臨床報告
中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィーの長期観察例
著者:
岡本史樹1
木内貴博1
武井一夫2
本村幸子2
所属機関:
1筑波大学附属病院眼科
2筑波大学臨床医学系眼科学教室
ページ範囲:P.1621 - P.1624
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約7年間の長期経過観察が可能であった中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィーの1例を経験した。症例は35歳の女性で,両眼底に中心窩を含む黄斑部を中心とした境界明瞭な類円形の孤立性網膜色素上皮の萎縮病巣がみられた。螢光眼底造影では,window defectによると考えられる病変部に一致したびまん性の不均一な過螢光を認め,脈絡膜の中大血管も一部造影されていた。矯正視力は右0.7,左0.9と軽度に障害され,また約5°の中心暗点が両眼にみられたが,photopic ERGは正常であった。約7年間の経過観察中に,黄斑部病巣は両眼とも主として耳側方向に拡大し,矯正視力は両眼とも0.15に低下し,中心暗点は約8°に拡大,photopic ERGでの振幅の減弱,後天性色覚異常が出現した。これらの所見より,本症の病像の進展様式,視機能障害と眼底病巣の経時的変化について考察した。その結果,中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィーの進行速度は比較的緩徐であると考えられた。また,本疾患の病像の進展様式の解明のためには,さらに長期にわたる臨床経過の追跡が必要であると思われた。