臨床實驗
球後視束炎の概念とその發現機序に對する1考察
著者:
桑島治三郞1
所属機関:
1東北大長町分院眼科
ページ範囲:P.432 - P.434
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球後(球外)視束炎の呼稱は球内視束炎に對するもので,主として眼底の檢眼鏡的所見の有無,ないし輕重の觀點から分類したものに屬し,庄司の引用によれば,要するに主要病變が多くは眼球より後方の視束にあると考えられる視束炎を意味する。然しよく考えて見ると逆に,檢眼鏡的に乳頭炎の著明な所見が認められるから球内視束炎であるということには問題があると思う。なぜなら例えば局所解剖的に見ても,視束の眼球内に屬する部分はおよそ1mmの長さに過ぎない。その他の部分は眼窩内20〜30mm,視束管内4〜6mm,及び頭蓋内3〜16mm,平均10mmといわれる(Walsh)即ち視束の大部分が明かに球後にある。これは至極當然なことであるが,從つてこの觀點から視束炎を考える時,特に球内視束炎として區別しなければならないような限局された視束炎が原發することありや否やということは相當吟味を要するところである。
視束炎の所見として檢眼鏡的に觀察の對象となるのは視束乳頭がその病機に與つている場合であり,視束病變の原發性ないし續發性を問わず,それが乳頭に達した時には檢眼鏡的に乳頭に病變を認めることができる。即ち假りに球後深部の視束に炎症の原發した球後視束炎の場合,初め檢眼鏡的乳頭所見が正常であつても,周知の如く,その經過中に炎症の擴大または初發位の神經線維および竈鞘の續發變性が下行することにより,檢眼鏡的病變を認めるようになることが多い(Behr, Fuchs)。