icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科51巻10号

1997年10月発行

文献概要

連載 眼の組織・病理アトラス・132

線維柱帯血管新生

著者: 久保田敏昭1 川崎貴子1 猪俣孟1

所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1652 - P.1653

文献購入ページに移動
 血管新生緑内障neovascular glaucomaは,糖尿病網膜症や網膜中心静脈閉塞症などの網膜の広範な虚血性変化,あるいは内頸動脈狭窄症などの眼球全体の虚血に伴ってみられる重篤な合併症である。前房隅角の状態は,血管新生緑内障の初期には開放隅角であるが,すぐに虹彩と隅角が癒着して,閉塞隅角になる。開放隅角の時期に隅角鏡で観察すると,線維柱帯の部位に新生血管網がみられる(図1A)。前眼部の螢光造影を行うと,線維柱帯の血管網から螢光色素が漏出する,このことから隅角部の血管は新生血管であると同定できる(図1B)。隅角の新生血管は虹彩や線維柱帯の表面だけでなく,線維柱帯の内部にも進入する。この状態をわれわれは線維柱帯血管新生trabecularneovascularizationと呼ぶことにした。
 線維柱帯血管新生の病理としては,線維柱帯の線維柱層板間に多量の赤血球が存在し,シュレム管は血液成分で満たされている(図2A)。線維柱層板の表面を覆う細胞とシュレム管内皮細胞は血管内皮細胞に特有な第VIII因子に陽性である(図2B)。電子顕微鏡で観察すると,数層の線維柱層板が癒合しているところがあり,癒着した層板間には色素顆粒を含む変性した線維柱細胞が見られる。線維柱層板間の間隙は,血管内腔のように全周を一層の内皮細胞で覆われていて,間隙には血漿成分と血球が混在する(図3)。線維柱層板を覆う細胞には接着装置,窓構造が観察され,新生血管内皮細胞としての特徴を示している(図3)。その細胞の胞体内には色素顆粒は認めない。本来の線維柱層板には,膠原線維,弾性線維,長周期膠原線維が観察される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?