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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科48巻6号

1994年06月発行

雑誌目次

特集 第47回日本臨床眼科学会講演集(4) 学会原著

眼窩部類壊死性黄色肉芽腫症の1治療経験

著者: 高原誠治 ,   柏井聡 ,   西田明弘 ,   木村英也 ,   正井弘和 ,   福原資郎 ,   安里令人

ページ範囲:P.1081 - P.1084

 黄色調を呈した特徴的な両眼瞼の腫脹を認め,両側眼窩内にび漫性の浸潤を伴って両眼球の突出をきたした62歳男性は,血液検査の結果,単クローン性高ガンマグロブリン血症を認め,組織生検によりnecrobiotic xanthogranuloma (類壊死性黄色肉芽腫)と診断された。この患者にサイクロホスファミド内服治療を施行したところ,開始後6週間の時点で自覚的および臨床症状の改善を得た。

間質性腎炎とぶどう膜炎を合併した2例

著者: 木村仁 ,   野呂瀬一美 ,   天谷次郎 ,   千葉美和子 ,   瀬川雄三

ページ範囲:P.1085 - P.1089

 間質性腎炎にぶどう膜炎を合併した2症例を経験した。症例1は10歳の女児で,両眼の毛様充血,前房中の細胞微塵を認めた。右眼は硝子体混濁,視神経乳頭の発赤腫脹,網膜血管炎があり汎ぶどう膜炎であった。同時に,腎機能障害を認め,腎生検にて間質性腎炎と診断された。症例2は62歳の女性で,左眼前房にフィブリン塊の析出を伴う前部ぶどう膜炎を認めた。さらに,尿中β2ミクログロブリン,N—アセチルβ—D—グルコサシニダーゼの高値を認め間質性腎炎が強く示唆された。腎機能障害は症例1はステロイド療法により,症例2は対症療法にて軽快した。ぶどう膜炎は2症例とも再燃はみられたがステロイド療法にて改善傾向を示した。眼所見と腎機能,血清補体価およびIgG値などの変動が一致していた。本2症例の臨床経過より,腎尿細管障害とぶどう膜炎との強い関連が示唆された。

糖尿病黄斑症の中心視野

著者: 八木加寿子 ,   森純一 ,   鈴木隆次郎

ページ範囲:P.1091 - P.1094

 糖尿病黄斑浮腫を局所性,びまん性,類嚢胞黄斑浮腫(cystoid macular edema:CME)に分類し1),オクトパス視野計のプログラム38を用いて検討した。
 中心感度,平均感度は,局所性,びまん性,CMEと,浮腫の増加に伴って低下した
 感度曲線は浮腫の増加とともに感度レベルが全体的に低下し,中心部の沈下が著明になった。出血,軟性白斑,無血管床での網膜感度は黄斑浮腫の程度による差はなかったが,硬性白斑での感度は浮腫の程度に比例し,有意の差をもって低下していた。
 糖尿病黄斑症の視野による分析は,黄斑部の視機能をより広く把握することができるため,有用であると思われた。

後部胎生環の臨床的検討

著者: 尾関年則 ,   白井正一郎 ,   佐野雅洋 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.1095 - P.1098

 1992年10月から7か月間に受診した患者のうちから無作為に抽出した308例に細隙灯および隅角鏡検査を行い,両眼性35例,片眼性40例が後部胎生環と診断された。合併眼先天異常は強角膜症5例,家族性滲出性硝子体網膜症2例,視神経乳頭黒色細胞腫,脈絡膜母斑および結膜デルモイドが各1例あった。合併全身先天異常はAlagille症候群2例,Wilson病およびempty sella症候群が各1例みられた。合併した眼および全身の先天異常には,神経堤細胞の異常に基づく形成異常が含まれていた。後部胎生環の症例では全身および眼の先天異常を伴うことがあり,日常臨床上見過ごさないように注意すべきである。

点眼薬防腐剤によると思われる不可逆的角膜上皮障害

著者: 平塚義宗 ,   木村泰朗 ,   藤田邦彦 ,   金井淳

ページ範囲:P.1099 - P.1102

 原疾患の性格上多種類の点眼薬を長期に続けた結果,不可逆的な角膜障害をきたした症例を経験し,防腐剤による関与が強く示唆されたので報告する。72歳男性。緑内障の診断で近医より長期多種点眼が行われ,両角膜上皮に混濁,角膜炎をきたしたため当科紹介された。点眼薬による角膜障害を考え,すべての点眼薬を中止,その後炎症は消失したが,β—blockerの点眼再開にて角結膜炎が再燃した。防腐剤を含まない人工涙液のみにした結果,炎症の鎮静化を認めた。圧迫細胞診で角膜上皮から角化細胞および杯細胞を認め,現在も角膜実質浮腫,混濁は残存している。投与された点眼薬のほとんどに防腐剤として塩化ベンザルコニウム(BAK)が含まれていることから,角膜障害に対するBAKの関与が強く示唆された。

新しい小切開用シリコーンIOLの開発

著者: 清水公也 ,   小松真理 ,   中島敏之

ページ範囲:P.1103 - P.1107

 現在の白内障超音波乳化吸引術PEAでの最小創口サイズを検討し,それに適合した眼内レンズIOLを開発した。創口サイズは摘出豚眼でPEAを施行し検討した。3.0mm以下では創口からの灌流液漏出が極端に減少して創口温度上昇が著しく,3.5mm以上では術中の前房維持がやや不安定であったことから,3.2mmが最適と考えられた。暗所瞳孔径の測定からIOL光学部直径は5.5mmでも充分と推察した。これらのことから光学部直径5.5mmの3ピースシリコーンIOLと専用の挿入器具(ディスポーザブルインジェクター)を開発した。本IOLはPEAの際の3.2mm角膜単一切開を拡げることなく挿入でき,良好なセンタリングを示した。術後乱視は従来に比べ最小であった。

網膜静脈分枝閉塞症における網膜機能の変化

著者: 高橋るりか ,   原彰 ,   高橋真紀 ,   清水由規

ページ範囲:P.1109 - P.1111

 片眼性網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)20症例40眼に網膜電図(ERG),眼球電位図(EOG)検査を行った。各検査値にt検定を行い患眼と健眼の有意差を比較検討した。律動様小波O1頂点潜時は患眼14.4±0.78秒,健眼14.2±0.64秒(p<0.05),振幅総和(O1〜O4)は患眼180.7±83.2μV,健眼231.7±78.2μV (p<0.001)と有意差を認めた。EOGの明極大(light peak)は患眼584.6±223.8μV,健眼677.4±248.1μV (p<0.01),L/D比は患眼1.83±0.36,健眼2.04±0.36(p<0.01),d値は患眼 275.7±165.9μV,健眼 335.2±149.1μV(p<0.01)であり,有意差を認めた。これらからBRVOでは網膜内層の機能が比較的広範囲に低下している疾患であることが示唆された。

裂孔原性網膜剥離の病巣別分類

著者: 出水誠二 ,   出田秀尚 ,   渡辺健 ,   中武純二 ,   品川浩一 ,   竹中千昭 ,   三浦雅博

ページ範囲:P.1113 - P.1116

 裂孔原性網膜剥離を,裂孔を作る関連病巣別に分類することを試みた。過去10年間に治療された内眼手術既往歴のない自験例2,112眼を対象にした。裂孔を8つの関連病巣に分類し,その比率を調べた。各病巣の比率は,網膜格子状変性66.5%,黄斑円孔9.1%,顆粒状組織8.6%,硝子体基底部裂孔4.1%,限局性色素沈着4.1%,若年性鋸状縁断裂1.8%,網膜静脈分枝閉塞症1.7%,巨大裂孔1.6%であった。以上8つに該当しない裂孔をその他とし,これが2.6%あり,裂孔不明は2.7%であった。この分類法は,まだ問題点はあるが,今後病因の究明や治療法を確立する上で有用であると考える。

網膜動脈閉塞症における頸動脈病変—Ⅱ.頸動脈エコーとDoppler血流検査からの検討

著者: 西川憲清 ,   井口直己 ,   本倉眞代 ,   渡刀晶子 ,   田中康夫 ,   脇英彦 ,   松本直樹 ,   西沢秀子

ページ範囲:P.1117 - P.1120

 網膜動脈閉塞症14例に眼動脈Doppler血流検査と頸動脈エコーを行った。眼動脈流速脈波が正常波型を示す2例で,頸動脈エコーで頸動脈内壁にplaqueを認めた。動脈硬化波型7例のうち2例でplaqueを認めず,5例にplaqueを認めた。狭窄波型や逆流閉塞波型を示した1例では著明なplaqueを認めた。頸動脈内壁に生じた1.5mm以下のplaqueは脳血管撮影で異常を認めなかった。
 網膜動脈閉塞症に遭遇したとき,中枢側血管の病変について,眼動脈Doppler血流検査や頸動脈エコーにて検索することが重要と考えられた。

Multiple evanescent white dot syndromeの1例

著者: 石渡幸夫 ,   安達恵美子

ページ範囲:P.1121 - P.1124

 29歳女性の右眼に発症したmultiple evanescent white dot syndrome (MEWDS)の1例を経験した。眼底に一過性の散在性小白斑を認め,ERG a波およびb波の振幅の低下,pattern—VECPでsteady-stateにて振幅の左右差(右<左)がみられた。また近視化がみられ,毛様体レベルの炎症が示唆された。約2週間後に眼底所見が消失した後も近視化が残存しており,毛様体機能は2か月遅れて回復した。相対中心暗点やVECPにてその異常性がみられ,視神経レベルの障害の可能性も示唆された。本疾患では検眼鏡所見よりも広い範囲の障害が及ぶ可能性と毛様体機能回復に時間を要する場合があると考えられた。

ぶどう膜炎における血漿エンドセリン活性値

著者: 清水一弘 ,   守屋伸一 ,   杉山哲也 ,   奥英弘 ,   濱田潤 ,   内海隆

ページ範囲:P.1125 - P.1127

 ぶどう膜炎患者の血漿エンドセリン−1活性値をラジオイムノアッセイ法により測定した。健常者13例,平均2.1±0.6pg/mlに比較して非活動期では2.4±0.9pg/mlで有意差がなく,活動期では5.0±1.0pg/mlと高値を示した。眼外症状を伴う例ではエンドセリン活性値が顕著に高値を示した。サルコイドーシスの1例では,血漿エンドセリン−1活性が前房蛋白濃度と平行して変化した。これらの結果から,全身血管におけるエンドセリンの分泌亢進がぶどう膜炎発症と関係をもっていると思われ,さらに血管の損傷,炎症などによりエンドセリンが血管壁から血中に放出されやすい状態であったと考えられた。

二手法による硝子体手術

著者: 石田政弘 ,   竹内忍 ,   中原正彰 ,   塚原逸朗 ,   江畑理佳 ,   清原尚

ページ範囲:P.1129 - P.1132

 眼内照明付きの硝子体鑷子と硝子体剪刀を用いた二手法による硝子体手術を行い,その手技と手術成績について検討した。症例は増殖性硝子体網膜症が4例4眼,増殖糖尿病網膜症が4例4眼であり,増殖性硝子体網膜症は4眼中3眼,増殖糖尿病網膜症は4眼全例が復位した。二手法による増殖膜処理は,硝子体鑷子で増殖膜を把持するため,癒着部の観察と剪刀による切開が容易であり,特に,硝子体基底部の増殖膜処理に有効であった。その際,両方の器具に照明があるために十分な視野を確保することができた。問題点としては,デスメ膜の雛襲による視認性の低下や増殖膜を牽引しすぎたための鋸状縁裂孔と毛様体扁平部上皮剥離などが認められた。

乳頭周囲網脈絡膜萎縮と緑内障との関連(第1報)人間ドック受診者についての検討

著者: 早水扶公子 ,   宮本智 ,   小出千鶴 ,   山崎芳夫 ,   横山英世

ページ範囲:P.1133 - P.1136

 人間ドック受診者1,028人を対象に,乳頭周囲網脈絡膜萎縮であるZoneα(不規則な色素沈着の異常),Zoneβ(ブルッフ膜途絶による強膜露出部)の頻度と全身的因子,局所的因子との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討を行った。Zoneαは全体の67.0%,Zoneβは12.3%に認められ,Jonasらの報告とほぼ一致した結果となった。Zoneαと各因子との間には関連は認められなかった。Zoneβと中性脂肪HDLコレステロール,HbA1c,β—リポ蛋白,収縮期血圧などの動脈硬化促進因子との関連が示唆された。

先天聾,immotile cilia syndromeなど多彩な合併症を伴った先天緑内障の1例

著者: 嵩義則 ,   本多あかね ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1137 - P.1140

 症例は23歳の女性。生下時より両眼に角膜混濁があり先天緑内障と診断され,両眼に虹彩切除を施行されている。全身的には幼少時からimmotile ciliaによるものとされる慢性副鼻腔炎,慢性中耳炎,気管支拡張症のほか,神経堤細胞の移動異常と考えられる耳小骨の欠損,眉毛過多,鼻根部低形成,偽両眼隔離症,前房隅角の発育異常を認めた。神経堤細胞の移動に線毛運動が関係する可能性があり,本症例の一連の症候は線毛運動不全に基づく神経堤細胞の胎生期における移動異常によるものと推察された。

免疫グロブリン製剤全身投与により急性毛様体浮腫から続発閉塞隅角緑内障を生じた1例

著者: 戸部隆雄 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1141 - P.1144

 免疫グロブリン製剤投与により,急性に一過性浅前房,近視化,続発閉塞隅角緑内障を生じ,急性毛様体浮腫によると思われた1例を報告した。症例は,39歳,男性で,再生不良性貧血に対して免疫グロブリン製剤(アールブリン®)投与後,次第に増強する両眼の霧視をきたしたので,当科を受診した。両眼の急性近視化をみ,浅前房で,眼圧は右45mmHg,左42mmHgであった。両眼レーザー虹彩切開術を行ったが,無効であった。免疫グロブリン製剤の投与を中止し,副腎皮質ステロイド剤の内服を行ったところ,前房は次第に深くなり,諸症状はすべて改善した。本症例は,ウマ血漿が原料である抗ヒトリンパ球ウマ免疫グロブリンによる局所アレルギーから急性毛様体浮腫を生じ,それによる浅前房,近視化,閉塞隅角緑内障を発症したと考えられた。製造元の副作用報告から,この副作用発生はかなり高い頻度と思われる。

外傷による失明眼の検討

著者: 太田誠一郎 ,   千葉桂三 ,   飯田享司 ,   八木加寿子 ,   小暮文雄

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 過去19年間に入院治療を受けた眼外傷自験例849例879眼を分析した。失明眼は226眼,25.7%であった。失明原因の頻度順はフロントガラスによる眼外傷(46眼),動力草刈機による眼外傷(14眼),転倒転落(14眼)であった。原因別の失明率は,散弾銃(100%),ゴルフボール(70%),電動工具(54%)などによる外傷が高率であった。1980年代に入って失明率が低下している。これは,外傷に硝子体手術を施行するようになった時期とほぼ一致していた。治療法の発達とともに,失明眼数の多い外傷発生の予防対策など,外傷に起因する失明眼を減少させる努力が必要と考えた。

アカントアメーバ角膜炎の臨床経過の病期分類

著者: 塩田洋 ,   矢野雅彦 ,   鎌田泰夫 ,   片山智子 ,   三村康男

ページ範囲:P.1149 - P.1154

 アカントアメーバ角膜炎を6症例(7眼)経験し,その臨床経過に共通点を見いだした。これら6症例の共通点と文献上の症例を参考に,本疾患の臨床経過の病期分類を試みた結果,次のような分類が適切であるという結論に達した。1期(初期)→2期(成長期)→3期(完成期)→4a期(消退期)または4b期(穿孔期)→5期(瘢痕期)。アカントアメーバ角膜炎はこのように1期から5期まで分類するのが適切であるが,4期までのどの病期からでも治癒に向かう可能性を持っている。この病期分類を用いることによって,本疾患がどのような病気であるか把握しやすくなり,正しく診断を下せるようになるものと考える。

大阪府三島救命救急センターにおける交通事故眼科外傷

著者: 前谷悟 ,   中島正之 ,   横山順子 ,   奥英弘 ,   岸浩子 ,   豊田徳雄 ,   田辺治之

ページ範囲:P.1155 - P.1158

 大阪府北部の交通事故眼外傷の実態を調査するため,三島救命救急センターにて1985年11月〜1992年12月の症例を対象に検討した。症例は13例15眼であり,20歳台の男性が6例,22〜3時までの深夜事故発生例が7例であった。自動車による事故の10例は,シートベルト未着用であり,8例が診察時に眼球破裂を起こしていた。二輪車による事故の3例は,眼球破裂2例,眼球脱出1例であった。その結果,退院時視力も0〜指数弁に留まった。全国の交通事故眼外傷の統計と比較しても予後不良例が多かった。要因判明のため,交通安全規則の守られ方・事故発生状況を調べた結果,全国に比べ大阪府下ではよくないことが判った。

学術展示

フルオロフォトメトリー法による結膜上皮のバリアー機能評価

著者: 横井桂子 ,   横井則彦 ,   小室青 ,   西田幸二 ,   木下茂

ページ範囲:P.1160 - P.1161

 緒言 トレーサー物質の透過性を調べた実験から結膜上皮のバリアー機能は,角膜上皮に比べて有意に低いことが知られている1,2)。そこで,角膜上に侵入した結膜上皮,および健常者の球結膜上皮に対するフルオレセインの透過性をフルオロフォトメトリー法で測定し,結膜上皮と角膜上皮のバリアー機能を比較検討した。

ミトコンドリアミオパチーの1症例

著者: 大木順子 ,   渡部通史 ,   川端紀穂 ,   荒井真紀 ,   早川むつ子 ,   金井淳 ,   三宅伊豫子 ,   池辺紳一郎 ,   有川恵理 ,   横山和正 ,   服部浩一

ページ範囲:P.1162 - P.1163

 緒言 ミトコンドリアミオパチーとは,骨格筋内に異常形態を示すミトコンドリアが多数認められる疾患である。眼科領域では,眼瞼下垂や網膜色素変性などに加え,近年では角膜内皮細胞の変化も指摘され1〜3),ミトコンドリア異常との関連が示唆されている。今回筆者らはミトコンドリアミオパチーの眼瞼下垂の症例に対し,前腕の長掌筋腱を用いた前頭筋吊り上げ術を行った。手術時採取した長掌筋および眼輪筋の病理学的検査,ミトコンドリアDNA (mt DNA)の分子遺伝学検索,角膜内皮の観察を行ったので,手術所見と合わせて報告する。

Infectious crystalline keratopathyが疑われた角膜移植眼の2例

著者: 細谷比左志 ,   牧野勲 ,   下村嘉一 ,   井上幸次 ,   大橋裕一

ページ範囲:P.1164 - P.1165

 緒言 Infectious crystalline keratopathyは,1983年にGorovoy1)が最初に報告し,1984年にMeislerら2)がその特徴的所見から命名した比較的新しい疾患概念である。この疾患は,角膜実質表層から中層にかけて,結晶様または羽毛状と表現される特徴的な白色の混濁が拡がる一種の感染症で,進行は非常に遅く,炎症所見はほとんどないか,あったとしてもごくわずかである。また,ほとんどの症例が角膜移植後か,あるいはステロイド剤の長期点眼中であるなど,局所免疫低下状態をベースに持ち,角膜抜糸や上皮欠損を契機として発症する。抗生物質治療に反応しにくい。過去の報告では,角膜実質内にStreptococcus viridans2),Haemophilus aphrophilus3)などの弱毒菌の集簇がみられている。現在までに,欧米を中心として41例の報告があるが,筆者らの知る限り,本邦ではまだ報告されていない。今回,infectious crystalline keratopathyと臨床的に診断できる症例を2例経験したので報告する。

非接触型スペキュラーマイクロスコープ(SEED SP−500)の使用経験

著者: 黒川真理 ,   金井淳 ,   太田俊彦 ,   大谷園子 ,   中安清夫 ,   西巻賢一

ページ範囲:P.1166 - P.1167

 緒言 近年,コンタクトレンズ装用者の増加や,眼内レンズ挿入による白内障手術,および角膜移植の増加に伴い,より簡便な角膜内皮細胞の観察が望まれている。今回筆者らは,非接触型で,さらに角膜周辺部の内皮細胞の観察が可能なスペキュラーマイクロスコープを使用する機会を得,種々の臨床に応用したので,その結果を報告する。

角膜前面放射状切開術の合併症

著者: 加藤卓次 ,   中安清夫 ,   金井淳

ページ範囲:P.1168 - P.1169

 緒言 角膜前面放射状切開術(ARK) は1979年Fyodorovにより報告され広く普及した屈折矯正手術である。しかし,わが国においては数施設において試みられているにすぎず,これらの手術結果はほとんど報告されていないのが現状である。今回筆者らは,他施設にてARK手術を受け,その後筆者らの関連病院を訪れたARK患者について,その手術効果,術後出現した自覚症状,術後合併症などにつき検討した。

局所抗真菌剤投与が奏効した真菌性深層角膜炎の1例

著者: 出口美智子 ,   尾花明 ,   三木徳彦 ,   森真紀子

ページ範囲:P.1170 - P.1171

 緒言 角膜真菌症は,近年増加の傾向1)があり,抗真菌剤の開発はめざましく,全身投与や局所投与が奏効したという報告2,3)が多い。今回,角膜実質深部から前房内へ突出した病巣の真菌性角膜炎において,結膜被覆術後,被覆結膜下への抗真菌剤の局所投与により著効を得た症例を経験したので報告する。

実質型角膜ヘルペスに対するアシクロビル内服の有効性

著者: 篠崎和美 ,   坂野菊子 ,   高村悦子

ページ範囲:P.1172 - P.1173

 緒言 アシクロビル(以下ACV)眼軟膏を用いることにより,樹枝状角膜炎や円板状角膜炎は短期間に治癒し,難治例は減少した。しかし,著明な角膜後面沈着物や輪部炎1)を伴う実質型角膜ヘルペスや内皮炎2)と思われる症例では,ACV眼軟膏だけでは遷延化することがある。一方,樹枝状角膜炎に対して,ACV錠内服が有効であることはすでに報告した3,4)。今回は,著明な角膜後面沈着物や輪部炎を伴う実質型角膜ヘルペスに対し,ACV内服投与を試み有効性を検討した。

小児用レフラクトメーターPR1100を用いた乳児眼科検診

著者: 石井るみ子 ,   金井淳

ページ範囲:P.1174 - P.1175

 緒言 乳幼児の眼科検診を早期に行うことは網膜膠腫や先天性白内障だけでなく弱視の発見にも重要である1〜5)。乳幼児の診察は手間がかかることから敬遠されることが多かったが,最近フォトレフラクション法を用いた乳幼児の屈折状態が報告されている4〜6)。今回筆者らはPR1100を用いて乳児眼科検診を施行し,興味ある知見を得たので報告する。

濾過手術後に中心性漿液性網脈絡膜症様病変を生じた1例

著者: 佐藤圭子 ,   池田誠宏 ,   岩崎哲也 ,   松山久美子

ページ範囲:P.1176 - P.1177

 緒言 濾過手術の中で,最も広く行われているtrabeculectomyの合併症には前房形成不全,脈絡膜剥離,低眼圧黄斑症など多くの報告がある。しかし,黄斑部の漿液性網膜剥離の合併例の報告は検索した限りにおいてはみられない。今回筆者らは,trabecu—lectomy術後の眼底後極部に限局性の漿液性網膜剥離を併発した症例を経験したので報告する。

炭酸脱水酵素阻害剤内服によるスティーブンス・ジョンソン症候群の4例

著者: 加賀谷文絵 ,   白土城照 ,   藤本学

ページ範囲:P.1178 - P.1179

 緒言 緑内障治療薬である炭酸脱水酵素阻害剤の副作用の一つとして,重症型薬疹,スティーブンス・ジョンソン症候群(以下,本症)が知られている。筆者らは過去14年間にメタゾラミド(ネプタザン®)内服によると考えられた本症を4例経験したので報告する。

予防的レーザー虹彩切開術後の角膜内皮細胞の長期経過

著者: 中嶋基麿 ,   山下秀明 ,   三木弘彦

ページ範囲:P.1180 - P.1181

 緒言 レーザー虹彩切開術(以下LI)は容易で安全な手技として広く普及しているが,最近,術後長期の合併症として水疱性角膜症(以下BK)が知られるようになった1〜4)。一方,術後長期の角膜内皮細胞(以下,内皮細胞)についての報告は少ない。そこで過去5年間に狭隅角眼に緑内障発作予防の目的でLIを行った予防LI (以下PLI)の症例の内皮細胞の平均細胞密度(以下,密度)を比較検討した。

眼内レンズ挿入術後に発症したPropionibacterium granurosumによる慢性細菌性眼内炎の1例

著者: 佐竹紀子 ,   住谷豊

ページ範囲:P.1182 - P.1183

 緒言 眼内レンズ挿入術後に発生する慢性細菌性眼内炎の起因菌として Propionibacterium acunes とStaphylococcus epidermidisが多数報告されている1,2)。今回筆者らは,Propionibacterizam granurosumによる感染が証明された,眼内レンズ挿入術後の慢性細菌性眼内炎を経験したので報告する。

Weil-Marchesani症候群の小球状水晶体の病理組織

著者: 佐々木淳子 ,   石井康夫

ページ範囲:P.1184 - P.1186

 目的 Weil-Marchesani症候群は,短躯症,短指症など全身の中胚葉組織の発育異常とされている。眼科的には小球状水晶体を特徴とするが,その病理組織学的報告は少ない1,2)。今回筆者らは白内障と水晶体偏位による視力障害を起こしたため,水晶体全摘術を施行した2例のWeil-Marchesani症候群を経験した。摘出した水晶体に対して電子顕微鏡を用い,病理組織学的に検討した。

穿孔性眼外傷における水晶体内異物摘出と白内障手術,眼内レンズ移植術の同時手術

著者: 大城三和子 ,   野牛千鶴 ,   海谷忠良

ページ範囲:P.1188 - P.1189

 緒言 穿孔性眼外傷で外傷性白内障を併発している場合,水晶体内異物例では水晶体摘出後,視力矯正法として眼内レンズ移植を同時に行うか,二次的に行うかは,外傷の種類,程度によって決定される。今回筆者らは,治療用ソフトコンタクトレンズにて創閉鎖,水晶体内異物摘出,白内障手術,眼内レンズ移植術の同時手術を行い経過良好であったので報告する。

アトピー性皮膚炎に合併した裂孔原性網膜剥離の硝子体中の好酸球の意義

著者: 今井良枝 ,   二宮久子 ,   小林康彦 ,   田中稔

ページ範囲:P.1190 - P.1191

 緒言 近年,生活環境の著しい変化に伴いアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者は増加傾向にあるが,その発症機序については未解決な部分が多い。一方,眼合併症については白内障,網膜剥離,虹彩毛様体炎,円錐角膜など多数報告され,治療法もほほ確立している1,2)。しかしその原因は,掻痒のための物理的障害が強く関与しているという点で一致するもののいまだ解明されていない。
 今回ADに合併した裂孔原性網膜剥離に硝子体手術を施行し,硝子体液を採取して病理学的に分析した結果,病態の解明につながる若干の知見を得たので報告する。

眼内レンズ眼の硝子体手術症例

著者: 荒木ひろ美 ,   二宮久子 ,   小林康彦 ,   田中稔

ページ範囲:P.1192 - P.1193

 緒言 眼内レンズ挿入術の普及により,眼内レンズ挿入術の適応は若年者,糖尿病患者,ぶどう膜炎患者へと拡大しっつあり,それに伴い眼内レンズ挿入眼における硝子体手術も増加してきている。
 今回筆者らは,眼内レンズ挿入眼での硝子体手術を経験し,特に若年者,糖尿病患者などの硝子体手術が予想される場合の眼内レンズ挿入の可否,術中の視認性などにっき検討した。

後天性免疫不全症候群に合併したサイトメガロウイルス網膜炎

著者: 飯田文人 ,   太田隆子 ,   安達光宣 ,   高島保之 ,   高橋邦昌

ページ範囲:P.1194 - P.1195

 緒言 成人におけるサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症は,従来まで稀な疾患であったが,近年後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS),臓器移植,悪性腫瘍の日和見感染症として注目されている。AIDS症例の経過中CMV網膜炎を合併した症例を経験したので報告する。

ベーチェット病の治療におけるFK506とシクロスポリンの比較

著者: 吉川麻里 ,   石岡みさき ,   西尾昌代 ,   中村聡 ,   杉田美由紀 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1196 - P.1197

 緒言 新しい免疫抑制剤FK506はベーチェット病(BD)の難治性ぶどう膜炎の治療における効果が期待されている1)が,既に有用性の知られているシクロスポリン(CYA)との比較検討は行われていない。今回筆者らは,両者の臨床効果と副作用の比較検討をpro—spective studyにて行い,若干の知見を得たので報告する。

原田病での隅角色素脱出

著者: 山本悼司 ,   佐々木隆敏 ,   磯部裕

ページ範囲:P.1198 - P.1200

 緒言 原田病では全身的に,しぼしば皮膚の白斑,白髪をきたし,眼底では大部分の症例に夕焼状眼底が,また角膜輪部には色素脱出の起こることはよく知られている1)。しかし,色素細胞の多い前部ぶどう膜の色素細胞の障害の有無についてはいまだ解明されていない。そこで,虹彩および毛様体前面における色素脱出が起こるか否かについて検討することとした。

顆粒状fleckを伴った先天性黄斑欠損症の1例

著者: 中村達人 ,   八木加寿子 ,   高田潤 ,   横田章夫

ページ範囲:P.1202 - P.1203

 緒言 先天性黄斑欠損症は必ずしも稀な疾患ではなく,本邦での報告も多い。今回筆者らは,後極部から周辺部にかけて,黄白色顆粒状fleckを伴った先天性黄斑欠損症と思われる1例を約10年にわたり経過観察したので報告する。

乳頭近傍の新生血管を発症したぶどう膜炎と思われる症例

著者: 中山玲慧 ,   小林康彦 ,   田中稔 ,   田森美穂 ,   小沢佳代子 ,   玉城宏一

ページ範囲:P.1204 - P.1206

 緒言 ぶどう膜炎の経過中に乳頭上および近傍に新生血管を生じたという報告は,今までにもいくつか散見されるが1,2),その治療法については意見の分かれるところである。今回筆者らは,初診時に両眼乳頭近傍に新生血管を発症したぶどう膜炎と思われる症例に対し,副腎皮質ステロイド薬の大量投与を行うも奏効せず,網膜光凝固治療に抵抗した症例を経験したので報告する。

内因性ぶどう膜炎におけるChlamydia pneumoniae感染の関与

著者: 鈴木克也 ,   青木功喜 ,   磯部和美 ,   沼崎啓 ,   千葉峻三 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1208 - P.1209

 内因性ぶどう膜炎患者における血清抗Chlamydia pneumoniae (C.pneumoniae)抗体価の測定を行った。間接螢光抗体法では,256倍以上の抗体価陽性例がサルコイドーシス患者で31例中12例(39%)であり,ベーチェット病,原田病および正常対照群に比べ有意に高率であった(p<0.05)。C.pneumoniae感染のサルコイドーシスの病態形成における何らかの関与が示唆された。

死産に併発した漿液性網膜剥離の1例

著者: 戸田恵美 ,   中島正之 ,   富永美果

ページ範囲:P.1210 - P.1211

 緒言 晩期妊娠中毒症に続発した網膜剥離は vonGraefe1)の報告以来わが国でも多数報告されており2〜4),その多くの症例は分娩後短期間のうちに自然治癒するといわれている。今回筆者らは,妊娠中毒症所見はほとんど認めず,死産直後に発症したと考えられた漿液性網膜剥離の1症例を経験したので報告する。

トラベクレクトミー術後に生じた巨大網膜色素上皮裂孔の1例

著者: 岩崎義弘 ,   稲毛和

ページ範囲:P.1212 - P.1213

 緒言 網膜色素上皮裂孔は1981年Hoskinら1)が報告して以来多数の報告例があるが,本邦ではいずれも網膜色素上皮剥離に特発性あるいは光凝固術後に生じたものである2)。今回筆者らは緑内障術後に生じた網膜色素上皮裂孔の1例を経験したので報告する。

慢性関節リウマチ患者にみられた特異な閉塞隅角緑内障

著者: 川村肇 ,   赤木泰 ,   山本良 ,   竹内麗子 ,   内堀恭孝 ,   額田朋経

ページ範囲:P.1214 - P.1215

 緒言 強膜炎に緑内障を合併することはよく知られている。眼圧上昇の原因として前眼部の炎症による瞳孔ブロックや周辺虹彩前癒着,線維柱帯炎の合併,血管新生,治療に用いるステロイドなどが考えられる1)。今回筆者らは悪性緑内障様の閉塞隅角緑内障発作を両眼に生じた症例を経験し,観血的治療により比較的良好な結果を得たので走査型レーザー検眼鏡による螢光造影所見と併せて報告する。

インドシアニングリーン螢光造影による加齢性黄斑変性のレーザー光凝固治療経験

著者: 上野珠代 ,   尾花明 ,   白木邦彦 ,   森脇光康 ,   三木徳彦 ,   加茂雅朗

ページ範囲:P.1216 - P.1217

 緒言 近年,加齢性黄斑変性における脈絡膜新生血管の診断に,インドシアニングリーン(ICG)螢光造影の有用性が指摘されている。今回筆者らは,加齢性黄斑変性の症例に対しICG螢光造影を行い,これより新生血管の存在が推測された部位にレーザー光凝固を施行し良好な結果を得たので報告する。

強度近視に伴う脈絡膜新生血管の予後不良因子の検討(第2報)

著者: 大竹能輝 ,   伊藤睦子 ,   赤澤嘉彦 ,   船田みどり ,   所敬 ,   土岐達雄

ページ範囲:P.1218 - P.1219

 緒言 筆者らは,1992年の日本臨床眼科学会総会において,強度近視に伴う脈絡膜新生血管は,病巣周囲の後極部の強度近視性網脈絡膜萎縮の程度により,新生血管板の大きさおよび視力予後に差があることを報告した1)。また,本症の新生血管板(フックス斑)は,黒色に近い灰白色(dirty gray)の色調のものが多く,これが本症の一つの特徴とされている2,3)。しかし,他の新生血管黄斑症にみられるように,帯黄灰白色の線維性結合組織の増殖の程度の強いと思われる症例もみられる。そこで今回は,新生血管板の色調により,経過,予後に差があるか否かを検討した。

増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術成績

著者: 内藤毅 ,   谷英紀 ,   矢野雅彦 ,   新田敬子 ,   三村康男

ページ範囲:P.1220 - P.1221

 緒言 近年,硝子体手術の進歩とともに,増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術成績も向上しつつある。今回筆者らは,徳島大学附属病院眼科における増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術成績を検討したので報告する。

インターフェロンα投与例にみられた網膜症

著者: 萩原実早子 ,   高橋寛二 ,   岡見豊一

ページ範囲:P.1222 - P.1223

 緒言 インターフェロン(IFN)の投与を受けた患者の後極部網膜に綿花様白斑,表層性出血,網膜静脈閉塞症,硝子体出血などの発生が報告され1〜3),いわゆるIFN網膜症として注目されるようになった。当科でC型肝炎に対してIFN-α投与中に発生したIFN網膜症の3症例を報告するとともに,網膜症の発生機序について考察した。

増殖糖尿病網膜症硝子体手術後の再手術例

著者: 北島英彰 ,   平形明人 ,   前田利根 ,   三木大二郎 ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.1224 - P.1225

 緒言 増殖糖尿病網膜症(PDR)に対する硝子体手術の適応は,手術が器具や手技の発達により比較的安全に施行できるようになり,より良好な視力予後をめざして手術時期を早める方向にある。一方,比較的視力良好な症例に手術しても20%が光覚なし(NLP)に至ったとの報告もある1)。手術によって予後が悪化する因子を見直すことは,今後の手術時期を決定する上で大切である。そこでこれまでの手技と適応での手術結果を見直し,PDRの硝子体手術後に再手術を要した症例の予後を悪化させた因子を検討した。

未熟児網膜症重症例の検討

著者: 三浦昌生 ,   阿佐美知栄

ページ範囲:P.1226 - P.1227

 緒言 近年,周産期医療の進歩は目覚ましく,従来生存が不可能であった未熟児の生存が可能となっている。しかし,それに伴いさまざまな合併症も増加している。特に眼科領域では重症の未熟児網膜症が増加しており,従来の治療適応では対応が困難なことが多い。今回筆者らは,対象を重症の未熟児網膜症に絞って,その治療時期や方法に検討を加えた。

眼窩内上側への刺傷による視神経障害

著者: 杉山純 ,   大平明彦 ,   藤田南都也

ページ範囲:P.1228 - P.1229

 緒言 外傷性視神経損傷は,頭部外傷の約2%の頻度で発生し,その要因により視神経の様々な箇所で損傷される1)。まれに視神経が眼窩内に入った異物により直接傷害される例もある。筆者らは,細い金属棒(直径5mm)により眼窩尖端部で,視神経を直接損傷したと思われる2症例を経験した。両症例とも棒の刺入部は左側眼窩内側上縁で,解剖学的に眼窩外側,下側より視神経を直接損傷する危険の高い刺入方向であると考えられた。

片頭痛に伴った外転神経麻痺の1例

著者: 鈴木利根 ,   藤田恒 ,   林振民 ,   小原喜隆

ページ範囲:P.1230 - P.1231

 緒言 片頭痛が原因で視覚障害や瞳孔異常をきたすことは知られている1)。片頭痛に,外眼筋麻痺を伴う眼筋麻痺性片頭痛は極めて稀で,片頭痛患者5000例のうち8例2),あるいは外眼筋麻痺患者1278例中9例(0.7%)ともいわれる3)。しかもこれらは若年の動眼神経麻痺が多いといわれ2,4,5),外転神経麻痺はさらに珍しい6,7)。もともと外転神経麻痺の原因は不明例を含め種々の原因がある3)。また外眼筋麻痺の際には痛みを伴う場合が比較的多いので,本疾患は頻度は少ないものの鑑別疾患のひとつに加えるべき点で重要と考え報告した。

動静脈シャントを伴った眼窩内動静脈奇形の1例

著者: 大神恵子 ,   今永至親 ,   林英之 ,   相川博 ,   福島武雄

ページ範囲:P.1232 - P.1233

 緒言 片眼性眼球突出の原因のうち,血管性疾患には頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)や動静脈奇形(AVM)などがあるが,眼窩内AVMは1978年のMichelsenら1)の報告以来8例と報告例が少なく稀な疾患といわれている1〜4)。今回筆者らは眼窩内AVMと診断された症例を経験したので報告する。

眼科受診の遅れる糖尿病網膜症患者(第2報)

著者: 湯口幹典 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.1234 - P.1235

 緒言 糖尿病網膜症の管理に眼科医,内科医の相互協力が必要なことはいうまでもないが1),現実には,糖尿病治療の開始後長期間たってから,はじめて眼科を受診する例が少なくない2)。そこで,眼科受診が遅れる背景,主訴などについて調査した。

加齢黄斑変性症の12症例に対する硝子体手術による治療の試み

著者: 山田孝彦 ,   菅野俊雄 ,   君塚佳宏 ,   玉井信

ページ範囲:P.1236 - P.1237

 緒言 当教室では,多量の網膜下出血や硝子体出血をきたした加齢黄斑変性症に対して,適応(表1)に合致した症例を選んで硝子体手術による治療を行っている1,2)。今回は,硝子体手術による治療を試みた加齢黄斑変性症12症例の経過を通して,本疾患の手術適応や術後の視力予後についていくつかの知見を得た。

両側突発性難聴を併発したぶどう膜炎の1例

著者: 柴田恭江 ,   三輪真奈美 ,   成田康美 ,   平井樹男

ページ範囲:P.1238 - P.1239

 緒言 眼外症状として耳鳴や難聴などの内耳障害を伴うぶどう膜炎では原田病がよく知られている。原田病はメラノサイトを標的とする自己免疫疾患と考えられているが,最近ではその免疫異常のtriggerとしてのEBウイルスの関与が想定されている1)。今回筆者らは,臨床的に原田病の所見を呈していながらも,聴力障害形式およびウイルス学的検査からヘルペスウイルス関与が示唆される症例を経験したので報告する。

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・12

胎児の角膜上皮

著者: 杉田新

ページ範囲:P.1069 - P.1069

角膜上皮細胞は多角形で,大小不同がみられる。上皮細胞間に電子密度の差はなく,いわゆるlight-dark contrastは認められない。上皮細胞の自由表面には指状あるいは枝分れして不規則につながったmicroprojectionが密生している。上皮細胞の境界は明瞭で,直線状の高まりとして認められる。上皮細胞間には,しばしばmicroprojectionの分布が疎な,小型の上皮細胞もみられる。6か月ヒト胎児。×3,400

眼科手術のテクニック—私はこうしている・66

テノン嚢下ピンポイント麻酔法

著者: 深作秀春

ページ範囲:P.1070 - P.1073

理想の麻酔は
 最も多用されている球後麻酔法は視神経損傷,眼球穿孔,球後出血などの合併症の可能性がある。球後麻酔は筋円錐中に麻酔液を注入する方法であるために多くの合併症が起こり得る。さらに,経皮的球後注射は強い疼痛を与え,これは手術の疼痛よりもはるかに苦痛となる。
 理想の麻酔は,手術中の充分な疼痛抑制,合併症がないこと,麻酔施行で患者に苦痛を与えないなどの総合的な観点からとらえる必要がある。

眼の組織・病理アトラス・92

脈絡膜血管腫

著者: 大西克尚 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1074 - P.1075

 脈絡膜血管腫choroidal hemangiomaは良性血管性過誤腫である。脈絡膜は血管に富んだ組織であるが血管腫の発生は少ない。脈絡膜だけに血管腫が存在する孤立型(図1)と,スタージ・ウェーバー症候群に合併したびまん型(図2)の2種類がある。孤立型血管腫は30歳台までに発見されるが,びまん型血管腫は顔面にも血管腫があるために学童期までに診断されることが多い。
 スタージ・ウェーバー症候群は母斑病の一つで,三叉神経の支配領域の顔面皮膚に片側性の血管腫があり,特徴的な顔貌をしている。皮膚病変と同側の脈絡膜に血管腫があり,輪部結膜血管の拡張,緑内障を合併することがある。頭蓋内に石灰化があり,てんかん,知能障害を伴う。

今月の話題

インドシアニングリーン赤外螢光眼底造影の解析

著者: 白木邦彦

ページ範囲:P.1077 - P.1080

 インドシアニングリーン(以下ICG)赤外螢光眼底造影をデジタル画像とすることにより,画像間の比較と画像中での輝度・距離・面積などの検討が可能になる。今回,ICG赤外螢光眼底造影像間およびフルオレセイン(以下Fluo)螢光眼底造影像との比較について紹介する。

眼科図譜・333

顕著な両眼性角膜脂質沈着

著者: 松尾俊彦 ,   松尾信彦 ,   高橋節夫

ページ範囲:P.1250 - P.1251

緒言
 家族性高脂血症において角膜に脂質沈着がみられることはよく知られている1)。また加齢にともなってみられる角膜周辺部全周の淡い混濁,いわゆる老人環も脂質沈着によることがわかっている1,2)。今回,両眼の角膜実質に広範な沈着物がみられ,角膜生検を行い脂質沈着であるとの確定診断を得た症例を経験したので,ここに供覧する。

マイアミ留学記・その2

緑内障遺伝子が見つかった!?

著者: 谷原秀信

ページ範囲:P.1244 - P.1244

 今回は論文の紹介をしようかと思います。紹介したい論文は緑内障関連遺伝子に関する報告です。この話題は,1993年のJackson Memorial Lectureとしても,American Academy of Ophthalmologyで取り上げられ,非常に注目を集めているところです(P.R.Lichter:Genetic clues to glaucoma's secret)。
 論文は「Sheffield VC et al:Genetic linkage of familial open angle glaucoma to chromosome lq21—q31.Nature Genetics 4:47-50,1993」です。日本のマスコミでも取り上げられたことがあるので,御存じの方も多いでしょう。「Nature Genetics」という雑誌はあまりなじみがないかもしれませんが,この雑誌はごく最近,有名な学術雑誌「Nature」から派生して創刊されたものです。分子遺伝学molecular geneticsに関する研究が急激に進展し,それに伴い急増した論文数に「Nature」誌が対応するために作られた雑誌です。

眼科の控室

雨の日には

著者:

ページ範囲:P.1246 - P.1246

 外来に勤務していても,毎日毎日が新しい事ずくめではありません。老視のはじまりとか目の疲れとか,いわゆる不定愁訴めいた疾患が大半なのです。けれども,新人の時代から「毎日がマンネリ」とぼやかないでください。ありふれた疾患ばかりでも,なにかポイントを絞って見ていけば,少しずつプロの眼科医に成長していけるのです。
 房水静脈を探すというのはいかがでしょう。細隙灯顕微鏡で見れば,正常眼の30%にはこれが発見できますし,すこし慣れれば半数以上でこれがあるものです。球結膜にも上強膜にもあります。この練習をしておくと,緑内障の疑いがある眼の診断の良い参考になります。緑内障眼には房水静脈が見られる頻度が小さいので,もしこれがみつかれば,緑内障である可能性が低くなるからです。

臨床報告

急性後部多発性斑状網膜色素上皮症様眼底を呈した—原田病の1例

著者: 近藤照敏 ,   村川祐子 ,   河合江実 ,   稲本裕一 ,   西川睦彦 ,   山岸和矢

ページ範囲:P.1261 - P.1263

 片眼は原田病の典型的な網膜剥離を示し,他眼は急性後部多発性斑状網膜色素上皮症様眼底を示した1症例を経験した。症例は48歳女性。右眼視力低下を主訴として当科受診。右眼には視神経乳頭周囲から黄斑部にかけて網膜剥離があり,左眼には黄斑部に散在性の黄白色斑をみたが,網膜剥離はなかった。螢光造影で,右眼は脈絡膜から網膜下へと螢光色素の旺盛な漏出があった。左眼は造影早期には後極部に斑点状の低螢光病巣が多数みられ,造影後期にはそれらは斑状の過螢光を示した。左眼は原田病の早期でまだ網膜剥離をきたさない状態であり,脈絡膜循環障害の所見が主体となって急性後部多発性斑状網膜色素上皮症類似の所見を示したものと考えた。

手術時感染防止対策と抗生剤使用に関する全国アンケート調査報告

著者: 川本英三 ,   小島孚允

ページ範囲:P.1265 - P.1269

 眼科手術時の感染防止対策の現状を把握するため,全国の大学病院(80施設)および一般病院(2433施設)の計323施設に記名式アンケートを郵送し,227施設(無記名2施設,70.2%)から回答を得た。27%の施設で術衣を毎回は交換しない。また,毎回は手洗いをせず手袋の交換のみという施設が23%あった。一方,感染症術前検査は,梅毒とB型肝炎は100%,C型肝炎は69%,AIDSは6%の実施率で,体液を介するウイルスによる不顕性感染が憂慮された。予防的抗生剤の静注は行わないとする施設が19%あった反面,ルーチンに第3世代セフェム系を投与している施設が51%あり,メチシリン・セフェム耐性ぶどう球菌など耐性菌の出現・増加が危惧された。

シリコーン眼内レンズ移植眼における各種消炎剤の効果

著者: 梅沢幸子 ,   清水公也

ページ範囲:P.1271 - P.1275

 シリコーンレンズ移植眼の術後炎症を軽減するために,消炎剤の使用法について検討を行った。3ピースシリコーンレンズ(AQ3013, Canon-STAAR社)を移植した103眼を対象とし,消炎剤としてプレドニゾロン内服,ベタメタゾン(リンデロン®),ジクロフェナクナトリウム(ジクロード®)の点眼を行い比較すると,ジクロフェナクナトリウム点眼を行った群では術後1週から1か月目までの前房フレアが有意に低く,フィブリンと類嚢胞状黄斑浮腫の発生は1例も認められなかった。また,角膜上皮障害も認められなかった。今回の検討から,これまでシリコーンレンズにおいて問題であった術後炎症に対しては,ジクロフェナクナトリウムの長期点眼が,ひとつの解決手段になると思われた。

ビデオケラトグラフィーによる翼状片の角膜形状解析

著者: 富所敦男 ,   大鹿哲郎 ,   江口甲一郎

ページ範囲:P.1277 - P.1281

 翼状片眼62例67眼を対象にビデオケラトグラフィー(EyeSys®)を用いて翼状片眼の角膜形状につき定量的に解析した。EyeSys®は角膜上に16本の同心円状のマイアーリングを投影し,各リングごとに最高360個の屈折力測定点をもつ。各リング上で測定された角膜屈折力の変動係数(標準偏差/平均値)を角膜形状の歪みのパラメーターとして,各ステージの翼状片が角膜形状に及ぼす影響について検討した。翼状片の先端と角膜中心との距離(D)と角膜輪部での翼状片の幅(W)を測定し,角膜形状の歪みとの相関を一次回帰式を用いて検討したところ,Dのほうがよく角膜形状の歪みに対し相関していた(相関係数r=0.60〜0.65)。次に,対象とした翼状片眼をDの大きさにより5群に分類し,各群ごとに変動係数を正常対照群と比較したところ,翼状片の先端が角膜中心より3mm以内に近づいた群で,対照群よりも有意に大きな角膜形状の歪みが角膜の中心領域に認められた(対応のないt検定,p<0.01〜0.05)。翼状片の伸展に伴い歪みは増加し,翼状片が角膜中心の1mm以内に達した群では,すべてのリングの変動係数が正常群に比べ有意に大きかった(p<0.01)。このことは,翼状片の伸展に伴い角膜は中心に近い範囲から,徐々に歪んでいくことを示していると考えられた。

太田母斑に合併した脈絡膜悪性黒色腫の1例

著者: 太田浩一 ,   野呂瀬一美 ,   王笑春 ,   野原雅彦 ,   瀬川雄三 ,   徳島忠弘 ,   米山穣二 ,   中山淳

ページ範囲:P.1285 - P.1290

 太田母斑に合併した稀な脈絡膜悪性黒色腫の症例を報告した。患者は71歳の女性で,左眼周囲の皮膚に色素沈着が認められた。細隙灯検査で上強膜,前房隅角,虹彩の色素沈着が認められ,眼底に色素を有する隆起病変が存在した。螢光眼底造影検査および超音波検査では悪性腫瘍と考えられた。CT検査で高吸収域の腫瘍病変が認められた。T1強調の核磁気共鳴画像検査(T1)ではわずか高信号域に,T2強調画像(T2)では低吸収域として認められた。ガリウムおよび脳血流シンチグラフィーでは異常集積を認めなかった。左眼の眼球摘出術を施行した。病理組織学的にメラニン色素の少ない類上皮細胞型の脈絡膜悪性黒色腫と診断された。虹彩,前房隅角,毛様体,脈絡膜,強膜には色素を有するメラノサイトを認めた。悪性化の可能性があるため,太田母斑を有する患者は定期的な診察が必要と思われた。

Iridocorneal-endothelial syndromeの4例

著者: 雑賀司珠也 ,   山中修 ,   岡田由香 ,   小畑栄 ,   橋爪奈津子 ,   外江理

ページ範囲:P.1291 - P.1296

 4例のiridocorneal-endothelial (ICE)症候群(3例はChandler症候群と1例の本態性虹彩萎縮症)を報告した。このうち,Chandler症候群の1例で,投薬で眼圧がコントロールできず,trabeculectomyを行った。術中,採取された隅角組織および虹彩を透過型電子顕微鏡で観察した。隅角のコラーゲン層には,長さ1μm,50〜70nmの周期を持つ異常コラーゲンが認められた。従来報告されている虹彩表面の異常角膜内皮細胞が確認できた。

広角赤外螢光眼底造影

著者: 須藤憲子 ,   村岡兼光 ,   得居賢二 ,   高橋京一 ,   町田史子

ページ範囲:P.1297 - P.1304

 走査レーザー検眼鏡に前眼部アタッチメントを取り付け,非接触型広角前置レンズを併用することにより,約75°の画角で眼底を観察する方法を考案した。この方法を用いて,正常眼10眼と糖尿病網膜症を中心とする各種疾患32眼を対象に,広角インドシアニングリーン眼底造影を行った。これにより,造影初期には後極から周辺に至る脈絡膜循環が一度に広い範囲で動的に観察できた。虹彩ルベオーシスのある症例(眼圧14〜46mmHg)では,動脈相が延長して脈絡膜動脈が明瞭に観察され,脈絡膜循環遅延が存在していた。脈絡膜血管腫など眼底の広範囲を占める病変では,正常部位との差が同じ時相で観察できた。またパノラマ法を用いることにより,各方向の渦静脈を越える周辺部までの脈絡膜血管構築が容易に観察できた。今回の方法を用いることにより,従来の方法では得られなかった広範囲の同時的な画像を得ることができ,脈絡膜全体での循環異常の解明に有用であった。

自然寛解した黄斑部網膜上膜

著者: 陣林浩美 ,   保倉透 ,   西村哲哉 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1305 - P.1308

 自然寛解した網膜前膜(黄斑上膜)の2例を経験した。症例1は33歳女性。周辺部網膜血管腫に伴う続発性黄斑上膜で血管腫に対する光凝固後の後部硝子体剥離の発生とともに黄斑上膜は自然剥離した。症例2は57歳女性。網膜剥離手術後に生じた黄斑雛襲で,発生後約半年後に黄斑上膜は自然剥離した。黄斑上膜の自然剥離により2例とも視力を回復した。

老視に対する調節訓練

著者: 福與貴秀 ,   原田美世子 ,   吉田恵美子 ,   岸恵美子 ,   須戸明子 ,   藤井恵子

ページ範囲:P.1309 - P.1311

 一度低下した調節力が,遠方と近方を素早く繰り返し視るトレーニング(調節訓練)で改善する可能性があるかどうか試した。調節訓練を1日3分以上かつ1か月以上続けることができた9例のうち,7例で1D以上の調節力の改善がみられたことから,この方法は老視を改善させる手段として期待できるものと考えられた。

糖尿病網膜症における周辺部凝固と黄斑部凝固の凝固順序

著者: 熊谷和之 ,   出田秀尚 ,   熊丸茂 ,   石川美智子

ページ範囲:P.1315 - P.1318

 周辺部凝固と黄斑部凝固の望ましい順序を知るために,検眼鏡的に黄斑浮腫を伴う前増殖および増殖網膜症で,汎網膜光凝固を行った116例206眼をretrospectiveに検討した。血管アーケードの内と外のどちらを優先凝固したかで,内優先群,外優先群,内外同時群の3つのグループに分類した。結果は内優先群28眼では,悪化10眼(36%),不変17眼(60%),改善1眼(4%)。外優先群146眼では悪化41眼(28%),不変98眼(67%),改善7眼(5%)。内外同時群32眼では,悪化0眼(0%),不変30眼(94%),改善2眼(6%)であった。内外同時群は悪化例がなく,他の2群との間には有意差があった。黄斑浮腫眼の汎網膜光凝固は,周辺部凝固と黄斑部凝固を同時にバランスよく行うことが,術後経過中の視力低下も少なく良好な結果であった。

急性後部多発性斑状網膜色素上皮症のICG赤外螢光眼底造影

著者: 南部裕之 ,   松原孝 ,   福島伊知郎 ,   湖崎淳 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1319 - P.1323

 筆者らは典型的な急性後部多発性斑状網膜色素上皮症(acute posterior multifocal placoid pig—ment epitheliopathy, APMPPE)を経験した。フルオレセイン螢光造影では,病巣は初期には低螢光,晩期には過螢光を示し,いわゆる螢光の逆転現象を見た。インドシアニン・グリーン赤外螢光造影では,造影全経過を通して低螢光であり,脈絡膜血管が造影されなかった。この所見はAPMPPEの本態が脈絡膜毛細血管板の小葉単位での閉塞であることを示すとともに,低螢光の部分には病巣部の網膜色素上皮によるブロック効果も加わっていることが示された。

カラー臨床報告

糖尿病網膜症での輪状増殖病変の形成過程

著者: 丸山泰弘 ,   岸章治 ,   村岡兼光 ,   岡野正

ページ範囲:P.1253 - P.1257

 増殖性糖尿病網膜症で生じた輪状増殖性病変の形成過程を,20例24眼で観察した。初診時には24眼全例で硝子体が未剥離であった。光凝固開始から平均4.6か月後に,全例に血管アーケードの外側の中間周辺部で,全周もしくは部分的な硝子体剥離が起こった。後極部では黄斑前の後部硝子体皮質前ポケット(ポケット)に一致して,ゲルが眼底から分離していた。後部硝子体膜の剥離(PVD)は19眼では,後極部には全経過を通じて起こらなかったが,そのうち6眼で牽引性網膜剥離を合併した。5眼ではトランポリン状の浅いPVDが起こった。
 この輪状増殖病変は,18眼では後極部を底としたすりばち状の不完全なPVDが生じ,それを足場にして発達した新生血管線維膜で形成された。この段階で成長する新生血管はおもに視神経乳頭と耳側血管アーケード由来であった。
 輪状病変の形成には,血管線維膜以外に,黄斑前のポケットの輪状の輪郭が,硝子体出血や硝子体ゲルの混濁で顕性化すること(4眼)や,ポケットの外縁のゲルが線維化すること(5眼)も関与していることが,今回の検索で明らかになった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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