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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科49巻10号

1995年10月発行

雑誌目次

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・82

Foldable IOLの術中合併症(2)—アクリルソフトIOL

著者: 大鹿哲郎

ページ範囲:P.1614 - P.1615

 はじめに 前回の高屈折率シリコーン眼内レンズ(IOL)に続き,今回はアクリルソフトIOLの術中合併症について述べる。

眼科図譜・345

原発性虹彩毛様体嚢胞

著者: 勝島晴美 ,   鈴木治之 ,   丸山幾代

ページ範囲:P.1618 - P.1619

緒言
 虹彩嚢胞は稀な疾患ではないが1,2),虹彩と毛様体の移行部から発生した原発性虹彩毛様体嚢胞2)の報告は本邦ではほとんどみられない。筆者らは3例の虹彩毛様体嚢胞を経験し,それらを細隙灯顕微鏡で直接に観察したので報告する。

今月の話題

緑内障と白内障の合併症の手術

著者: 根木昭

ページ範囲:P.1622 - P.1629

 緑内障と白内障を合併している時の手術法には①緑内障手術を先行して眼圧調整後白内障手術をする,②白内障手術を先行し眼圧調整不十分なら緑内障手術を追加する,③同時手術,の3選択がある。それぞれの適応と術式の問題について考えたい。

眼の組織・病理アトラス・108

転移性眼窩腫瘍

著者: 坂本泰二 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1630 - P.1631

 転移性眼窩腫瘍は眼窩腫瘍の4.5〜10%を占める稀な疾患である。小児と成人では原発巣が一般に異なる。小児では,神経芽細胞腫やウィルムス腫瘍が原発巣となることが多い。成人については,欧米では原発巣は乳腺肺が多いとされてきたが,日本では乳腺,胃,副腎からの転移が多かった。しかし,近年の肺癌の罹患率上昇に伴って肺からの転移が増えている。
 好発年齢は小児または50歳から60歳台である。臨床症状は,腫瘍が転移した部位により異なる。複視,眼球突出,腫瘤触知,眼痛,眼瞼下垂,結膜浮腫,視力低下などがみられる。通常片眼性であるが,まれに両眼性のことがある。特に小児に多い神経芽細胞腫やウィルムス腫瘍の眼窩内転移では,急速に進行する両眼性眼瞼下垂と眼窩縁の斑状出血という特徴的な症状を示す。診断にはCT検査や生検が必要である。原発巣よりも先に眼症状がみられる場合や,原発巣が治療された後に数年を経てから眼症状が出現することがあり,診断が難しいことがある。血清CEAなどの腫瘍マーカーが診断の助けとなる。

臨床報告

超音波角膜厚計測装置の試作

著者: 中川夏司 ,   林英之

ページ範囲:P.1638 - P.1640

 新しい超音波角膜厚計測装置を開発した。健康成人10人20眼を本装置と従来から市販されている超音波角膜厚計測装置DGH−500(国際交易/興和オプチメド)を用いて計測した。その結果,試作装置とDGH−500による測定値の相関関係は0.9929で,一次回帰直線はY=0.965X+14.8μm (Y:試作装置測定値:X:DGH−500測定値)であった。試作装置は,DGH−500によく相関し,十分に信頼できるものであった。

小瞳孔例の超音波白内障手術における瞳孔括約筋楔状切除による簡便な瞳孔拡張手技

著者: 德田芳浩 ,   江口秀一郎 ,   江口甲一郎 ,   恩田健 ,   内海榮一郎 ,   吉富文昭

ページ範囲:P.1641 - P.1644

 小瞳孔例の白内障手術における瞳孔拡張手技として,これまで困難であった上方の瞳孔括約筋切除を簡便に行う手術手技を考案した。
 本手技は,従来から報告されているような,虹彩リトラクターや硝子体剪刀などの特殊な器具を必要とせず,小切開創や長い強角膜弁を有する創からでも,上方の瞳孔括約筋切除を極めて容易に行える。本手技の導入により,全幅虹彩切開と再縫合のような,煩雑で侵襲の強い手技を用いずに,瞳孔の拡大と円形瞳孔の保持を得ることができ,従来より虹彩切開術の欠点と考えられていた,術後の瞳孔不整も軽減できた。

シソマイシン点眼剤による結膜上皮剥離の8症例

著者: 山田利津子 ,   佐野和人 ,   土屋優子 ,   小松章

ページ範囲:P.1645 - P.1649

 アミノグリコシド系抗生物質シソマイシン(sisomicin:SISO)点眼剤は広域スペクトル抗菌剤で,ことにグラム陰性菌を疑われる症例には短時間で著効を示す。また,インドール陰性Proteus菌や一部の緑膿菌などのゲンタマイシン耐性菌や,ニューキノロン剤低感受性菌にも有効であり,角膜障害の少ない点眼剤として汎用されている。今回はSISO点眼液が原因と考えられる結膜上皮剥離を生じた8症例を経験した。これらの症例はSISO点眼開始後3〜29日後に,輪部結膜に上皮剥離を生じ,投与中止後6日以内に改善をみた。上皮剥離は主として瞼裂間領域から下部の輪部結膜に生じ,直径1〜3mmの大きさであった。症例は塩化ベンザルコニウムおよびSISOによる角膜のアレルギー症状は認められず,基礎に局所の生体防御機構の異常をきたしうる疾患を有し,SISOによる細胞毒性が原因と考えられた。

外傷性不完全型視神経乳頭離断の1例

著者: 根本徹 ,   市辺義章 ,   斎藤隆 ,   土屋邦彦 ,   向野和雄

ページ範囲:P.1653 - P.1657

 12歳女児の鈍的外傷による外傷性不完全型視神経乳頭離断の症例を経験した。投げられた傘の木製の先端が左上眼瞼に当たり受傷し,2日後に紹介により受診した。左眼の視力は,眼前50cm/手動弁(矯正不能)。角膜びらん,前房所見として前房出血,炎症細胞,滲出物がみられた。左眼の硝子体の上方には硝子体混濁がみられ,下方に少量の硝子体出血,および網膜前出血がみられた。左眼底所見としてはBerlin混濁と下方周辺部の網膜振盪症がみられた。視神経乳頭は発赤,腫脹し,一部下方がかなり深く陥凹し,蛍光眼底写真からも視神経乳頭部分離断と考えられた。Goldmann視野検査で患眼は下方視野の一部のみが保存されていた。保存的治療を行い,受傷後約2年が経過したが矯正視力は0.2とある程度保たれ,下方視野はかなり保たれている。一般に多量の硝子体出血などで眼底の透見が困難であることが多いこの疾患で,本症例は硝子体出血が少なく,初診時より眼底検査,蛍光眼底検査を含めた眼科的検査が可能でその推移をみることができた。さらに,本症例の受傷機転などについても考察を加えた。

原発開放隅角緑内障に併発した角膜内皮炎

著者: 藤原温子 ,   松尾俊彦 ,   山本敏広 ,   松尾信彦 ,   井上康

ページ範囲:P.1658 - P.1661

 10年来の両眼性原発開放隅角緑内障の70歳男子の右眼に角膜内皮炎が発症し,眼圧が急激に上昇した。この角膜内皮炎は,特徴的な臨床所見からヘルペス性角膜内皮炎と考えた。眼圧はステロイドの局所的および全身的投与と,抗ウイルス剤の併用により下降した。原発開放隅角緑内障の経過中に眼圧が急激に上昇した場合は,角膜内皮炎や虹彩炎などの炎症が起こり,続発性緑内障の機序が重なっている可能性があるので注意を要する。

甲状腺眼症による複視に対する放射線療法後の手術

著者: 中島理子 ,   小笠原孝祐 ,   朝倉章子 ,   森敏郎 ,   渋谷政子 ,   栗原英夫 ,   田澤豊

ページ範囲:P.1663 - P.1666

 甲状腺眼症による眼球運動制限に伴って生じた複視に対して,球後に放射線照射を行ったのちに外眼筋手術を施行して術後良好な眼位矯正が得られた。対象は男性4例,女性8例,計12例である。放射線治療は球後にリニアック15〜20Gyを10日間に分けて照射した。照射後平均1か月の期間を置いて外眼筋手術を行った。手術の翌日から正面視において複視は消失あるいは軽減した。1例には外眼筋手術を追加した。今回の症例は複視の自覚から手術まで平均6.1か月であった。放射線照射を行うことによって手術までの期間を短縮することが可能となり,この方法は有効な治療法と思われた。

フックス角膜内皮変性症の3世代1家系

著者: 門之園一明 ,   鎌田光二 ,   加藤英記

ページ範囲:P.1667 - P.1671

 日本では稀なフックス角膜内皮変性症の3世代にわたる家族内発症例を報告した。発端者は72歳の女性であり,両眼の滴状角膜,角膜実質浮腫および軽度の上皮浮腫を認め,フックス角膜内皮変性症の第2期と診断した。3世代にわたる家系調査の結果,細隙灯顕微鏡検査,角膜内皮細胞分析によるフックス角膜内皮変性症第2期と考えられた例が3例(男性2例,女性1例),第1期と考えられた例が1例(男性)発見された。また,2眼に開放隅角緑内障を認めた。本家系は常染色体優性遺伝を示し,加齢に伴って疾患が重症化した。

限局性漿液性黄斑部網膜剥離を伴うuveal effusion syndromeの1症例

著者: 曽根昭子 ,   竹田宗泰 ,   鈴木純一 ,   奥芝詩子 ,   関根伸子 ,   鈴木治之 ,   野中富夫 ,   中川喬

ページ範囲:P.1673 - P.1677

 左眼の視力低下を主訴に受診した37歳男性に脈絡膜剥離と,螢光眼底造影にて黄斑部に螢光漏出を示す扁平な漿液性網膜剥離を認めた症例を経験した。Uveal effusion syndromeを最も強く疑い強膜開窓術を施行した。この手術により脈絡膜剥離は術後翌日より消失し,しかも黄斑部の漿液性網膜剥離も消退した。したがってこの2つの病変の発生機序に経強膜的蛋白の排出障害が関与していると考えられた。さらにインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影を施行し,脈絡膜静脈系の拡張様所見が得られた。

自家血清を応用した全層黄斑円孔の硝子体手術

著者: 宮村昌孝 ,   田中利和 ,   大谷篤史 ,   岸本真人 ,   秋元晶子 ,   萩原実早子 ,   吉村長久

ページ範囲:P.1679 - P.1682

 Gass分類Stage 4の2症例に自家血清を応用した硝子体手術を行った。2例とも術後円孔の閉鎖が得られ,視力も2段階以上向上した。しかし,1例で術後2日目に眼底にフィブリンが索状に析出し,鼻側に牽強性網膜剥離が観察された。術中特に併発症が認められなかったことから,この反応に自家血清が関与している可能性が示唆された。黄斑円孔に対する自家血清を応用した硝子体手術が有用である可能性が示唆されたが,その本格的応用にはさらなる研究が必要であると思われた。

眼内レンズ挿入後のヒアルロン酸ナトリウム除去法

著者: 坂部功生 ,   北原健二 ,   林承正 ,   アップル

ページ範囲:P.1687 - P.1690

 ヒアルロン酸ナトリウム残存による眼圧上昇は白内障術後の合併症の1つである。したがって,眼内レンズ挿入後ヒアルロン酸ナトリウムを安全かつ完全に除去する必要がある。そこで今回,continu—ous curvilinear capsulorhexis (CCC)径は4mmと5mmおよび6mm,光学部径は5mmと6mm,吸引圧は125mmHgと250mmHg,I/Aチップの操作法は3手法で,posterior view analysis法によりそれぞれの組み合わせにおける眼内レンズ挿入後の着色ヒアルロン酸ナトリウム除去時間を測定した。その結果,I/Aチップを光学部のエッジに沿って操作する方法が安全かつ有効な除去法であり,また,CCC径が5mm,光学部径が5mm,さらに吸引圧が125mmHgの組み合わせが最良であった。

九州大学眼科におけるぶどう膜炎の統計

著者: 鬼木隆夫 ,   川野庸一 ,   西岡木綿子 ,   讃井浩喜 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1691 - P.1694

 1989年1月〜1993年12月の5年間に九州大学眼科外来を受診した内因性ぶどう膜炎新患患者を統計的に検討した。内因性ぶどう膜炎患者総数は391例で,全新患患者数の2.24%に相当した。男女差はなく,年齢分布は40歳台,50歳台にピークがあった。病型別ではフォークト—小柳—原田病が10.5%で最も多く,次いでサルコイドーシス8.7%,ベーチェット病8.4%,HTLV−I関連ぶどう膜炎5.4%,HLA-B27関連ぶどう膜炎3.8%,トキソプラズマ症2.3%の順であった。病型分類不能のぶどう膜炎は54.5%であった。九州大学眼科の過去の統計と比較すると,ベーチェット病が減少し,サルコイドーシスが増加した。またHTLV−I関連ぶどう膜炎が今回新たに加わった。

末期開放隅角緑内障眼での中心視力と中心部視野障害の関係

著者: 石井清 ,   新家眞 ,   相原一 ,   堀純子

ページ範囲:P.1695 - P.1699

 正常眼圧緑内障(NTG)と原発開放隅角緑内障(POAG)の末期例の中心視力と中心部視野障害の関係を検討した。ハンフリー中心30-2プログラムで得られるmean deviation (MD)が-20dB以下の中間透光体の混濁がない,NTG群33眼(無治療時眼圧21mmHg以下),POAG群71眼(同22mmHg以上)を対象とした。中心視力を0.5以下,0.6〜0.7,0.8〜0.9,および1.0以上に分類し,各群でハンフリー中心10-2プログラム検査で得られた年齢補正正常値との差(total deviation:TD)の平均値を各検査点ごとに求め比較した。中心視力悪化に伴い,中心部視野は,固視点上鼻側,同上耳側および下耳側の順に消失し,最後に下方乳頭黄斑部間視野が消失すると考えられた。視力0.8以上の例では最中心4点のうち,上下にわたる2点以上のTB値が,-10dB以上であることが多く,同条件で0.8以上の視力を予測した場合,特異度92.3%,鋭敏度84.20%であった。

レーザースキャニングトモグラフィを用いた緑内障性視神経乳頭障害の診断

著者: 富田剛司 ,   遅啓民 ,   北澤克明

ページ範囲:P.1701 - P.1705

 レーザースキャニングトモグラフィ法にて視神経乳頭を解析し,その緑内障診断の有用性について検討した。解析装置は,Heidelberg Retina Tomograph (HRT)を用いた。正常眼では乳頭周囲網膜神経線維層の輪郭(NFL輪郭)は通常上下側で高く耳鼻側で低い滑らかな二峰性あるいは台形を示し,乳頭辺縁の幅は均一で十分に広かった。反対に緑内障眼では,NFL輪郭は主に乳頭辺縁萎縮の存在する部位において,一部あるいは全体が低下し,二峰性のパターンが消失していることが多く,また乳頭辺縁の幅は不均一で陥凹が拡大していた。これらの所見を基に緑内障を診断した診断力は,2人の検者の平均で82.5%であった。HRTは日常の緑内障診療に有用であると思われた。

地図状脈絡膜炎の螢光眼底造影所見

著者: 政岡則夫 ,   上野脩幸 ,   内田邦子

ページ範囲:P.1707 - P.1711

 発症から3年以上経過した両眼性の地図状脈絡膜炎の59歳の男性で,萎縮病巣の辺縁の新鮮病巣を1か月ごとにフルオレセイン螢光眼底造影とインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影(IA)を用いて経過観察した。これらの部では病初期は両造影とも造影早期から後期まで低螢光を示し,IAにて脈絡膜中大血管の中断所見を確認することができた。1か月後には同部で脈絡膜中大血管が造影された。これらの所見から活動性の部では,発症1か月までに脈絡膜中大血管からの螢光がブロックされる時期が存在することがわかった。このブロックは,螢光眼底造影所見からprecapillary arterioleの閉塞による網膜色素上皮の浮腫によると考えた。

カラー臨床報告

免疫組織化学染色にて診断した結膜悪性リンパ腫の2例

著者: 平由起 ,   松尾俊彦 ,   藤本美樹 ,   松尾信彦 ,   吉野正 ,   赤木忠厚 ,   吉武秀子 ,   野間英孝

ページ範囲:P.1633 - P.1637

 結膜原発の悪性リンパ腫を2例経験した。2例とも片眼性であり,結膜悪性リンパ腫に特徴的な境界鮮明なサーモンピンク色調の腫瘍を形成し,1例は他に掻痒感,眼痛等を訴え,もう1例は充血,異和感,流涙を主訴とした。結膜原発の悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫B細胞型びまん性小細胞型,中細胞型が多いという従来の報告に一致して,1例は小細胞型,1例は中細胞型であった。これらのタイプは低〜中等度悪性で,2例とも全身転移はなく結膜に限局しており,従来の放射線療法,化学療法の効果と副作用を考慮し,患者の同意を得た上で未治療のまま経過観察しているが,現在のところ腫瘍の増大はない。リンパ系腫瘍の場合,生検組織の免疫組織化学染色の結果に基づいて,治療法を選択することが重要である。

眼科の控室

術後の回診

著者:

ページ範囲:P.1684 - P.1684

 入院している患者さんは,毎日1度は医師が診察するのが建て前です。
 もちろん例外もあります。すこし古い話ですが,スイスのダボスにある高原結核療養所を舞台にしたトーマス・マンの「魔の山」では,月に1回しか診察がなく,それ以外ですと,総婦長に申し出て何日かあとにアポイントをとらないと診てもらえないシステムになっています。

米国の眼科レジデントプログラム

2.カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校

著者: 綾木雅彦

ページ範囲:P.1712 - P.1713

概要
 毎年8名の新レジデントが7月1日から研修を開始する。3年目のレジデントまでの計24名が研修プログラムに入っており,8つの施設がその場にあてられている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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