icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科49巻9号

1995年09月発行

雑誌目次

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・81

Foldable IOLの術中合併症—(1)高屈折率シリコーンIOL

著者: 大鹿哲郎

ページ範囲:P.1502 - P.1503

はじめに
 Foldable眼内レンズ(IOL)は小切開創白内障手術を可能にする非常に優れた武器であり,きちんと使いこなせば患者にとっても術者にとっても誠に有益なツールとなる。このツールを上手に使いこなすための事前情報,特に知っておくべき術中合併症について述べる。今回はピンセットで挿入する高屈折率シリコーン IOL についてである。

眼科図譜・344

8歳児の桐沢型ぶどう膜炎

著者: 松尾俊彦 ,   藤原温子 ,   松尾信彦 ,   那須好滋

ページ範囲:P.1506 - P.1508

緒言
 桐沢型ぶどう膜炎(急性網膜壊死症候群)は,1971年に浦山ら1)によって初めて記載されて以来,多くの報告がある2)。その発症年齢は9〜89歳と広く分布している2)。筆者らは8歳児に起こった桐沢型ぶどう膜炎を経験したので,その経過および治療について考えてみたい。

眼の組織・病理アトラス・107

フォークト・小柳・原田病の皮膚病変

著者: 坂本泰二 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1510 - P.1511

 フォークト・小柳・原田病は両眼性の汎ぶどう膜炎である。原因は不明であるが,ぶどう膜の炎症はメラノサイトに対する免疫反応が関係している。眼以外に,髄膜炎症状,聴覚症状,皮膚症状などの眼外症状を伴う特徴がある。それらはいずれも発生過程において神経堤由来のメラノサイトが分布している部位である。
 フォークト・小柳・原田病の眼症状の特徴は前眼部の前房混濁と眼底の滲出性網膜剥離である(図1)。皮膚病変は一般に眼症状の発症から数か月後に出現し,紅斑,白斑,脱毛,白髪化を生じる(図2)。全身の各部に現れるが,胸部や腰部に現れることが多い。初期には掻痒感を伴った皮膚紅斑が出現するが,患者はそれに気づかないことが多い。回復とともに皮膚白斑になる。皮膚白斑はフォークト・小柳・原田病に特徴的な眼外症状ではあるが,必発ではない。

今月の話題

糖尿病網膜症の早期硝子体手術

著者: 恵美和幸

ページ範囲:P.1513 - P.1517

 糖尿病網膜症に対する硝子体手術は,従来の適応概念を超えて,明瞭な解剖学的改善から機能重視の早期手術・予防手術に向かいつつある。光凝固術が普及した現在,光凝固術施行例での硝子体手術適応について機能保持・合併症の点から議論したい。

臨床報告

エキシマレーザー角膜切除術後上皮下混濁の定量化の試み

著者: 征矢耕一 ,   小幡博人 ,   天野史郎 ,   宮田和典 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.1524 - P.1528

 エキシマレーザー角膜切除術後に生じる上皮下混濁の臨床的評価は,これまで定性的な方法がとられてきたが,その予防および治療の進歩のためには,定量的な測定法の確立が不可欠である。今回筆者らはシャインプルーク原理にもとづく前眼部撮影と散乱光強度測定を行う装置を用いて,エキシマレーザー角膜切除術後上皮下混濁の定量化を試みた。
 対象の家兎8匹16眼にエキシマレーザー治療的角膜切除術を行った。術前および術後2,4,8,12週において前眼部撮影および散乱光強度測定を行い,上皮下混濁の定量化を試みた。また同時に細隙灯顕微鏡観察による定性的なFantes分類を行い,両者の相関を検討した。
 散乱光強度は術前78.3(n=6),術後2,4,8,12週はそれぞれ164.1(n=12),188.2(n=11),156.3(n=8),138.8(n=8)であった。同様にFantes分類値は術前0,術後1.13,1.36,1.05,0.85と変化した。散乱光強度測定値とFantes分類値は比較的良好な相関関係を示した。
 シャインプルーク原理の前眼部撮影および散乱光強度測定を用いることにより,エキシマレーザー角膜切除術後の上皮下混濁を定量的に測定できる可能性が示唆され,今後の臨床応用も可能と考えられた。

眼内悪性リンパ腫の1例

著者: 吉田直子 ,   小幡博人 ,   田中住美 ,   藤野雄次郎

ページ範囲:P.1531 - P.1536

 71歳の女性で片眼性の後部ぶどう膜炎を初発症状とし,経強膜網脈絡膜生検でT細胞性眼内悪性リンパ腫と診断し得た1例を経験した。患者は診断確定後に頭蓋内病変,骨髄病変が出現したが,放射線治療と化学療法の併用で眼内病変・頭蓋内病変は消退した。原因不明のぶどう膜炎では,眼内悪性リンパ腫も念頭におき,早期に診断を確定し,治療することが重要である。

慢性閉塞隅角緑内障眼におけるレーザー虹彩切開術後の眼圧コントロール経時変化

著者: 富所敦男 ,   林紀和 ,   新家眞

ページ範囲:P.1537 - P.1541

 慢性閉塞隅角緑内障(CACG)眼33例56眼,原発閉塞隅角緑内障急性発作の他眼14例14眼を対象にレーザー虹彩切開術(LI)後の眼圧コントロール経時変化とそれに関与する因子について,Kaplan—Meier生命表法およびCox's multiple regression modelによる解析を行った。各解析における「眼圧コントロール悪化」の定義として,①投薬スコア増加にもかかわらず2mmHg以上の眼圧下降のみられないもの,②最大耐用薬物投与下でも眼圧21mmHg以上または緑内障手術施行,の2通りを用いた。その結果,CACG群のLI 5年後の眼圧コントロール非悪化率は60%(定義①),89%(定義②)であった。これに対し,発作他眼群では経過中に今回の定義による眼圧コントロール悪化がみられた例はなかった。CACG眼において,LI後の眼圧コントロールの良否に有意な相関があったのは,術前因子のうちPAS範囲(定義②),視野障害(定義②),眼圧(定義①,②)の3因子であった(p<0.05)。また,CACG眼のうち眼圧コントロール悪化群のほうが不変群にくらべ,術前後ともPAS範囲が大きかったが(p<0.01),コントロール不変群,悪化群ともにLI前後でPAS範囲に有意な増減は見られなかった。以上より,発作他眼ではLI後の眼圧経過は良好であるものの,CACG眼においてはLI後に眼圧コントロールが徐々に悪化する例が少なくなく,術後の慎重な経過観察が重要であるといえる。また,CACGに対するLIは,PAS範囲がある程度以上になる以前に施行されることが望ましいと考えられた。

虹彩部分異色に脈絡膜色素異常を伴った1例

著者: 鎌田昌俊 ,   鈴木純一 ,   中川喬

ページ範囲:P.1543 - P.1546

 片眼性に扇状の虹彩異色と脈絡膜色素異常を呈した5歳女児を経験した。右眼上方の虹彩異色と右眼眼底の脱色素および色素沈着を認めた。外傷やぶどう膜炎など眼疾患の既往はなく,先天異常であると思われた。螢光眼底造影で網膜血管および網膜色素上皮が正常なことから,眼底所見は脈絡膜の色素異常と考えられた。虹彩の実質・色素細胞,脈絡膜の色素細胞は神経堤細胞由来であり,本症例の右眼の所見は神経堤細胞の異常の結果と考えた。

超音波乳化吸引術による白内障緑内障同時手術後の長期眼圧経過の生命表による検討

著者: 濱田直紀 ,   新家真 ,   山上聡 ,   白土城照

ページ範囲:P.1547 - P.1552

 緑内障・白内障合併例に対し水晶体超音波乳化吸引術+後房レンズ挿入術+線維柱帯切除術による同時手術を行った40例47眼の眼圧経過について,生命表法を用いてretrospectiveに検討した。術後視力は0.5以上が57%,0.8以上が32%であった。術後合併症はフィブリン反応が最多で21%であった。術後眼圧は18か月で有投薬眼圧コントロール確率が89.0±4.9%,同無投薬眼圧コントロール確率が59.0±9.3%であった。また,生命表法による濾過胞の18か月での生存率は75.0±8.9%であった。これらの結果は筆者らが以前に報告した水晶体嚢外摘出術+後房レンズ挿入術+線維柱帯切除術の術後経過より良かった。

Bスキャン超音波法で観察した毛様体皺襞部裂孔の1例

著者: 飯島幸雄

ページ範囲:P.1553 - P.1555

 毛様体皺襞部裂孔に対し,水浸法によるBスキャン超音波法(周波数10MHz)を試みた。皺襞部裂孔のエコー像は特徴的で,毛様体の少し内側に,剥離した毛様体無色素上皮が極めて明瞭なエコー像として描出された。Bスキャン超音波法は毛様体皺襞部裂孔の診断や形態把握に有用と考える。

網膜中心静脈閉塞症の赤外螢光造影所見

著者: 大谷倫裕 ,   飯田知弘 ,   丸山泰弘

ページ範囲:P.1563 - P.1569

 急性期の網膜中心静脈閉塞症(CRVO)19眼にインドシアニングリーン(ICG)赤外螢光造影を施行した。19眼中9眼で造影後期に視神経乳頭内に過螢光があった。このうち4眼はICG漏出であり,漏出部位は網膜中心静脈またはその付近の静脈系血管であった。5眼では,静脈の環流障害のために螢光色素が残留していることが疑われた。ICG漏出のあった4眼の視力の転帰は不良であり,フルオレセイン螢光造影からも虚血型CRVOであった。ICG漏出の起こる機序としては,網膜静脈内圧の上昇と網膜の虚血が主因と考えられた。ICG漏出はCRVOの重症度との相関が高く,ICG赤外螢光造影を併用することで,より正確な本症の病態の把握が可能であると結論される。

周辺部脈絡膜での動脈分水嶺の発見

著者: 高橋京一 ,   村岡兼光 ,   須藤憲子 ,   町田史子

ページ範囲:P.1571 - P.1579

 周辺部脈絡膜の血行動態を解明するために,正常眼23眼と赤道部変性がある7眼を対象に,インドシアニングリーン(ICG)螢光造影を行った。走査レーザー検眼鏡と被検眼の間に凸レンズを挿入し画角を70°に拡大する広角ICG造影法を用いて,リアルタイムで広い範囲の脈絡膜循環を観察した。30眼中21眼(70%)で,最周辺部に造影遅延領域とそこを灌流する特異な脈絡膜動脈が検出された。この動脈は,短後毛様動脈系と向かいあう形で周辺部脈絡膜に存在し,その造影は毛様体の方向から後極部の方向に進行した。これを周辺部逆行性脈絡膜動脈(peripheral retrograde choroidal arteries, PRCAs)と命名した。PRCAsへのICG色素の流入開始は,短後毛様動脈系よりも1〜4秒遅れ,脈絡毛細管板の充盈完了には5〜9秒を要した。造影遅延領域の後極端は,PRCAsと短後毛様動脈系の境界領域であると考えられ,ここは脈絡膜周辺部に存在する動脈系分水嶺であると判断された。短後毛様動脈から直接PRCAsに流入する血流はなかった。PRCAs灌流域の幅は,鋸状縁から後極側に3.7 mm までの範囲であり,それは耳側水平方向に扇状に存在する場合が多かった。PRCAsの大きさや形態は症例によりさまざまで,その数は一画角中に1〜3本みられた。PRCAsが長後毛様動脈の反回枝であると同定できた例が19眼中3眼あった。網膜格子状変性眼では7眼中3眼で周辺部分水嶺が検出されたが,格子状変性と分水嶺では,その位置や広がりが異なっていた。周辺部脈絡膜での動脈系分水嶺は,従来は解剖学的にいわれていたが,本研究でこれが生理的に存在すること,そしてPRCAsの灌流開始が後極部脈絡膜よりも遅れることが証明された。

慢性関節リウマチに合併した多発性後極部網膜色素上皮症の1例

著者: 坂本真紀 ,   坂井裕一郎 ,   藤澤公彦 ,   石橋達朗 ,   大西克尚 ,   久保茂 ,   児玉保子

ページ範囲:P.1581 - P.1585

 慢性関節リウマチに合併した多発性後極部網膜色素上皮症の1例を報告した。症例は46歳男性で,1990年に右眼の視力低下が,1993年9月に左眼の視力低下および変視症が出現,近医を経て九州大学眼科に入院した。眼底には,両眼に黄白色の網膜下滲出性病変と黄斑部の変性が認められ,左眼下方には胞状の網膜剥離が見られた。螢光眼底造影で滲出性病変の部位に一致して螢光色素が漏出した。両眼の多発性後極部網膜色素上皮症と診断した。螢光色素の漏出部に光凝固を行い,経過は良好であった。1989元年から多関節痛があったが,入院後症状が悪化した。リウマトイド因子の陽性化,両近位指節関節の腫脹が出現し,アメリカリウマチ協会の基準7項目のうち6項目を満たして慢性関節リウマチと診断された。経過中,血圧,腎機能は正常,ステロイド治療も受けていなかった。

外来患者が使用中の点眼薬の汚染度

著者: 秋葉真理子 ,   清水恭子 ,   秋葉純 ,   吉田逸朗 ,   友田豊 ,   橘峰司

ページ範囲:P.1587 - P.1592

 外来に長期通院中の患者45例より点眼びん154本(13種類)を回収し,びんノズルおよび残存液から菌の分離同定を行ったところ,47本(31%)から菌が検出された。びんノズルの25%から菌が検出され,残存液の10%に比べて有意に高く汚染されていた(p<0.01)。また,保存剤が添加されていない生理食塩水では71%と高率の汚染を認めた。検出された菌種はグラム陽性球菌が過半数を占め,グラム陰性菌は28%,真菌は10%であった。さらにグラム陽性球菌の29%から多剤耐性菌が検出された。点眼薬の汚染が感染源となる可能性もあることから,正しい点眼法を患者に指導する必要があると思われた。

北海道大学眼科における小児ぶどう膜炎の臨床統計

著者: 合田千穂 ,   小竹聡 ,   笹本洋一 ,   吉川浩二 ,   岡本珠美 ,   古館直樹 ,   市石昭 ,   松田英彦

ページ範囲:P.1595 - P.1599

 1987年から1993年の7年間に北海道大学眼科を受診した15歳以下の小児内因性ぶどう膜炎患者104例についてその臨床像を検討した。性別では男女比が4対6と女性に多くみられた。原疾患ではサルコイドーシスが最も多かったが,低年齢層と高年齢層において構成する原疾患に違いがみられ,低年齢層ではサルコイドーシスの頻度は低かった。また,最近4年間の新来患者のみを検討すると,急性間質性腎炎に伴うぶどう膜炎が多くみられた。眼合併症では,続発緑内障,併発白内障,帯状角膜症が多く,若年性慢性虹彩毛様体炎および若年性関節リウマチに伴うぶどう膜炎においては,すべての症例でいずれかの合併症が見られた。

カラー臨床報告

水痘・帯状ヘルペスウイルスによる角膜病変

著者: 松田彰 ,   田川義継 ,   阿部乃里子 ,   津田久仁子 ,   松田英彦

ページ範囲:P.1519 - P.1523

 1994年6月までの9年6か月間に皮疹,疼痛などの臨床症状から,水痘または三叉神経第1枝領域の帯状庖疹と診断され,角膜病変を認めた53例を対象とし,本症による角膜病変の病型分類と臨床像を検討した。角膜病変は主病巣の部位から,上皮型,実質浅層型,実質型,輪部型の4型に分類した。栄養障害性潰瘍および角膜脂肪変性を二次病変とした。その結果,上皮型46例,実質浅層型7例,実質型17例,実質型17例中9例に角膜ぶどう膜炎を認めた。輪部型は6例であった。二次病変は9例であった。本症による角膜病変は,臨床像が多彩で,特に実質浅層型および輪部型の一部は本症に特徴的な病型と考えられた。

眼科の控室

遺伝性疾患

ページ範囲:P.1560 - P.1560

 眼疾患には遺伝性で起こるものがかなりあります。臨床各科のうちで,最も頻繁に遺伝性疾患に遭遇するのが眼科だと言えそうです。
 この理由は簡単です。眼科の疾患は「形で見える」場合が多いので,発見されやすいことが第1の理由です。全身性の疾患でも,眼瞼の異常などを伴うことがよくあるのがその例になります。また,遺伝子異常で起こる疾患ですと,これが全身に関係する場合には,「致死遺伝子」として働くことがあり,流産したり,早死したりで子孫に伝わりにくいというのが第2の理由です。

専門別研究会

視野

著者: 岩瀬愛子

ページ範囲:P.1600 - P.1601

 今回より本会の名称は「グループディスカッション・視野」から「専門別研究会・視野」となった。まず,冒頭に大鳥利文会長より挨拶,続いて,日本の視野研究に多くの業績を残された故湖崎弘先生のご冥福をお祈りして会場全員で黙祷を捧げた。次いで,1994年7月にWashington, D.C.で開催された第11回国際視野学会(XI IPS)の報告を北澤克明国際視野学会副会長よりしていただいた。
 今回の演題は17題で,途中で会場の座席を追加するほどの盛況ぶりであった。座長は,可児一孝教授(滋賀医大),松本長太先生(近畿大学),溝上國義助教授(神戸大),北原健二教授(東京慈恵医大)にお願いした。

米国の眼科レジデントプログラム

1.ハーバード大学

著者: 綾木雅彦 ,   編集室

ページ範囲:P.1602 - P.1603

 米国の眼科研修のプログラムはどのようになっているのであろうか。今月からおよそ10回の予定で,米国の大学や主要病院の研修課程について,現在米国留学中の綾木先生にリポートをお願いした。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?