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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科50巻11号

1996年10月発行

文献概要

特集 緑内障Today Ⅴ 緑内障手術をめぐるControversy

原発開放隅角緑内障(末期)・1

著者: 宮川真一1 根木昭1

所属機関: 1熊本大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.129 - P.131

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はじめに
 原発開放隅角緑内障(POAG)の末期では,視野は中心部あるいは耳側の一部が部分的に残るのみで,乳頭は陥凹が進行し,C/D比も0.9〜1.0といった病状を呈する。このような段階では,静的または動的視野測定や,乳頭陥凹の変化,神経線維層欠損(NFLD)などといった一般に緑内障の眼圧コントロール評価の指標となる手段は進行を見極めるうえで役に立たないことが多く,眼圧値のみを指標としてコントロール状態を予測せざるを得ない。この時期における目標眼圧は岩田ら1)が述べているように10台前半,12mmHg以下と考えられる。一般にこのレベルの眼圧値は,炭酸脱水酵素阻害剤やレーザー線維柱帯形成術(LTP)などの非観血的手段では達成できず,手術療法が必要となる。現状では,線維柱帯切除術,特にマイトマイシンCを代表とする線維芽細胞増殖阻害薬を併用した線維柱帯切除術2)によらざるを得ない。では,POAG末期でこの目標眼圧に至らない症例がすべてマイトマイシンC併用線維柱帯切除術の適応になるかというと,現実はそう簡単には割り切れない。Full medicationで眼圧が20mmHg以上でしかも手術歴がない両眼の症例などは,マイトマイシンC併用線維柱帯切除術を選択するのに躊躇しない。しかし,多くの末期の症例では眼圧がそれほど高くなく10mmHg台後半の症例であったり,何回もの手術歴や進行した白内障の併発があったり,片眼失明や高齢といった要因が複数絡んでいて,手術適応と時期に迷うことが多い。このような症例では治療方針に一定の公式はなく,まさにcase by caseである。そこで本稿では,筆者らの経験した症例を反省することで,症例に応じた方針を考えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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