icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科50巻12号

1996年11月発行

雑誌目次

今月の表紙

網膜色素線条に併発した円板状黄斑変性

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1757 - P.1757

 症例は62歳男子。側頸部・腋窩・肘関節屈側などの皮膚に弾力線維性仮性黄色腫がある。右眼の網膜色素線条として経過観察中に,黄斑下出血と線維増殖が次第に増強した。来院が4か月中断したのちに,強い硝子体出血が生じた。8週間が経過しても硝子体出血が消褪しないので,硝子体手術が行われた。術中・術後の所見として,黄斑部の網膜下血管新生,陳旧化した広範な網膜下血腫,および黄斑の耳側下方に半月形の大きな網膜色素上皮裂孔が発見された。視力は,術前が光覚弁,現在が手動弁である。
 強い硝子体出血では,糖尿病網膜症を除くと,網膜裂孔形成と古い網膜静脈分枝閉塞症とが2大原因であるが,血腫型の円板状黄斑変性によるものが最近では増加している。網膜色素線条に円板状黄斑変性が併発し,さらにこれが巨大な網膜下血腫に発展し,これが硝子体出血となった例である。このページに掲げたのは,表紙のカラー眼底に対比する螢光眼底造影所見。

連載 今月の話題

視神経疾患の治療法に関する臨床試験の重要性

著者: 柏井聡

ページ範囲:P.1759 - P.1764

 視神経疾患に関連した治療法の有効性について米国で行われていた臨床試験の結果が最近相次いで報告された。どんな治療法でもその有効性は,前向き無作為二重盲検比較臨床試験でのみ初めて正しく評価できるという貴重な証左となった。虚血性視神経症の手術療法については,その有効性を報告する論文が次々と提出されている中で,「くじ」によっては,治療は受けずに単に経過だけを診てもらう対照群となることに同意して定期的な診察に応じてくれた患者たちが,いかにこうした臨床試験では大切かを教えてくれた。結果は,「良くなると思って受けた手術でむしろ悪くなる」こともあることがわかった。また,副腎皮質ホルモンの内服は新たな視神経炎を惹起することがわかった。こうした貴重な臨床試験の経験は,臨床科学の新しい方向性を教えてくれている。しかし文化的社会的背景の全く異なる日本で,こうした検定ができるようになるには,医師を含め我々はもっと成熟しなければならない。

眼の組織・病理アトラス・121

定型網膜色素変性症

著者: 田原昭彦 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1766 - P.1767

 定型網膜色素変性症retinitis pigmentosaは,進行性の夜盲,視野障害,視力低下を主症状とする両眼性の遺伝性眼疾患である。初発症状の多くは夜盲で,幼小児期に気づく場合が多い。視力は初期には良好であるが,徐々に障害される。眼底検査で網膜の変性部位は青灰白色を呈し,その中に多数の先端が尖った骨小体様の色素が見られ,一部は網膜血管に付着している(図1)。網膜の変性は赤道に初発し,後極部と周辺部に向かって拡大する。血管は狭細化する。視神経乳頭は末期には萎縮する。視野検査で,輪状暗点,求心性狭窄,島状暗点などの異常が検出される。螢光眼底造影では網膜色素上皮層の萎縮のため,ごく初期に脈絡膜血管の造影像がみられ,まもなくびまん性の過螢光で覆われる。脈絡膜の小血管が萎縮した部では造影欠損が見られ,脈絡膜大血管の造影像が後期まで観察される。暗順応検査は,正常に近い例から,杆体暗順応曲線を欠く症例までさまざまである。ERG検査は早期診断に有用で,眼底の変性所見が軽い時期から強い異常を示すことが多い。
 現在,確実な治療法はなく,網膜変性の進行を遅らせる目的で,血管拡張薬,視紅合成促進薬,ビタミンなどが使用される。過度の光は本症の進行を速める可能性があるので,強い光を避け,サングラスを常用する。
 初期変化が網膜の血管アーケード付近に始まるように見えるのは,そこでは杵体細胞の密度が最も高いためである。秤体細胞の外節が変性し,ついで内節も変性する。さらに視細胞の核が存在する外穎粒層の配列が乱れ,核は徐々に減少して外穎粒層は菲薄化する。初期には網膜内層にほとんど変化は見られないが,外穎粒層が消失する頃になると,内穎粒層の配列が乱れてくる。神経節細胞層や神経線維層は比較的末期まで保存される(図2)。病状が進むと,錐体細胞も障害される。赤道部に始まった網膜変性は後極部,周辺部へと広がる。

眼科手術のテクニック・86

涙嚢鼻腔吻合術(1)—手術準備から骨膜剥離まで

著者: 中村泰久

ページ範囲:P.1774 - P.1775

外科解剖
 涙嚢部の皮膚には,前涙嚢稜に沿う自然皺襞がある。涙嚢部眼輪筋もほぼこれに一致して走行している。
 内眥靱帯は上顎骨の前頭突起の上縁から鼻骨にかけて付着し,涙嚢の上約1/3を覆う。総涙小管は内眥靱帯の高さで涙嚢に開口する。

新しい抗菌薬の上手な使い方・7

6.フルオロキノロン系薬(その1)

著者: 大石正夫

ページ範囲:P.1840 - P.1840

 眼科適応:経口薬として,オフロキサシン,シプロフロキサシン,ロメフロキサシン,トスフロキサシン,スパルフロキサシン,フレロキサシン,レボフロキサシンがある。
 経口薬の適応疾患を表1に示した。

臨床報告

頭蓋内に進展した視神経膠腫の成人例

著者: 鈴木茂伸 ,   小島孚允 ,   金子宇一 ,   岡田仁 ,   兼子耕

ページ範囲:P.1777 - P.1781

 43歳の女性に初発した視神経膠腫の1例を経験した。片眼の視力低下を初発症状とし,その眼の視神経乳頭浮腫と画像上片眼性眼球後方の視神経膠腫を認め,増大傾向を示したため生検を行い視神経膠腫の診断を得た。その後も腫瘍が増大し頭蓋内に進展したため経頭蓋腫瘍全摘出および眼球摘出術を行い,組織学的に腫瘍は完全切除された。術後9か月の時点で再発はみられず,他眼の視機能は正常に保たれている。

網膜中心静脈閉塞症の40歳未満例

著者: 田中雅子 ,   小川憲治 ,   張野正誉 ,   西川憲清

ページ範囲:P.1782 - P.1786

 6か月以上経過観察できた発症時40歳未満(11〜39歳:平均29.1歳)の網膜中心静脈閉塞症20例21眼(男性12例,女性8例)について検討した。全身合併症を有するものは10例であった。虚血型は3眼で,全例に汎網膜光凝固を施行したがすべて終診時矯正視力0.1以下となった。非虚血型では18眼中13眼(72%)で終診時矯正視力0.9以上となったが,30歳以上の全身合併症を有する症例で終診時矯正視力0.9以上は4眼中1眼(25%)であった。若年発症の網膜中心静脈閉塞症は,従来考えられていたように視力予後は必ずしも良好ではなく,虚血型の場合や,30歳以上の非虚血型で全身合併症を有する症例では予後不良のことがある。

強度近視眼での黄斑部渦静脈の特徴と後毛様静脈との関連

著者: 大野京子 ,   森嶋直人 ,   山下悟 ,   伊藤睦子 ,   所敬 ,   中川恒明

ページ範囲:P.1787 - P.1793

 強度近視眼では約1/4の症例に眼底後極部に脈絡膜血流の流出路があるという前報での観察をふまえ,これらの後極部流出路のうち,黄斑部渦静脈のインドシアニングリーン赤外螢光眼底造影(ICG造影)所見をもとに,黄斑部渦静脈の由来血管と強度近視における病的意義を検討した。1眼にヘリカルCTを用いたCT血管造影を施行して,黄斑部渦静脈の眼外走行について観察した。対象は,191名342眼の強度近視眼のうち,黄斑部渦静脈を有し,明瞭なICG造影早期所見が得られた17眼である。14眼(82%)で,黄斑部渦静脈が強膜を貫く部位に一致して,ICG造影の早期に短後毛様動脈が流入する所見が観察された。CT血管造影では,黄斑部渦静脈は球後で視神経周囲に流入していた。以上から,黄斑部渦静脈の多くは,強度近視眼での眼軸長の延長に伴い,赤道部の渦静脈に還流しにくくなった後極部の脈絡膜血流を集めて二次的に拡張した後毛様静脈であることが推定された。

一過性黒内障を繰り返した抗リン脂質抗体症候群の2例

著者: 大野尚登 ,   村田恭啓 ,   木村和美 ,   橋本洋一郎 ,   根木昭

ページ範囲:P.1795 - P.1797

 一過性黒内障を繰り返した抗リン脂質抗体症候群の2例を経験した。症例1は全身性エリテマトーデスの患者で,他の神経症候なく,血管系にも病変はみられなかった。症例2は,一過性脳虚血発作の既往があり,経食道心エコーで心房中隔瘤がみられた。症例1はIupus anticoagulant陽性で,症例2は抗カルジオリピン抗体陽性だった。2症例の眼症状の発症に抗リン脂質抗体の関与が考えられた。一過性黒内障では,血管病変の検査に加えて抗リン脂質抗体も含めた凝固系の検査が必要である。

白内障合併緑内障眼における白内障術前視野と術後視力

著者: 若林貴和 ,   新家真

ページ範囲:P.1799 - P.1802

 緑内障患者における白内障術後視力予後を予想するため,白内障手術後矯正視力0.6以上を得た緑内障患者52例52眼について,その術前後の視野をHumphrey (ハンフリー)自動視野計30-2プログラムより得られた最中心4点の閾値測定結果を基にretorospectiveに検討した。最中心4点における術前のpattern deviation (PD)は術後の同4点におけるtotal deviation (TD)と各々有意の相関を示したが,術後視力とはいずれも相関しなかった。上記術前PDが,(1)下耳側は−10dB以上,(2)上下鼻側のうちどちらかが−10dB以上,(3)下2点の平均が−16dB以上,の3点が緑内障眼で白内障手術後視力0.6以上を得る十分条件と考えられた。

アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離に対する強膜バックリング術後の再発例

著者: 森田博之 ,   所敬

ページ範囲:P.1805 - P.1810

 初回手術で強膜バックリングを施行し,網膜復位が得られたが,後日再剥離をきたしたアトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離6例8眼について,初回手術時および再剥離時の所見につき検討した。初回の手術時には全例で硝子体基底部に裂孔があったが,再発時には赤道部,硝子体基底部,毛様体皺襞部に新裂孔が生じていた。初回手術時には4眼が無水晶体眼であったが,再発時には全例が無水晶体眼で,正常な後嚢の形状が保たれていたものは1眼もなく,後嚢破損が5眼に,後嚢の混濁と収縮が5眼にあった。後嚢の破損ないし収縮は,アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離の再発に関与していると考えられた。

HLA-B27関連ぶどう膜炎の臨床像

著者: 南場研一 ,   小竹聡 ,   笹本洋一 ,   吉川浩二 ,   松田英彦 ,   楫野知道 ,   金田清志

ページ範囲:P.1811 - P.1814

 過去8年間に当科ぶどう膜炎外来を受診した患者で,HLA検査を行った270例のうちHLA-B27陽性の26例(9.6%)の臨床像を診療録より検討した。男女比は21:5で,男性に多かった。臨床像ではこれまでの報告同様,線維素析出,前房蓄膿,虹彩後癒着を生じる症例が多かったが,視力予後は良好であった。強直性脊椎炎の合併は5例(19%)であった。その他の臨床所見として,眼瞼の腫脹および疼痛を訴える症例が5例あった。また,発症時の視力低下の主因となっているのは線維素の析出であり,消炎とともに視力は速やかに回復した。中等度以上の硝子体混濁あるいは視神経乳頭の発赤などの後眼部病変を伴う症例が10例(39%)にあったが,前眼部病変とともに速やかに消失し,視力予後には影響を与えなかった。

ビンクリスチン投与後に視神経障害をきたした1例

著者: 川島晋一 ,   小田仁 ,   福積聡 ,   田中信

ページ範囲:P.1817 - P.1819

 64歳男性が臀部の悪性黒色腫の切除の後,ダカルバジン,塩酸ニムスチン,ビンクリスチンの全身投与を受けた。その22か月後に両眼に霧視が生じ,ぶどう膜炎と緑内障と診断された。その3か月後の当科受診時の矯正視力は右0.5,左0.3であった。その直後に前回と同じ3者併用による全身治療を開始した。その1週後に視力低下が生じ,さらに2週後には左右眼共に視力が20cm手動弁に低下していた。このとき,前房と硝子体混濁,視神経の所見には変化はなかった。右眼に盲点の拡大,左眼に視野狭窄があった。3か月後には,視力は光覚弁になり,視神経萎縮が出現した。経過中,ステロイド薬の全身投与は無効であった。この視神経障害は,細胞抑制剤,特にビンクリスチンの副作用によると思われた。

加齢黄斑変性症に対する放射線治療

著者: 谷口朋子 ,   万代道子 ,   本庄恵 ,   松田直子 ,   宮本秀樹 ,   高橋政代 ,   小椋祐一郎 ,   笹井啓資

ページ範囲:P.1821 - P.1826

 加齢黄斑変性症15例15眼に対し放射線治療を行い,その効果を検討した。適応は①治療前の半年間に悪化のみられた加齢黄斑変性症で,②脈絡膜新生血管が黄斑部にかかっており,③視力が0.8未満で,かつ④過去に光凝固術などの治療歴のないものとした。対照は同じ条件の加齢黄斑変性症で無治療例のうち,1年以上経過観察が可能であった症例17例17眼とした。治療群にはCT simulation後,2Gyずつ,6MvのX線を連日5回(計10Gy)側面より後極部へ照射した。治療群の治療後経過観察期間は9か月以上で,1年未満のものは最終時点で,1年以上経過観察できたものは1年の時点で対照群と比較検討した。新生血管板の大きさ,全病巣の大きさはともに治療群において有意に縮小した。また,治療前の新生血管板の大きさが1.5乳頭径以内のものでは矯正視力が不変または改善したものは治療群では90%に達し,対照群の36%に比べて有意に高かった。放射線治療は特に新生血管板の小さい症例において有効であると思われた。

糖尿病網膜症の進展と赤血球中アルドース還元酵素量との関連

著者: 井部佳江子 ,   小林達治 ,   高橋幸男 ,   赤木好男 ,   谷本剛

ページ範囲:P.1827 - P.1829

 糖尿病網膜症患者の赤血球中アルドース還元酵素(AR)量を測定し,その値と網膜症の進展との関連を検討した。対象は,単純型9例,増殖型28例の糖尿病網膜症患者37例で,1日2回(6時と14時)の赤血球中AR量を酵素免疫学的に測定した。それぞれの時間ごとのAR量については,単純型・増殖型間で有意差はみられなかった。2回目(14時)と1回目(6時)の測定値の比を変動率とすると,増殖型では単純型と比較して変動率が有意に高かったことから,ヒト赤血球中AR量には日内変動がみられ,日内変動が大きいことが網膜症進展の危険因子のひとつになるのではないかと考えた。

糖尿病網膜症における脈絡膜血管障害

著者: 高橋京一 ,   村岡兼光 ,   須藤憲子 ,   池田史子 ,   小林秀雄 ,   山口由美子

ページ範囲:P.1831 - P.1839

 糖尿病網膜症における脈絡膜血管障害の有無を検索した。単純糖尿病網膜症6眼,増殖網膜症29眼を対象とし,走査レーザー検眼鏡を使ってインドシアニングリーン(ICG)造影を施行した。一画角70°の広角画像を貼り合わせてパノラマ脈絡膜造影像を作製し,正常眼と比較した。フルオレセイン螢光造影を併せて行いICG画像と比較した。
 単純網膜症1眼と増殖網膜症21眼で黄斑部のびまん性螢光の減弱が観察された。網膜血管床閉塞が高度な6眼では中間周辺部で虫食い状の脈絡毛細管板の閉塞があった。増殖網膜症で脈絡毛細管板に変化のあった7眼では,脈絡膜の中・大静脈レベルで血管数の減少が観察され,うち6眼では渦静脈が狭細化していた。
 重症糖尿病網膜症では脈絡毛細管板や脈絡膜の中・大静脈に高率に血流障害があることが証明された。渦静脈は脈絡膜の血流障害時に狭細化することが推測された。

サリン曝露後にみられた瞼球癒着

著者: 谷瑞子 ,   秦誠一郎 ,   清水敬一郎 ,   野田徹 ,   尾山直子 ,   中村真理子 ,   植村祐子

ページ範囲:P.1845 - P.1848

 1995年3月20日に東京で発生した地下鉄サリン事件の直後に,33人の被害者が当院を受診した。全員が軽症であり,全身的に異常はなかったが,17名に極度の散瞳があった。その一人である49歳男子に結膜充血が持続し,3か月後に両眼の瞼球癒着が生じた。瞼球癒着とローズベンガル染色は,鼻側結膜でより顕著であった。被曝による細胞毒性が原因となった結膜壊死がその原因であると推測された。

全身異常を伴った後部胎生環の6例

著者: 尾関年則 ,   白井正一郎 ,   池田晃三 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.1849 - P.1852

 全身の先天異常を伴う後部胎生環の6例を検討した。年齢は生後1〜3か月(平均2.2か月),性別は男児3例,女児3例,全例両眼性で,眼圧は正常であった。合併眼異常は強角膜症4例,瞳孔膜遺残2例,合併全身異常は先天性胆道閉鎖症2例,先天性顔面神経麻痺と小耳症,先天性副腎過形成,Hirs—chsprung病,Alagille症候群各1例であった。強角膜症,瞳孔膜遺残,先天性顔面神経麻痺,小耳症,先天性副腎過形成は神経堤細胞の発生異常であり,Hirschsprung病,Alagille症候群は神経堤病に相当する。以上のように,合併した眼および全身異常には神経堤細胞の発生異常が多くみられた。

片眼の網膜血管異常を伴ったターナー症候群の1例

著者: 後藤美和子 ,   栗原かすみ ,   重藤真理子 ,   菅井滋 ,   熊野祐司 ,   山本正洋 ,   片山邦弘 ,   中山英樹

ページ範囲:P.1855 - P.1858

 片眼の網膜血管異常を伴ったターナー症候群の1例を経験した。
 症例は生後3か月の女児。在胎時に羊水染色体検査で45×0でありターナー症候群と診断された。在胎34週4日,普通分娩で出生した。ターナー症候群の全身的特徴として,高口蓋,外反肘,心房中隔欠損症がみられた。片眼の眼底耳側周辺部に無血管帯と新生血管がみられた。無血管帯に対し光凝固術を行い,新生血管は消失した。

カラー臨床報告

高齢者に発症した原田病の1例

著者: 伊田宜史 ,   松永裕史 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1769 - P.1773

 原田病は青壮年期に多く発症し,高齢者にはまれであるが,筆者らは高齢者に発症した原田病の症例を経験したので報告する。患者は81歳の男性で,難聴と視力低下を自覚し受診した。両眼とも前眼部には前房内細胞および角膜後面沈着物があり,眼底は視神経乳頭の充血,浮腫が強く,後極部網膜はびまん性浮腫状に混濁していた。フルオレセイン螢光眼底造影では視神経乳頭に螢光漏出がみられ,インドシアニングリーン螢光造影では脈絡膜循環障害がみられた。髄液細胞数の増加,HLAはDR4陽性であり,本症例を乳頭浮腫型の原田病と診断した。ステロイド大量投与を行い,眼底所見,視力は改善した。
 高齢者であっても原田病が発症することがあり,髄液検査,HLA検査などを参考にして,診断が遅れないように注意する必要がある。

眼科の控室

手を清潔に

著者:

ページ範囲:P.1842 - P.1842

 眼科医は手を清潔にすることが必要です。これは手術だけではなく,日常の診療でも要求されます。理由はいうまでもありませんが,外来の診察でも患者さんの眼瞼に触れることがよくあるからです。
 実習に来た学生や若い医師を見ていて気になるのが,何分に1回か,癖のように髪の毛に手を当てる人がいることです。朝シャンか,本人は「髪は清潔」と思っているのでしょうが,これは感心しません。「診療中は自分の首から上には触らないこと」を徹底していただきたいのです。

文庫の窓から

辞俗功聖方と授蒙聖功方 (1)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1860 - P.1861

 室町時代以後,織田,豊臣の時代から江戸時代の初めにかけては,中国の金,元および明代の医学が採り入れられ,医書の翻刻や,それを模範とした著述が盛んに行われた。
 田代三喜(1465〜1537)によって導入された李朱(李東垣,朱丹溪)医学は,さらに初代曲直瀬道三(1507〜1595)や二代目曲直瀬玄朔(1549〜1631)らによって,わが国に広められた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?