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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科48巻7号

1994年07月発行

雑誌目次

連載 走査電顕でみる眼組織……What is This?・13

虹彩色素上皮のメラニン顆粒

著者: 杉田新

ページ範囲:P.1331 - P.1331

虹彩色素上皮の割断面の走査電顕写真。虹彩色素上皮細胞の細胞質はメラニン顆粒で占められている。メラニン顆粒はほとんどが球形,一部ラグビーボール様で,大きさが一定しているが,稀に小さなメラニン顆粒(太矢印)もみられる。細矢印は虹彩色素上皮細胞の境界を示している。N:虹彩色素上皮細胞の核。PC:後房。ニホンザル。×9,700

眼科図譜・335

水晶体前方移動による狭隅角と脈絡膜剥離を伴った頸動脈海綿静脈洞瘻の1症例

著者: 中西徳昌 ,   白土城照 ,   根本繁

ページ範囲:P.1332 - P.1334

緒言
 頸動脈海綿静脈洞瘻(carotid-cavernous fis—tula:CCF)の眼症状としては眼球突出,高眼圧などが知られているが,狭隅角や脈絡膜剥離を伴うことは稀である。海外ではCCFに閉塞隅角緑内障を合併した症例が報告されており1),本邦でも脈絡膜剥離を合併した症例の報告はあるが2),狭隅角と脈絡膜剥離を伴った症例は本邦ではまだ報告がない。今回筆者らは,CCFに水晶体前方移動によると考えられる狭隅角と脈絡膜剥離を認めた症例を経験したので報告する。

眼の組織・病理アトラス・93

視神経乳頭の構築と緑内障性変化

著者: 久保田敏昭 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1336 - P.1337

 視神経乳頭は垂直方向にわずかに長い楕円形を呈し,その大きさは径1.4〜2.0mmでかなりの個体差がある。視神経乳頭は,その外縁で網膜のMüller細胞によって形成される内境界膜がなくなり,前面を星状膠細胞からなる内境界膜に覆われ,これが硝子体に接している。全網膜からの神経線維軸索がここに集まるので,周辺部は隆起し,中央部は陥凹している。この陥凹を乳頭陥凹という。視神経乳頭の範囲には,視細胞その他の網膜の組織が,神経軸索を除いて全く欠如するので,Mariotte盲点を形成する。脈絡膜は視神経に達する少し手前で終わっており,この部には強膜がElschnig輪を形成している。視神経の篩板前部prelaminar regionと篩板部intralaminar regionは主に短後毛様体動脈由来の脈絡膜の動脈の枝,Zinn動脈輪からの枝で栄養されている。視神経の篩板後部retrolaminar regionは主に網膜中心動脈からの枝で栄養されている。
 図1は正常な視神経乳頭の眼底写真と眼球水平断のPAS染色標本である。乳頭はブルッフ膜から反対側のブルッフ膜までの間に相当する。乳頭を白く縁どっている乳頭周囲強膜輪peripapil-lary scleral ringは,組織ではElschnig輪にあたる。乳頭の赤橙色の部であるリムは網膜神経線維が視神経管内に入るまでの網膜神経線維層の厚みに相当する(図1)。

今月の話題

硝子体手術と眼内レンズ挿入同時手術

著者: 西村哲哉

ページ範囲:P.1338 - P.1343

 硝子体手術と水晶体摘出,眼内レンズ挿入同時手術の適応,術式のポイントについて,自験例をもとに述べた。適応症例を厳選し,適切な術式を選択すれば術後経過は良好で,同時手術を積極的に行ってよいと思われた。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・67

カニューラによるテノン嚢下麻酔手技

著者: 德田芳浩

ページ範囲:P.1345 - P.1347

テノン嚢下と筋円錐コンパートメント
 麻酔科では,いくつかの構造物に囲まれた液体の貯留しやすい単位領域を,コンパートメントと呼ぶ概念がある。コンパートメントは,必ずしも厳密な閉鎖腔である必要はなく「麻酔薬を注入した場合,貯留しやすい領域」と定義される。
 図1は,家兎テノン嚢下に投与した造影剤の透視像である。眼球赤道部を越えたテノン嚢下に投与された造影剤は,眼窩尖端部を頂点とした円錐状で,底面は眼球を後方から赤道部前方まで包み込むように貯留している。家兎とヒトのテノン嚢の膜としての透過性には差がないので,この実験から次の3つのことがわかる。

臨床報告

グリチルリチンと免疫グロブリン製剤の大量点滴で軽快したHIV抗体陽性血友病患者のサイトメガロウイルス網膜炎

著者: 野田康子 ,   佐藤章子 ,   荒井優子 ,   佐藤雄一 ,   河内暁一 ,   松山秀一

ページ範囲:P.1357 - P.1362

 血液製剤からhuman immunodeficiency virus (HIV)に感染した11歳男児の血友病患者が,急激な免疫グロブリン値の低下をきたした後にサイトメガロウイルス網膜炎を両眼に発症した。副作用を考慮してガンシクロビルは用いず,以前から同患者に行われていたグリチルリチン大量点滴投与,sul—famethoxazole・trimethoprimなどの内服を継続し,免疫グロブリン製剤を併用した。両眼の眼底病変は細胞性免疫および液性免疫の改善とともに鎮静化し,再燃なく現在まで経過している。グリチルリチンおよび免疫グロブリン製剤の投与による免疫能の改善が,サイトメガロウイルス網膜炎の消炎に寄与したと考えられた。グリチルリチン大量点滴療法は重篤な副作用もなく,決定的な治療法のないHIV感染症およびサイトメガロウイルス網膜炎に対して試みる価値があるものと考えられた。

白内障手術を施行した重篤な壊死性強膜炎

著者: 甘利秀美 ,   甘利富士夫 ,   栗原和之 ,   野呂瀬一美 ,   瀬川雄三

ページ範囲:P.1365 - P.1368

 重症の壊死性強膜炎にて約半周にわたる強膜ぶどう腫が認められた症例に対し,残存した健常な強膜から白内障手術を行った。
 症例は82歳の男性で,約2年前から近医にて壊死性強膜炎に対しステロイド点眼,内服治療を受け,約1年前から炎症は鎮静化していた。その後急速に進行した白内障に対して,今回,水晶体嚢外摘出術および眼内レンズ挿入術を行った。術後虹彩炎は中等度で強膜炎の再発はなく,矯正視力1.0となった。長期の経過観察が必要ではあるが,重症な壊死性強膜炎に対し白内障手術を行った稀な症例として報告した。

眼内T細胞悪性リンパ腫の病理学的考察

著者: 安藤一彦 ,   幸田富士子 ,   永山剛久

ページ範囲:P.1369 - P.1372

 硝子体切除術の際に採取した眼内組織生検により診断できた眼内T細胞悪性リンパ腫の73歳女性例を経験した。リンパ腫に対して放射線療法,化学療法を行ったが,患者は診断確定後約半年で死亡した。剖検の終果,ほぼ全身にリンパ腫の病巣が認められた。臨床経過からは腫瘍は眼内原発であると考えられ,また剖検で得られた病理所見によっても眼球から中枢神経系への転移が示唆され,さらに,リンパ腫の脳内浸潤経路はVirchow-Robin腔であると考えられた。

アルゴンレーザーによる睫毛乱生症の治療

著者: 小路万里

ページ範囲:P.1383 - P.1386

 アルゴンレーザー光凝固による睫毛乱生症37眼の治療成績を報告した。レーザーの照射条件は,50μm,750mW,0.1秒で,照射数は睫毛根部に達するまで任意に設定した。睫毛1本あたり20回以上照射した場合に有意な治療効果が認められた。この方法は局所麻酔を必要とせず,外来で簡便に行うことができる。初回照射の有効率は50%程度なので1回の治療で有効な結果を得ることは困難であったが,反復治療によって治療効果のあがる可能性がある。

超音波による新生児の未熟度と眼軸長の比較

著者: 星野美佐子 ,   山田利津子 ,   太根節直 ,   森直行

ページ範囲:P.1387 - P.1390

 新生児114例228眼の眼軸長計測を行い,全身所見との関連を検討した。眼軸長と出生体重,在胎週数,体表面積,頭囲,身長,胸囲に相関関係がみられた。また,眼軸長と未熟児網膜症のstageにおいては逆相関関係がみられた。未熟児網膜症で冷凍凝固を行ったstage 3は,眼軸長16.6mm以下で,出生体重1,080g以下,身長34cm以下,体表面積0.104m2以下,在胎週数28週4日以下,胸囲23.2cm以下,頭囲24.7cm以下に,全例が含まれた。
 出生体重2,500g未満の未熟児の眼軸長の平均は16.6mm,出生体重2,500g以上の成熟児の眼軸長の平均は16.9mmで,平均値の差の検定において2,500g未満の未熟児が有意に眼軸長が短かった(p<0.001)。

加齢黄斑変性症に対する硝子体手術

著者: 古川晶子 ,   池田恒彦 ,   張野正誉 ,   斉藤喜博 ,   檀上眞次 ,   小池仁 ,   中江一人 ,   田野保雄

ページ範囲:P.1393 - P.1397

 阪大眼科および国立大阪病院眼科において硝子体手術を施行した加齢黄斑変性症23例24眼(硝子体出血併発例18例19眼,網膜下血腫のみ5例5眼)の臨床像および手術成績について検討した。硝子体出血併発例に対しては硝子体切除術,網膜下血腫例に対しては網膜下血腫の洗浄を行った。硝子体出血併発例のうち後部硝子体剥離が不完全な3眼で,術後に医原性裂孔が原因と考えられる網膜剥離をきたした。網膜下血腫型では,出血後早期に手術を施行した症例では良好な術後視力が得られたが,陳旧性出血例では血腫の排除が困難で,網膜の萎縮性変化のため術後視力は不良であった。網膜下血腫例では,出血後早期に手術を施行するべきと考えられた。

ベーチェット病のシクロスポリンとコルヒチンの併用療法

著者: 北沢万里子 ,   沼賀二郎 ,   藤野雄次郎 ,   林清文 ,   伊沢保穂 ,   増田寛次郎

ページ範囲:P.1401 - P.1404

 シクロスポリンとコルヒチンの併用を行ったベーチェット病のぶどう膜炎患者32例58眼を対象とし,コルヒチン併用前後の治療成績と副作用を検討した。その結果,年間の眼発作頻度は併用前4.4回から併用後2.2回に有意に減少していた。また併用後,腎機能異常が11例(34%),下痢が10例(31%),肝機能異常が9例(28%),高血圧が4例(13%),高CPK血症が2例(17%)にみられた。これらの副作用は薬剤の減量または中止により軽快した。

視力予後不良であった網膜中心静脈閉塞症の1病型

著者: 高橋義徳 ,   高橋茂樹

ページ範囲:P.1405 - P.1408

 症例1は57歳女性。初診時眼底は乳頭が発赤,腫脹し,静脈には拡張,蛇行そして,眼底出血がみられ,乳頭周囲および耳側静脈に沿って軟性白斑が認められた。組織プラスミノーゲンアクチベーターを投与したが,黄斑浮腫が増悪し,汎網膜光凝固を行った。症例2は78歳男性。初診時眼底は乳頭が発赤し,静脈は拡張と蛇行し,出血が散在していた。さらに乳頭周囲に軟性白斑が認められた。ウロキナーゼを投与したが,出血が増悪し,乳頭周囲の軟性白斑が増加した。汎網膜光凝固を開始したが,隅角に新生血管がみられた。網膜中心静脈閉塞症のなかでも乳頭周囲に軟性白斑の形成がみられる病型は特に視力予後不良なので注意が必要と考えられた。

糖尿病網膜症7年間の追跡調査第1報積極的治療を行った一般病院での予後

著者: 秋澤尉子 ,   松原明子 ,   高原真理子 ,   土信田久美子

ページ範囲:P.1411 - P.1415

 1984〜1990年の7年間に,前増殖性網膜症早期より積極的に光凝固を行うという治療方針で管理したType 2糖尿病患者75例150眼の網膜症自験例を追跡調査した。7年後に網膜症のない群は減少,単純性網膜症群は増加し,増殖性網膜症は増減がなかった。網膜症のない群のうちそのまま残ったのは44.1%であった。福田分類A2のうち,A2のままだったのは52.3%であり,増殖化したのは34.1%であった。全体では,改善16.0%,不変40.0%,悪化44.0%であり,従来の大学病院の報告と大差ない結果であった。大学病院では理想的管理が行われ網膜症の予後がよいと考えられるが,一般病院でも積極的に光凝固を行えば大差ない結果が得られることがわかった。

超広角インドシアニングリーン螢光眼底造影の方法と所見

著者: 高橋京一 ,   村岡兼光 ,   得居賢二 ,   町田史子

ページ範囲:P.1419 - P.1426

 広範囲脈絡膜循環の検索を目的として,新しい超広角赤外螢光眼底造影法を開発した。走査レーザー検眼鏡に広角前置レンズを併用し,眼球圧迫のない生理的状態で,約80°の画角の脈絡膜造影に成功した。さらに,周辺部を含む画像を貼り合わせることで,眼底全域の脈絡膜血管構築の観察が可能であった。
 正常12眼と病的眼42眼を対象として,超広角赤外螢光眼底造影を施行した。
 短後毛様動脈は,主に乳頭と黄斑を囲む領域から現れ周辺部に向かい走行した。短後毛様動脈は造影パターンから4〜6個の動脈群に分けることができた。分水嶺は61%の例で検出することができた。その検出には脈絡膜動脈の走行パターンが関与した。静脈系の分水嶺は基本的には乳頭を通る水平線と垂直線領域であったが,個人差が大きかった。渦静脈は5〜11個,平均7個検出された。内頸動脈閉塞症では脈絡膜循環が遅延していた。三角症候群,地図状脈絡膜炎,糖尿病網膜症などで,局所的な脈絡毛細管板の造影遅延や閉塞が観察された。糖尿病網膜症や原田病では,脈絡膜静脈数の減少が眼底全域で観察された。治療により寛解した原田病では脈絡膜静脈螢光は回復した。三角症候群では脈絡膜血管の狭細化がみられた。
 本法は,脈絡膜循環の知識を大幅に拡充する検査法であると結論される。

超音波水晶体乳化吸引術でのパルスと連続モードの超音波発振量

著者: 山上聡 ,   山上淳吉

ページ範囲:P.1429 - P.1431

 超音波水晶体乳化吸引術(PEA)の超音波発振時間,超音波発振積算値を,連続モードとパルスモードでprospectiveに比較検討した。Emery分類grade Ⅱ,Ⅲ,Ⅳのいずれの白内障においても,パルスモードは連続モードに比し,超音波発振時間および超音波発振積算値が有意に少なく,超音波発振積算値はほぼ1/2であった。これらの結果より,パルスモードによるPEAは,超音波発振量を減少させることができ,角膜内皮細胞の減少や創口部の熱損傷を軽減する可能性があると思われた。

カラー臨床報告

Choroideremiaの3家系

著者: 大塚宏之 ,   萩田勝彦 ,   湯沢美都子 ,   松井瑞夫

ページ範囲:P.1349 - P.1355

 Choroideremiaは,両眼性で進行性の夜盲と視野障害を主症状とし,網膜色素上皮と脈絡膜の進行性萎縮脱落を主要病変とする,X染色体性劣性の遺伝性疾患である。今回,進行程度の異なる3症例を経験した。本症の診断には眼底所見のみでは困難な場合もあるが,螢光眼底所見は特徴的であり,女性保因者の検査を行うことで,診断可能であった。女性保因者の眼底所見は,個人差が大きく眼底所見のみでは異常を見落とす可能性もあるため,螢光眼底造影を行う必要があると考えられた。

眼科の控室

硝子体の観察法

著者:

ページ範囲:P.1376 - P.1376

 古典的眼科学の時代とは一変して,硝子体が臨床で重要な役割を演じることがますます多くなってきました。網膜剥離と糖尿病網膜症では硝子体の検査は必須ですし,ベーチェット病などのぶどう膜炎でも,硝子体剥離の有無が病変の予後に大きく関係することが知られてきています。
 プロ向きの話は別として,一般臨床での硝子体の見方のコツを考えてみます。まず便利なのが,直像鏡を使った徹照法です。初発白内障でも,水晶体の断面をみる細隙灯顕微鏡よりも,徹照のほうが情報量が多い場合がよくあります。眼軸の線をzとすると,xyの面での所見が確実にとれるからです。硝子体についても同様です。

マイアミ留学記・その3

ARVO annual meeting

著者: 谷原秀信

ページ範囲:P.1379 - P.1379

 毎年,日本での黄金週間の前後にアメリカではARVOと通称される学会が開催されます。1994年度もフロリダはサラソタという町で開催されました。この学会は日本でいえば日本眼科学会総会に相当するもので,アメリカを中心に世界中から眼科・視覚領域の研究者が集って,1週間にわたって延々と続けられます。ちなみに1994年度は4,487題が発表されました。日本からも大挙して多くの研究者がアメリカにやってきました。年々,日本人の参加者が増えているような気がしたので,何でも情報分析したがる私の趣味を発揮して,ためしに演題数の多いランキングを検討してみました。演題数の多い順に並べると,なんと上位25名のうち5名が日本人でした(表1)。どおりで会場でよく日本人をみかけるはずだと納得した次第です。が多数の研究室で活発に行われつつあるようです。さっそくARVOで,この領域で研究をしている先生をつかまえていろいろ教えてもらいました。詳しくは回を改めて記載します。ところでARVOでは素晴らしい業績を残した研究者を称えるための賞がいくつかあります。その中でも最も歴史の長いのがProctorMedalで1946年に設立され,眼科学に貢献のあった優れた業績を残した研究者に贈られます。1994年度はUCLAのDr.Richard N.Lolley, Dr.Debora B.Farberの2人が受賞しました。網膜変性モデル動物の

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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