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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科49巻9号

1995年09月発行

文献概要

臨床報告

周辺部脈絡膜での動脈分水嶺の発見

著者: 高橋京一1 村岡兼光1 須藤憲子1 町田史子1

所属機関: 1群馬大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1571 - P.1579

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 周辺部脈絡膜の血行動態を解明するために,正常眼23眼と赤道部変性がある7眼を対象に,インドシアニングリーン(ICG)螢光造影を行った。走査レーザー検眼鏡と被検眼の間に凸レンズを挿入し画角を70°に拡大する広角ICG造影法を用いて,リアルタイムで広い範囲の脈絡膜循環を観察した。30眼中21眼(70%)で,最周辺部に造影遅延領域とそこを灌流する特異な脈絡膜動脈が検出された。この動脈は,短後毛様動脈系と向かいあう形で周辺部脈絡膜に存在し,その造影は毛様体の方向から後極部の方向に進行した。これを周辺部逆行性脈絡膜動脈(peripheral retrograde choroidal arteries, PRCAs)と命名した。PRCAsへのICG色素の流入開始は,短後毛様動脈系よりも1〜4秒遅れ,脈絡毛細管板の充盈完了には5〜9秒を要した。造影遅延領域の後極端は,PRCAsと短後毛様動脈系の境界領域であると考えられ,ここは脈絡膜周辺部に存在する動脈系分水嶺であると判断された。短後毛様動脈から直接PRCAsに流入する血流はなかった。PRCAs灌流域の幅は,鋸状縁から後極側に3.7 mm までの範囲であり,それは耳側水平方向に扇状に存在する場合が多かった。PRCAsの大きさや形態は症例によりさまざまで,その数は一画角中に1〜3本みられた。PRCAsが長後毛様動脈の反回枝であると同定できた例が19眼中3眼あった。網膜格子状変性眼では7眼中3眼で周辺部分水嶺が検出されたが,格子状変性と分水嶺では,その位置や広がりが異なっていた。周辺部脈絡膜での動脈系分水嶺は,従来は解剖学的にいわれていたが,本研究でこれが生理的に存在すること,そしてPRCAsの灌流開始が後極部脈絡膜よりも遅れることが証明された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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