文献詳細
特集 第49回日本臨床眼科学会講演集(2)
学会原著
文献概要
1985年4月から1995年9月までの10年6か月間に岡山大学医学部附属病院ぶどう膜炎外来を受診した,他に全身異常がなく両眼性網膜毛細血管炎を伴う虹彩毛様体炎を呈した小児18例の免疫学的および臨床的特徴を調べた。発症時年齢は9歳から16歳で,18例中12例が女性であった。両眼に豚脂様角膜後面沈着物を伴った虹彩毛様体炎がみられた。螢光眼底造影にて視神経乳頭および中間周辺部を中心とする網膜毛細血管からの螢光色素の漏出がみられたが,嚢胞様黄斑浮腫はなかった。全身的に異常はなく,眼炎症は副腎皮質ステロイド薬によく反応した。初回炎症の消退後再発がみられたり,軽微な前房炎症が数年にわたり続いたが,合併症をきたすことなく視力予後も良好であった。HLA-DR6およびCw7の頻度が有意に高く(Yates補正によるカイニ乗検定,P<0.0001),視細胞間レチノイド結合蛋白に対する末梢血リンパ球幼若化反応が,18例中5例において陽性であった。これらの臨床的および免疫遺伝学的特徴は,従来からいわれている疾患とは異なり,別の新しい疾患単位と考えられる。便宜上,両眼性網膜毛細血管炎を伴う虹彩毛様体炎,bilateral iridocyclitis with retinal capillaritis (BIRC)と命名した。
掲載誌情報