icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科51巻12号

1997年11月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

多局所網膜電図(Multifocal ERG)の臨床応用

著者: 堀口正之

ページ範囲:P.1764 - P.1768

 多局所網膜電図(Multifocal ERG)は局所網膜からの反応を簡単に記録できる装置である。眼底病変部の網膜機能を客観的に評価することにより,他の検査では得られない情報を得ることができる。この装置により記録できる反応の種類とそ心意味を解説し,臨床疾患への応用について考えてみる。

眼の組織・病理アトラス・133

眼窩毛細血管性血管腫

著者: 坂本泰二 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1772 - P.1773

 毛細血管性血管腫(rapillary hemangiomaは小児良性血管内皮腫benign hemangio-endothelioma ofinfancyとも呼ばれる。眼窩部に高頻度に発生する腫瘍のひとつで,過誤腫hamartomaの一種である。通常,表面が平滑で明るい赤色の腫瘤が皮膚から盛り上がる(図1,2)。表面の外見がいちごに似ているので,いちご状母斑strawberry nevusともいわれる。しかし,皮膚深部に発生した場合は,外見からは病変がわからないことがある(図3)。生下時から存在するが,出生後約2週間で明らかになり,半年以内に急激に大きくなることが多い。毛細血管性血管腫の患児のうち,30%は3歳までに,75〜90%は7歳までに自然消退する。これはこの疾患の大きな特徴である。
 病理組織学的には,疎性線維性結合組織で境界された多数の毛細血管様構造の集合体が観察され,血管内皮細胞由来の腫瘍細胞であることを示す(図4,5)。腫瘍細胞が皮膚深部の筋肉に浸潤する像や細胞分裂像が散見されるが,悪性ではない。患児の成長にしたがって間質の線維化が進み,腫瘍細胞による血管様腔が閉塞して,腫瘍は消退する。腫瘍が退縮した部位は脂肪組織に置き換わる。それを血管脂肪腫angiolipomaと呼ぶ。

眼科手術のテクニック・96

低侵襲涙嚢鼻腔吻合術

著者: 栗橋克昭 ,   山下昭

ページ範囲:P.1824 - P.1826

 低侵襲の涙嚢鼻腔吻合術,すなわちdacryocys-torhinostomy(DCR)を行うためには,術者は前もって,DCRに関係する涙道およびその隣接器官の詳しい三次元的形態を把握しておかなければならない。三次元的形態といっても個人差があるので,ご遺体などを用いて手術顕微鏡下で局所解剖を行い1),個々の三次元的形態の特徴や変異を把握しておくことが重要である。できるだけ低侵襲でDCRを行うため,前涙嚢稜を温存し,至適部位に比較的小さな骨窓を作ることにより,成功に導くことができる2)。しかし,症例によっては局所の変異があるため前涙嚢稜を除去しなければならない場合がある。したがって,低侵襲DCRを前涙嚢稜を温存するDCRとするのは現時点では問題であろう。
 最近,筆者らはエルビウム:YAGレーザー(Erbium:YAG laser,以下Er:YAG laser)を用いてDCRをご遺体に対して行ってみた。今回使用したEr:YAG laserは,長田電機工業(株)が現在開発中のもので試作品である(図1a)。すでに発売されているものと比較したのが表1である。Er:YAG laserは粘膜に対する影響が少なく,骨を削ることができる。パルスエネルギー150〜400mJのEr:YAG laserを直径0.5〜0.65mmのサファイアのチップ(図1b)を介して骨に照射すると,骨に含まれている水分が気化し,微小爆発を起こして骨が粉砕されることが原理である。Er:YAGlaserを用いると任意の形の骨を一塊のものとしてくり貫くことができる(図2)。DCRの骨窓を作るために,前涙嚢稜を含めた骨をEr:YAG laserで一塊のものとして取り出し,露出した涙嚢粘膜と鼻粘膜に切開を加えて粘膜弁を作り,できたrhinostomyにlacrimal stentとしてヌンチャク型シリコーンチューブやくさび型のgelfoamやspongelなどを挿入した後に涙嚢粘膜前弁と鼻粘膜前弁の縫合を行う。その後,一塊のものとして取り出した骨をEr:YAG laserで切断し,上半部と下半部に分け,前涙嚢稜を含む上半部を元の位置にもどしておくことが可能である(図3a)。図3b,3cはさらに鼻粘膜を切除し,rhinostomyの位置を示している。特に骨を接着する必要はない。もどした骨の下に土台として縫合した涙嚢粘膜と鼻粘膜の前弁があるので,骨が移動することはない。最後に皮膚縫合を行って手術を終了する。Er:YAGlaserで骨窓を作る場合,ドリル(bur)のように少しずつ骨を削る方法も可能である。また,前涙嚢稜を含む上半部の骨を一塊のものとして取り出した後に,rhinostomyを作るために下半部の骨を除去することも可能である。症例によって使い分ける。

臨床報告

血管痙縮性視神経網膜症を生じた神経節芽細胞腫の1例

著者: 大沼郁子 ,   山口克宏 ,   高橋茂樹 ,   山際岩男

ページ範囲:P.1783 - P.1786

 3歳10か月の女児に,頻脈と多汗などの症状を契機として言高血圧(200/110mmHg)が発見され,腹部画像診断で左側の副腎腫瘍と診断された。眼底には,乳頭浮腫,網膜細動脈の狭細化,硬性白斑があった。腫瘍の全摘術が行われた。腫瘍は副腎原発であり,病理組織学的に低分化型の神経節芽細胞腫と診断された。術後は血圧が低下し,網膜細動脈硬化が改善し,硬性白斑が減少した。

涙嚢鼻腔吻合術において再評価されるべき端一側吻合法について

著者: 本田耕一 ,   竹野巨一 ,   皆川英彦 ,   奥村芳子

ページ範囲:P.1789 - P.1794

 涙嚢鼻腔吻合術での端一側吻合は合理的な術式であるが,第一選択としては評価されていない。筆者らは涙嚢粘膜と鼻粘膜との吻合法を改良した。互いの粘膜を直接には縫合せず,骨窓の辺縁に作成した4個の小孔を介して,鼻涙管の断端にかけた縫合糸を牽引し,断端を密着させるようにした。縫合糸は眼窩側で結紮し,鼻涙管断端をラッパ状に開いた形で固定し,さらに涙嚢の眼球側の壁を剥離して吻合部の緊張を減少させた。再手術を含めた81眼での手術成績は,治癒が73眼(90%),有効が6眼(7%),無効が2眼(3%)であった。

傍矢状縫合髄膜腫術後に生じた一致性四分の一同名半盲の1例

著者: 橋本雅人 ,   大塚賢二

ページ範囲:P.1795 - P.1797

 42歳の白人女性が6年前に上矢状洞閉塞を伴う上矢状近傍腫瘍と診断され,腫瘍摘出を受けた。病理学的には髄膜腫であった。今回腫瘍が再発し,腫瘍の亜摘出術を受けた。術翌日から右下方の視朦を自覚した。視野検査で,両眼とも水平子午線に沿った境界が明瞭な黄斑分割型の一致性右下四分の一同名半盲が検出された。術後の造影MRI検査で,左後頭の頭頂葉に残存腫瘍があり,周囲の脳実質は手術侵襲による浮腫のために不鮮明であった。一次視覚領である鳥距裂上唇部に異常所見はなかった。本症例は,一次視覚領域を含まない後頭葉病変でも水平子午線に沿った一致性四分の一同名半盲が起こることを示している。

黄斑円孔患者の主訴と走査レーザー検眼鏡所見

著者: 花田一臣 ,   石子智士 ,   秋葉純 ,   長岡泰司 ,   北谷智彦 ,   水本博之 ,   柳谷典彦 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.1801 - P.1804

 特発性黄斑円孔患者30例30眼(男性7名7眼,女性23名23眼,平均67.6±6.8歳)について,主訴と網膜の機能的,形態的変化との関係を検討した。Gass分類のstage2および3では主訴として変視を含むものが多かったが,stage4では少なかった。網膜機能の評価には走査レーザー検眼鏡(以下,SLO)微小視野検査を用いた。すべての症例で円孔底に絶対暗点がみられたが,中心暗点を主訴とする症例は少数だった。すべての症例で固視点は動揺し,中心暗点の自覚が少ない理由の1つと考えられた。網膜形態の観察にはSLO dark field modeを用いた。黄斑円孔は周辺網膜の形態により,円孔の周囲網膜に全層にわたる放射状の雛襞を有するもの(fold type)と円孔縁の隆起のみで雛襞は明らかではないもの(dome type)に分類された。Fold typeでは,主訴に変視を含むものが多く,円孔周囲の網膜の形態的変化が主訴に反映すると考えられた。

裂孔原性網膜剥離の手術成績

著者: 岸本直子 ,   西村哲哉 ,   宇山昌延 ,   河原澄枝 ,   今泉正仁 ,   山田晴彦 ,   宮代美樹 ,   松島正史 ,   桑原敦子 ,   谷口典子

ページ範囲:P.1805 - P.1810

 最近5年間に当科で行った裂孔原性網膜剥離1,025眼の手術成績を検討した。初回手術で強膜内陥術を85%,硝子体手術を8%,気体注入術を7%に行った。初回手術未復位例111眼に対して,硝子体手術を42%,強膜内陥術を39%,気体注入術を19%に行った。何らかの硝子体手術を行った症例は121眼(12%)であった。総手術回数は1,171回,1眼当たりの平均は1.14回であった。退院時の復位率は97%であった。術後に脈絡膜剥離が8%,黄斑皺襞が4%,増殖性硝子体網膜症が3%に発生した。裂孔原性網膜剥離の基本術式として,通常例では強膜内陥術で良い成績を得たが,難治例の網膜復位率の向上と手術回数の減少には硝子体手術が貢献していた。

硝子体未剥離の糖尿病網膜症の眼科管理下での経過

著者: 大谷倫裕 ,   岸章治

ページ範囲:P.1813 - P.1817

 硝子体剥離のない未治療の糖尿病網膜症227眼,152例(平均54歳)が,平均5年の眼科の管理下で,どのような経過をたどったかを検索した。初診時の網膜症は,単純型92眼(41%),前増殖型37眼(16%),増殖型98眼(43%)であった。単純型の36眼(39%),前増殖型の32眼(86%)が増殖化した。汎網膜光凝固は227眼中201眼(89%)に,硝子体手術は56眼(25%)に実施した。平均視力は初診時0.6,最終時0.3であった。最終視力0.1以下が58眼あり,その内訳は,黄斑浮腫37眼,牽引性網膜剥離8眼,血管新生緑内障3眼などであった。2眼が失明した。硝子体は終診時に,未剥離122眼(54%),完全剥離26眼(11%),部分剥離12眼(5%),硝子体手術後56眼(25%),不明11眼であった。光凝固は増殖病変の阻止には限界があり,25%で硝子体手術が必要になった。糖尿病網膜症は眼科の管理下にあればほとんどで失明をまぬがれるが,1/4が視力0.1以下になる。視力不良の過半数は黄斑浮腫が原因であった。

ビデオケラトスコープのパワー定義の差がコードマップのパターンに及ぼす影響

著者: 檜垣史郎 ,   前田直之 ,   渡辺仁 ,   井上幸次 ,   下村嘉一

ページ範囲:P.1827 - P.1830

 Instantaneous powerとaxia powerの違いが,角膜トポグラフィーのカラーコードマップのパターンに及ぼす影響について,62例100眼(正常角膜,直乱視,円錐角膜,PRK術後,RK術後,白内障術後)を対象として検討を加えた。その結果どちらの表示を用いても,全対象において上記の6つのパターンに正確に分類することが可能であった。しかしinstantaneous powerはaxial powerに比べ,円錐角膜において局所的急峻化がより限局性かつ高度に表示され,PRK術後ではレーザーの照射部周辺にaxial powerではみられない曲率の大きな部位が観察された。角膜の形状を評価するには,どのパワーで表示されているかを確認して,カラーコードマップを解釈する必要があると考えられた。

日本人の特発性黄斑円孔の臨床像 3.他眼の予後

著者: 高橋智恵 ,   秋葉純 ,   清水亜紀 ,   高橋淳一 ,   石子智士 ,   引地泰一 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.1831 - P.1833

 6か月以上経過を観察することができた片眼性特発性黄斑円孔59例の他眼の予後をretrospectiveに検討した。初診時,Gass分類のステージ1-A病変が3眼(5%〉,ステージ1-B病変が4眼(7%)にみられた。また,15眼(25%)で後部硝子体は剥離していた。平均22か月の経過観察期間中,6眼(10%)に全層黄斑円孔が形成された。初診時,黄斑異常のなかった52眼中1眼(2%),1-A病変の3眼中2眼(67%),1-B病変の4眼中3眼(75%)で円孔が生じた。しかし,後部硝子体剥離のあった症例では円孔は形成されなかった。以上から,特発性黄斑円孔の他眼にステージ1病変があり,硝子体が剥離していない症例は円孔が形成される危険性が高く,注意深い経過観察が必要と考えられた。

上眼瞼に発生した外毛根鞘癌の1例

著者: 中村武彦 ,   坂本泰二 ,   川野庸一 ,   石橋達朗 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1835 - P.1838

 上眼瞼に発生した外毛根鞘癌を経験した。症例は72歳の女性で,左上眼瞼に発生した腫瘍に対し,腫瘍を切除し,眼瞼を形成した。病理組織学的検査で,腫瘍は胞体に豊富なグリコーゲン顆粒を持つ明調細胞から成り,一部には毛包様の角化,小葉構造辺縁部での柵状配列などがみられた。また,腫瘍細胞は細胞異型,核異型が強く,数多くの細胞分裂像がみられた。以上のことから,外毛根鞘癌と診断した。

HTLV-Ⅰ高浸淫地区におけるHTLV-Ⅰぶどう膜炎の有病率の推定

著者: 稲田晃一朗 ,   牧野昌子 ,   根木昭 ,   緒方圭治 ,   池間昌陸 ,   久冨木原眞

ページ範囲:P.1839 - P.1842

 HTLV-Ⅰぶどう膜炎の有病率を明らかにするために,1993年8月,熊本県南部のHTLV-L高浸淫地区のT町で集団検診を行い,一般住民の中のぶどう膜炎の数を調べ,その後,同地区近隣の眼科3施設に調査表による調査を行った。検診受診者総数1,343名のうち3名に活動性のぶどう膜炎がみられ,うち1名はHTLV-I抗体陽性で,眼所見からHTLV-Iぶどう膜炎と考えられた。眼科で治療中のHTLV-Iぶどう膜炎の数は,調査票にて2名が推定され,検診例を含め合計3名であった。当時の全人口中の抗体陽性者(キャリア)数は905名と推定され,HTLV-Iぶどう膜炎の有病率はキャリア1,000人中3.3であり,HTLV-Iぶどう膜炎以外のぶどう膜炎の有病率はキャリアが1.1,キャリア以外は0.8であった。

視野感度測定dynamic法の臨床的評価

著者: 吉川啓司

ページ範囲:P.1845 - P.1849

 緑内障24例24眼,対照15例15眼にdynamic法(以下,dynamic)と従来のnorma法(以下,normal)の2種類の視野感度測定法による自動視野計検査(Octopus 101,Program G2)を行い,検査時間,視標呈示回数を比較した。また,両方法による視野障害検出力をVisual field indexおよび各検査点の感度の障害程度を分類し,その総数を調べ比較した。
 Dynamicでは検査時間・視標呈示回数ともに緑内障でも対照でもnormalに比べ約35%減少した。しかし,visual field indexや同程度の障害を示した検査ポイントの総数には明らかな差はなかった。一方,short-term fluctuationはnormalに比べdynamicで有意に高値をとった。以上のことからdynamicは臨床的に有用な視野感度測定法であると考えた。

視力良好眼に対するトラベクレクトミー術後の視力

著者: 溝口尚則 ,   松村美代 ,   門脇弘之 ,   黒田真一郎 ,   寺内博夫 ,   永田誠

ページ範囲:P.1851 - P.1854

 術前視力良好例に対して,マイトマイシンCを併用したトラベクレクトミー術後の視力経過について報告した。術後6か月以上経過観察できた70眼について検討した。視力低下とは,術前と比較し3段階以上の低下とした。開放隅角緑内障37眼,正常眼圧緑内障16眼,続発緑内障17眼であった。平均年齢は59.9歳,平均観察期間は21.9か月であり,術後各時点での視力低下率は12%,25%,7%,39%(3か月,12か月,24か月,36か月)であった。術後眼圧が9mmHg以下の低眼圧の症例でも,術後10mmHg以上の正常眼圧の症例でも視力低下の頻度はほぼ同様であった。術前視理予と視力低下については相関はなかった。また,視力低下はすべての病型で等しく起こった。トラベクレクトミー術後は視力が低下する症例が多く,手術適応を決める上では十分このことを考慮しなければならない。

角膜疾患眼での白内障手術

著者: 八田聖子 ,   横井則彦 ,   西田幸二 ,   木下茂

ページ範囲:P.1857 - P.1860

 過去3年5か月の期間に角膜疾患がある眼での白内障手術51症例58眼の成績を検討した。内訳は角膜混濁42眼,角膜内皮疾患16眼(角膜移植後例12眼を含む)であり,平均術後観察期間は1年8か月であった。術式は超音波乳化吸引術兼眼内レンズ挿入術25眼,水晶体嚢外摘出術兼眼内レンズ挿入術31眼,水晶体嚢内摘出術2眼であった。術後視力が低下した症例はなく,41眼(71%)において2段階以上視力が改善した。術中合併症は3眼(5%),術後合併症は4眼(7%)にみられた。以上から角膜に疾患を伴う症例での白内障手術の成績は,比較的良好であると考えられた。

Holladay法を用いた白内障術後屈折の評価

著者: 妹尾一恵 ,   妹尾正 ,   平良亮子 ,   千葉桂三 ,   小原喜隆 ,   原孜

ページ範囲:P.1863 - P.1867

 Holladay法とJaffe法で白内障術後の角膜乱視を評価した。対象は90度中心強角膜6mm小切開48眼,135度中心小切開46眼である。術後惹起乱視は,全経過を通して135度中心切開が90度中心切開より小さく,Holladay法とJaffe法の結果は一致した。また,Holladay法で術後早期に90度中心切開の切開経線の平坦化と直交経線の急峻化があったが,135度中心切開では90度ならびに180度経線の変化は軽度であった。一方,135度中心切開の切開経線の変化は,90度中心切開時の切開経線の変化に比べ軽度であったが,直交経線の変化は90度中心切開の直交経線の変化と同様であった。Holladay法は任意の経線上で屈折の変化が算出でき有用である。

カラー臨床報告

黄斑円孔の手術前後視機能の多局所網膜電図による評価

著者: 司英杰 ,   青柳康二 ,   岸章治

ページ範囲:P.1775 - P.1782

 多局所網膜電図を用いて,硝子体手術で閉鎖した黄斑円孔の網膜の応答密度を,術前と術後(32眼),または術後のみ(20眼)に検索した。術前の平均応答密度は,領域1で3.3±2.7nV/deg2,領域2で3.7±2.6nV/deg2であり,正常値のそれぞれ5〜20%と10〜30%に低下していた。三次元表示では,ピークが噴火口状に陥没していた。術後(平均26か月)には,領域1は正常値の20〜50%に,領域2は30〜70%に応答密度が回復した。応答密度は経時的に回復し,術後1〜2年で60%になった。術中の円孔底の色素上皮掻爬は,応答密度に悪影響しなかった。多局所網膜電図は,黄斑円孔が円孔だけでなく周囲1.6乳頭径の応答密度の低下を伴う疾患であることを示した。円孔が閉鎖すると,中心窩とその周囲の応答密度がともに回復した。これは,円孔閉鎖による視細胞の求心性の引き寄せと,ヘンレ線維層の復位によると解釈される。

今月の表紙

中心窩を通る剥離網膜の断面

著者: 池田史子 ,   清水弘一

ページ範囲:P.1800 - P.1800

 光学的干渉断層計OCTを使うことで,眼底の断面像が臨床的に検索できるようになった。OCTはOptical Coherence Tomographの略である。
 図に掲げたのは,36歳男子の裂孔原性網膜剥離の眼底。変視症を5日前から自覚している。視力は0.3。眼底下方に剥離があり,赤道部に2個の小さな円孔があるが,剥離網膜の後方に点状の沈着物が多発していること,網膜下に白い線条形成があること,そして剥離と正常部との境界が比較的鮮明であることなどから,網膜剥離は少なくとも3か月前から始まっていたと推定される。

眼科の控室

略語

ページ範囲:P.1820 - P.1820

 神経内科から患者さんを依頼されました。院内紹介です。
 眼科的には別に問題はないのですが,気になったのが,紹介状にある病名で,ALSだと書いてあります。神経内科だから,amyotrophic lateral sclerosis筋萎縮性側索硬化症だろうと見当はつけたのですが,他科の医師に略語で病名をいう姿勢はちょっとどうかと思うのです。`

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?