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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科51巻11号

1997年10月発行

文献概要

オキュラーサーフェスと私

亜鉛物語

著者: 眞鍋禮三1

所属機関: 1大阪大学

ページ範囲:P.178 - P.179

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 現役を退いて6年にもなるのに,ある出版社から「薬店向けの広報誌に一般の方からの質問に対する答を書いたので監修して欲しい」と頼まれ,簡単に引き受けてしまったが,その質問は「就寝前に点眼しても害はないか」というもので,その答は「硫酸亜鉛を含有する点眼液以外は,就寝前に点眼しても特に問題はない」というものであった。昔は寝る前には点眼しないようにと言われていたことも記憶に残っていたし,その理由が硫酸亜鉛などの収斂剤にあることも知っていたが,今でも一般用医薬品の中に硫酸亜鉛を含有した点眼液があり,その使用上の注意に「就寝前には点眼しないこと」と記載されていることなど全く知らなかった。
 抗生物質の無かった時代には,硫酸亜鉛はモラックスアクセンフェルド重桿菌の特効薬として,眼科専門医の間ではもちろん,一般用医薬品としても多くの点眼液に使用されていたが,抗生物質が発見されてからは,肝心の重桿菌に対する抗菌作用も必ずしも特効的ではないことが証明され,現在では眼科専門医の間ではもちろん,一般用医薬品からも完全に姿を消してしまったものと思っていた。そこで「今の点眼液には硫酸亜鉛のような収斂剤は含まれていないので,就寝前に点眼しても全く問題ない」と訂正しようとしたところ,「今でも硫酸亜鉛が含まれた点眼液には根強い人気があり,まだまだ市場から消え去るようなものではありません」と忠告され,原案通りの答となった次第である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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