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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科49巻13号

1995年12月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

最近の角膜移植手術

著者: 島﨑潤

ページ範囲:P.1830 - P.1832

はじめに
 最近の角膜移植の話題は,大きく分けて,①いかに安全に角膜移植を行うか,②いかに術後の視機能をより良くするか,③拒絶反応をどう抑制するか,④難治症例をいかに治療するか,に分けられる。ここでは,安全性の確立に欠かせない保存法の進歩について紹介し,次に難治症例に対する新しい術式の開発について紹介する。

眼科図譜・347

抗不整脈治療剤アミオダロンによる角膜症

著者: 藤島浩

ページ範囲:P.1834 - P.1835

緒言
 アミオダロンは冠不全,難治性不整脈に対する優れた抗不整脈作用を持つ薬剤であり1),1970年初期より欧米や南アメリカでは広く臨床的に使用され,本邦でも使用頻度が増えてきている。その眼合併症として角膜渦状変性がきわめて高頻度に発生することは良く知られている2,3)

眼の組織・病理アトラス・110

眼内悪性リンパ腫

著者: 坂本泰二 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1838 - P.1839

 眼内悪性リンパ腫intraocular malignantlymphomaは,眼球内に発生する悪性リンパ腫である。従来,悪性リンパ腫は腫瘍細胞が細網細胞系であると考えられ,細網肉腫reticulum cellsarcomaと呼ばれてきたが,近年の研究で腫瘍細胞はリンパ球由来であることが証明され,悪性リンパ腫と言われるようになった。
 眼内悪性リンパ腫は,眼および脳を原発とする中枢神経系悪性リンパ腫と全身性の悪性リンパ腫に伴うものがある。前者は感覚網膜や網膜色素上皮下を中心に腫瘍細胞が浸潤し,しばしば高度の硝子体混濁を伴う。後者は眼病変を伴うことは少ないが,まれにぶどう膜に腫瘍細胞が浸潤する。いずれにしても,腫瘍細胞の浸潤が一見ぶどう膜炎様の臨床症状を示す(図1)。いわゆる仮面症候群masquerade syndromeの代表的な疾患のひとつである。眼原発悪性リンパ腫は,中年以降に発症することが多い。性差はない。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・85

屈折矯正白内障手術—倒乱視白内障例に対する耳側切開&対側AK

著者: 福山誠 ,   吉富文昭

ページ範囲:P.1842 - P.1844

はじめに
 強主経線上切開(倒乱視例に対する耳側切開)は乱視軽減,乱視矯正を目的に始められた手術であるが,眼内レンズの進歩(3.0mm前後より挿入できるfoldable IOLの登場)は,それが強角膜切開より挿入されようが,透明角膜切開より挿入されようが,皮肉なことにその乱視矯正効果を減少させる結果となった。したがって強主経線上切開にこだわるならば,中等度の乱視に対してはむしろ大きめの切開が,強度の乱視に対してはさらにAKを組み合わせる必要がある。
 現在筆者らは以下のごとく術前の角膜乱視により切開部位,切開の大きさなどの決定を行い,術前乱視の軽減を図っている。

臨床報告

乳幼児の活動性の家族性滲出性硝子体網膜症に対する網膜光凝固

著者: 古庄史枝 ,   鈴木純一 ,   関根伸子 ,   杉村千賀子 ,   鈴木治之 ,   中川喬 ,   竹田宗泰

ページ範囲:P.1849 - P.1854

 乳幼児の活動性の家族性滲出性硝子体網膜症3例5眼に対して,増殖性変化の抑制を目的に網膜光凝固術を施行した。1眼には網膜全剥離を伴う水晶体後部線維増殖があった。残りの5眼には網膜血管の分岐異常,線維増殖組織,網膜前出血,硝子体出血などの変化があった。螢光眼底造影所見では,5眼とも耳側に無血管野と網膜新生血管からの著明な螢光漏出があった。光凝固は無血管野とそれをこえた広い範囲に対して施行した。1眼で硝子体混濁が増強したため,光凝固術を追加した。
 最終受診時まで(9〜33か月)に増殖性変化はほぼ鎮静化し,網膜剥離も発生していない。今後の眼球の発達を考慮すると,さらに長期にわたる注意深い観察が必要であると思われる。

フラウン切開による無縫合白内障手術後の角膜形状

著者: 林研 ,   中尾文紀 ,   林文彦

ページ範囲:P.1855 - P.1859

 無縫合手術におけるフラウン切開後の角膜乱視と角膜形状の変化について,直線切開後の変化と比較検討した。惹起角膜乱視については,術後3,6か月の乱視量はフラウン切開群のほうが,直線切開群より有意に小さかった。角膜トポグラフィーを用いて形状変化を検討したところ,フラウン切開群では,創周辺のフラット化が広範囲かつ遷延したが,中央角膜の変化は少なかった。一方,直線切開群では,術直後より下方角膜にスティープ化が起こり,しだいに上方角膜へ広がった。結論として,フラウン切開を用いると,術後乱視も少なく,中央角膜の形状変化も小さいことが示された。

強度近視眼の後極部にみられる異常脈絡膜静脈の存在

著者: 大野京子 ,   森嶋直人 ,   山下悟 ,   伊藤睦子 ,   所敬

ページ範囲:P.1861 - P.1866

 126名224眼の強度近視眼に対し,眼底後極部に流出路を有する異常脈絡膜静脈の頻度および病的意義について,インドシアニングリーン赤外蛍光眼底造影(ICG造影)を用いて検討した。その結果,57眼(25.4%)に後極部に眼外流出路を有する異常な脈絡膜静脈系血管を認めた。その内訳は,乳頭縁から眼外へ流出する脈絡膜視神経鞘静脈が34眼,乳頭縁に連絡せず,黄斑付近に流出路を有する黄斑部渦静脈が25眼であった。したがって,強度近視眼では約1/4の症例において,異常脈絡膜静脈が後極内の脈絡膜血流の流出路として機能していた。また,異常脈絡膜静脈の存在する眼では,強膜を貫く部位で強膜の脆弱性を生じ,近視発生の一因となっている可能性も考えられた。

コーバン屈折型多焦点眼内レンズの臨床成績

著者: 庄司信行 ,   清水公也

ページ範囲:P.1867 - P.1873

 コーバン屈折型多焦点眼内レンズ(ストルツ,米国)の臨床試験を42例53眼に行い,脱落症例5眼を除いた48眼についてその術後成績を検討した。光学径が異なる68—STUVとP359—TUVの2種類を使用し,平均観察期間は21.7か月と10.8か月であった。術後の遠方矯正視力が1.0以上であった症例の割合は,68—STUV 33眼中29眼で82%,P359—TUV 15眼中13眼で87%であった。遠方矯正時の近方視力が0.7以上であった症例の割合は,それぞれ88%と93%であった。全例で眼鏡不要あるいは1種類の眼鏡のみで遠方0.7以上,近方0.4以上の視力が得られた。患者の印象は「良かった」以上がいずれも100%であり,また,安全性に関して問題はなかった。有用性の評価は,全例で「有用」以上であった。特に小さいモデルであるP359—TUVは術後の乱視コントロールが容易であり,裸眼視力の良好な症例が多く,遠近とも眼鏡不要と考えられた症例の割合が高かった。以上から,当レンズは臨床上有用な多焦点眼内レンズであると考えられた。

糖尿病網膜症に伴う黄斑円孔

著者: 引地泰一 ,   秋葉純 ,   柳谷典彦 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.1875 - P.1878

 糖尿病網膜症に伴う黄斑円孔9例10眼(男性5例,女性4例)の臨床像を検討し,その発生機序を考察した。9眼は増殖糖尿病網膜症,1眼は単純糖尿病網膜症であった。円孔径は約1/5から1/3乳頭径大で,9眼では正円形を,1眼では楕円形を呈していた。単純糖尿病網膜症の1眼を除き,全例の黄斑部に網膜前増殖膜が観察され,肥厚した網膜前増殖膜が黄斑部を牽引している症例もみられた。10眼全例で黄斑部上の硝子体は未剥離であった。網膜前増殖膜による黄斑部の牽引が,糖尿病網膜症に伴う黄斑円孔の発生に関与している可能性が示唆された。

超音波生体顕微鏡によるトラベクロトミー術後の隅角観察

著者: 西篤美 ,   増田信也 ,   井田広重 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.1879 - P.1882

 隅角全体を断面像として観察することができる超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscopy:UBM)が開発され,従来は隅角鏡検査のみによって評価されてきた術後の隅角所見を超音波によって垂直断面的にとらえ,術野の強角膜内の変化を観察することが可能となった。そこで今回筆者らは,トラベクロトミー後の隅角をUBMで観察し,隅角鏡検査所見と対比検討した。
 線維柱帯中の裂隙の状態や位置,周辺虹彩前癒着,デスメ膜剥離などさまざまな所見をUBMにて断層像として観察することができた。さらに隅角鏡検査では観察できなかった強膜弁下に存在する間隙や周辺虹彩前癒着に隠された裂隙をとらえることができた。トラベクロトミー後のような複雑な隅角の観察には隅角鏡にUBMを併用することが有用であると思われた。

超音波水晶体乳化吸引術における粘弾性物質の角膜内皮保護効果

著者: 石井清 ,   江口甲一郎 ,   大鹿哲郎

ページ範囲:P.1883 - P.1886

 超音波水晶体乳化吸引術における粘弾性物質の角膜内皮保護術後効果を,数量化1類による多変量解析で検討した。対象は眼合併症のない白内障患者141症例147眼であり,超音波乳化吸引術操作前に前房内に注入する粘弾性物質により高分子量群(ヒーロン,48症例52眼),中分子量群(オペリード®,52症例54眼),低分子量群(オペガン®,41症例41眼)に分類した。角膜内皮細胞撮影は,術前,術後90日に行った。術式はすべて強角膜切開二手法,眼内レンズ挿入術とした。眼内レンズ挿入術時には,すべてヒーロンを使用した。従属変数を角膜内皮細胞数減少率,独立変数を使用した粘弾性物質の種類,年齢,手術時間,超音波発振時間,超音波総エネルギー量,および灌流量とし,多変量解析を行った。角膜内皮細胞数減少率に関連の高い因子は,粘弾性物質,手術時間,および灌流量(p<0.01〜0.05)であり,高分子量群に比べ中および低分子量群で角膜内皮減少率は有意に低いとの結果が得られた。

解離性大動脈瘤破裂を合併した球状角膜症の1例

著者: 気賀沢一輝

ページ範囲:P.1887 - P.1891

 解離性大動脈瘤破裂により死の転帰をとった球状角膜症の1例を経験した。患者は34歳の女性で思春期から円錐角膜を指摘され,左眼は31歳で全層角膜移植を受けたが,未処置の右眼は球状角膜に移行した。右眼に対し,1〜2mm幅の強膜をつけたonlay lamellar keratoplastyを行った。これにより穿孔の危険はなくなり,術後1年で矯正視力は0.4となった。突然死は35歳7か月の時点で生じた。本症例は,球状角膜を有する患者においては,一般検査で異常が検出されなくても何らかの全身的な結合組織異常を隠している可能性があることを示した。また,今回採用された術式は周辺角膜が極度に菲薄化した症例に対して有用であることが示された。

特発性黄斑円孔の走査レーザー検眼鏡所見

著者: 栗原かすみ ,   大島裕司 ,   石橋達朗 ,   尾崎恵子 ,   蔵田善規 ,   大島健司

ページ範囲:P.1892 - P.1898

 特発性黄斑円孔の症例,26例39眼の網膜硝子体の状態を走査レーザー検眼鏡を用いて観察した。このうち24眼に硝子体手術を行い,術前後の網膜硝子体の状態を比較検討した。アルゴンレーザー光による走査によって,後部硝子体膜の牽引により中心窩の陥凹が消失し,その後網膜の一部に亀裂が入って黄斑円孔が形成されていく様子が観察された。ヘリウムネオンレーザー光による走査では,円孔周囲の剥離と嚢胞性変化がみられた。この2つのレーザー光で観察することにより,黄斑円孔の形成過程に後部硝子体膜の接膜方向の牽引が強く関与していることが証明された。また,硝子体術後は術前の黄斑円孔の時期にかかわらず,中心窩の陥凹が戻り,網膜剥離が消失した。

ぶどう膜悪性黒色腫における腫瘍内微小血管構造と生存率の相関

著者: 坂本泰二 ,   坂本真紀 ,   吉川洋 ,   畑快右 ,   石橋達朗 ,   大西克尚 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1907 - P.1911

 ぶどう膜悪性黒色腫の組織学的血管構造型と4年生存率について検討した。症例は1969年から1994年までの26年間に九州大学眼科を受診し,ぶどう膜悪性黒色腫と診断され,眼球摘出された16症例である。平均年齢は55,2歳,男性8例,女性8例であった。摘出眼球の組織学的血管構造を平常型,静穏型,直線型,平行型,網目状型,閉鎖環型に分類して,それぞれの型と4年後の生死との相関を調べた。その結果,網目状型,閉鎖環型の黒色腫の4年後の生死と相関がみられたが,その他の型の黒色腫は相関がみられなかった。腫瘍内の血管構造を調べることは,ぶどう膜悪性黒色腫の予後判定に重要である。

視力障害を示した副鼻腔原発アスペルギルス症

著者: 松山武 ,   星田徹

ページ範囲:P.1913 - P.1915

 視力障害で発症した副鼻腔原発のアスペルギルス症の1例について報告した。症例は23歳女性で左眼の急激な視力低下をきたし,ついでけいれん発作も引き起こした。神経放射線学的に上顎洞から蝶形骨洞,篩骨洞にかけての占拠性病変がみられた。手術により副鼻腔を満たしている膿汁をドレナージし,視神経を減圧した。組織病理検査によりアスペルギルスを検出し,アスペルギルス症と診断した。抗真菌剤を投与することにより神経症状は軽快した。視神経障害を伴う副鼻腔炎の所見を得れば,アスペルギルス症も念頭におき早急な治療が必要と思われる。

眼窩底骨折手術200例の予後

著者: 高野馨 ,   土屋明 ,   戸塚伸吉 ,   三方修 ,   小出良平

ページ範囲:P.1917 - P.1921

 1989年1月から1993年12月までの5年間に昭和大学病院において手術を行った眼窩底骨折200例の,眼球運動障害,骨折性状,手術時期などを予後と併せて検討した。年齢は,4歳から71歳,平均24歳で男女比はほぼ5対1であった。眼球運動障害は,上転障害が約半数で,次に上下転障害,下転障害が多かった。骨折性状を骨欠損型とトラップドアを含む線状骨折型に分け,手術までの期間別に複視の予後を検討した。
 骨欠損型では,1か月以内の手術例の改善率はそれぞれ60%で期間別に差はみられなかった。線状骨折型では,3日以内の手術例の改善率は83%で,4日以降の手術例との間に1%の危険率で有意な差を認めた。
 術前眼球陥凹の著しい3ミリ以上の症例は16例で,そのうち3例が術後も3ミリ以上の眼球陥凹を残した。それらの症例はいずれも手術までの期間が1か月以降のものであった。
 眼球運動と眼球陥凹の予後は,診断がつき次第早期に手術を行ったものほど良好であった。

カラー臨床報告

プロスタグランジンF点眼薬による角膜上皮障害

著者: 阪本吉広 ,   岩崎直樹 ,   前田直之 ,   渡辺仁 ,   切通彰 ,   井上幸次 ,   下村嘉一

ページ範囲:P.1845 - P.1848

 プロスタグランジン系物質の新しい緑内障治療薬(PGFと略す)と,他の点眼薬との併用によって角膜上皮障害を起こした症例4例7眼(男2例4眼女2例3眼,平均年齢67歳)を報告した。全症例に共通する点は,βブロッカーの併用,PGF点眼開始から約1か月で上皮障害が発症,点眼薬中止約1か月で上皮障害が消失の3点であった。原因として,薬剤の併用による相加作用が強く疑われた。PGF点眼は,慎重に行われるべきであると考えられた。

眼科の控室

眼底周辺部の見方

著者:

ページ範囲:P.1900 - P.1900

 眼底の周辺部には,赤道変性など網膜剥離関連の変化だけでなく,さまざまな病変が好発します。これをどう見るかで,診断の精度が格段に違ってくる場合がよくあります。
 まず直像鏡を上手に使うのが基本です。直像鏡の機種によって違いますが,ポイントのひとつは,照明光とこちらの視線とがなるべく近くになるようにすることです。直像鏡の上のプリズムから光が出る装置の場合には,こちらの瞳孔をなるべくプリズムすれすれに持ってきます。

米国の眼科レジデントプログラム

4.デューク大学アイセンター

著者: 綾木雅彦 ,   山田昌和

ページ範囲:P.1922 - P.1923

 デューク大学アイセンターの書類には,まずこう記してある。
 「われわれ(デューク大学アイセンター)は,資格のある医師にセンターの専門分野の規律と技術に関する教育を行うことを非常に重要と考えている。われわれは,眼科を専門とする有能な応募者にとって施設が魅力のあるものでありたいと願っている。眼科を学ぶ場所として,眼科医としてのすばらしい経歴の出発点として最良の機会となるように,スタッフは研修プログラムを作成している」。

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臨床眼科 第49巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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