特集 第49回日本臨床眼科学会講演集(4)
学会原著
レクトミーパンチ使用・強膜弁後面焼灼法を併用したトラベクレクトミーの1新法(太根法)
著者:
太根節直1
佐野和人1
土屋款1
緒方裕治1
所属機関:
1聖マリアンナ医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1205 - P.1210
文献購入ページに移動
従来行われているトラベクレクトミーの手技の簡略,安全化と術後の過度の低眼圧を予防する目的で,従来,時として重篤な副作用を生ずる線維芽細胞増殖抑制剤を使用しないで,同等の効果を期待できる本手術法(太根法)を開発した。対象は過去3年間に聖マリアンナ医科大学で経験された原発性開放隅角緑内障(POAG)の手術症例中から選ばれた13例(男性7例,女性6例,平均年齢59.6±12.9歳)である。なおあらかじめ本手術法の効果を実験的に検討するため,家兎30眼において,本法と現在広く行われているマイトマイシンC (以下MMC)使用法について,術後の眼圧下降作用,ならびに濾過瘢痕部の組織学的所見を比較検討した。本法の手術方法は顕微鏡下で通常の手技で強膜弁を作成し,まずカミソリ刃で輪部から前房へ入り,虹彩根部を幅広く切除し,ついで聖マリアンナ医大式レクトミーパンチの薄い内刃をぶどう膜と強膜の間に平行に挿入し,線維柱帯を含めた強膜片を一気にパンチアウトして切除する。反転してある強膜弁裏面の中間をウェットフィールド焼灼端子で,軽く幅2mmにわたって横一線に焼灼する。
本法はレクトミーパンチ使用のため,ワルサーパンチ使用に比べても,顕微鏡下での施行が安全,かつ容易であった。術後の眼圧下降も良好で,過度の低眼圧等の術後副作用も格段に少なかった。また家兎眼における実験ではMMCを使用する従来のトラベクレクトミー手術の方法と比べ,緑内障眼での眼圧下降と家兎眼での組織所見に本質的な差異はみられなかった。