icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科51巻13号

1997年12月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

超音波カラードプラ法と緑内障における眼血流動態

著者: 宇治幸隆

ページ範囲:P.1876 - P.1881

 緑内障の病因については,眼圧と局所の循環障害の関与がいわれている。視神経乳頭の血流を担う球後血管の血流動態を超音波カラードプラ法によって測定することの意義と,その結果が緑内障における眼血流動態の解明と,眼血流に留意した治療法の開発に寄与し得ることについて述べる。

眼の組織・病理アトラス・134

遺伝家族性角膜実質ジストロフィ

著者: 久保田敏昭 ,   西岡木綿子 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1882 - P.1883

 角膜実質ジストロフィの代表的な疾患に,顆粒状ジストロフィgranular dystrophy,格子状ジストロフィlattice dystrophyおよび斑状ジストロフィmacular dystrophyの3種類がある。

眼科手術のテクニック・97

難治性涙道閉塞の再建

著者: 栗橋克昭

ページ範囲:P.1886 - P.1887

 鼻涙管閉塞やそれに伴う涙嚢炎は,涙嚢鼻腔吻合術(DCR)で治癒する。ヌンチャク型シリコーンチューブ(N-ST)によるdirect silicone intubation(DSI)でも治癒することがあり,DCRに先立って行われている。熟達したものにとってはDCRは難しい手術ではないだろう。問題は閉塞が高度な涙小管閉塞や涙小管断裂(図1)の再建である。これらの再建のため,現在もJones tubeを用いている術者がいるが,多くの術後合併症があり,その手術を受けた患者の約5割は,何らかの合併症で不満を訴えている。またこの手術を受けた患者は,一生医師の世話にならなければならず,ときどきJones tubeを交換しなければならない。
 しかし,まれであるがJones tube抜去後も内眼角に開く新涙道が閉塞せず,導涙がなされていることがある。このような状態になることが最もよいと考えられる。どのような患者でどのようにJones tubeが挿入されたらこのような状態になるのだろうか。

今月の表紙

紅斑性狼瘡の網膜血管病変(螢光造影所見)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1885 - P.1885

 紅斑性狼瘡SLEでは,網膜に閉塞性血管炎が併発することがある。閉塞は動脈本幹から分岐する小動脈・毛細血管網・小静脈の循環単位ごとに起こり,新鮮例では軟性白斑として観察される。陳旧化すると,閉塞部の血管は狭窄または白線化する。この例は,黄斑の耳側に血管閉塞があり,画面の下方に網膜前出血がある。
 中心窩の無血管領域では,背景螢光がまったく暗黒であるのに対し,耳側の血管閉塞部では,ムラムラした網膜色素上皮からの螢光が明瞭に観察される。いわゆる「暗い黄斑」dark maculaを端的に示す所見である。

臨床報告

外転神経麻痺を初発症状とした慢性肥厚性脳硬膜炎の1例

著者: 橋本雅人 ,   大塚賢二 ,   中村靖 ,   曽根聡 ,   中川喬

ページ範囲:P.1893 - P.1896

 左外転神経麻痺を初発症状とした慢性肥厚性脳硬膜炎の1例を経験した。症例は52歳の女性で,慢性進行性の水平性複視を主訴に受診。神経眼科的所見では左外転神経,三叉神経,舌下神経麻痺を呈した。MRI所見では左傍矢状断において,斜台後面に沿った限局性の硬膜の肥厚性病変がみられ,慢性肥厚性脳硬膜炎と診断した。また脳幹部MRI所見において,右外転神経は描出されているのに対し,左外転神経は神経根周囲の橋が肥厚性硬膜により圧迫されているために描出されなかった。治療は,副腎皮質ステロイドによるパルス療法によって神経症状は著明に改善した。本症での外転神経麻痺の原因は,画像所見より肥厚性硬膜の外転神経への直接圧迫の可能性が示唆された。

ジヌソトミーを併用したトラベクロトミー術後濾過胞の長期経過

著者: 久志本晋 ,   青山裕美子 ,   春田雅俊 ,   西浦耕二 ,   上野聰樹

ページ範囲:P.1897 - P.1901

 ジヌソトミー(SIN)を併用したトラベクロトミー(LOT)の術後長期にわたる眼圧下降の機序を検討する目的で手術部位を超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて観察した。対象は開放隅角緑内障44眼で,平均年齢54±19歳,術後平均観察期間27±12か月であった。LOT単独群を対照とし,細隙灯顕微鏡とUBMによる濾過胞の所見と眼圧との関係を検討した。その結果,今回の検索では,SINを併用したLOT (LOT+SIN)においては細隙灯顕微鏡での濾過胞の大きさおよびUBMでの間隙と眼圧との相関性は明らかではなく,LOT+SINの降圧効果は直接的な濾過作用のみに依存しているのではなく,これ以外の作用機序が関与している可能性が示唆された。

視力零から回復した鼻性視神経症の1例

著者: 齊藤栄子 ,   藤本尚也 ,   安達恵美子 ,   永田博史

ページ範囲:P.1905 - P.1908

 鼻性視神経症は,しばしば急激な視力低下をきたし,ときに光覚(−)に至る。筆者らも初診時すでに光覚(−)となっていた1例を経験したので報告する。症例は70歳女性。過去に2回にわたる副鼻腔の手術歴を有し,突然の右眼の視力低下を主訴に受診。初診時右眼光覚はなく,頭部X線CTにて副鼻腔に陰影がみられた。副鼻腔嚢腫による鼻性視神経症と考え,同日,当院耳鼻咽喉科にて排膿を施行した。翌日視力は0.6という劇的な改善を呈した。本疾患に関して早期診断,処置が重要なことは以前から指摘されている。今回の症例では,早期排膿により光覚(−)からでも回復がありうることが示された。

多目的眼内レンズの支持部強度

著者: 根岸一乃 ,   蔵石さつき ,   松崎忠幸

ページ範囲:P.1909 - P.1912

 眼内レンズ(intraocular lens:IOL)の支持部強度を支持部の太さが均一でない毛様溝縫着用IOL(ニデック社製NR−84K)と支持部の太さが均一な通常のlOL(同社製NR−84C)とで比較検討した。方法は引張試験器を用いてIOL光学部を固定し,支持部先端を40mm/minの一定速度にて光学部と平行あるいは垂直な方向に引つ張り,名IOLの折損時の荷重と折損部位を記録した。結果は平行な牽引に対する荷重限界値はNR−84Kのほうが有意に低く(p<0.05),折損部位は両者とも全例で先端であった。垂直な牽引に対する荷重限界値は両者に有意差はなかつたが,折損部位はNR−84Kが全例先端,NR−84Cは全例根元であった。この結果から太さが均一でないIOL支持部は,太さが均一な場合よりも強農が低い可能性が示唆された。IOL毛様溝縫着術中のIOL破損は,破損IOLの硝子体中への落下により重篤な合併症を生じる危険があり,毛様溝縫着用IOLの支持部強度について,より安全な基準を定めるべきである。

原発性シェーグレン症候群の角結膜障害と唾液腺障害,自己抗体との関連

著者: 北川和子 ,   甲田倫子 ,   菅井進 ,   小川淑美

ページ範囲:P.1913 - P.1917

 原発性シェーグレン症候群患者87例について,ローズベンガルスコアで評価した乾燥性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca:KCS)の程度と,唾液腺障害,自己抗体との関連について検討した。KCSの程度と関連がみられたものは,唾液腺シンチグラフィー,抗SS-A抗体,小唾液腺生検のfocusscore,シルマー試験,サクソン試験であった。抗核抗体,年齢,シェーグレン症候群病期,リウマチ因子との関連は低かった。唾液腺の生検やシンチグラフィーが陽性であってもKCSがないかごく軽度の症例が44例(51%)を占めたことより,眼科サイドからシェーグレン症候群をより積極的に診断するにはさらに感度の高い検査法が必要と考えられた。

外側眼窩切開術で全摘出した眼窩腫瘍19例の腫瘍位置

著者: 大塚賢二

ページ範囲:P.1920 - P.1924

 外側眼窩切開術にて眼窩部腫瘍を肉眼的に全摘出できた19例の眼窩内腫瘍位置について検討した。本例に用いられた外側眼窩切開術は,通常の外側眼窩切開術とこれに上方眼窩切開術を加えたもの,および 骨弓切開を加えたものの計3種に分類され,それぞれのアプローチにより摘出された腫瘍位置を一人の水平断CT画像上に重ね書きした。この研究から外側眼窩切開術およびその上方および下方への拡大により内直筋の眼窩内壁側を除くほぼ全ての眼窩部腫瘍が摘出可能であることがわかった。

Septo-optic-pituitary dysplasiaの1症例

著者: 三宅睦子 ,   砂川光子 ,   右京直哉 ,   東淑江

ページ範囲:P.1925 - P.1929

 Septo-optic-pituitary dysplasia (SOPD)の55歳男性症例について報告した。上正中部兎唇,低身長,知能発育遅延、第二次性徴遅延,視床下部下垂体ホルモンの低値があり,頭部MRI検査上,脳梁・透明中隔欠損,下垂体低形成,左眼小眼球症,視交叉低形成がみられた。眼科的には,眼振,右眼は白内障と視神経萎縮,左眼は視神経低形成と後部ぶどう腫,水晶体完全脱臼と網脈絡膜全体の変性像を示した。また右眼は求心性視野狭窄を示し,全色盲であった。脳梁・透明中隔欠損,視神経低形成,視床下部下垂体機能低下症の三徴すべて揃った症例の報告は眼科ではなく,貴重な症例と考えた。

シリコーン眼内レンズ挿入眼での液空気置換時の眼底視認性

著者: 加藤智博 ,   桜庭知己 ,   松山秀一

ページ範囲:P.1930 - P.1932

 シリコーン眼内レンズ挿入眼の網膜剥離に対し,後発白内障切開術を行った後に,硝子体手術を行い復位を試みた。術中,液空気置換を行ったところIOL(intraocular lens)裏面に水滴が多数付着し,眼底観察が困難になった。後発白内障切開術後のシリコーンIOL挿入眼における硝子体手術では空気灌流下において眼底の視認性が低下するので,白内障手術時のシリコーンlOL挿入はその適応を十分に考慮すべきと考えられた。また必要に応じてあらかじめIOLの摘出も考慮に入れた上で手術を行うべきと考えられた。

角膜放射状切開術後の白内障手術施行例

著者: 二宮さゆり ,   前田直之 ,   辻川元一 ,   杉本麗子 ,   原吉幸

ページ範囲:P.1933 - P.1938

 4年前に放射状角膜切開術を受けた70歳男性の両眼に白内障手術を行った。眼内レンズの強度は術前の自動屈折計により算出した。術直後の屈折は,各眼それぞれ+4.5と+6.0ジオプトリーの遠視であり,眼内レンズの再挿入を必要とした。予測の誤差は,自動屈折計の数値がこのような眼には不適当であることと,術後の角膜浮腫による一過性の角膜扁平化が原因と考えられた。放射状角膜切開術を受けた眼への白内障手術では,眼内レンズの強度の算出にビデオケラトスコープを使うことが適当であると推定される。

網膜色素線条症のインドシアニングリーン螢光眼底造影所見

著者: 山西朗子 ,   川村昭之 ,   湯沢美都子

ページ範囲:P.1945 - P.1949

 網膜色素線条症24例48眼に対し,ビデオ赤外螢光眼底造影(lA)とフルオレセイン螢光眼底造影(FA)を行い比較検討し,以下の結果を得た。(1) lA後期に造影される色素線条部所見は過螢光型と低螢光型があり,過螢光型のほうが脈絡膜新生血管膜(CNM)発生が高率であった。(2)顆粒状にみえる低螢光の背景所見は本疾患に特徴的であり,CNMを合併している例に多くみられた。(3) lAは線条部や病変の拡がりを把握するうえで,FAより有用であった。

Marfan症候群の超音波生体顕微鏡所見

著者: 山中理江 ,   竹内正光 ,   永井由巳 ,   谷口典子 ,   南部裕之 ,   湖崎淳 ,   湖崎克

ページ範囲:P.1951 - P.1954

 Marfan症候群2例4眼の前眼部を,超音波顕微鏡(UBM)で検索した。片眼に無水晶体眼,他眼に水晶体偏位がある33歳女性と両眼が無水晶体眼の23歳男性である。4眼すべてに毛様体ひだ部の低形成があり,毛様体突起は短縮し,一部が後方に延長していた。これらは組織学的に知られている毛様体異常に一致し,毛様体小帯の脆弱性に関係すると推定された。

カラー臨床報告

ヒト結膜嚢内に寄生した東洋眼虫の1例

著者: 楢﨑陽子 ,   高田陽介 ,   山本正洋 ,   長崎雅春 ,   高尾善則

ページ範囲:P.1889 - P.1892

 19歳女性が左眼の有痛性異物感を自覚した。アレルギー性結膜炎として治療を受けたが改善しなかった。8か月後に左眼から虫体が排出され,その翌日飯塚病院眼科を受診した。右眼には異常がなく,左眼の瞼結膜に充血と濾胞形成があった。受診した夕方にさらに1匹の虫体が排出された。その後結膜炎は寛解した。2匹目の虫体は,東洋眼虫Thelazia callipaedaの雄の成虫と同定された。

眼科の控室

繁文縟礼

ページ範囲:P.1942 - P.1942

 眼科に限らず,最近の若いドクターは礼儀が正しいようです。
 その端的な例を,院内の他科からの紹介状に見ました。いろいろ書いてある最後に担当医の署名が入りますが,「○○拝」となっているのが実に多いのです。ご返事を出すほうもこれに負けず,「ご紹介有り難うございました」で文章が終わります。

文庫の窓から

医学士 南二郎先生講義筆録

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1958 - P.1959

 明治期の医学生ノートの研究については,先輩諸先生の詳しい報告があるが,ここにご紹介するものは,南二郎(1857-1921)教諭が明治時代中頃,地方の医学校において講義したものを医学生(某)が筆録したものである。
 南二郎教諭は明治16(1883)年7月,東京大学医学部を卒業後,岩手県甲種医学校教諭を始め,島根県医学校教諭,滋賀県大津病院副院長,福島県立病院副院長などを歴任しているが,岩手県甲種医学校一等教諭就任中は眼科と婦人科の医長を務め,明治18(1885)年3月,島根県医学校一等教諭に出向中は内科と婦人科を担当した。

--------------------

臨床眼科 第51巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?