臨床報告
慢性閉塞隅角緑内障眼におけるレーザー虹彩切開術後の眼圧コントロール経時変化
著者:
富所敦男1
林紀和2
新家眞3
所属機関:
1大宮赤十字病院眼科
2井上眼科病院
3東京大学医学部附属病院分院眼科
ページ範囲:P.1537 - P.1541
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慢性閉塞隅角緑内障(CACG)眼33例56眼,原発閉塞隅角緑内障急性発作の他眼14例14眼を対象にレーザー虹彩切開術(LI)後の眼圧コントロール経時変化とそれに関与する因子について,Kaplan—Meier生命表法およびCox's multiple regression modelによる解析を行った。各解析における「眼圧コントロール悪化」の定義として,①投薬スコア増加にもかかわらず2mmHg以上の眼圧下降のみられないもの,②最大耐用薬物投与下でも眼圧21mmHg以上または緑内障手術施行,の2通りを用いた。その結果,CACG群のLI 5年後の眼圧コントロール非悪化率は60%(定義①),89%(定義②)であった。これに対し,発作他眼群では経過中に今回の定義による眼圧コントロール悪化がみられた例はなかった。CACG眼において,LI後の眼圧コントロールの良否に有意な相関があったのは,術前因子のうちPAS範囲(定義②),視野障害(定義②),眼圧(定義①,②)の3因子であった(p<0.05)。また,CACG眼のうち眼圧コントロール悪化群のほうが不変群にくらべ,術前後ともPAS範囲が大きかったが(p<0.01),コントロール不変群,悪化群ともにLI前後でPAS範囲に有意な増減は見られなかった。以上より,発作他眼ではLI後の眼圧経過は良好であるものの,CACG眼においてはLI後に眼圧コントロールが徐々に悪化する例が少なくなく,術後の慎重な経過観察が重要であるといえる。また,CACGに対するLIは,PAS範囲がある程度以上になる以前に施行されることが望ましいと考えられた。