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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科51巻11号

1997年10月発行

文献概要

特集 オキュラーサーフェスToday Ⅳ 角膜移植

眼球保存液

著者: 切通彰1

所属機関: 1大手前病院眼科

ページ範囲:P.136 - P.137

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1.現在の日本における角膜保存の現状
 角膜移植は解剖学的には臓器(organ)移植よりも組織(tissue)移植に近いものであるが,心臓弁,皮膚,骨,腱などのように凍結保存して使川することは一般に不可能であり,あくまでも他の臓器移植と同様な新鮮組織が移植手術成功の鍵となる。そこで限球の摘出から移植手術までの時間は短いほど新鮮な角膜を移植することができることは言うまでもない。しかしながら,医療機関側としては緊急手術となる上,患者サイドにとってはいつ提供されるかわからない角膜のために,長期の待機入院,あるいは緊急入院を強いられることとなる,このため,角膜を安全により長期間保存することが望まれている。
 現在日本では,摘出された眼球をそのまま保存する全眼球保存が一般的であるが,今後は米国で主に実施されている強角膜片保存が普及すると考えられる、その理由の第一は保存期間が約10日と全眼球保存と比較してかなり長く,1週間以内の移植であれば術後成績には何ら問題ないからである。これにより手術予定や患者サイドにも時間的余裕が生まれる。第二の理由としてはアイバンク側の問題である。平成8年度に厚生省より「角膜移植に使用する眼球の安全性確保の向上」という通達が日本眼球銀行協会を通じて各アイバンクに発令された。つまり,アイバンクは角膜移植に使用する眼球の提供者の疾病の有無についてより厳密に情報を収集した上で,眼球を提供することが期待されている。実際にはHIVやHTLV感染およびCruetzfeldt-Jacob病などの疾病を確認することが望ましく,提供者よりの死後採血の実施や,より詳細な主治医への問診が重要となる。眼球摘出時に死後採血されると,その結果の判定には24〜72時間必要であり,現在の全眼球保存では使用不可能となるため,保存期間の長い強角膜片保存が必要となってくる。また同時にアイバンク側も,どの医療機関へ眼球を斡旋するかを時間的余裕をもって決定できることとなる。しかしながら一部の角膜移植術式においては全眼球のほうが容易な場合もあり,今後の検討が必要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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