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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科5巻10号

1951年10月発行

雑誌目次

綜説

眼科治療法に關する戰後の國内文献總括

著者: 國友昇

ページ範囲:P.617 - P.619

 元來治療法は澤山知つて置いた方が有利であります。或疾患に或方法が良いと雑誌にのつていても之を追試した場合餘り效かない事があります。しかし之は假令病氣は同じであつても其の病氣をもつている個體が異なり又疾患の病期が異なれば同じ結果がみられない事もあり得る譯であります。又いつもの方法で多くの例にうまく行つていたのにそれがうまく行わない例にぶつかる事があります.そんな時に色々な治療法を知つていると大いに助かる事があります。從つて報告された治療法の1つ1つは皆大切なものですが本日は其の全部についてお話する時間がありませんので昭和21年〜25年の國内文獻に就ての概要を述べます。此の間の文獻を集めてみますとペニシリンに關するもの約70,頸動注32,スルフアミン剤34ウルクスローデンス18,匍行性角膜潰瘍18,トラコーマ17,メチール中毒16,結核15,X線,フリクテン及近視が夫々14,ストレプトマイシン12,ヘルペス及ケラパンが夫々10であり以て戰後眼科治療の傾向を知る事が出來ます。本日は既に本講習會で先輩諸先生が述べられました可動性義眼,角膜移植,開頭術,冷凍移植,パンピング,頸動脈毬摘出及び化學療法等の詳細については述べません。戰前と戰後では治療法も大變進歩して變りましたが私は戰前の治療法が惡いと云うのでなく戰後の治療を新につけ加えて益々治療成績を向上させたいと思うのであります。

臨床實驗

諸種藥劑の角膜周擁毛細血管に及ぼす藥理學的作用に就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.620 - P.624

緒言
 生體の毛細血管に及ぼす藥理學的作用に關する研究は枚擧に遑がない程に多數であるが未だ確實なる結論を見出していない。實驗に供される動物の温血であるか冷血であるか,又肺臓血管であるか血管條片による實驗であるかの相違,使用藥剤の濃度如何によつて極めて複雑且つ多樣なる業績が報告されている。しかし人體毛細血管に及ぼす藥理學的作用に關する研究は極めて少なく,就中顯微鏡的検査による報告は稀である。
私は細隙燈顯微鏡を用い諸種藥剤の點眼をなして角膜周擁毛細血管に及ぼす藥理學的作用を觀察し其の結果を得たので茲に報告したいと思う。此の研究の特長は藥剤1滴の點眼によつて容易に毛細血管に變化を及ぼし得る事と,研究方法による外的影響が少ない事,血管の極めて微細なる變化を明瞭に觀察し得る事等である

瞼腺炎の再發者

著者: 小島克

ページ範囲:P.625 - P.627

 瞼腺炎の胸部「レ」冩眞像及び再發者について2-3調べた所を記したい。
 1. 59名の瞼腺炎患者で,肺浸潤14名(23%) 〔34-16%〕胸膜胼胝7名(11.8%)〔20.6-6%〕紋理増強3名(5%)等であった。

霰粒腫發生の樣態

著者: 小島克

ページ範囲:P.627 - P.629

 霰粒腫に就ては朝日向氏の研究があり瞼腺硬塞を基調とする點に發生の極據を求められ一般に支持されている。尤も霰粒腫樣症候を稱する者には結核その他がある。本症も亦,主に發生年齡が思春期にあり,その状況の一事として「ツ」反應等の状況をみた所,2-3得る所があつたので茲に記載したい。
 1.「ツ」皮内反應は,39名中(−)9名23.7%〔35-14%〕,1〜9m.6例15%〔27-8%〕,10〜19mm19例(48%)20mm以上2例(5.1%)30mm3例(8.2%)で,(+)は39名中24名,61.5%〔72-59.4%〕となる。

多形滲出性紅斑に併發せる結膜疾患の成立機轉に就て

著者: 上野弘 ,   後藤忠子

ページ範囲:P.629 - P.631

緒論
 多形滲出性紅斑(以下「多滲紅」と略す)に結膜疾患の併發する事は,皮膚科領域では餘り稀でない樣に言われているし,歐米に於てもRieglerを始として多くの報告例を見るが,本邦に於ける眼科領域の報告例は僅に10餘例に過ぎない。此眼合併症の成立機轉に關しては種々論議せられているが,決定的のものはない。他方,本邦に於ては之が病理組織學的検索は安武の1例を見るのみで歐米に於ても少く,Hankeの記載が殆んど唯一の貴重なるものと睹做されあるかの樣な現況である。私共は最近本症1の例に就て,之が病理組織學的検査を行つた結果。「多滲紅」の本態論が近年幾多の變遷を見つゝあると同樣に,其眼合併症の成立機轉に就ても亦,新なる見地より論ず可きであろうと考え得る根據を得たので,茲に報告する。

種々の合併症を伴える眼部壊疽性帶状ヘルペスに就て

著者: 宮下和子

ページ範囲:P.632 - P.633

 眼部帶状ヘルペスで水疱互に融合して大なる水疱を形成する時は水疱性と云い水疱内に血液を混入する時は出血性,皮膚破壊甚しきものは壊疽性と稱されるが,壊疽性最も重症で眼瞼膿潰した例も記載されている。
 私は壊疽性にして前額部皮膚が膿潰して骨部を露出した症例において經過中全身随伴症として言語障碍,右上下肢麻痺を來し,眼には角膜ヘルペス,内眼筋麻痺等を合併したものを經驗したのでここに報告する。

眼瞼の類皮嚢胞に異物性炎性腫瘍を併發した1例

著者: 奧村誠

ページ範囲:P.634 - P.635

 眼瞼に發生し,臨床上腫瘍状の腫脹と硬度を有し,其病理組織學的像は1種の嚢胞と炎症性肉芽腫で,その發生機轉が些か興味があると思われる1例を經驗したので報告する。

蠶蝕性角膜潰瘍に對する頸腺摘出術の効果

著者: 初田博司 ,   高木實

ページ範囲:P.636 - P.637

緒言
 近時植物神經系平衝失調を主徴とする疾患に頸動脈毬摘出術が試みられ,眼科領域に於ても特に網膜色素變性症に對してその效果が著明に現われる事が認められている。私は蠶蝕性角膜潰瘍の患者2名に就て兩側頸腺摘出術を試みたので,茲にその結果を報告致したいと思う。

蜂螫角膜炎に續發せる水泡性角膜炎に就て

著者: 米山高道 ,   石田修

ページ範囲:P.637 - P.640

 角膜蜂螫傷後に種々の興味ある眼症状の起る事は周知のところであるが,余等は最近九萬蜂による角膜螫傷後に角膜白斑,虹彩變色,前極星形白内障を來した症例を經驗したのでここに報告せんとするものである。類例としては最近庄司教授(昭22)の症例あるのみである。

進行性鞏角膜周圍炎(シリー)の病理知見補遺

著者: 田上正康

ページ範囲:P.640 - P.643

緒論
 1926年v.SzilyはScleroperikeratitisなる1種の鞏角膜炎に就て記載し,同氏は本病の原因が結核であると説いたが,本病に就ては既に外國ではSchlodtmann, Friedlane, Uhthoff, Gilbe-rt, v.Hippel, Verhoff, v.Planta, Landegger等の症例が報告され,我國でもこの名稱のもとに約10例の報告があり且つ本病の本能に就ては内外共にv.Szilyの述べた樣に結核説最も多くその他「ロイマナスムス」,痛風,原因不明のもの等があり現在迄本病の本態論に就ては色々にして一定しておらず,唯外國に於てVerhoffのみが1人梅毒説を記載している。然るに本邦に於て菅沼氏は昭和15年に同氏の經驗した1例の剖驗例よりして,その原因が梅毒である事を確め本病の本態が從來結核説の傾きがあつた中に本邦に於ける梅毒説の嚆矢として新に注目されるに至つた。その後昭和17年に至り肥後氏は本病の定型的3症例4眼中續發縁内障にて失明した摘出眼球の組織所見より,先に菅沼氏の述べた例と完全に一致するのを經驗し,尚本病に驅梅療法の奏效した例の,同氏の3例を加えて4例9眼に達している所から梅毒説に賛意し,かゝる病症を呈するものを特に「菅沼氏梅毒性進行性鞏角膜周圍炎」と呼ぶ事を提唱している。

先天性葡萄膜缺損に併發せる網膜剥離に就て

著者: 前川祐誠

ページ範囲:P.644 - P.645

緒論
 先天性脈絡膜缺損の存する眼に網膜剥離を併發した症例に就ての報告は,歐米に於てはRindfleisch,Levins-ohn,Wagener&Gimper,Tertsch本邦に於ては河本濱田,中林及び百々の發表があるに過ぎず,而も網膜剥離に對するヂアテルミー凝固手術が確立されてからのものはTertsch,百々の2氏のみである。而して之等兩氏は網膜裂孔存在部位として脈絡膜缺損部を重視し,殊に百々氏は最近此の見解を強調したが,私も近來本症の數例を經驗し,前記諸家と相異る結論に到達したので,茲に之を發表し,本疾患に關する知見を補遺せんとした次第である。

巨大な眼内骨形成

著者: 平林重宣

ページ範囲:P.646 - P.647

 眼球内に骨組織の形成せられる事實は,臨床上萎縮眼内には屡々認められるところで,多數の報告があるが,この症例の樣に巨大にして特異な形状を有しているものは稀な樣であるから,こゝに報告しておき度いと思う。

半脱臼水晶體の前眼房内脱臼による續發性緑内障の1例

著者: 常岡昭

ページ範囲:P.648 - P.649

 續發性緑内障を惹起する原因は多々あるが,著者は最近外傷にょり不全脱臼し白内障を起せる水晶體が前房内に脱出して續發的に緑内障を起させる例を經驗し,その脱出機轉に些か興味を覺えたのでその大要を述べる。

眼筋無力症に對する眼瞼下垂手術

著者: 栗崎正孝

ページ範囲:P.649 - P.650

 眼筋無力症は田野邊氏(1934〜5)の研究によつて確立した疾患であり,決して稀な疾患ではない。而して之が治療にはワゴスチグミンが效果ある事は周知の事である。又最近では日隈氏(1948)副腎皮質製剤及びビタミンB2を用いて可成り持續的の效果を見たと報告し,八十,三宅氏(1950)は頸毬剔出を行い好成績を得たと報告した。然しワゴスチグミンの效果は一過性であつて永續的でないと言う缺點がある。從つて眼筋無力症による眼瞼下垂で症状固定せる場合に,持續的效果を收めようとするには,手術的療法が必要と考えられるが,未だ斯る手術を行つたと言う報告は見られない。私共は發病以來8年を經過した眼筋無力症の1例に眼瞼下垂手術を行い好結果を得たので報告する。

各種視神經疾患に於ける髄液血液並に腦液中のビタミンB1含有量の消長に關する研究—第3報 疾患經過とビタミンB1含有量との關係に就て

著者: 水田厚正

ページ範囲:P.651 - P.663

第1章 序
 著者は第1,2報に於て各種視神經疾患に於ける髄液,血液並に腦液中のV.B1含有量の消長を測定し各疾息に就てV.B1含有量消長の特異性の意義並に症状との關係に就て述べた。又第1報に於て既に髄液V.B1含有量が視力の消長と關係する事を知れり,茲に於て余はV.B1が視神經疾患病因に或る關連を有せるは既定の事實なるも疾患の病機に如何程影響を及ぼすものなるか及びその治癒機轉を知らんが爲各種視神經疾患を7群に分ち同一症例に就てその經過に從つて髄液血液中のV.B1含有量を測定しその増減の機構を探求し原因的治療的検索の一助とせんとせり。

トラコーマ病原體の電子顯微鏡所見(豫報)

著者: 筒井純 ,   三井幸彦 ,   田中智惠

ページ範囲:P.664 - P.665

 極めて多數の封入體を證明する定型的のトラコーマ結膜から撮つた電子顯微鏡寫眞に於て,トラコーマヴィルスと推定される明確な所見を得ることが出來た。すべての對照材料に於て,かゝる所見は陰性であつた。トラコーマヴィルスの電子顯微鏡所見は,大きさ及形共にProwazek小體の基本小體及び原始體とかなりよく一致していた。

人工氣胸に偶發せる眼變常

著者: 濱田尚子

ページ範囲:P.666 - P.667

緒言
 人工氣胸は1882年イタリヤのCarlo,Forlariniの創意にもとずくものであり,其後氣胸施行時に種々の理由に據つて室氣栓塞を起した報告がある。
 發生率はMaenalによると,1000例に1例と云い,最近鹽澤氏は5000例又は1萬例に1例位であると云つている。

小口氏病樣眼底像を呈した眼外傷例

著者: 濱田尚子

ページ範囲:P.667 - P.668

緒言
 スボンヂボールに據つて起る眼外傷としては,角膜外傷,前房出血,外傷性近視,散瞳,綱膜剥離,緑内障等が起る。之等が發生する頻度に就ては,種々報告があるが,其の中網膜震盪は比較的頻回に發生している。從つて網膜震盪に就ての報告は數多くあるが,以下に述べる症例は特に眼底溷濁が,部分的な小口氏病樣眼底像を呈していたので追加報告する。

角膜層間入墨について

著者: 佐藤勉

ページ範囲:P.669 - P.669

 瞳孔閉鎖あるいは續發白内障等の失明眼に美容上の目的で瞳孔を作る事を望まれる事がある。視力を恢復する望がない場合には,角膜に入墨する事が1つの方法である。しかし,入墨針による點墨では脱色しやすい。注射針を用いて,角膜間質内に墨液を注射すれば脱落しにくいが,その代りに,墨を正しく豫定の位置に入れる事がむづかしい。自分はこういう場合に角膜層間剥離(1)を應用する事にしている。
 術式はこれから作ろうと思う瞳孔の,上縁の角膜の表層に,曲槍状刀で傷を作る。この傷は,上皮及びボーマン氏膜を破り,間質を瞳孔の中心にむけて進み,デスメ氏膜より深くを傷つけないものである。(第1圖)傷口がスパーテルの挿入に充分なだけの大きさとなつたならば,刀を抜き,この傷よリスパーテルを入れ,間質内にさし込む。(第2圖)墨を入れたいと思うだけの廣さおよび形に層間を剥離する。スパーテルは幅1.0mm—0.8mm程のものが使いよい。第2圖に示したようにゆるく曲つたスパーテルを(反つているのではない)作つておくと便利である。

オーレオマイシン及びテラマイシンの局所大量衝撃療法によるTrachomaの短期間療法

著者: 筒井純 ,   竹田靜香 ,   小山泰太

ページ範囲:P.670 - P.672

緒言
 オーレオマイシン(以下オ.)及びテラマイシン(以下テ.)がTrachomaに對して有效である事は既に一般の認める所となつたがその治療成績は可なり使用法の適不適に支配される。三井氏等は軟膏及び水溶液の使用法について詳細な實驗的研究を重ねて最適と思われる術式を明らかにした。又最近北村氏はテ.を結膜面に散布して5分間後には結膜組織より形質細胞が消失しその状態が24時間後も存續している事を述べた。この北村氏の現象はTrachomaの短期間療法の可能を示唆するもののようである。更に又淸水氏はオ.の粉末散布を結膜炎に用いて刺戟が強いけれども良好な成績を認めたと報告している。オ.及びテ.の鹽酸鹽をそのまゝ結膜面に作用させる事は或程度の危險を伴い,患者に少なからざる刺戟を與えるであろう事は豫想に難くないが,問題はこの缺點を如何にして除いて行くかという點に存すると思う。我々はこうした點に留意しながら治療實驗を進めて以下述べるが如き成績を得た。

後天近視に關して大塚氏との論爭の補足

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.673 - P.673

 後天的近視の原因に關して大塚氏と私は大きな違いがある。即ち,大塚氏は從來の眼軸説と同じく後天的に環境の影響を受け詳細不明の何等かの機構で眼軸が著しく延長するのが後天近視の主原因であるとする。私は之に對し,確に眼軸は屈折の素因と云う點では甚だ重要ではあるか,環境影響で延長すると云う點は百年近くも證明しようとしたが未だ證明出來ず,且つ實驗的に可能性少なく,從つて後天的近視の原因としては,重要でないとする。そして私は正視や學校近視が後天的に多發するのは,持續的調節(近業)に關係した水晶體の適應で屈折力が變化したのに因ると實驗的に證明し主張する。從つて私は,大部分の遠視,正視,近視は眼軸の素因の影響と水晶體の適應に因る後天的影響とを受けている故,先天的であると共に後天的でも有ると考える。
 斬樣に大塚氏と私との間には,後天近視の成因に關し意見の違いが有る故,昭和24年より度々論爭を行つた。初めの内は新しいDataや考えが現われたが,終りになると,同じ事を繰り返す樣になつて,余り著しい發展が無かつた様に思う。從つて多岐に亘つた此の論爭に一應結着を着け度いと思い,昭和26年度の學會に演題を出した。無益な論爭を避ける爲め豫め私の原稿を大塚氏に示し,私の論文の内容を互に檢討した。但し大塚氏の講演の内容に就ては知る事が出來なかつた。

水晶體の位相差顯微鏡所見—第1報 正常水晶體

著者: 中島宣之

ページ範囲:P.674 - P.676

緒言
 既に1883年Otto Beckerに依り正常及び,病的水晶體の組織學的検索が成され,その詳細なる構造を明かにし,其の後alver Gulstrandが細隙燈顯微鏡を完成してよりVogt初め多數の人々に依り生體に於ける水晶體觀察が成され,新しき知見が續々と發見され,殆んど組織學的構造は知悉された觀がある。
 近年に到り顯微鏡技術の革命として,1941年Kohler及びLoosに依り位相差顯微鏡が實用化され戰後各國に於て急速に同顯微鏡の進歩を見,我が國に於ても,久保田博士の基礎的研究に依り1949年同顯微鏡が完成され現在各方面に廣く使用されている。

學校トラコーマの集團治療—(第3報)學校トラコーマのスルフアダイヤジン軟膏單獨療法の成績

著者: 今泉龜撤 ,   三浦孝一

ページ範囲:P.677 - P.679

Ⅰ.緒言
 トラコーマに對する化學療法は,戰後急速なる飛躍を遂げ,殊に昭和25年以來はテラマイシンが登場し,オーレオマイシンと共に時代の寵兒として受け入れられるに至つた。その集團療法に應用した成績では,淸水1),當教室の今泉・服部2)等の發表があり,何れも,そのトラコーマに對する卓起せる有效率に,從來の諸種藥剤は完全に壓倒された感がある。飜つてダイヤジンによるトラコーマ治療はと見るに,内服治療による成績は1,2見受けられるが,その軟膏による詳細なる治療成績殊に集團治療に應用された報告は殆んどなく,如何に急據なる發展えの過渡期にあつたとは言い,今日迄全く顧みなかつたことは餘りにも淋しい氣がする。かゝる故を以て,昭和25年度に當教室で行つたグイヤジン軟膏による學校トラコーマ集團治療の成果を再検討し,その成績を茲に紹介したいと思う。

臨床講義

單性視神經萎縮

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.680 - P.683

症例
北○今○ 47 ♂勤人(初診昭和26年6月14日)
主訴:兩眼視力障碍

談話室

緑内障手術の歴史

著者: 山賀勇

ページ範囲:P.683 - P.685

 ギリシヤ時代の後期アレタサンドリヤ時代になると,眼穿刺により治癒するものと治癒しない別の瞳孔の溷濁があることが知られていた。前者は即ち白内障(Hypo-chyma又はSuffusio)で後者は緑内障(Glaucoma)である。而して白内障は水晶體の前方に病的體液が集まつたものであると解し,緑内障は水晶體それ自身の病變であろうと考えられ,當時は水晶體そのものに視機能があるとしていたので,とにかく白内障以外の失明で特に瞳孔に變化のある不治の疾患を凡てこれに入れてしまつたものの如くである。緑内障のGlaucomaの意はMee-rgrunで瞳孔領の緑色に見えることより出た。
 かくの如くギリシヤ時代には緑内障のことは未だ判然と理解されないが,ローマのGalenusは眼膜の緊張によつて激痛を生ずることを述べている。又アラビヤ時代になると明かに緑内障のことが知られ,Ali ben Isaは水晶體が乾燥すると眼は青くなり視力が障害されると述べている。その後中世ヨーロッパには新説なく18世紀の初めに及んだ。

新生日本眼科醫師會の設立を熱望す

著者: 淸水新一

ページ範囲:P.685 - P.686

 本誌5卷5號に中村康先生が至急日本眼科醫師會の再設立を提唱され,6號には希望を述べるように申されておられますので,私不肖を顧みず少し卑見を述べさせて頂きます。
 第13回日本醫學會總會が空前の盛況でありました事は皆樣がよく御承知の通りでありまして茲で私がかれこれ申す迄もありません。然らば何故其樣に盛況でありましたかと申しますに,當事者の方々の非常な御苦心御努力の賜である事は勿論でありますが,内村第13回日本醫學會總會準備委員長も申しておられる通り,日本醫學會が日本醫師會の組織に入つて,常置されておる日本醫師會の事務機構の力を借りた爲に凡ての點で非常に好都合であつた。即ち今回の總會を主催する者にとつて日本醫師會は大きな力であつたし又此に負う所が非常に大きかつたと述べておられます。だから今回の總會の空前な盛況は日本醫師會という組織の力によつた事が少くないと思われます。

外文抄録

緑内障(その3)

著者: 須田經宇

ページ範囲:P.687 - P.688

D.原發性緑内障の手術
 過去1年間にて興味のある方法は毛樣體の燒灼であるReiser (Klin.Monatsbl Augenh.115:491,1949)は角膜輪部より8mm離した點で,毛様動脈を閉塞するために眼筋附著部位を燒灼する。weekers (Ophthalmologica 118;564,1949)は家兎に於て毛樣體後方をヂアテルミーで燒灼しても眼壓が下降するのをみとめこの部位の血管擴張にその原因を求めている。Biozzi (Gior.ital.oftal.2:380, 1949)Arato (Arch.Soc.oftal.hispa-no-am.9:746, 1949) Schreck(Arch.f.Ophth.149:95, 1949)等は後長毛樣動脈を凝固する方が效果的であると述べ特にAratoは眼筋腱直前に10〜12箇ヂアテルミーで燒灼,凝固せしめて單性緑内障にすばらしい成績をあげている。
Berens, Sheppard and Duel (To.Am.Ophth.Soc.47:364, 1949)は毛樣體にヂアテルミーをかけるよりも電氣分解の方を推薦している。之は損傷が少いからである。眼球下半分の輪部より1及び3mm後方で50〜75ヵ所で輕微な針で,5m.a.5秒間施行する。電氣分解は術後鞏膜の收縮が起らないから眼壓は上昇しないと述べている。

American Journal of Opthalmology '51

著者: 初田博司

ページ範囲:P.689 - P.691

1)水晶體後方纎維形成(Algemon B Reese and F rederick C.Blodi)
2) Neutron白内障(A, C.Krause and J.O.Bond)

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讀書寸感

著者: 中村康

ページ範囲:P.692 - P.693

 此頃は英,米,佛,獨其他の國々の單行本及專門雜誌が自由に手に入るようになつたので其内容紹介の意味で私の興味を曳いた點を主體として毎月少しづつ書いて見たいと思う。何か海外研究の動向を知る參考となれば幸である。勿論各大學に勤めておられる教授其他の學究諸君には珍らしい事でないが,本誌の立前から開業しておられる讀者の皆さんを對象としているので六ヵ敷しい理論をぬきにしてあることを了承して載きたい。
Recent advenage of ophthalmology (Duke Elderund Goldsmith)372頁1951年版London, J&A.Ch-urcill Ltd.發行,邦價1680圓

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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