臨床報告
中心性漿液性網脈絡膜症における脈絡膜血管病変
著者:
飯田知弘1
村岡兼光1
萩村徳一1
高橋慶1
所属機関:
1群馬大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1583 - P.1593
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中心性漿液性網脈絡膜症31例31眼を対象として,インドシアニングリーン(ICG)を用いた赤外螢光眼底造影を行った。造影初期には脈絡膜造影の遅延が87%で観察された。フルオレセイン螢光漏出部に一致して網膜下へのICG螢光漏出が81%でみられ,この部位には61%で脈絡膜静脈が走行していた。ICG螢光造影後期には,境界が不鮮明で過螢光を示すICGによる脈絡膜組織染が高頻度に観察され,この所見は網膜下への螢光漏出部を含んだ領域では84%にあった。これは光凝固あるいは自然経過で寛解して漿液性網膜剥離が消褪した後にも持続し,2眼ではこの領域内で網膜下への螢光漏出の再発が起こった。この過螢光を示す脈絡膜組織染は脈絡膜血管の透過性亢進を反映した所見と解釈でき,螢光漏出部以外の正常な部位にも68%で,他眼にも55%で観察された。一方,対照とした正常眼6眼では,後期像はほぼ均一な螢光を示した。中心性漿液性網脈絡膜症の発症の基礎にはこれらの脈絡膜血管病変があり,色素上皮の障害は二次的なものと考えられる。本症の脈絡膜血管病変は黄斑部だけに限局せず,また両眼性にも存在するものと結論される。