見された下垂体微小腺腫の1例

著者: 真砂めぐみ ,   松橋正和 ,   山下晃 ,   河本道次

ページ範囲:P.968 - P.969

 緒言 下垂体腺腫にはさまざまな大きさがあり,直径10mm以下のものは微小腺腫(microadenoma)と呼ばれる。ホルモン分泌過剰による内分泌代謝異常のない,非機能性下垂体微小腺腫が生前に発見されることは稀である1)
 今回,瞳孔不同を主訴に来院し,非機能性下垂体微小腺腫を発見された1症例を経験したので,画像診断を含めて報告する。

内視鏡下鼻涙管チューブ留置術

著者: 岡野昌子 ,   岡田正喜 ,   竺原由紀 ,   辻岡雅典 ,   坪井俊児 ,   真野富也

ページ範囲:P.970 - P.971

 緒言 解剖学的な涙道の閉塞に起因する導涙性の流涙(epiphora)は日常診療において多くみられる。導涙路は解剖学的,機能的に眼科と耳鼻科の境界領域である上に視認困離であり繁雑な手技が必要とされていた1)。涙道閉塞症の根本的治療の一つとして鼻涙管にシリコーンチューブを留置する手術が挙げられる2,3)。今回筆者らは内視鏡下にて鼻涙管チューブ留置術を施行し,若干の知見を得たので報告する。

新しい超音波白内障手術装置

著者: 高橋春男 ,   森脇康栄 ,   稲富誠 ,   小出良平

ページ範囲:P.972 - P.972

 緒言 最近効率が良い超音波水晶体乳化吸引法としてmultiple modulation phace (MMP)が注目されている1)。今回筆者らは,白内障手術装置CV 12000(ニデック社)のフットスイッチおよび灌流吸引系に改良を加え,術者が超音波時の超音波のパターン,吸引圧,液量,ボトルの高さ,灌流吸引時の吸引圧,液量,ボトルの高さをあらかじめ2通り設定し,素早く切り替えをできるようにした。
 このシステムは,ペリスタポンプを用い吸引圧と液量をリニアコントロールすることで急激な吸引圧の上昇による前房虚脱を防ぎ,また吸引圧は5〜650mmHgまで可変で,超音波発振はピエゾエレクトリック方式,自然空冷,発振周波数は60kHz,ベンチュリーチップを使用することにより気泡の発生が著しく押さえられている。

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・11

視細胞内節のエリプソイド

著者: 杉田新 ,   東龍平

ページ範囲:P.787 - P.787

視細胞杆体内節の割断面の走査電顕写真。内節のエリプソイドと呼ばれる領域は,細長いミトコンドリアでぎっしりと占められており,この写真ではミトコンドリアの外表面(*印)と内部構造が観察される。ミトコンドリアの内部には,管状ないし板状のクリスタが明瞭に認められる。矢印は内節の細胞膜を示す。オスミウム—DMSO—オスミウム法。家兎眼。×37,000

眼科手術のテクニック—私はこうしている・65

巨大裂孔をどうするか(2)

著者: 樋田哲夫

ページ範囲:P.788 - P.790

 巨大裂孔は円周方向90°以上の大きさの裂孔と定義されているが,180°以上とそれ以下では対処の仕方に違いがあるといってよい。また原因や併存する他の異常によっても,対応は異なってくる。筆者は巨大裂孔例のおおかたは,硝子体手術で内側からアプローチしている。

今月の話題

網膜下血腫の手術療法

著者: 瓶井資弘 ,   檀上真次

ページ範囲:P.791 - P.795

 従来効果的な治療法のなかった網膜下血腫に対し,近年外科的治療が試みられ始めた。しかし,報告数は少なく,視力成績も満足できるものではない。その原因のひとつとして手術操作自体の影響が考えられる。そこで,手術侵襲を最小限に抑えることを目的とした術式を施行し,比較的良好とよべる視力を得ているので報告する。

眼の組織・病理アトラス・91

ラッセル小体とダッチャー小体

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.796 - P.797

 プラスマ細胞plasma cellは,Bリンパ球に由来し,免疫グロブリンを産生する細胞で,慢性炎症における浸潤細胞として,あるいは腫瘍における髄外増殖として組織に出現する。核質が車軸状の様子を示す偏在性の核を有し,胞体内にはよく発達したゴルジ装置と多数の粗面小胞体をもっている。粗面小胞体が免疫グロブリンの産生部位で,産生された免疫グロブリンが拡張した粗面小胞体の中に貯留する。
 プラスマ細胞内に貯留する免疫グロブリンの量が異常に増加した状態では,細胞が特殊な形態を示す。粗面小胞体の内部で免疫グロブリンが結晶様となり,エオジン好性でPAS陽性の封入体として観察されるものをラッセル小体Russell bodiesと呼ぶ(図1)。同様に,PAS陽性の細胞内貯留物が核の中に認められるものをPAS陽性核内封入体PAS positive intranuclear inclusionsまたはダッチャー小体Dutcher bodiesと呼ぶ(図2,3)。ダッチャー小体はプラスマ細胞様細胞plasmacytoid cellにみられることが多い。プラスマ細胞様細胞はリンパ球がプラスマ細胞へ分化していく過程の移行型としての形態学的特徴を示し,リンパ球プラスマ細胞様細胞lymphoplas—macytoid cellともいう。ダッチャー小体を有するプラスマ細胞様細胞はマクログロブリン血症やリンパ腫でみられる。リンパ球プラスマ細胞様細胞を有するリンパ腫をリンパ球プラスマ細胞様細胞免疫細胞腫lymphoplasmacytoid immuno-cytomaという。ダッチャー小体は核周囲腔に貯留した免疫グロブリンが核を圧迫して,切片状ではあたかも核内封入体として観察されているものである。細胞の核周囲嚢が開いてそこに免疫グロブリンが貯留している像からそのことが推測される(図4)。非ポジキンリンパ腫の国際分類では,ダッチャー小体を有するリンパ球プラスマ細胞様細胞免疫細胞腫は軽度悪性群に相当する。

眼科図譜・333

硝子体手術が奏効した特発性黄斑円孔の1例

著者: 堀江英司 ,   矢田浩二

ページ範囲:P.984 - P.986

緒言
 特発性黄斑円孔の発症機序が近年,Gass1)により明らかにされてから以降切迫円孔に対する予防的手術はもとより2〜4),さらには円孔形成後でさえ,硝子体手術による視機能改善が可能とする報告が散見されるようになってきている5〜8)。今回,筆者らは初診時の早期円孔が手術日当日までのごく短期間に,真性円孔へと進行したと思われる症例に対し硝子体手術を施行したところ,注目すべき術中所見および術後経過を得たので報告する。

マイアミ留学記・その1

マイアミに到着して

著者: 谷原秀信

ページ範囲:P.974 - P.975

 今月から,文部省の在外研究員としてマイアミのBascom Palmer Eye lnstitute (Univ of Miami)に留学中の谷原秀信氏(京都大学)のコラム「マイアミ留学記」を連載します。
 日本との眼科医療・研究システムの違い,話題の紹介など,海の向こうからの最新情報にご期待ください。

眼科の控室

老視になったら

著者:

ページ範囲:P.980 - P.980

 40歳以下の若いドクターには実感できないことですが,現在は正視である眼科医が老視になると,大きな転換期を迎えるものです。
 日常生活でも,ビデオやステレオの小さな字が読めなくなるとか,ひとさまからいただいた名刺の電話番号の数字が読めないなどの不都合が出てきますが,仕事上でまず困るのが,倒像鏡で眼底が見えなくなることです。

臨床報告

若年者にみられ多発性脳梗塞を伴った低眼圧緑内障の1例

著者: 児玉真知 ,   内海隆 ,   奥英弘 ,   菅澤淳

ページ範囲:P.992 - P.994

 無症候性脳梗塞を有する女性若年者例に発症したきわめてまれな低眼圧緑内障の1例を,循環障害説をあげながら報告した。症例は23歳女性。両眼の視力低下,視野欠損を主訴とし,緑内障性乳頭陥凹と視野異常の既往とともに来院。眼圧が終日16mmHg以下,開放隅角,視神経乳頭蒼白,水平上半盲(右>左)を呈しており,低眼圧緑内障と診断した。T2強調画像から多発性脳梗塞が見いだされたが,頭蓋内腫瘍は否定され,虚血性視神経症は螢光眼底所見などから否定された。オリゴクロナールバンド正常,Uhthoff test陰性,安定した症状などから多発性硬化症も否定された。発症要因からみると本例は若年例,女性,高血圧ならびに糖尿病がないことなどからきわめてまれな低眼圧緑内障の症例であると思われた。

Peters奇形における角膜混濁の臨床経過

著者: 佐野雅洋 ,   尾関年則 ,   白井正一郎 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.995 - P.999

 Peters奇形24例34眼の臨床経過を,角膜混濁を中心に検討した。男性15例,女性9例で,両眼性は10例にみられた。角膜水晶体癒着は9眼に認められた。合併眼異常は,小眼球,小角膜,緑内障,強角膜症,虹彩索状物,虹彩欠損などがあった。角膜混濁は34眼中14眼で軽減したが,いずれも角膜水晶体癒着のない眼であった。角膜混濁は4眼で増強したが,4眼とも緑内障を合併しており,3眼には角膜水晶体癒着がみられた。角膜水晶体癒着のある眼で角膜混濁の軽減したものはなく,緑内障のないもので角膜混濁の増強したものはなかった。Peters奇形の角膜混濁の予後を推定する上で,角膜水晶体癒着と緑内障の合併の有無は重要な因子であると結論する。

網膜色素上皮のreticular degenerationを伴う真性小眼球の1例

著者: 新城光宏 ,   中津彩子 ,   和田優子 ,   近藤武久

ページ範囲:P.1001 - P.1004

 40歳の真性小眼球の男性の両眼に,網膜色素上皮のreticular degenerationをみた。本症例では,網膜毛細血管の拡張を伴う周辺部網膜浮腫が広範にみられ,uveal effusionを伴う真性小眼球の症例と同様,強膜肥厚に由来する網膜下液排除に関わる機能のバランスの崩れが潜在している可能性が考えられた。
 網膜色索上皮のreticular degenerationの成因は不明であるが,真性小眼球では強膜自体の形態学的,組織化学的異常によって水や蛋白質などの高分子物質に対する透過性が低下していると考えられ,uveal effusionにleopard spotが生じる場合と同様の色素上皮の不規則な菲薄化と集籏が生じreticular pig—mentationを生じたのではないかと考えた。

強直性脊椎炎にみられた後部ぶどう膜炎

著者: 八塚秀人 ,   中塚和夫 ,   松尾健治 ,   松本惣一 セルソ ,   古嶋尚 ,   阿部文英

ページ範囲:P.1005 - P.1008

 強直性脊椎炎の確実例にみられた後部ぶどう膜炎を経験した。症例は,40歳の男性でHLA-B27陽性を呈し,右眼の霧視・羞明を主訴に当科を受診した。視力は,右0.5,左1.2で,右眼硝子体中に微塵状混濁を認めた。検眼鏡所見では,右眼に黄斑浮腫と網膜静脈の拡張を認めたが,左眼に異常はなかった。螢光眼底造影では,右眼に網膜血管炎の所見とともに,多発性の点状過螢光が数多く認められた。硝子体螢光濃度測定にて血液網膜棚の機能障害が観察され,網膜色素上皮の障害が考えられた。これらの所見はステロイドの大量療法により改善し,右眼視力も1.2へ回復した。

特発性頸動脈海綿静脈洞瘻に脈絡膜剥離を合併した1症例

著者: 白瀧美詠子 ,   島川眞知子

ページ範囲:P.1009 - P.1013

 原因不明の片眼の充血・眼球突出・網膜静脈閉塞様出血・脈絡膜剥離が,きわめて徐々に出現した症例を経験した.検査の結果,特発性頸動脈・海綿静脈洞瘻(以下CCF)が発見され,眼症状がこれによるものと判明した.これらの症状はシャント血管の塞栓術により急速に改善した.
 特発性CCFは外傷性CCFに比べて稀で,シャント血液量が少ないため,症状が軽く,経過も慢性で診断がつけにくく,見逃されやすい.また,脈絡膜剥離は特発性CCFにはまれな合併症であり,本邦ではあまり知られていない.脈絡膜剥離の原因のひとつにCCFを念頭におくべきことを示唆する貴重な症例と考える.

家族性滲出性硝子体網膜症での硝子体出血

著者: 南部真一 ,   宮久保寛

ページ範囲:P.1015 - P.1022

 家族性滲出性硝子体網膜症(以下FEVR)に突発した,大量の硝子体出血例8眼を経験した。8眼中5眼は自然吸収されたが,3眼は硝子体手術が必要であった。その結果裂孔または網膜剥離を併発していたものが,8眼中4眼(50%)と高頻度であった。また自然吸収までの期間は,6〜10日と短期間であった。硝子体出血の原因を検索すると,自然吸収例5眼中2眼(40%)は,50歳以上の高年者で,網膜剥離を伴った裂孔形成によるものであった。他の10台の若年者3眼では,網膜分離症および新生血管が原因であった。これらの病変は,網膜無血管野との境界部に発症していた。
 硝子体手術例は,全3眼中2眼は兄妹で,患眼の眼底は,硝子体手術によって明らかになった所見では,兄は全網膜剥離でPVRD4,妹は全網膜剥離の状態であった。いずれも3か月の時に硝子体出血を発症した。他の1眼は20台の若年者で,後部硝子体剥離により,乳頭周囲の血管から,硝子体出血を繰り返していた。
 FEVRに発症した大量の硝子体出血では,若年者よりも,高齢者および1歳未満の幼年者で,裂孔または網膜剥離を高頻度に併発することが多い。特に1歳以下の乳幼児では,急速に網膜剥離から増殖性硝子体網膜症を発症しやすい。したがって乳幼児の場合には,なるべく早く,また高齢者でも2週間たっても出血が吸収されなければ,硝子体手術を検討すべきである。

ハンフリー視野計アーマリー中心スクリーニングプログラムの評価

著者: 足立純一 ,   勝島晴美 ,   岡川友子 ,   米森しのぶ

ページ範囲:P.1023 - P.1026

 ハンフリー自動視野計アーマリー中心スクリーニングプログラムの有用性を緑内障59眼と正常者28眼で検討した。感度は視野進行例(湖崎分類Ⅲa期以降)で100%,初期例で70%であった。特異性は82%であった。暗点が2個以下の場合には偽陽性と真の暗点とが混在しており,カスタムテストで再現性を確認した後の特異性は100%に上昇したが,初期緑内障の感度は53%に低下した。暗点が3個以上検出されていれば異常視野と判断してよいと思われた。暗点の数は病期の進行とともに増加しており,暗点10個以下は初期例,暗点30個以上は進行例と推測することができる。測定時間は正常者で5分,末期例でも11分で終了した。

超広角赤外螢光造影による糖尿病性派絡膜症の検索

著者: 高橋京一 ,   村岡兼光 ,   得居賢二 ,   須藤憲子 ,   町田史子

ページ範囲:P.1027 - P.1037

 正常眼脈絡膜血管構築と糖尿病性脈絡膜症の検索を目的として,正常眼12眼と糖尿病網膜症47眼に対して,走査型レーザー検眼鏡によるインドシアニングリーン(以下ICG)赤外螢光眼底造影を施行した。画角40°のビデオプリントを貼り合わせ,超広角パノラマの脈絡膜造影図を作成して検討した。
 正常眼では,脈絡膜静脈の走行は,乳頭を通る水平および垂直線で区切られる領域から開始され,渦静脈に流入した。渦静脈は通常5〜10個存在した。赤道部では眼底を放射状に走行する動脈像が観察された。脈絡毛細管板はびまん性のベール状螢光として検出され,その螢光は後極部で強く周辺部では弱かった。造影後期になると眼底全域で脈絡膜間質へ弱いICG漏出が起こった。糖尿病網膜症では,脈絡膜静脈のコントラスト低下,脈絡膜静脈数の減少,狭細化,脈絡膜動脈壁の色素染,局所的な色素漏出,脈絡毛細管板の部分的閉塞が観察された。
 本方法は,糖尿病性脈絡膜血管障害の解明に有用であると結論された。

緑内障眼に対する網膜剥離手術例

著者: 宮本和久 ,   池田恒彦 ,   檀上眞次 ,   田野保雄 ,   桑山泰明

ページ範囲:P.1039 - P.1042

 緑内障眼に裂孔原性網膜剥離を合併した13症例における手術前後の視野変化と影響を及ぼす因子について検討した。視力経過は通常の網膜剥離と比較して差はなかったが,8例(62%)において視野の狭窄がみられ,視力は回復しても視野が悪化した症例が多く見られた。ガスタンポナーデや長期間にわたる眼底上昇,複数回の手術などが視野悪化の因子として考えられた。網膜剥離発症前からの緑内障性視野変化が,Ⅲ期以降の症例においては,78%と高率に視野悪化が認められた。

高血圧性眼底出血とMRIによる脳出血・脳梗塞の相関

著者: 古市美絵子 ,   伊藤睦子 ,   鶴岡信 ,   新谷周三

ページ範囲:P.1043 - P.1046

 高血圧性眼底出血とMRIによる脳血管性病変の相関について検討した。その結果,網膜出血群では網膜非出血群に比べ高率に脳血管性病変を認めた。そのうち最大径1.5cmより大きい脳出血・脳梗塞の占める割合には差はみられなかったが,最大径1.5cm以下のlacunar infarctionの占める割合は,網膜出血群のほうが網膜非出血群より有意に多かった。また加齢に伴い脳血管性病変の占める割合も増加した。脳血管性病変の存在部位は穿通枝域に多くみられた。網膜出血を伴う高血圧患者では,脳血管性病変の頻度が高く,MRIによる検索がすすめられる。

カラー臨床報告

早期治療を開始し得た脳回状網脈絡膜萎縮症例

著者: 高橋久仁子 ,   森敏郎 ,   田澤豊 ,   長谷川豊 ,   桑島研一 ,   根本薫

ページ範囲:P.987 - P.991

 脳回状網脈絡膜萎縮が幼少児期の早期に眼科的検査によって診断され,治療を開始し得た報告は調べ得た限りでは1論文のみである。今回,本症の幼少児期の同胞3例について報告する。症例は8歳の女児とその妹で2歳の一卵性双胎児である。全例とも典型的な本症の眼底所見を認め,ERGは消失型である。全身的にオルニチン—ケト酸トランスアミナーゼ(OKT)欠損症が確認された。3症例に対してOKTの補酵素であるビタミンB6の大量経日投与が開始され,現在まで約9か月継続中であるが,血中オルニチン値は高値である。

Group Discussion

眼窩

著者: 小出良平 ,   井上洋一 ,   大島浩一 ,   八子恵子 ,   沖坂重邦

ページ範囲:P.1047 - P.1049

 本年度の眼窩グループディスカッションは,各分野にわたって幅広い演題の発表があり,印象記は担当した座長に記録して戴いた。

レーザー眼科学

著者: 岡野正

ページ範囲:P.1051 - P.1053

 私が群大から東京医大霞ヶ浦に移って間もなく,埼玉医大の野寄教授から世話人を仰せつかりました。特に課題や主題を定めず演題自由で募集致しましたが,10題の応募をいただきました。すべて採用とし,座長は,演題1〜3を私がさせていただき,4〜6を戸張幾生教授(東邦大第2)に,7〜10を宇山昌延教授(関西医大)にお願い致しました。
 演題の内容は,眼底の標準的な光凝固治療に関する演題が10題中5題で,全体の半数を占めました。ヤグレーザーによる網膜前出血の治療が2題,ダイオードレーザーでの毛様体凝固が1題,睫毛乱生治療が1題,エキシマレーザー近視矯正角膜切除後のコントラスト感度検査が1題でした。最後が検査で,他の9題が治療に関するものでした。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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