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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科5巻6号

1951年06月発行

雑誌目次

綜説

第13回日眼總會記

著者: 小島克

ページ範囲:P.357 - P.360

 昭和26年4月2日から3日間,東京學藝大學講堂で開催,雨の學會にも拘わらず盛況で地元各位の御苦心に感謝を捧げる。故中島教授の温容なきは一沫の寂しさであつた。來年は田村教授御司會,須田教授の「緑内障の早期診斷」と植村教授の特別講演が豫定され,更に三井助教授の「トラコーマ」に關する問題も28年度に豫定され學會と臨床醫家の直結も本筋に入つて來た感が深い。演題は91題宇山教授「網膜の特殊構造」生井助教授「眼結核の病理と治療」が,特別,宿題講演であつた。以下,簡單に拔記してみたい。
 〔視力〕大山信郞氏(1)は,文字の可讀閾と露出時間から論じ,視力は露出時間の對數に,露出時間の逆數は照度の對數にそれぞれ比例するとされ,山地良一氏(2)は,中心外視力について,案外低くなく照度影響も大きくなく,低照では中心域に近い親力で,0.01Lxでは15°に極大のある事,低照度暗點等につき氏の光幾何學的な面が光つた。齋藤俊夫氏(3)は,形體覺と分離能の混合された視認力について形態知覺の限界を精細に述べられた。

臨床實驗

炎症時に於ける角膜周擁毛細管のTonusに就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.361 - P.365

緒言
 炎症機轉に於ける毛細血管の關與は極めて明瞭且つ重要なる事實である。此の毛細血管の形態學的變化が多樣である事は多くの動物實驗によつて明らかにされたのであるが其の形態學的變化の原因が血管壁に存在するのであるか,血管運動神經に存在するのであるかは未だ明らかにされていない。此の問限は炎症の本態と極めて重要なる關連を有している。
 先に私は常態に於ける角膜周擁毛細血管のTonusを種々なる藥劑の點眼によつて變化せしめ,細隙燈顯微鏡を用いて觀察したのであるが,今度は炎症時に於ける角膜周擁毛細血管のTonusを槻察し,毛細血管の形感學的變化の原因について種々なる結論を得たので茲に報告したいと思う。

視標視認の繼時的變容

著者: 小島克

ページ範囲:P.365 - P.367

 視標に對し前進或は後退視認を反覆する事によつて,その視認距離に種々の變容を來す。恰も近點測定における如きと近似であり,その變容は視認力の變動における1つの基本的な因子とも云えよう。視標視認に關し前進及び後退視認の反覆經過における結果に就いて2-3茲に記載したいと思う。
 方法,材料 前進視認及び後退視認に變動の少ない6名を以つて材料としてある。是は兩種條件の比較の便と基本的な事象の暗示性をうるためである。

老人白内障,緑内障の遺傳家系

著者: 小島克

ページ範囲:P.368 - P.369

 老人白内障の遺傳家系及び緑内障の家系を得たので茲に記載したい。

視標視認に於ける前進,後退視認の關係(1)/視標視認に於ける前進,後退視認の關係(2)

著者: 小島克

ページ範囲:P.369 - P.372

 視認の距離測定においての前進或は後退視認は近點測定と近似な意味を持つ。斯る條件での視認距離の状態が,種々の變容を示すのであろう事を想定して,ラ環1.0及び0.5視標を用いて,前進視認後退視認の状況を調べたので茲に記載したい。
 方法20名の被検者。ラ環0.5及び1.0の視標に向い前進して視認した視距離,及び前方より後退して見えなくなつた限界での視距離を測定する。

トラコーマ疑似症の研究(1)—結膜の肉眼的所見

著者: 大山秀

ページ範囲:P.372 - P.373

 私に都下2幼稚園兒童と横濱市内中學校生徒の結膜の所見を丁寧に診て其中,臨床的に明かにトラコーマと診斷すべき者と,全く乳嘴,顆粒及濾胞等の病的變化を有しない文字通りの健康結膜なる者とを除き,殘餘の者を假にトラコーマ疑似症として研究の對象に選んだ。トラコーマ疑似症に關しでは澤山の文獻があるが,所謂疑似症と私が上述の定義で對象とした疑似症とは多少内容に於て異なつている事を豫め諒承して置いて頂き度いのである。昭和9年茂木氏が極く初期に於けるトラコーマの觀察と題して輕微なる結膜及角膜の變化に留意すべき事を述べたのと,岡村,三井兩氏がプ小材を證明出來ないがトラコーマに似た所見を示す1群を疑似トラコーマとし且,之等は治癒に近いトラコーマであると云つた事及宮下氏のトラコーマ疑似症に就てと云う論文は特に私の興味を惹いた。
 學校の身體検査で我々が屡々經驗する事は校醫が變る毎にその學校のトラコーマの數が變ると云う事である。此の樣な集團檢診の際には誰が診てもトラコーマだと診斷する結膜と如何樣に捜しても乳嘴1つない濾胞1つない全く健康な結膜とがあり他の全ては之等兩者の間に介在していて,しかも極く僅かの差で變つて行く一連した連續的な病變を示している筈である。從つて何處からをトラコーマとし何處からを疑似症なり正常とす可きかは難い所であつて校醫によりトラコーマ患者數の決定の差は當然有り得可き結果である。

瞳孔縁より發する瞳孔膜遺殘に就て

著者: 藤田佐

ページ範囲:P.373 - P.374

 昭和24年の日眼總會に於て邱と私は虹彩紋理の分類に就て述べた。即,虹彩紋理を特徴ずけるものは分割輪と車軸状皺襞と窩孔であり私共は之等が明瞭に出現しているものをKとPとCで表わし且此の特徴が明瞭に出現していないものを夫々kとpとcで表わした。而て之等を適宜組合せる事に依る表現方法を以て任意の虹彩の紋理を云い表す事が出來る事に就て述べた。
 今迄に虹彩紋理と瞳孔膜遺殘との關係に就て述べた人は見當らないが邱氏は戰時中,臺大眼科集談會に於て此關係を論じた。然し其所論は餘り日本では知られていないので私は邱氏の述べた所を紹介し併せて自驗例を迫加しようと思う。

近業と視力,屈折度の變動(故井街謙敏授追悼論文)

著者: 石郷岡淸

ページ範囲:P.375 - P.378

 近業時に調節筋を收縮する反應時間即ち緊張時間は1秒内外であり,又その弛緩時間は0.7秒内外であると言う。故に調節筋の收縮及び弛緩は殆んど瞬間的に行われるものと考えてよく,又平澤によれば300乃至600ルツクスの下では,輕近業を持續しても其の時間は延長しないと言う。從つて照度が適當且一定であり若干の休息時間をおくならば,我々の視力,屈折度は調節によつて影響されす,ほゞ一定しているのが普通である。然し一方初見は電話交換手で勤務により遠點が近ずき近視性の増加する者が1/3あり,その視力低下が凹レンズで回復する者が1/6ありと報告している。然らば近業によつて視力低下し屈折度増加する者もある譯で,私は此が如何なる者であるかを見る爲に色々實驗してみた。

健常若年女子の硝子體前部の細隙燈顯微鏡所見の統計的觀察

著者: 下田重正

ページ範囲:P.379 - P.382

緒論
 健常者硝子體の細隙燈顯微鏡(以下細)による觀察はGullstrand氏(1911)を嚆矢とし其の後Koeppe,Vogt,Meesmann,河本正一氏等の報告があるが其の成績區々であり,又諸家はアトロピン散瞳に於ける所見にして常態に於ける成績で無く,實際上臨床的に無散瞳で行う場合の規準とし難いことを考え,又屈折状態との關係に就き詳細な報告のない事等より當院看護婦養成所生徒の中より全身的並に眼科的に既往及び現在疾病なきもの30人60眼を選び觀察を行い,次の如き興味ある成績を得たので報告する次第である。

輻輳性過調節症

著者: 小口武久

ページ範囲:P.382 - P.382

 高度外斜位眼に於て輻輳不全が強くなると之が調節に影響を及ぼし,比較輻輳力を超えた輻輳刺戟に相當した假性近視が起り,兩眼視力が片眼視力に劣るという奇妙な現衆が起る事がある。斯樣な症例に就ては既に10數例の報告があるが,未だ2,3疑義の存する點もあり,私が經驗した症例を掲げて少しく述べて見度いと思う。
 症例1.28才,♂,外斜位,右6mm,左4mm,ぼんやりしていると右が外斜する。マドックス法,5m右交叉13度,左交叉13度,30cm,右同側5度,左同側5度,視力,片眼,右0.1(0.4×−6.0D=Cyl.−2.0D→)左0.3(1.2×−1.5D),兩眼,0.1(0.1×前記眼鏡)(1.0×右−8.0D左−8.0D=Cy1.−2.0D→)此の眼鏡で片眼宛の視力は,右0.4,左0.1。

わが國の球後視束炎と多發腦脊髄硬化症の問題

著者: 桑島治三郞

ページ範囲:P.383 - P.386

 球後視束炎が多發腦脊髓硬化症の最も重要にしてかつ頻發する症状であると同時に,後者が前者の最も重要にしてかつ頻發する原因であり(Behr),兩者はgleichb-edeutendの關係にあることは,歐米,特にドイツ學派の強調している處である。然るにわが國にあつては,球後視束炎は多數あるが,多發硬化症は古くから殆どないとされ,この東西の差は民族の特殊性によるものと定説化されている。いわゆるわが國獨特の球後視束炎について,古來,その原因論がやかましく論じられて來た理由はこゝに宿されている。
 然し單に用語上の論理から見てもgleichbedeutendの兩疾患の中,一方があるということは同時に他方もまた當然その存在が肯定されなければならない筈である。もし事實がそうでないならば,曾て伊東の指摘した如く欧米の定説が誤つているか,わが國のそれが誤つているか,いずれかでなければならない。

健眼並に緑内障眼の負荷試驗に就て—第8報 眼壓の負荷試驗に就て

著者: 鎌尾保

ページ範囲:P.387 - P.388

 緑内障は我眼科界では其の原因の不明な疾患としてトラコーマ,近視,白内障,網膜剥離等と共に古來世界の多數の學者により種々研究せられて來たが末だに其の本態は不明のままである。本疾患は眼壓上昇と種々特有なる機能障碍や,臨状並に病理組織學的所見を伴う疾患であり,何と云つても眼壓上昇が重要なる症状である。然らば此の眼壓上昇と云うことは何故起るのであろうか。今正常人眼の眼壓をSchiotz眼壓計で測定してみると各個人間には相當の差(13mm水銀柱〜27mm水銀柱)があるにも拘わらず各個人に就ては日々殆んど一定であり,又1日中でも時間的の差即ち目差が先ず2〜4mm水銀柱を出でないのが普通である。以上のことから考えると緑内障は此の眼壓の自動調節機能が障碍されて異常な眼壓の上昇がおこるのではないかと考えられる。
 そこで私は正常人眼の眼壓調整機能は如何なるものであるかを知らんとして先ず第1報に於て述べた如く人眼球を加壓すると云う方法を取つてみた。即ち眼球を壓迫すると壓迫中はそれに應じて眼壓は上昇するがその間眼壓は徐々ながら下降する。然し初壓以下には決して下降しない。所が壓迫を取除くと急激に初壓以下に下降しそして恢復していく。而して壓迫中の眼壓曲線もそうであるが壓迫除去後の眼壓曲線は壓迫の量拉に時間の相違によりて變化して行くものであろうか。

「アロピラビタール=ザルソブロカノン」の葡萄膜疾患に對する治驗成績に就て

著者: 山地良一 ,   濱田忍 ,   古村桂 ,   南睦男

ページ範囲:P.389 - P.390

 「アロピラビタール=ザルソブロカノン」(以下「アロプロ」と略す)の臨床成績に就ては,汎く諸種頭痛,神經痛,ロイマチス等に用いられて效果が認められているが,眼疾患に用いたと云う報告は未だない樣である。私達は之の試用を,主として阪大眼科の入院患者に就て行つた結果,認むべき效果があつたので茲に報告する。

テラマイシン軟膏によるトラコーマの集團治療

著者: 淸水正

ページ範囲:P.391 - P.392

緒言
 Streptomyces rimosusの培養濾液より得られたTerramycin (以下T.M.と略記す)は抗菌作用を有し,非常に安定な物質で,試驗管内及び體内實驗で多くのグラム陽性菌,陰性菌,好氣性嫌氣性菌,リケツチア及び或種のヴィールスにも有效に作用すると云われている。
 眼科領域に於ては,特にトラコーマ(以下「ト」と略記すに對して著效を奏することは,最近,我が國に於ても數氏の報告があるが,未だ集團治療の報告に接していない。

神谷,今井氏等の屈折説批判を讀んで

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.393 - P.395

 私は近視屈折説の主張者として,その反對説に答え,兩説の當否を檢討す可きであると考える。
 神谷貞義,西山,丸尾,藤川氏等は「殿樣蛙の屈折状態に就て」(綜眼35巻,1050頁,昭和17年)及び「眼屈折の母集團分布に對する推定に就て,正常家兎眼の屈折度數分布に就て」(綜眼37卷,1492頁,昭和17年,2)眼紀1卷,223頁,昭和25年,3)眼臨44卷,221頁,昭和25年)なる2つの論文より近視の屈折説に對して反對を唱えた。其の要旨は次の如くである。

色感に關する研究—第5篇先天性色弱者の色度混同に就て

著者: 關亮

ページ範囲:P.396 - P.398

緒論
 私は本研究の第2篇(本誌5卷2號)に於て,Pittの測定結果(JuddにょりICI表色系に變換された)よりなる先天性色盲者の混同色理論を使用して,石原氏色盲表を理論的に檢討した。その際に記した如く,先天性色弱者に對して未だ確定した混同色理論がないので,今回此の方面の理論的考究を行つた。即ち正常色神の3色係數(x,y,z)より色弱者の3色係數えの變換式を作り,次に之によつて色度圖を畫き,更に此の色度圖により色弱者の混色が行える事を證明し,進んで色弱者の色度混同に論及しようと考える。

涙嚢摘出術の皮膚切開線に就て

著者: 周々木三千太郞 ,   澤田孝明

ページ範囲:P.399 - P.400

今日專ら行われている方法は内皆靱帶の中央部に皮膚切開線を置く所謂Czermak法である。本法は術後の瘢痕が目立っ場合があるので時に妙齡の婦人に對して美容上躊躇する事がある。この缺點のため今日迄に,この古典的Czermak法を改良する多くの術式が考按されたので,例えば茲に圖示する樣に石津氏の結膜下摘出法,山田氏法,小暮—Hoffmann氏法,桐澤氏法等が生れたのである。(第1圏)
 これ等先人の術式は何れもすべて手術による瘢痕の絶無を期待したものであり,夫々一應其目的を達しているが手術の困難なる事は桐澤氏法を除きすべて大同小異であって尚一般には普及されざる現況である。

Polyethylene glycol(Carbowax)の眼軟膏としての應用性(第2報)

著者: 岸本正雄 ,   柴田明子

ページ範囲:P.401 - P.404

 組織切片標本作成の迅速包埋用として最近その應用性の賞讃されているPolyethylene glycol(Carbowax)の分子量1500程度のもの即ち,"Carbowax 1500"が丁度ワゼリン樣の硬度を保持し,且つ親水性が高度で水に極めて易溶且つ水に溶解すればグリセリン樣となり幾らかの粘稠度を持つことに着目し,之が點眼用軟膏基劑として使用可能であるかどうかの基礎的實驗を行つた結果,點眼直後暫時の輕い疼痛と結膜に對する輕微な刺激のある以外には組織損傷作用なく,點眼用軟膏基劑として使用可能の旨を曩に第1報(眼臨,45(1):13,昭26)として報告し,その際之に藥物を含有せしめた場合にワゼリン或は水溶液と使用上の優劣比較については引續き實驗報告を行う豫定であることを附記しておいた。今回は著名な散縮瞳劑を指標として"Carbowax"を基劑として用いた場合の吸收滲達作用を,ワゼリン,水溶液を用いた場合のそれと,主としてその遲速について比較檢討したのでその結果を報告する。

臨床講義

蠶蝕性角膜潰瘍

著者: 倉知與志

ページ範囲:P.405 - P.407

 本日(昭和25年3月1日)は,稀な病氣で,一般的にはまだ本態も治療法も確定されていないものだが,一寸した試みが幸にも成功した例があるので,このことは本症例での原因を示唆するかとも考えられるので,簡單にお話してみたい。
 患者 43歳,家婦,初診 昭和24年6月2日

私の經驗

流行性腦脊髓膜炎に伴う轉移性眼炎とその豫後に就て

著者: 大石省三

ページ範囲:P.408 - P.409

 流行性腦脊髓膜炎の經過中,轉移性葡萄膜炎を起すことがあるのは古くから注意され,我國に於ても明治41年山田氏の症例以來數氏の症例報告を見る。これ等の豫後を見ると通常眼球萎縮に陷つている。
 私はスルファミン劑が登場し本劑を使用した昭和15年の春の3例が意外にも豫後が可良であつたので,以來注意して症例13,15眼を得たので,一括報告し,ス劑使用前及び今後期待されるペニシリンその他の優れた抗菌製剤による治效とを比較する爲の記録としたい。從つて全症例は昭和15年以降21年迄に奉天で經驗したもののみである。

談話室

白内障前史

著者: 山賀勇

ページ範囲:P.409 - P.410

 白内障に關する最初の信ずべき文献はギリシヤ時代の後期に屬し,ローマのCelsus (紀元前25—紀元後50)の大百科全書中に收められたものであつて,その中に當時の本症の病理と治療法の記載がある。而してギリシヤ前期のヒポクラテスの記載中にも,白内障の題目は全く見當らない。
 然るに,紀元前2250年代に出來たバビロンの,ハムラビ法典には,眼手術に對する罰則が發見され「刀で内障眼を手術し眼を傷けた時はその手を切る」というのがあるとのことで,これは恐らく白内障手術に關するものであろうと言われる。

外文抄録

Archives of Ophthelmologe '50

著者: 初田博司

ページ範囲:P.411 - P.412

VOL.44.No.1.July'50 P1〜174
1)植骨に依る眼窩整形(J.M.Convers and ByronSmith)
2) Chloramphenicol N.S.P.(Chloromycetin)の眼内浸散力(J.H.Leopold, A.C.Nichols and B.W.Vogel)

眼窠

著者: 金田招重 ,  

ページ範囲:P.412 - P.414

 Benedict(Am.J.Ophth.32, 1949)は多數の眼科腫瘍例をあつかつた經驗により,眼窠腫瘍を臨状症状のみによつてその種類まではつきり診斷するのはむずかしく色々な他の檢査特に試驗的に眼集を手術開放してみることが診斷を確かにする手段だと述べている。
 Benedictは診斷の正確を期する便宜上,眼窠を3つの手術帯と3つの解剖的分區にわけて考えた。第1帯とは眼集中隔より眼球赤道部まで,第2帯は眼球赤道部より眼球後方10mmまでで,そこからは網膜中心血管が視神經中に入つてゆく。第3帶はそれより後方眼窠尖端までである。第1分區とは眼案骨壁より骨膜にいたるまでで骨膜下組織がふくまれている。この第1分區には續發性頭蓋腦膜腫が最もしばしば發生し,レ線的に眼窠骨壁の變化を認めることが出來る。第2分區とは骨膜と筋圓錐の間でありこゝには多數の血管性腫瘍及び新生増殖腫瘍がみられる。第3分區は筋圓錐のうちにつつまれた部である。この部に病變があると直前方にむけて眼球が突出する。視神經が壓迫されて視力障碍をきたしやすい。Craig and Gogela (Am.J.Ophth.32, 1949)によると原發性眼窠腦膜腫はこの第2及び第3分區にしばしば發生する。

手術メモ・ⅩⅩⅠ

水晶體脱臼手術

著者: 中村康

ページ範囲:P.415 - P.416

 チン氏帶が弛緩し又切斷し水晶體が偏位,脱臼したものは之を整復する事は出來ない。結局は之を摘出する外に方法はない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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