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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科5巻1号

1951年01月発行

雑誌目次

綜説

トラコーマの集團治療

著者: 鴻忠義

ページ範囲:P.1 - P.7

 トラコーマ問題は,その病原体に関しては電子顯微鏡的檢索に依りその確認も間近にありとの感深く,又その治療法に関しては化学療法の発展に伴い活溌なる発表ありて,今日の吾眼科学会の焦点である.元來吾國はト蔓延國の1つで,その対策は一日も忽に出來ない焦眉の問題であるが,余等が日頃考えて居るト対策に就いての所懷を述べ,併せて伊東教授がXL軟膏に依るト集團治療法を提唱して以來1年半となり,此の間に教室は千葉縣,東京都,小樽市,横浜市,軽井沢町等の各地に於て此の集團治療法を指導し,53853人の檢診を行い,12321人のト患者の治療を行いたるを以てその年間報告を行う,

臨床實驗

角膜周擁毛細血管の透過性に就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.8 - P.12

緒言
 毛細血管の透過性に関する研究は動物実驗によつて種々なる業績があげられている.しかしながら人体毛細血管の透過性に関する報告は少ない,私は正常毛細血管の透過性に就て詳細なる"Mikroskopie in vivo"を志し,細隙燈顯微鏡を用いて人体角膜周擁毛細血管の透過性を研究したので,茲に其の成果を報告する.

胎兒眼球の發育に就て

著者: 中村康

ページ範囲:P.12 - P.18

前房,後房及び瞳孔
 成人の前後,房 前房は角膜後面,虹彩,水晶体の前面瞳孔領に依つて包まれた空隙で眼房水を入れる.眼前房の周辺角膜虹彩の移行部に虹彩角海綿質がある.此処に櫛状靱帶を見る.此の靱帶纎維の交叉した間隙をフオンタナ氏腔という.角膜虹彩の移行部で鞏角膜移行部の裏面に鞏膜靜脈洞(シユレンム氏がある.之は結膜面に深部結膜靜脈と虹彩面に毛樣体靜脈と連絡している.
 後房は虹彩裏面,毛樣体,硝子体前面,水晶体側前部に包まれた空隙で眼房水を満す.此処には毛樣体より出て水晶体嚢赤道部附近に附着する懸垂纎維(チン氏帶)が交錯存在する.

視認力の動搖と戻りの現象

著者: 小島克

ページ範囲:P.18 - P.19

 視認力の動搖に関する一性質として,その日時的動搖が,或る程度恒常性保持のために元位置えの戻りといつた変容を繰り返えしている現象が見られたので,茲に記載したい.この戻りの現象は視認における生理的な1つの特性といえよう.
 方法5m視力2.0恒常群(Ⅰ)と,5m視力2.0〜10に動搖する群(Ⅱ)のについて,中村氏試視力表を以つて5mから25m迄の視力を,視距離限定法で測つた.

所謂急性期トラコーマなる名稱に對する疑義

著者: 大石省三

ページ範囲:P.20 - P.22

 周知の如くプロワツエク氏小体(プ小体)の感染によつて起る結膜炎は急性又は亞急性に始まるので,トラコーマ(ト)の原因がプ小体である,とト病原一元論を主張する人々は,この急性発炎時期をばトの初感染期として急性期トと呼び我々が從來トと定義した,慢性肉芽性結膜炎は既に第二期たる慢性期に移行したものを指すので,急性期トに対して,改めて慢性期トと區別して呼称する樣提唱している.
 又Lindner (1935)以來廣く用いられているパラトラコーマの名称も,その病原体であるプ小体が直接生殖器に由來し,予後の一般に良好である等の理由のみで,トと別けることに反対し,これ又急性期トに包括すべきものであると述べて,パラトラコーマの改称を提議している.

マイボーム氏腺の短桿状黑變に就て

著者: 池間昌紀

ページ範囲:P.23 - P.24

 マイボーム氏腺(以下マ氏腺と記す)の疾患として記載されて居るものは,1)化膿性マ氏腺炎(内麦粒腫),2)マ氏腺慢性炎症(霰粒腫),3)マ氏腺梗塞及び結石,4)マ氏腺嚢腫等である.庄司義治氏著眼科診療の実際第1版には,マ氏腺管炎の記載があるが,第3版には削除されている.私は筑豊炭田地帶に属する現開業地に於て,一般患者に見ることのない変状を,炭坑々内労働者の受診患者の中に9例ほど実驗した.内外のこの種文献を見たこともないので興味を覚え,茲に記載報告する.

丸山氏ワクチンに依る最近1ヶ年間の結核性眼疾患の治療成績に就て

著者: 原博

ページ範囲:P.25 - P.26

(1)緒言
 結核性眼疾患の治療には,從來一般眼疾患と同樣に諸種藥剤を以つてする全身及び局所療法があるが,私は之等と別個の意義を持つ本学丸山教授の調製せる,丸山氏ワクチンに着目し,本ワクチンが皮膚結核に対し卓効あるを聞き,之を眼疾患に用い興味ある成績を得たので,茲に概略を御報告する次第である.この症例中には,結核1,角膜1,辺縁1,巨大1,フリクテン鞏膜等が含まれているが,勿論,嚴密の意味で結核と言うには,異論がある所であるが,結核とは,何等かの因果関係があるべく,且つ治療結果より見て,之等疾患に対しても,藥効が認められたので,敢て此処に掲載し,御批判を抑ぐ次第である.

網膜剥離の臨床知見補遺—第4篇 硝子体出血を前駆する自発網膜剥離に就て

著者: 百々次夫

ページ範囲:P.27 - P.28

緒言
 自発網膜剥離の発症に際しては,飛蚊症,続いて視野の部分的欠損と視力減弱,更に小視症,変視症,光視症等が自覚され,多少の硝子体溷濁はあるにしても,常によく網膜所見を見極め得るのが通例である.処が,激しい飛蚊症を伴う視朦の突発が訴えられて,瞳孔の徹照が相当に惡く眼底も充分に檢し難い程の,強い硝子体出血が診られ,後日に至つて初めて自発剥離の存在を認めるとか,乃至は発症するのを観る樣な症例に時として遭遇する.即ち自発剥離に硝子体の大出血が前駆する異常の経過を示す場合である.これに就てはVogtの外に報告がないから,自驗した2症例を述べて,網膜剥離の診療上の知見を補い度いと思う.

健眼並びに緑内障眼の負荷試驗に就て—第4報 血液滲透圧変化による眼圧の変動に就て

著者: 鎌尾保

ページ範囲:P.28 - P.32

第1章 緒言
 眼圧が血液の滲透圧と密接な関係にあることはSei-del (1924) Baurmann (1925),Duke-Elder (1926)等により実驗せられて居る.そして血中滲誘圧の上昇は眼圧の下降を.滲透圧の下降は眼圧の上昇を來すことはPletnewa (1923),Sander-Larsen (1923),Tretene-ro (1923),Weeker (1924),Dieter (1925),Duke-El-der,Lambert (1928),Newcomb-Verdam (1929),矢田(大14),小川(昭2)氏等によつて実驗せられて居る.
 最近我が國に於て頸動脹内注射が日常外來で行われる樣になつてから直接高張液を頸動脈内に注入することが行われ淸水,石井氏等により実驗せられて居る.

硝子體液の循環に關する實驗的研究—第2報 實驗的緑内障眼に於ける硝子體液の循環に就いて—附虹彩毛樣體炎眼の硝子體液循環

著者: 田上正康

ページ範囲:P.33 - P.37

第1章 緒論
 硝子体液循環に眼圧の影響があるかどうか,即ち眼圧が上昇した場合,又は下降した場合の硝子体液循環は健常の場合と相違があるかないか,之に関する研究は殆んど見当らない樣である.一方虹彩毛樣体炎のある場合の硝子体液循環に関しても,殆んど研究されていない樣である.後者は又前者の実驗的緑内障眼に見られる虹彩毛樣体炎と比較する必要もあるので,ここに両者の実驗報告を併せて述べる次第である.

Diethylaminoethyl-diphenylglycolate Hydrochloride (Parpon)の散瞳作用に就いて

著者: 塚原勇 ,   山田秀之

ページ範囲:P.38 - P.42

第1章 緒言
 アトロピンと類似の作用を有する散瞳藥を合成しようとする半世紀余の努力の結果,人々は今日数々の合成藥を得る樣になつた.その中で主としてAnticholinergicactionによると思われる散瞳と,調節麻痺を來す一運の合成品に関する研究が,近年の米國雜誌に見られる.私共は此の種の合成品の1つであるDiethylamino-ethyl-diphenylglycolate Hydrochloride (商品名Par-pon)を三田製藥株式会社から得て動物並びに臨床実驗を行つたので,其の成績を報告して御批判を仰ぎ度いと思う.

メチル,プロミゾールの眼底疾患に對する應用

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.43 - P.46

緒言
 メチルプロミゾール(以下メプとす)の前眼部結核症に対する効果に就いては,己に述べたところであるが,斯る藥剤は臓器親和性に因るものか.或は他の何等かの原因に因るものかは明かでないが,同じ結核症でも,臓器を異にする事に因つて其の効果に差がある.從つて結膜,角膜,鞏膜虹彩の結核に効果があつても,果して網膜結核に有効であるか否かは疑問であるが,私は2例の結核性眼疾患にメプを應用して良好な結果を得たので報告する,

球後視神經炎の再發,特に多發性硬化症との關係に就て

著者: 桑島治三郞

ページ範囲:P.47 - P.50

 球後視神経炎と言う呼称は極めて漠然として混乱を招き易いが,私が茲に言う本症の概念は,著明な病的所見が眼底に見られないと言う語義的な見解には重きを置かずに,寧ろ次の如き條件,即ち臨床的には急発する視力障碍にして頭痛又は眼窩痛を伴い,特にその視力,視野及び独特な中心暗点が檢眼鏡的所見に依つては必ずしも説明され得ないと言う共通の特長があり,從つて病竈が球後の視神経に在ると考えられるもので,その主病竈の時期に依り,或いはその位置の乳頭からの距離に依つては眼底に種々の病的所見,例えば乳頭の浮腫,充血,時には萎縮像をすら認める場合があつても差支えないものの一群である.
 斯る球後視神経炎の病因は必ずしも單一ではないが,曾て私は本誌第3卷に症例を挙げて論じ,此の種の視神経炎が時に脚氣乃至ヴイタミン欠乏,或いは副鼻腔疾患を原因とするとされているが,長い経過を観ていると其の多くが視神経脊髓炎に一致するものであることを明かにし,特にその再発傾向に就て注意を喚起した.同樣な再発性球後視神経炎に就てAdamantiadisは之を散在性脳脊髓炎なりとしているが,今日,臨床的並びに組織的に視神経脊髓炎及び散在性脳脊髓炎と多発性硬化症との異同は色々論議されている処で,從つて從來我が國に於ける球後視神経炎の病因が欧米のそれと異つて多発性硬化症を除外し得ると言う見解に対して重大な疑義が生じて來るのである.

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先哲の面影(1)

著者: 中泉

ページ範囲:P.24 - P.24

 先輩偉人をしのぶ事は何れにつけても結構な事である.種々なる角度より偉大なる先輩をしのび其の労苦を感謝したいと思う.此の後毎号1件づつ掲載して行きたい念願である.
 Graefe-Saemisch眼科全書が眼科学最大の書籍であり,其の編著の労苦や実に筆紙につくし難くあれだけのものを後世にのこされた先輩には何とも感謝の言葉もないものである.

臨床講義

胎兒緑内障に就て—附 緑内障発生の考察

著者: 中村康

ページ範囲:P.51 - P.56

 本日緑内障のお話をするに際し2,3の患者病歴を述べます.
 第1例 牛眼.

私の經驗

眼窩手術器械に就て

著者: 神鳥文雄

ページ範囲:P.58 - P.58

 私は眼窩内銃彈症2例を経驗し,眼臨に報告したが其の内の1例は眼窩漏斗部に存在していて,この摘出には在來の器具にて不備なことを痛憾したので,こんなものがあつたらと思われるものを考案し試作してみた次第である.この器具は又眼窩内腫瘍の試驗的切除にも用いられ,眼窩内一般の外科には必要と思われるのであります.

外文抄録

American Journal of Ophthalmology

ページ範囲:P.59 - P.61

 Vol.33, No.1. January, 1950. P.1〜174.
1)眼窩疾患.(Jackson記念講演)(W.L.Benedict.)
2)生理学上から見た外科手術.特に緑内障治療に関して.(S.Duke-Elder.)

手術メモ・ⅩⅧ

瞼板腫瘍摘出術

著者: 中村康

ページ範囲:P.62 - P.63

 瞼板腫瘍として惡性のものは只瞼板だけ摘出しても効果がない.霰粒腫のようなものは腫瘤だけ剔出するに止る.廣汎な瞼板腫瘍と言うものはそう屡々あるものではない.私共が割合行うのは結膜及び瞼板の同時切除術である.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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