特集 第49回日本臨床眼科学会講演集(1)
学会原著
アクリルソフト眼内レンズの光学特性変化
著者:
大鹿哲郎1
塩川安彦2
所属機関:
1東京大学医学部附属病院分院眼科
2千葉大学工学部
ページ範囲:P.261 - P.265
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アクリルソフト眼内レンズに種々の操作を加えた場合の光学特性および形態変化について検討した。光学特性は,水を満たした模型眼中で測定した空間周波数特性(modulation transfer function:MTF)とveiling glare下での解像度を指標として評価した。30秒間の折り曲げ直後は,低周波数領域を中心とした強いMTF低下がみられたが,20℃では6分,37℃では4分で回復した。長時間(10, 20,60分)連続して折り曲げて開放30分後に測定した場合はMTFに変化はみられず,veiling glare下の解像度も60分間連続把持した場合のみ影響を受けた。20分以上の連続把持で,把持のピンセットに沿った部分の素材破損が生じた。非常に強く折り曲げた場合は,30秒の操作では変化がなかったものの,5分間の操作で中高周波数領域のMTFと解像度が軽度低下した。カッターで光学部表面中央の3mm領域に傷をつけた場合,MTFは傷10本まで,解像度は傷20本まで影響を受けなかった。中央に強い圧痕をつけた場合は,4分までMTF低下がみられたものの,以降回復し,解像度や形態にも変化はみられなかった。以上から,臨床的に考えうる範囲を極端に逸脱しなければ,アクリルソフト眼内レンズの光学特性は大きな影響を受けないものと結論された。