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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科50巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

脈絡膜病変のICG螢光造影所見(1)

著者: 松永裕史

ページ範囲:P.4 - P.9

 近年開発されたインドシアニングリーン螢光眼底造影はフルオレセイン螢光眼底造影よりも脈絡膜の観察にすぐれているので,脈絡膜病変の病態の解明,診断,治療に応用されつつある。本稿では,2号にわたり,種々の脈絡膜病変のICG造影所見を示し,その所見の特徴を述べ,脈絡膜の病態,ICG造影の有用性について解説する。

眼科図譜・348

アシクロビルが奏効した周辺部角膜潰瘍

著者: 山本憲明 ,   加藤良枝

ページ範囲:P.12 - P.13

緒言
 周辺部角膜潰瘍の原因にはさまざまなものがあるが,なかでも角膜ヘルペスの非定型的病変の1つである周辺部潰瘍(marginal herpes1))は頻度が低く,診断に苦慮することがある。著者らは臨床的にmarginal herpesと診断した1例を経験したので報告する。

眼の組織・病理アトラス・111

脈絡膜骨性分離腫

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.16 - P.17

 脈絡膜骨性分離腫choroidal osseous choris—tomaまたは脈絡膜骨腫choroidal osteomaは10〜20歳台の若い女性の片眼または両眼に発症する。網膜下にオレンジ色で比較的境界鮮明な円板状の軽度に隆起した腫瘤が視神経乳頭の近くまたは乳頭を囲んで存在し,浅い網膜剥離を伴う(図1,2)。腫瘍の表面には房状の血管網がみられる。腫瘤は経過とともにわずかに大きくなることがあり,黄斑部に及べば視力低下を自覚する。螢光眼底検査では,腫瘤部は網膜色素上皮細胞の障害のために過螢光を示す。
 ここに示す脈絡膜骨性分離腫の病理組織標本(図3〜5)は,WHO-International ReferenceCenter (IRC) for Histological Classification ofOcular Adnexal Tumours (Head:ZimmermanLE)から九州大学眼科へ送られてきたもので,Williams ATら(1978)およびGass JDMら(1978)によって報告されたものと同一の症例である。傍中心暗点を訴えた26歳女性で,32P取り込みが270%もあり,無色素性脈絡膜悪性黒色腫が疑われて,眼球が摘出された。

眼科手術のテクニック—私はこうしている・85

インジェクターによるシリコーン眼内レンズの挿入

著者: 小松真理

ページ範囲:P.20 - P.21

 インジェクターを用いたfoldable lensの挿入は,カートリッジのなかに納めたレンズを押し出して挿入するもので,創口の大きさを常に一定にできる,カートリッジ内の粘弾性物質がレンズに先だって前房を再形成し安全である,など利点の多い方法である。現在多くのメーカーによりこの方式の挿入器具が試みられているが,CANON—STAAR社のシリコーンレンズAQ110Nモデルでは,レンズに専用のディスポーザブルインジェクター(図1)を付属させることにより安定した挿入を目指した。しかし間違えばレンズの変形や破損をまねくこともあるので,快適な手術のためには正しい使い方を知っておく必要がある。

今月の表紙

急性網膜壊死(acute retinal necrosis:ARN)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.10 - P.10

 桐沢型ぶどう膜炎とも呼ばれる。病変の初期像であり,耳側周辺網膜に境界鮮明な黄白色混濁があるのが特徴。混濁部内に「地割れ」に似た色調が正常に近い部位があるが,これは,すでに網膜が壊死になり,脱落しているため。これよりも周辺側では,網膜血管は途絶している。網膜静脈は軽く拡張し,出血を伴っている。動脈がむしろ狭細化しているのも,本症に特有な所見である。

臨床報告

ホモシスチン尿症に伴う網膜剥離

著者: 野田徹 ,   阿部聡 ,   安藤祐子 ,   清水敬一郎 ,   谷瑞子 ,   根岸一乃 ,   秋山健一

ページ範囲:P.23 - P.27

 両眼の水晶体亜脱臼に対する精査を目的に来院し,その臨床所見からホモシスチン尿症と診断され,さらに経過観察中に網膜剥離を生じた症例を経験した。症例は21歳男性で,初診時すでに知能障害,水晶体脱臼,骨格異常を含めた本症に典型的な諸症状を認め,血中,尿中のホモシスチンの定量により診断が確定された。食事療法,ベタイン療法により全身状態が良好にコントロールされていることを確認後,全身麻酔下に網膜剥離手術を行ったが,難治で,倒像鏡式レーザーによる光凝固を含めて,網膜の復位を得るまでに5回の手術を要した。本症の網膜剥離は,マルファン症候群に類似した臨床的特徴を有していたが,全身合併症,知能障害などのため,さらに検査,治療上も困難を伴った。

マイトマイシンCを用いた線維柱帯切除術0.02%と0.04%の効果の比較

著者: 高田美貴子 ,   新家眞 ,   白土城照

ページ範囲:P.29 - P.34

 線維柱帯切除術におけるマイトマイシンC (MMC)の術中投与量と術後成績について検討した。初回手術,または過去1回の線維柱帯切除術の既往のあるlow risk群(n=81)と同手術の予後不良因子をもつhigh risk群(n=45)についてMMC 0.02%と0.04%使用例の術後成績を比較した。両群ともMMC 0.04%使用例で眼圧コントロールはMMC 0.02%使用例より良好であり,平均眼圧も低く,MMC濃度と臨床効果間には0.02%と0.04%間で差がみられた。術直後2週間の平均眼圧がlow risk群MMC0.02%使用例で平均6mmHg以下,0.04%使用例で平均11mmHg以下の症例は有意に眼圧コントロール良好であった。

CTを用いたバセドウ病患者での外眼筋計測

著者: 三浦道子 ,   大塚賢二 ,   橋本雅人

ページ範囲:P.35 - P.39

 内科的にバセドウ病と診断された35例の患者に対し,CTによる外眼筋の冠状断面撮影を行い,外眼筋肥厚について検討した。Reid base lineに対し90±10°に設定した冠状断面像で,眼窩先端部から眼窩前方までの4つのスライス面における上直筋,内直筋,下直筋の厚さを計測した。バセドウ病患者におけるこの3筋の平均肥厚度は,上直筋で3.2±1.0mm (平均±SD),内直筋で3.4±0.8mm,下直筋で4.1±1.3mmであった。いずれの場合も,正常者より肥厚していたが,下直筋における肥厚が顕著であった。また,外眼筋肥厚は眼窩前方より後方にて著明に認められ,上転障害と眼窩後方の下直筋肥厚との間に相関を認めた。眼窩先端部より眼窩前方までの筋肥厚を計測できる冠状断面撮影は,甲状腺性眼症の臨床的評価において簡便かつ有用な検査であると考えられた。

全層角膜移植後のシクロスポリン点眼による拒絶反応抑制効果

著者: 丸尾敏之 ,   山上聡 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.41 - P.44

 全層角膜移植術後におけるシクロスポリン点眼の拒絶反応抑制効果について検討した。
 全層角膜移植術を行い,術後に2%シクロスポリン点眼を行った42例42眼を対象とし,手術方法,投薬および水疱性角膜症,再移植,高度血管侵入など拒絶反応発生危険因子を一致させ,シクロスポリン点眼を行っていない50例50眼を対照として比較し,拒絶反応発生時を死亡とするKaplan-Meier法による生命表から求めた。
 その結果,術後20か月目における生存率は,シクロスポリン点眼群で有意に高く,2%シクロスポリン点眼は拒絶反応発生予防に有効であると考えられた。

強度近視白内障に対する眼内レンズ挿入の屈折矯正手術としての意義

著者: 宮本和久 ,   恵美和幸 ,   川村俊彦 ,   塩谷易之 ,   五味文

ページ範囲:P.45 - P.48

 強度近視眼への眼内レンズ挿入は,白内障の治療とともに屈折矯正手術としても大きな意義を持つ。術前屈折値-10D以上の強度近視白内障患者20例40眼に対し,術後屈折度数を軽度近視に設定した眼内レンズ挿入を行い,屈折矯正効果,視力,眼鏡装用状況,合併症につき検討した。術後の屈折値は平均-1.21±0.79Dであり,13例で眼鏡なしでの日常生活が可能となった。術中に術嚢破損を1眼,術後に後発白内障を4眼に生じたが,重篤な合併症はなかった。強度近視眼への眼内レンズ挿入は,安定性と予測性の高い屈折矯正方法と考えられた。

AIDS患者におけるCD4+,CD8+Tリンパ球数とサイトメガロウイルス網膜炎との関係

著者: 沖波聡 ,  

ページ範囲:P.49 - P.52

 眼底検査の前後8週間以内に末梢血CD4+Tリンパ球数が50/mm3以下であったサンフランシスコ総合病院眼科のAIDS患者52例を対象として,AIDS患者でのサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎と末梢血CD4+Tリンパ球数およびCD8+Tリンパ球数の減少との関係について検討した。30例にCMV網膜炎がみられた。CMV網膜炎の有無でCD8+Tリンパ球数に差はみられなかった。CD8+Tリンパ球数はCMV網膜炎がzone 1(中心窩から3,000μmまたは視神経乳頭辺縁から1,500μmの範囲)に及んでいた14例では,及んでいなかった13例よりも減少しており,前者では9例(64%),後者では2例(15%)が220/mm3未満であった。CD4+Tリンパ球数が50/mm3以下でCD8+Tリンパ球数が220/mm3未満の症例ではzone 1にCMV網膜炎が及んでいることが予測され,しかもzone 1に病変があると視力予後が不良であるので,眼底検査を頻回に行う必要がある。

後房レンズ毛様溝縫着術後に生じた網膜剥離の2症例

著者: 安田秀彦 ,   鈴木岳彦 ,   矢部比呂夫

ページ範囲:P.53 - P.56

 後房レンズ毛様溝縫着術後,網膜剥離を生じた2症例について報告する。2症例は後房レンズ毛様溝縫着術後,2年と半年で網膜剥離を発症した。硝子体手術を行った症例2においては,後房レンズ支持部縫着部位より近接した網膜裂孔への硝子体牽引が確認された。これは縫着の通糸,または縫着の操作により,硝子体線維の変性,増殖組織の発生が誘発され,硝子体牽引を惹起し,裂孔原性網膜剥離を発症させたものと思われた。
 従来,後房レンズ毛様溝縫着術後の網膜剥離の報告例は少ないが,今後,同様の症例の発生の増加が予想されるため,十分な注意が必要と思われた。

急速なインスリン治療により悪化した汎網膜光凝固後の糖尿病網膜症

著者: 浜田幸子 ,   千原悦夫

ページ範囲:P.69 - P.72

 汎網膜光凝固後,網膜症は一応安定していたが,血糖コントロールが不良となった,インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)患者(69歳,男性)の1例に,インスリン治療を開始した。開始26日後(HbA1cは11.3%から8.6%に低下),右眼黄斑部に滲出性網膜剥離が現れ,視力は0.7から0.15に低下した。治療開始70日後には(HbA1c7.9〜8.1%),左眼黄斑部にも網膜剥離を認め,視力は1.0から0.2に低下した。両眼黄斑部はgrid patternの光凝固で,視力は中等度に回復し0.5となった。汎網膜光凝固後,網膜症が安定していたにもかかわらず,突然急速な視力低下,黄斑部変化が認められる場合,血糖コントロールを詳細に検討する必要がある。

二重プルキニェ眼位計測法で得た眼球圧迫試験における両眼の挙動

著者: 長谷部聡 ,   大月洋 ,   岡野正樹 ,   田所康徳

ページ範囲:P.73 - P.77

 眼球位置覚の由来を明らかにするため,プルキニェ像による眼位測定法で,健常者6名について眼球圧迫試験による両眼球の挙動を調べた。①固視眼を鼻側へ圧迫しても固視眼に眼位変化はみられず,逆に遮閉した僚眼が平均5.2°内斜した。②遮閉眼を鼻側へ圧迫すると遮閉眼は平均4.2°内斜したが,僚眼には眼位変化はみられなかった。前者では,中枢神経からの運動命令が変化したため僚眼が内斜したと考えられるが,結果的にいずれの眼球を圧迫しても得られる眼位は変わらず,求心性信号は差がないと結論される。にもかかわらず前者でのみ視空間覚の偏位が得られることから,眼球位置覚が主に中枢神経系からの運動命令(遠心性コピー)に由来するとするBrigemanの主張が支持される。

硝子体手術後眼内炎の3例

著者: 星田美和 ,   野田久代 ,   正田政一郎 ,   本田実 ,   河野眞一郎

ページ範囲:P.79 - P.83

 1995年までの7年間に硝子体手術後,早期に感染性眼内炎を発症した3例を経験した。発生頻度は1,085眼中0.28%であった。術後感染性眼内炎の原因となった硝子体手術の目的は症例1は黄斑上膜除去,症例2は網膜剥離復位,症例3は黄斑パッカー除去で,術式は水晶体を温存するものであった。感染性眼内炎の徴候はいずれも原因となった硝子体手術翌日にみられ,3例とも抗生物質の眼内灌流下に硝子体切除術・水晶体切除術を,症例1では術後3日目,症例2・3では2日目に施行した。治療結果は良好であったが,全例無水晶体眼となった。硝子体術後眼内炎は発症・進行が早く,早期診断・早期治療が重要であると考えられた。

漿液性網膜色素上皮剥離を伴った中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィの1例

著者: 岡田克樹 ,   石橋康久 ,   宮永嘉隆 ,   吉澤徹 ,   大谷節子

ページ範囲:P.85 - P.89

 家族歴のない両眼中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィと考えられる42歳女性に,右眼視力低下と右視野の暗点拡大が生じた。右視力は矯正0.03まで低下し,中心暗点が拡大した。右眼地図状病変の周囲にある点状病巣部に,非常に薄い漿液性網膜剥離を生じていた。螢光眼底で,同部位の螢光漏出が,以前に比較し増悪していた。これは,同部位での網膜色素上皮—脈絡膜毛細管板レベルの柵破綻と考えられた。この部位への網膜光凝固により,視力は0.5に回復し,視野欠損も左眼と同程度に回復した。

正常眼圧緑内障に対する線維芽細胞増殖阻害薬を併用した線維柱帯切除術

著者: 小関信之 ,   新家真 ,   白土城照 ,   山上淳吉

ページ範囲:P.91 - P.94

 筆者らは,正常眼圧緑内障39例42眼に対して線維芽細胞増殖阻害薬を併用したtrabeculectomyを行い,その眼圧下降効果および合併症を検討した。その結果,約78%の症例において20%以上の眼圧下降率が得られ,術後眼圧を平均約10mmHgにコントロールしうることが示された。しかしながら,術後合併症として中心部視野消失,白内障または低眼圧黄斑症による視力低下が経過観察中に21%にみられた。これらの合併症は術後の低眼圧と関連していることが示唆され,今後このような術後合併症を可能な限り少なくするためのさらなる検討が必要と考えられた。

カラー臨床報告

乳幼児3例の乳頭周囲ぶどう腫

著者: 田下亜佐子 ,   鈴木純一 ,   斉藤哲哉 ,   関根伸子 ,   鈴木治之 ,   中川喬

ページ範囲:P.61 - P.65

 乳幼児に認められた乳頭周囲ぶどう腫の3症例を報告した。症例1は,3か月女児で,右眼に乳頭周囲の網脈絡膜萎縮と浅い陥凹がみられた。左眼には小眼球と水晶体後面の白色塊の付着があり,第一次硝子体過形成遺残と考えられた。右眼の中心窩反射は正常で,視力も0.6(矯正不能)と良好であったが,左視力は0であった。症例2は,3歳男児で,左眼に深い陥凹を伴い,陥凹底の視神経乳頭は正常で,典型的な乳頭周囲ぶどう腫と考えられた。検眼鏡的に,黄斑部はみられず視力は0.01と不良だった。患眼,他眼ともに合併症はなかった。症例3は,3歳男児で,右小眼球と限局性の後嚢下白内障があり,そこに,毛様体突起の牽引を伴い硝子体中に索状組織がのびていた。右眼底は網膜全剥離となっていたが,乳頭周囲の深い陥凹がみられ,網膜血管の走行はほぼ正常であった。他眼は正常であった。手術はせずに経過観察しているが,右白内障が進行し,網膜剥離の状態に変化はない。

眼科の控室

因幡の白兎

ページ範囲:P.58 - P.58

 患者さんに病状を説明するとき,難しいことをゴチャゴチャいうよりは,たとえ話を使うとスッキリ意味が通じるものです。
 「梅雨の時期の晴れ間」というのがあります。現在はたまたま天気が良くても,すぐにまた雨になるという意味です。これは糖尿病網膜症で,硝子体出血が繰り返して起こっている場合に,眼底の状況などから,再発が必至であると予想されるときに使います。最終予後が悪いので,少しでも病状が軽い今のうちに硝子体手術を勧める場合に有効です。

連載第1回

前房隅角構造の研究

著者: 瀬川雄三 ,   編集室

ページ範囲:P.95 - P.99

1995年3月,信州大学を定年退官された瀬川先生が,ご自身の30余年にわたる前房隅角の研究を語られた,そのお原稿を頂戴することができました。研究の一こま一こまが,先生のアイディアと熟考によって実り,道をひらいてきたさまは,私たちにさまざまなことを語ってくれます。(編集室)

米国の眼科レジデントプログラム

5.ウイルズ眼科病院(トーマスジェファーソン大学)

著者: 綾木雅彦

ページ範囲:P.100 - P.101

病院の歴史
 ウイルズ眼科病院はウイルズ氏によって1832年に設立された。当初は70床であったが1932年に移転して120床となり,1980年に再度移転新築して現在に至っている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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