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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科50巻13号

1996年12月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

眼疾患と免疫学

著者: 中村聡

ページ範囲:P.1871 - P.1876

 伝染病に対する生体の防御作用は,生体の諸活動にかかわる細胞の相互作用の一部である。この作用を担うサイトカイン,細胞表面分子と,ぶどう膜炎などについて解説を行う。

眼の組織・病理アトラス・122

真菌性角膜炎

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1878 - P.1879

 真菌性角膜炎mycotic keratitisは,外傷や既存の角膜疾患,その他全身の免疫力低下を基盤に発症する。副腎皮質ステロイド薬や抗菌薬が広く使用されるようになり,真菌性角膜炎が増加している。病原真菌は,カンジダCandida,アスペルギルスAspergillus,フサリウムFusariumおよびセファロスポリウムCephalosporiumである。
 臨床像は,角膜の中央付近に白濁した円形の潰瘍を形成して徐々に拡大し,混濁は角膜全体に及ぶ(図1)。潰瘍の辺縁は羽毛状になり,主病変の周囲に数個の小さな衛星病巣satellite lesionsすなわち輪膿瘍ring abscessや免疫輪を形成する。潰瘍部の角膜後面にはフィブリン様の沈着物が付着し,前房蓄膿がみられる。

新しい抗菌薬の上手な使い方・8

7.フルオロキノロン系薬(その2)

著者: 大石正夫

ページ範囲:P.1938 - P.1938

 フルオロキノロン系薬は血清蛋白結合率が低いものが多く,その血管外移行性は良好で,高い組織内濃度が得られる。
 眼内移行:家兎に経口投与して得られた,前房水中濃度および血清中濃度の薬動力学的パラメータを表に示した。

今月の表紙

多局所網膜電図

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1877 - P.1877

 網膜電図(ERG)には,眼底の広い範囲からの誘発電位を総合してとらえる一般の方法と,狭い特定の部位からの電位を測定する方法とがある。一度に103個の部位から得られた局所ERGを視野と似た形で表現する新しい方法が,多局所網膜電図である。発想はアメリカだが,装置は日本で開発され,VERISという名称で呼ばれている。
 ここに掲げたのは,発症から6か月を経過した網膜動脈分枝閉塞症の左眼で,横50°,縦40°の範囲からの局所ERGを総合したもの。それぞれの六角柱の高さは,その部位のERGの振幅に相当する。山の中央は中心窩に対応し,手前の凹んだ「谷」が動脈枝の閉塞した範囲を示している。谷の左の端がマリオット盲斑である。

臨床報告

エキシマレーザーによる近視矯正手術後の細菌性角膜炎

著者: 石井清 ,   小島孚允 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.1886 - P.1889

 32歳男性がエキシマレーザーによる近視矯正手術を一眼に受け,術直後から治療用ソフトコンタクトレンズを装着していた。術後5日目に手術眼に違和感が生じて当科を受診した。矯正視力は1.2であり,角膜の鼻側上部に,角膜実質に炎症性細胞浸潤を伴う角膜炎がみられた。細菌性角膜炎としてただちに抗生物質の点眼と内服を開始した。2週間後に角膜炎は改善し,軽度の角膜白斑が残ったが,視力は良好であった。初診時に行った結膜分泌物とコンタクトレンズの培養検査で,後者からcoagulase—negativeのブドウ球菌が検出された。

光源付きスパーテルナイフの試作

著者: 濱田潤 ,   竹安一郎 ,   清水一弘 ,   福原雅之 ,   前谷悟 ,   中西清二 ,   奥田隆章

ページ範囲:P.1893 - P.1895

 硝子体手術に用いる光源付きスパーテルナイフを試作した。4回の改良を加えた結果,先端部は2か所で折り曲げたbent型で,口径は19と20gaugeをそろえた。ナイフ部分は下方を凸にした和包丁型の片面研ぎ(ベベルアップ)とし,操作中の網膜下迷入,網膜の誤切開が起こりにくい工夫を加えた。この器具の使用により光ファイバーの光源下で双手法による増殖膜処理が可能となり,手術時間の短縮と同時に手術の安全性が増した。

アデノウイルス4型結膜炎の臨床像

著者: 金井光 ,   青木功喜 ,   谷口奈津子 ,   若林亜希子 ,   伊藤典彦 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1897 - P.1902

 アデノウイルス4型(Ad4)結膜炎45例(男性16例,女性29例)の臨床像を検討した。平均年齢は37.4±15.6歳であった。臨床所見の出現頻度は,自覚症状として結膜充血,流涙,眼脂が各100%,他覚所見として結膜濾胞100%,瞼結膜小出血60%,乳頭増殖98%,角膜炎38%,偽膜形成0%であった。また耳前リンパ節症は38%,その他の眼外症状は62%,家族内感染は27%にみられた。これらをAd3,Ad8と比較するとAd4結膜炎患者の平均年齢はAd3より高かった。臨床所見は角膜炎,偽膜形成が少なく,眼外症状が多い点がAd3と共通していたが,結膜炎の程度はAd3とAd8の中間であった。そしてAd4は咽頭結膜熱から流行性角結膜炎といった幅広い臨床像を呈した。

エキシマレーザー屈折矯正術の矯正精度に影響を及ぼす臨床因子の多変量解析

著者: 神谷和孝 ,   平林多恵 ,   国富由紀子 ,   丸尾敏之 ,   松田修実 ,   征矢耕一 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.1905 - P.1908

 エキシマレーザー屈折矯正術(photorefractive keratectomy:PRK)後の矯正誤差に影響を及ぼす臨床因子を明らかにするため,東京大学でPRKを施行した37例48眼について術後6か月,12か月の時点での矯正誤差量に対して重回帰分析による検討を行った。目標矯正度数に対する矯正誤差は術後6か月の時点で−0.25±0.96D (平均±標準偏差),術後12か月で−0.50±1.07Dであり,目標矯正度数の±1D以内の症例はそれぞれ37眼(77%),32眼(67%)であった。重回帰分析の結果,矯正誤差と有意な関連因子は,術後6か月,12か月ともに年齢(各p=0.02,p=0.04)および球面矯正量(各p=0.02, p=0.009)であり,年齢が若いほど,また,球面矯正量が大きいほど術後屈折値が近視側に有意に偏位する傾向がみられた。

眼窩静脈圧亢進時の脈絡膜循環の眼外流出路

著者: 須藤憲子 ,   村岡兼光 ,   高橋京一 ,   池田史子 ,   清水弘一

ページ範囲:P.1911 - P.1918

 頸動脈海綿静脈洞瘻の3例3眼について,赤外螢光造影により,脈絡膜と上強膜の血流動態を観察した。全例で,拡張した前毛様体静脈を通じて,多量の血流が眼内から眼外に強膜を貫いて流出していた。脈絡膜造影では,脈絡膜静脈が優先血行路を形成しながら血管構築と血流動態を変化させていた。—部の渦静脈が消失し,その他の渦静脈では膨大部が消失していた。後極からの血流は渦静脈の部位を素通りして,より周辺の方向に向かっていた。これらの所見から,前毛様体静脈経由で流出する血流は,その大部分が脈絡膜からのそれであると判断された。
 コントロールとした正常眼6眼では,前毛様体動脈の血流量が豊富で,そのほとんどが強膜を貫いて眼内に流入していた。静脈は細く,眼内から眼外に流出する前毛様体静脈は観察されなかった。頸動脈海綿静脈洞瘻で好発する拡張した前毛様体静脈は,脈絡膜静脈の流出路として機能していることが結論される。

脳動脈瘤クリッピング手術後に視神経障害を生じた1例

著者: 河島義治 ,   雑賀司珠也 ,   大西克尚 ,   尾崎文教

ページ範囲:P.1921 - P.1924

 くも膜下出血が45歳男性に発症した。脳血管造影で前交通動脈瘤が発見され,翌日手術を受けた。前大脳動脈に10分間クリッピングを行ったのち,前交通動脈の後方に突出する動脈瘤にクリッピングをした。手術の2日後に視力障害を自覚した。右眼視力1.2,左眼視力0であり,眼位,眼球運動,輻輳は正常であった。左眼の対光反射は,直接反射が消失,間接反射は存在し,Marcus-Gunn瞳孔を呈した。眼底は正常所見であった。CT検査で視神経の圧迫などの所見はなく,脳血管撮影で眼動脈も良好に描出された。経過中,左眼の視神経萎縮が生じた。網膜中心動脈と静脈には異常がなく,螢光眼底造影でも腕網膜循環時間と網膜血管には異常がなかった。手術中の左側眼動脈圧迫が視神経障害の原因として疑われた。

眼窩血管腫の2摘出例

著者: 中西陽子 ,   朝元綾子 ,   小沢勝子

ページ範囲:P.1927 - P.1931

 35歳男性で急速に眼球突出をきたした巨大眼窩血管腫の症例(症例1)と65歳女性で下眼瞼に腫瘤を自覚しながらも放置していた眼窩血管腫の症例(症例2)の計2例について報告した。腫瘍は2例とも全摘出し,病理組織所見はともに海綿状血管腫であった。急速な眼球突出の増強の原因は腫瘍内の出血のためであった。症例1の場合,腫瘍は巨大であったが,眼窩外側に位置し,術前の視力,視野は良好であった。他方,症例2では腫瘍は小さかったが,眼窩内側にあり,術前の視野検査に異常がみられ,術後正常となった。以上のことから,眼窩腫瘍において,腫瘍の大きさより位置のほうが視機能に及ぼす影響が大きいと思われた。

レーザー虹彩切開術を施行した色素緑内障の1例

著者: 澤田明 ,   佐久間毅 ,   山本哲也 ,   北澤克明

ページ範囲:P.1933 - P.1937

 本邦においては稀な続発緑内障とされる色素緑内障の1例を経験した。超音波生体顕微鏡により虹彩周辺部の眼球後極部へ向かう屈曲がみられたため,reverse pupillary blockを解消する目的でレーザー虹彩切開術を施行した。レーザー虹彩切開術後には虹彩は平坦化し,reverse pupillary blockが解消されたことが確認された。色素緑内障に対するレーザー虹彩切開術は,その発症原因と考えられる虹彩形態の異常を解消する上で有効なこと,ならびに,虹彩形態異常の検出に超音波生体顕微鏡が有用なことが確認された。

両眼同時に発症した前部虚血性視神経症の1例

著者: 伊藤慎二 ,   前野則子 ,   讃井浩喜 ,   本多貴一

ページ範囲:P.1943 - P.1946

 両眼同時に前部虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy:AION)を発症した血液透析中の症例を経験した。症例は65歳女性で,52歳から慢性腎不全のため血液透析を受けていた。血液透析後に血管造影を受けたところ,血圧が60/40に低下した。その翌々日の起床時に両眼の霧視を自覚し,眼科を受診した。視力は両眼とも指数弁。視野,フリッカー値は測定不能であった。両眼とも,視神経乳頭は蒼白浮腫状で,螢光眼底造影では,両眼の乳頭から螢光色素の漏出がみられた。長期にわたる血液透析と,血管造影後の血圧低下が,AION発症の原因と考えた。

先天緑内障を合併したPierre-Robin症候群の1例

著者: 林瑞恵 ,   松尾俊彦 ,   馬場哲也 ,   松尾信彦 ,   松尾智江 ,   中後忠男

ページ範囲:P.1949 - P.1953

 13歳の女児が出生当時からの両眼の先天緑内障のため受診した。曾祖父母はいとこ婚であり,曽祖母の姉は少女期から両眼失明していた。眼科的には,先天緑内障,角膜混濁,網膜剥離,高度近視,水平眼振があった。全身的には小下顎,高口蓋,不正咬合,漏斗胸があり,いずれも成長に伴って顕著化してきた。2度の線維柱帯切除術で両眼の眼圧は正常化した。出生時に眼病変が多発しているときには,全身奇形の表現である可能性があり,診断確定には長期にわたる経過観察が必要である。

増殖糖尿病網膜症に対する小切開白内障と硝子体同時手術の適応

著者: 本庄恵 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.1955 - P.1960

 増殖糖尿病網膜症に対して小切開白内障・硝子体同時手術を施行した55例75眼の手術成績を調査し,同時手術の適応について考察した。平均経過観察期間は14.3±9.8か月であった。20眼で術中タンポナーデを併用,高度近視眼1眼と術中に広範な剥離があるタンポナーデ併用の8眼で眼内レンズ挿入術を行わず,それ以外の症例では硝子体手術終了時に眼内レンズ挿入術を行った。術前術後で2段階以上の視力改善がタンポナーデ非併用群で78%,併用群で55%と非併用群で比較的良好な視力予後を得た。術後併発症中,フィブリン反応が非併用群で13%,併用群で40%,虹彩後癒着が非併用群で11%,併用群で25%と,併用群で術後炎症の強さを示した。再手術も非併用群で20%,併用群で40%と併用群に多く,網膜剥離が重篤で長期タンポナーデが必要であるような症例では眼内レンズは二次挿入とするのが適切であると考えられた。

カラー臨床報告

放射状角膜神経炎で診断された初期アカントアメーバ角膜炎の2例

著者: 石橋康久 ,   亀井裕子 ,   ニュンアウン・キョ ,   李偉 ,   宮永嘉隆

ページ範囲:P.1881 - P.1885

 非含水性コンタクトレンズを装用していた28歳の女性と30歳の男性に難治性の角膜炎を認めた。両者とも感染巣がはっきりせず,放射状の角膜神経炎(radial keratoneuritis)が多数見られた。直接鏡検あるいは培養によりアカントアメーバが検出され確定診断された。初期のアカントアメーバ角膜炎の診断において臨床経過および他の臨床所見を参考にして注意深く観察することにより,放射状角膜神経炎が本症の診断に大変有用であると考えられた。

眼科の控室

成功保証

著者:

ページ範囲:P.1940 - P.1940

 病気を診て,「手術の適応」と決まれば,次に患者さんにその説明をすることになります。できれば口で話すだけではなく,絵を使うのがよろしいようです。眼球模型も用意してありますが,簡単な図を紙に描いた方がわかりやすい場合もあります。その意味で,外来にはリコピー用のA4の白い紙を常備してあります。
 一通り説明が済むと,そのあとは’「なんでも質問をどうぞ」という段取りになります。この質問では,「完全に治りますか」というのが一番頻度が大きいようです。

Report from Overseas

網膜色素変性症の血流動態とその臨床的意義

著者: 羅興中 ,   闕英男

ページ範囲:P.1947 - P.1947

はじめに
 原発性網膜色素変性症は失明を起こす進行性眼疾患で,原因は不明であり,その治療はいまなお難しい。筆者らは,網膜色素変性症44例に血流測定を行い,網膜色素変性症と血流動態を調べた。

第49回日本臨床眼科学会1995.11.10宇都宮

視神経

著者: 敷島敬悟 ,   北原健二

ページ範囲:P.1962 - P.1963

 臨眼のグループディスカッション「視神経」は,緑内障と神経眼科の各専門領域の討論の場として1991年に発足し,1995年で通算5回目となった。1994年からは,名称が専門別研究会「視神経」と変更になり,開催時間も午前の半日となった。今回は一般演題8題と教育講演2題が行われた。教育講演は,近年,分子生物学的に病態解明が急速に進展しているLeber病に焦点を当て,この方面で精力的に研究をされている2人の先生に,現在までに解明されていること,今後の展望について,一般臨床医にもわかりやすく御講演をいただいた。

文庫の窓から

辞俗功聖方と授蒙聖功方(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1964 - P.1965

 「眼目門」は両書次のようになっている。

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臨床眼科 第50巻・総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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