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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科51巻3号

1997年03月発行

雑誌目次

特集 第50回日本臨床眼科学会講演集(1) 学会原著

走査レーザー検眼鏡検査(SLO)visumetryを用いた緑内障の局所視力

著者: 長岡泰司 ,   石子智士 ,   水本博之 ,   北谷智彦 ,   小笠原博宣 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.247 - P.250

(展示19) 緑内障患者15例17眼に対し走査レーザー検眼鏡を用いた局所視力検査(SLO visumetry)と微小視野検査(SLO microperimetry)を施行し,局所視力の特徴と網膜感度との関係を検討し,あわせてSLO visumetryの有用性について検討した。絶対暗点を示した領域では,局所視力は測定できなかった。また,網膜感度の低下している領域では局所視力の低下傾向がみられたが,これらの変化が平行しない症例もあった。SLO visumetryは緑内障患者における定量的な局所網膜機能評価法として有用であると考えられた。

硝子体手術を行ったpit-macular syndromeの2例

著者: 三田村佳典 ,   竹内忍 ,   塚原逸朗 ,   松村哲 ,   中原正彰 ,   工藤春彦 ,   葛西浩

ページ範囲:P.251 - P.254

(展示151) 光凝固が無効であったpit-macular syndrome2例に対し硝子体手術を行い,1例にのみ網膜の復位が得られた。螢光眼底造影では2症例ともpitは初期相で低螢光,後期相で過螢光を示し,復位例では術後網膜が復位した後も同様の所見が得られた。2例とも硝子体手術の術中に異常なCloquet管を思わせる硝子体索状物が観察され,pit付近に付着しているのが確認された。術後復位が得られなかった症例では,原因として光凝固の範囲が不十分であった可能性,色素レーザーで過凝固にした可能性が考えられた。

精神発達遅滞児の視力と発達年齢

著者: 川村洋行 ,   上野眞 ,   徳田波津美 ,   福田冬季子 ,   伊藤政孝 ,   杉江秀夫

ページ範囲:P.255 - P.258

(24C1-3) 精神発達遅滞児の両眼視力を森実ドットカード,およびTeller acuity cards (TAC)を用いて測定し,発達程度との関係を検討した。発達程度はKIDS乳幼児発達スケールの発達年齢を指標とした。森実カード測定群36例の平均年齢47.0か月,平均発達年齢32.9か月。視力値は実際の年齢と一定の関係はなく,発達年齢が増加すると高値をとる傾向がみられた。TAC測定群24例の平均年齢33.7か月,平均発達年齢18.2か月。TAC視力値は実際の年齢では正常域より低値であつたが,発達年齢でみるとほとんどが正常域に分布した。発達年齢を考慮すれば発達遅滞児における視力値は正確な視機能を表すと考えられた。

走査レーザー検眼鏡visumetryを用いた正常人の局所視力

著者: 石子智士 ,   吉田晃敏 ,   長岡泰司 ,   北谷智彦 ,   水本博之

ページ範囲:P.259 - P.261

(24C1-4) 走査レーザー検眼鏡(SLO)を用いた局所視力検査(visumetry)を健常人10名10眼に施行し,正常人の局所視力の特徴を検討した。固視点を中心に5度以内では,すべての症例で0.16以上の視力があった。さらに周辺に遠ざかるにしたがい視力は低下底ずる傾向を示した。また,水平方向の視力は垂直方向の視力に比べ良好であった。SLO visumetryを用いることにより,網膜局所の視力を測定することが可能であった。今後,この装置を用いた網膜局所機能評価の各種疾患への臨床応用が期待される。

虚血型網膜中心静脈閉塞症における血管新生緑内障の検討

著者: 尾崎志郎 ,   河口有紀 ,   鈴間潔 ,   山名隆幸 ,   高木均 ,   喜多美穂里 ,   本田孔士

ページ範囲:P.263 - P.266

(24D-10) 虚血型網膜中心静脈閉塞症(ischemic central retinal vein occlusion:ischemic-CRVO)における汎網膜光凝固(panretinal photocoaguratbn:PRP)の時期と血管新生緑内障(neovascular glaucoma:NVG)の発症について,28眼を背景疾患の有無に分け,retrospectiveに検討した。
 背景疾患のない場合,予防的PRPを施行した14眼のうち2眼(14%)に隅角・虹彩血管新生(angle/irisneovascularization:ANV/INV)が発生したが,ANV/INV確認後PRPを施行した2眼とともに,手術療法が必要なNVGに進展したものはなかった。背景疾患のある場合は,予防的PRPを施行した6眼のうち,3眼(50%)にANV/INV発生を認め,そのうち2眼(33%)がNVGに進展し,うち1眼は手術療法が必要であった。ANV/INV確認後PRPを施行した2眼では,手術療法が必要なNVGに進展したものはなかった。NVG発症後PRPを施行した4眼では,背景疾患の有無にかかわらず,全例で手術療法が必要であった。
 Ischemic-CRVOに対するPRPは,現時点では,症例数が少ないものの,少なくともANV/INV発生後の迅速なPRP施行によりNVGへの進行を予防しうると考えられたが,今後さらなる検討が必要であり,背景疾患の存在する場合には,より注意深い経過観察・治療が必要と考えられた。

網膜細胞腫の4例

著者: 滝西美香 ,   佐野秀一 ,   箕田健生

ページ範囲:P.267 - P.270

(25A-5) 網膜細胞腫(retinoma)と考えられた4症例につき報告する。症例は男女2例ずつで,全例片眼性であった。網膜芽細胞腫の家族歴を有する者はなかった。初発年齢は1歳5か月から18歳までであった。初診時眼底所見では,4例とも石灰化を伴う半透明魚肉様の隆起性病変がみられ,周囲には網膜色素上皮の異常を伴っていた。4例のうち2例が経過観察中に悪性変化をきたした。1例は初診の4年後に腫瘍の増大と硝子体播種を呈した。もう1例は,初診の7か月後に病変に白色隆起がみられた。両者とも最終的に眼球摘出となり,いずれも病理学的に未分化な網膜芽細胞腫の像を呈した。Retinomaに対しては,直ちに治療を行う必要はないが,長期にわたる経過観察が重要である。

糖尿病網膜症と血清リポプロテイン(a)値

著者: 引地泰一 ,   東由直 ,   関口雅友 ,   柬理玲子 ,   安孫子徹 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.271 - P.273

(25A-7) 糖尿病網膜症に対する血清リポプロテイン(a)[Lp (a)]の関与について検討するため,II型糖尿病患者386例を対象に,年齢,推定糖尿病罹病期間,body mass index,hemoglobin A1C,総脂質,中性脂肪,HDL-C (high-density lipoprotein cholesterol),LDL-C (low-density lipoprotein cholesterol),糖尿病腎症,Lp (a)および糖尿病網膜症について断面調査を行った。重回帰分析の結果,推定罹病期間が長いほど,腎症が重症であるほど,血清Lp (a)値が高値であるほど,網膜症を発症しやすいことが明らかとなった。血清Lp (a)値が高値な症例では糖尿病網膜症を発症する危険性が高く底より注意深い経過観察が必要であると思われる。

眼球運動障害を伴う再発および偽翼状片の治療

著者: 福原晶子 ,   後藤晋 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.275 - P.277

(25C1-5) 眼球運動障害を伴った難治性再発翼状片および偽翼状片に対する表層角膜移植術の有効性について報告した。表層角膜移植術を行った11眼(移植群)と角膜移植術を行わなかった7眼(非移植群)につき,翼状片の再発率と術前後の眼位・眼球運動につき比較検討した。その結果,翼状片の再発率は移植群で11眼中3眼(27.3%),非移植群は7眼中6眼(85.7%)であった。眼位・眼球運動は移植群で全例改善したが,非移植群では眼位の改善は1例のみで,眼球運勤は全例不変または増悪した。移植群の治療成績が良好であった理由として,角膜移植片による,翼状片再発防止のためのバリア効果と翼状片切除後の組織充填効果が考えられた。

高齢者の結膜嚢内常在菌

著者: 大橋秀行 ,   福田昌彦 ,   三島弘 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.279 - P.281

(25C2-10) 1996年3月より5月までの3か月間に,阪和泉北病院に入院中の眼感染症のない65歳以上の高齢者,150例300眼を対象に結膜嚢内常在菌を検索した。201眼(67%)に菌が検出され,総株数は247株であつた。表皮ブドウ球菌は141株で,そのうちメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)は29株(20.6%),黄色ブドウ球菌は41株で,そのうちメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は19株(46.3%)に認められた。MRSAとMRSEの検出頻度は,7年前の当施設での結果と比較して増加していた。MRSAはニューキノロン系薬剤に対して高い耐性を示した。

糖尿病網膜症と尿中微量アルブミン—神経伝導速度,心電図R-R間隔変動,大動脈脈波速度との関連において

著者: 山田利津子 ,   中西実 ,   上野聰樹 ,   水野究紀 ,   石井明治 ,   山田誠一

ページ範囲:P.283 - P.286

(25C2-13) 109例のインスリン非依存性糖尿病患老を対象として,尿中微量アルブミンを酵素抗体法を用いて測定し,アルブミン指数を算出して,腎症進行の指標とした。正中,尺骨運勤・知覚神経伝導速度(MNCV・SNCV),心電図R-R間隔平均値と変動係数CVR-Rを測定して末梢神経・自律神経障害の指標とし,大動脈脈波速度(PWV)を測定して動脈硬化の指標とし,網膜症進行との関連を検討した。網膜症コード値は尿中アルブミン(p<0.023),アルブミン指数(p<0.0001),PWV (p<0.0190)と有意な正の相関を示し,正中SNCV (p<0.0298)と有意な負の相関を示した。網膜症は腎症,神経症進行に伴って進行するが,同時に動脈硬化性変化も早期から進行する可能性が考えられた。

原田病毛様体の超音波生体顕微鏡による病態

著者: 丸山泰弘 ,   結城尚 ,   木村保孝 ,   岸章治

ページ範囲:P.287 - P.291

(25C2-23) 原田病症例9例18眼で,初診時と治療開始3日,網膜剥離消失時に超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて毛様体の断層像を検索した。初診時には,11眼(61%)に毛様体剥離があった。10眼は全周性の毛様体剥離であった。毛様体剥離の幅は症例によって異なり,強膜厚の20%から250%の範囲にあった。毛様体剥離はデキサメタゾンの点滴治療3日目には,ほぼ消失していた。浅前房化が6眼,高度の近視化が2眼にあった。これら8眼では,毛様体剥離が高度であった。毛様体剥離は,高度な虹彩炎を合併した2例4眼で発症せず,眼底の網膜剥離の範囲が広い症例で強い傾向があった。原田病では毛様体剥離が高率に併発し,これが浅前房化と近視化の原因になると結論される。

エキシマレーザー屈折矯正術後のcentral islandの視力への長期的影響

著者: 加藤恵利子 ,   冨井聡 ,   木下茂

ページ範囲:P.293 - P.297

(25D-1) Visx Twenty/Twenty Excimer Laser Systemで,Ver.3.2とVer.4.0〔central island(Cl)発生予防プログラム〕の2種類のアルゴリズムを使用し,術前の矯正視力が1.0以上を示す30例55眼に対してエキシマレーザー屈折矯正術(photorefractive keratectomy:PRK)を施行した。術後1か月に角膜形状解析を行つてClの有無を判定した。Ver.4.0ではClを認めなかつたため,Ver.3.2のCl(+)群,Ver.3.2のCl (−)群,Ver.4.0のCl (−)群の3群で,術前,および術後2年までの矯正視力を比較検討した。術後1年までは3群間に有意な差を認め,PRK後のCl発生に対する予防プログラムの長期的な有用性が示された。

網膜色素変性患者の前房レーザーフレア値

著者: 加藤勝 ,   小林利恵 ,   上野眞 ,   渡邉郁緒

ページ範囲:P.299 - P.303

(25E-8) 定型網膜色素変性36例70眼の前房フレア値を,レーザーフレアセルメーターを用いて測定した。網膜色素変性眼の前房フレア値(9.7±4.4photon counts/ms,平均±標準偏差)は正常対照(4.5±0.9)に比べて有意に高値であった。螢光眼底造影で後極部に螢光漏出がみられた26眼のフレア値(11.9±4.1)は,螢光漏出のみられなかった28眼(7.7±2.7)に比べて有意に高値であった。また,螢光眼底造影上嚢胞様黄斑浮腫(CME)がみられた5眼のフレア値は著しく高値であり,前房フレア値上昇と血液網膜柵障害との関連が示された。レーザーフレア測定は,本症において,CME発生につながりうる血液網膜柵障害の程度を推測するために有用であると考えられた。

落屑症候群における超音波水晶体乳化吸引術

著者: 今澤光宏

ページ範囲:P.305 - P.307

(26A-3) 落屑症候群を伴う白内障9眼に対し超音波水晶体乳化吸引術(PEA)および眼内レンズ挿入術を施行した。術前に水晶体振盪を認めず,他の術式を併用しなかったものを対象とした。術前散瞳径は小さかったが,チン小帯断裂,破嚢,硝子体脱出といつた術中合併症は生じなかった。術後にフィブリン反応が2眼,眼圧上昇が4眼にみられたが,重篤なものではなかった。水晶体振盪のない落屑症候群においては,白内障手術でPEAを選択することは妥当であると考えられた。

耳側自己閉鎖創白内障手術切開創長による術後乱視コントロール

著者: 岩瀬剛 ,   白尾裕

ページ範囲:P.309 - P.312

(26A-7) 白内障手術では,手術に起因する術後角膜乱視ばかりでなく,術前角膜乱視の矯正も同時に行えるのが望ましい。筆者らは術前角膜乱視の大きさにより,術式を変えることによって術後角膜乱視の最適化を試みた。術前角膜乱視が1.ODより大きい倒乱視眼に対しては,強主経線上においた幅6mmの自己閉鎖強角膜切開創からポリメチルメタクリレート製1ピース型眼内レンズを挿入し(61眼),乱視軸の角度如何にかかわらず乱視度数が1.OD以下の眼に対しては,耳側においた幅3.8mmの自己閉鎖角膜輪部切開創から折り曲げ可能なアクリル製眼内レンズを挿入した(116眼).3か月の観察期間において,術後角膜乱視が1.5D以下に収まった眼は6mm幅切開で95%,3.8mm幅切開で98%であった。術前に較べて術後には,矯正視力は全眼で,裸眼視力は1眼を除く全眼で向上した。術前倒乱視の多寡に応じて耳側自己閉鎖創長を可変する術式は,術後残余乱視の低減に有用であると考えられた。

黄斑部網膜上膜手術の術前視機能評価

著者: 今井雅仁 ,   秋山博紀 ,   塚原重雄

ページ範囲:P.313 - P.316

(26B2-18) 硝子体手術を行った黄斑上膜症例19例19眼の,術前視機能評価について検討した。術後は全例視力改善が得られ,術前中心網膜感度,術前視力,術前平均網膜感度の順に術後最高視力と有意な相関があった。個々の症例では術前視力が不良でも術後良好な事例があった。嚢胞状黄斑浮腫(cystoldmacularedema:CME)のある症例は術後視力が不良であった。視力障害期間と年齢は,術後最高視力と相関がなかった。術前視力だけではなく,術前中心網膜感度,平均網膜感度,螢光眼底造影所見などを総合することで,術後視力をある程度予測できる可能性がある。

地図状脈絡膜炎の走査レーザー検眼鏡による微小視野計測

著者: 牧野伸二 ,   川島秀俊 ,   橋本尚子 ,   渋井洋文 ,   釜田恵子

ページ範囲:P.317 - P.320

(26C1-3) 47歳男性の地図状脈絡膜炎の1症例に,走査レーザー検眼鏡(SLO)の微小視野計測を行った。SLO微小視野計測は眼底をモニターしながら網膜感度の測定が可能であり,その結果をフルオレセイン螢光造影(FA),およびインドシアニングリーン螢光造影(IA)の写真上にプロットして検討した。網脈絡膜萎縮巣の中でも,絶対暗点を呈した部位はFA, IAで造影後期まで低螢光が持続した部位であり,また,IAで造影後期になって過螢光がみられた部位は相対暗点となっていた。

超音波生体顕微鏡を用いたベーチェット病眼の観察

著者: 八代成子 ,   小暮美津子 ,   杉村光子 ,   八木郁子

ページ範囲:P.321 - P.324

(26C1-14) ベーチェット病患者34例62眼の前眼部を,超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscopy:UBM)を用いて観察した。眼発作後には輝度の高い点状反射像が前房,後房内にみられ,毛様体近傍の前部硝子体内には発作後4週以上経過した症例でも52.9%にみられた。反射像がある眼の視力は悪く,眼底スコアやフレア値も高く,要因として過去の発作回数の関与が考えられた。末期眼では組織の構築は不整で毛様体厚が厚く,前部硝子体内には網膜前肉芽組織を示唆する点状反射の集簇像や,毛様体脈絡膜浮腫性剥離と増殖性変化を示唆する反射像が得られた。

レニン依存性高血圧症を合併したCharcot-Marie-Tooth症候群の1例のpattern VEP所見

著者: 山崎厚志 ,   柿丸晶子 ,   佐々木勇二 ,   浜本順次 ,   長田正夫 ,   玉井嗣彦 ,   三木統夫 ,   佐々木佳裕

ページ範囲:P.325 - P.328

(26C2-5) レニン依存性高血圧症を併発したCharcot-Marie-Tooth症候群の診断を受けた11歳女児が,左眼の突然の視力低下で当科を受診した。視力は右1.5,左0.05(n.c.),左眼swinging flashlight test陽性。頭部CT,眼底ともに著変はなかつた。Pattern VEPは,左眼刺激,右眼遮蔽下の誘導波形で,特に反応の低下とP100頂点潜時の延長が著明であった。左眼球後視神経炎の診断下に副腎皮質ステロイドパルス療法を行い,視力は0.9(1.0)に回復したが,pattern VEP所見には改善の傾向はみられなかった。さらに後日,右片麻痺を生じ,頭部CTにて左後頭葉の脳梗塞所見を認め,右側同名半盲を生じた。これより,本症候群における球後視神経炎ならびに随伴する頭蓋内障害の予測にpattern VEPは有用と思われた。

混合性結合組織病に合併した多発性後極部網膜色素上皮症の1例

著者: 平岩貴志 ,   中村誠

ページ範囲:P.331 - P.334

(26C-11) 混合性結合組織病に合併した多発性後極部網膜色素上皮症の1例を経験した。症例は36歳の女性で,混合性結合組織病のためステロイド投与中に両眼底後極部に扁平な漿液性網膜剥離を生じ,ステロイド大量療法を開始したところ,両眼の眼底広範囲に多発性の黄白色滲出斑が出現し,体位により移動する胞状網膜剥離を伴った。螢光眼底造影検査では滲出斑に一致して両眼とも多数の漏出点がみられ,脈絡膜背景螢光の流入も遅延していた。発症時には血中のトロンビン-アンチトロンビンIII複合体が上昇しており,本症例の発症には血液凝固能の亢進による脈絡膜循環不全が関与していたと考えられた。またステロイドは本症例の増悪因子として働いたと考えられた。

緑内障眼におけるhigh-pass resolution perimetryのneural capacityと網膜神経線維層厚

著者: 白柏基宏 ,   阿部春樹 ,   沢口昭一 ,   船木繁雄

ページ範囲:P.335 - P.337

(26D-7) 原発開放隅角緑内障(POAG)または正常眼圧緑内障(NTG)24例48眼において,high-passresolution perimetry (HRP)によりneural capacity (NC)を測定し,スキャニングレーザーポラリメーターにより視神経乳頭周囲の網膜神経線維層(NFL)厚を測定した。同一症例のNCの左右差とNFL厚の左右差の間に統計学的に有意な相関があった(n=24,r=0.47,p=0.02)。POAGではNCの左右差とNFL厚の左右差の間に有意な相関があったが,NTGでは両パラメーター間に有意な相顕はなかった。スキャニングレーザーポラリメーターで測定したNFL厚の左右差と,HRPで測定した網膜神経節細胞と神経線維の機能状態(NC)の左右差との間の相関の程度は,POAGとNTGでは異なる可能性がある。

緑内障診断補助検査としての網膜神経線維層厚測定

著者: 小暮諭 ,   田村雅弘 ,   木之下徹 ,   塚原重雄

ページ範囲:P.339 - P.342

(26D-9) 緑内障診断における網膜神経線維層厚測定の有用性を視神経乳頭解析と比較した。対象は緑内障眼21名36眼である。網膜視神経線維層厚測定にはスキャニングレーザーボラリメーターを用い,乳頭解析は立体写真撮影による写真判定および,共焦点レーザー走査眼底解析装置による解析結果を用いた。それらと視野障害との相関性を比較検討した。結果は,乳頭解析は視野との相関が,−0.287〜−0.446と中等度の相関であるのに対し,神経線維層厚は相関係数0.273(p=0.1118)と弱かった。しかし,筆者らが考案した鼻側網膜を基準にした網膜厚の評価では,相関係数0.657(p=0.0001)と有意に相関し,評価法次第では網膜厚測定は乳頭解析以上に有用であることが示唆された。

TopSSを用いた5D以上の近視眼における緑内障性乳頭変化の解析

著者: 千原悦夫 ,   董瑾 ,   劉驍 ,   初冬 ,   岡崎一白 ,   橋本雅 ,   落合春幸

ページ範囲:P.343 - P.346

(展示23) 新しい三次元乳頭画像解析装置であるTopSSによって,同程度の神経損傷を持つ緑内障群のうち5Dから12Dまでの近視眼(24眼)と±1D以内の正視眼(63眼)における緑内障性視神経萎縮の諸指標を比較検討した。近視群は同程度のneuroretinal rim areaを持つ場合,正視群と比較して明らかに浅く(P<0.000),小さな陥凹体積を持つ(P<0.000)。したがって,近視群では乳頭陥凹の深さや体積から推測され得るより大きな視野欠損あるいは神経損傷を持つものが多いと考えられる。

アトピー性白内障と前房フレア値の関連

著者: 斎藤晴美 ,   松尾俊彦 ,   松尾信彦 ,   多田譲治 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.349 - P.351

(展示79) アトピー性白内障の発症が前房炎症と関連があるかどうかを調べるため,アトピー性皮膚炎患者35人を対象として,通常の眼科検査およびレーザー・フレア・セルメータによる前房細胞,フレア値の測定を行った。白内障のある15眼では,白内障のない55眼に比べて前房フレア値は高値を示した(マン・ホイットニU検定,p=0.0008)。血液房水柵の破綻が白内障の発症に関与していると考えられた。

高感度ビデオによる前房内浮遊物の撮影

著者: 松岡徹 ,   都村豊弘 ,   上枝宏和 ,   広岡一行 ,   岡田博季 ,   長谷川榮一

ページ範囲:P.354 - P.358

(展示85) 前房内浮遊物(セル)を,細隙灯顕微鏡の接眼部に装着した高感度白黒CCDカメラで明瞭に撮影記録することができた。さまざまな程度のセルを観察できた症例21例33眼を,撮影および録画対象とした。セル数を再生したビデオモニターの静止画面上またはプリント画面上で数え,一定面積あたりの数で算出定量した。岡時にレーザー・フレア・セルメーターでセル数を測定し,前記の値と比較した。その結果,レーザー・フレア・セルメーターと高感度白黒CCDカメラでのセル測定値との間には,強い相関が認められた。高感度白黒CCDカメラを用いることにより,無散瞳下でも眼内外の反射などに障害されず,セルが明瞭な画像として観察記録できた。さらにセルの温流による動きも撮影記録できた。今回用いた方法は,きわめて安価で簡便なセルの客観的な半定量法であり,日常診療に利用されるべき方法である。

糖尿病を合併した原田病のステロイド治療

著者: 丸山耕一 ,   中尾雄三 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.359 - P.364

(展示113) 糖尿病を合併した原田病の3例を経験した。眼科初診時から糖尿病に罹患していた2例では,ステロイド大量投与とインスリン治療および食事療法を併用した。治療経過中に糖尿病を発症した1例は,スルホニルウレア剤投与と食事療法で治療した。いずれの症例もステロイドの大量投与を行ったが,原田病の遷延化はなく,糖尿病網膜症の悪化や発症もなかった。ステロイド治療前に糖尿病精査を十分に行い,原田病に対するステロイド投与と糖尿病の治療を同時に行えば,原田病,糖尿病ともに予後は良好であると考えられた。

老視に対する調節訓練(第4報)—長期継続例

著者: 福與貴秀 ,   岸恵美子 ,   田中明子 ,   藤井恵子 ,   森戸栄子 ,   星野淳子 ,   山本成径

ページ範囲:P.365 - P.367

(展示66) 1年以上調節訓練を継続した40歳代の老視5例9眼で,調節訓練の長期効果を検討した。最終検査時の調節力は,全例で開始前のそれを上回つていた。また自覚症状も全例で改善していた。今回の結果から,調節力を良好に維持するためには1日5〜20回の調節訓練が必要と思われた。

ステロイド大量投与が著効した幼児眼窩蜂窩織炎の1症例

著者: 野見山香奈子 ,   野見山豪 ,   鳥井希恵子 ,   公文和子 ,   水本雅彦 ,   廣川博之

ページ範囲:P.369 - P.372

(展示188) ステロイドの大量全身投与が著効した4歳,女児の眼窩蜂窩織炎を経験した。右眼瞼の発赤腫脹を主訴に受診し,眼所見,CTおよび全身所見から眼窩蜂窩織炎と診断された。抗生剤や外科的治療が無効であつたため,ステロイド剤(デキサメタゾン)を大量投与したところ,眼所見および全身所見は著明に改善した。また視力障害や眼球運動障害などの後遺症はなかった。
 眼窩蜂窩織炎の治療にあたっては,抗生剤投与,外科的治療で改善が認められない場合,ステロイドの併用も考慮すべきと考えられた。

大阪市立大学における7年間の眼外傷の統計的検討

著者: 小西正浩 ,   尾花明 ,   三戸秀哲 ,   河野剛也 ,   松本宗明 ,   三木徳彦 ,   裴高一

ページ範囲:P.373 - P.377

(展示192) 1989年から1995年までの7年間に,大阪市立大学眼科を受診した眼外傷患者606名625眼を対象に,統計的観察を行った。
 男女比は3.2:1で,年齢では10歳代が156眼(25.0%)と最も多く,原因では日常生活上の受傷が24.8%を占め,次にスポーツ外傷(19.7%)が多かった。病態は隅角後退が最も多く,ついで虹彩炎,角膜びらん,網膜振盪症であった。
 スポーツ外傷では野球およびサッカーが58.5%を占め,サッカーでは眼底上方,野球では眼底下方に病巣が発生する頻度が高かった。
 0.2以下の視力予後不艮例は76眼で,その原因はけんかや仕事中の受傷に多く,病態は眼内異物,網膜剥離,視神経萎縮が主であった。

硝子体出血で受診した未治療の糖尿病網膜症症例

著者: 武田憲夫 ,   張哲祐 ,   濱屋永子 ,   浅海紀子 ,   水野谷智

ページ範囲:P.379 - P.381

(展示222) 眼科医による経過観察や治療を受けておらず,硝子体出血による視力低下で受診した,糖尿病網膜症症例15例につき検討した。年齢は42歳から74歳で,男性9例,女性6例であった。全例で他眼に前増殖もしくは増殖網膜症がみられた。硝子体出血による片眼の視力低下で初診した症例の予後は比較的良好であったが,他眼が視力不良の状態のまま放置され,良好なほうの眼に硝子体出血が起こって受診した症例は,鎮静化しても視力転帰は不良であった。約半数は内科的治療を受けていたにもかかわらず眼科を受診していなかった。この点に関してもさらなる啓蒙が必要であると考えられた。

結膜下膿瘍を眼症状としたWegener肉芽腫症の1例

著者: 大藤圭子 ,   三井清次郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.382 - P.384

(展示263) 結膜下膿瘍を眼症状としたWegener肉芽腫症の1例を経験した。症例は73歳の男性で,右眼視力低下と右下鼻側結膜の腫瘤性病変を主訴として受診した。腫瘤部の病理組織診断では好中球の混在した壊死組織であった。血中抗好中球細胞質抗体(cANCA)陽性であること,肺部結節の生検で肉芽腫性病変をみたことから,Wegener肉芽腫症と診断された。ステロイドパルス療法および免疫抑制剤投与により全身状態は改善した。同時に右眼結膜下膿瘍は縮小するとともに,その下に壊死性強膜炎の存在が明らかとなった。

今月の表紙 第14回医学写真展から・1

視神経乳頭欠損に伴う網膜剥離

著者: 「臨床眼科」編集室 ,   福井勝彦 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.229 - P.229

 日本臨床眼科学会の折,日本眼科写真協会が主催する「医学写真展」が開催される。1996年10月の第14回医学写真展の正確かつ美麗な写真の中から本誌編集委員会が4点を選び,表誌を飾っていただくことにした。今月はその第1弾で,編集委員の馬嶋先生から若干のコメントをいただいた。

連載 今月の話題

ベーチェット病の病因と治療法

著者: 川島秀俊

ページ範囲:P.233 - P.237

 ベーチェット病は,1937年トルコの皮膚科医Hulusi Behçetにより初めて報告され,今なおシルクロード地域の眼科医を悩まし続けている眼,粘膜,皮膚に及ぶ全身疾患である1,2)。今回は,このベーチェット病に関するここ数年の研究業績,特にその病因と治療法に関する新知見のいくつかについて概説する。

眼の組織・病理アトラス・125

ぶどう膜炎

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.240 - P.241

 眼球には所属リンパ節が存在しない。眼内に炎症が起こった場合には,角膜縁結膜とぶどう膜が眼球の所属リンパ節のような働きをして,そこで反応性の細胞浸潤やリンパ球の増殖,抗体産生などが行われる。臨床的には,角膜縁結膜の細胞浸潤は角膜周囲結膜充血として認められ,ぶどう膜の細胞浸潤は前房混濁や硝子体混濁としてとらえられる。
 眼科臨床では,眼内の炎症をぶどう膜炎uveitisと呼ぶ。これはぶどう膜の炎症だけでなく,眼内組織の炎症を総括して習慣的にぶどう膜炎と呼んでいる。炎症の主座が眼内組織のどこにあっても,ぶどう膜には多少とも炎症細胞浸潤が起こり得るので,あながち間違った表現とはいえない。しかし,厳密には炎症の主座がぶどう膜にある場合のみが真のぶどう膜炎true uveitisである。炎症の主座がぶどう膜以外の眼組織,例えば網膜にあればこれは網膜炎と表現し,炎症の主座が水晶体にあれば水晶体炎と表現するほうがより的確である。この場合には,ぶどう膜にも反応性に炎症細胞浸潤が生じるので,これを病理学的には反応性ぶどう膜炎reactive uveitis,または反応性炎症細胞浸潤reactive inflammatory cell infiltrationと呼ぶことができる。

眼科手術のテクニック・88

涙嚢鼻腔吻合術(3)—吻合弁縫合から術了まで

著者: 中村泰久

ページ範囲:P.244 - P.245

後弁縫合
 涙嚢粘膜を後弁として,鼻粘膜の切断端に2-3針縫合する。7-0モノフィラメント糸を用いて,結節が吻合面に出ないように埋没縫合の形で縫合する。
 この縫合は,深部の狭い場所での作業であるため,やや困難である。そのため,9mm程度の小さな針を用いること,鼻粘膜に通糸する際に,針を回転させずに(図1),鼻腔内に通した後に針の後端から抜いてくること(図2),などに留意すれば,手技は比較的容易となる。

眼科の控室

徹照法

ページ範囲:P.386 - P.386

 「斜照法と徹照法は眼科検査の基本」とむかし教わったものですが,若いドクターには人気がありません。どちらも細隙灯顕微鏡でずっと精密に代用できるから,というのが理由のようです。
 斜照法は過去のものとなりました。そもそも暗室にはこれに必要な石丸電球が置いてありませんし,もしあっても価値の高い所見は得られないのです。しかし,徹照法のほうは,操作も簡単ですし,なるべく実行していただきたいのです。

臨床報告

ICG排泄機能障害がある慢性肝疾患患者におけるICG螢光眼底造影所見

著者: 丸山耕一 ,   中尾雄三 ,   松本長太 ,   大鳥利文

ページ範囲:P.389 - P.394

 慢性肝疾患患者7例において,インドシアニングリーン(indocyanine green:ICG)15分停滞率(R15)を測定し,同時に走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscope:SLO)を用い近赤外レーザーを使用して長時間にわたる眼底観察を行い,その造影所見について検討した。対象は男性6例,女性1例で,R15は33〜67%(正常値10%以下)と高値であった。ICG溶液静注30分後まで全例で網脈絡膜血管は明瞭に描出されていた。6例において静注1,2時間以降から後極部に小斑点状低螢光の散在がみられ,眼底周辺部と比較した後極部の明るい螢光も6例で観察された。全例において静注6時間以降,視神経乳頭内が過螢光を呈し,次第に増強傾向を示した。R15が高値を示し肝臓におけるICG排泄能が低下した場合,SLOによるICG造影所見上,網脈絡膜血管内に長時間ICGが滞留し,視神経乳頭内にICGが徐々に拡散することがわかった。

帯状角膜変性を伴った原田病の小児例

著者: 浅古光世 ,   西尾昌代 ,   中村聡 ,   杉田美由紀 ,   大野重昭

ページ範囲:P.395 - P.398

 症例は10歳女児で,同定不能の難治性慢性ぶどう膜炎として当科を紹介され受診した。初診時すでに発症から4か月経過しており,両眼とも帯状角膜変性を伴っていた。経過中,夕焼状眼底が出現し,髄液細胞増多をみたことから原田病と診断した。治療は若年者のためステロイド薬の副作用を考慮し,リポ化ステロイド薬の週2回静注療法を施行した。炎症は速やかに消退し,矯正視力は1.2に回復した。重篤な副作用,炎症の再燃はなかった。

沿血管裂孔網膜剥離の特徴

著者: 清水由花 ,   伊野田繁 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.399 - P.404

 沿血管裂孔網膜剥離についてその頻度と特徴を調べた。過去24か月間に当科で手術を行った裂孔原性網膜剥離308例317眼中,沿血管裂孔は24例24眼(7.6%)を占め,年齢は46〜82(64.7±9.4)歳,男女比は10:14であった。裂孔の位置は上方に多く(70.8%),大きさは1/3〜3(平均0.74)乳頭径であった。裂孔の成因は網膜硝子体癒着と後部硝子体剥離で,正視から中等度近視で周辺部から中間部に裂孔を形成するものと,強度近視を伴い後極部に裂孔を形成するものの2型に分けられた。治療には裂孔の閉鎖とともに硝子体の牽引の除去が必要であり,周辺部裂孔には強膜バックリング,やや深部の裂孔には子午線プロンベ縫着術,深部裂孔には硝子体手術が有効であった。

トキソプラズマによる乳頭隣接網脈絡膜炎(Edmund-Jensen)の1症例

著者: 三宅睦子 ,   砂川光子

ページ範囲:P.405 - P.408

 先天性眼トキソプラズマ症に乳頭隣接網脈絡膜炎が再燃した59歳女性を報告した。本症例には,先天性眼トキソプラズマ症の陳旧性網膜瘢痕病巣が両眼に認められていた。血清トキソプラズマ抗体価は軽度上昇のみで,経過観察期間中に大きな変動をみなかったが,アセチルスピラマイシンが著効した。

糖尿病黄斑浮腫発生に対する硝子体の役割

著者: 引地泰一 ,   東由直 ,   藤尾直樹 ,   秋葉純 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.409 - P.413

 黄斑浮腫発生に対する硝子体の役割を明らかにするために,重回帰分析を用いて糖尿病網膜症を認める糖尿病患者283例283眼(黄斑浮腫は45眼)を検討した。その結果,糖尿病の推定罹病期間が長く,黄斑部硝子体が未剥離な症例において黄斑浮腫発生の危険性が高いことが明らかとなった。黄斑部硝子体未剥離が糖尿病黄斑浮腫の発生に影響を与える可能性が示唆された。

研修病院における白内障手術教育

著者: 久田佳明 ,   鈴木美都子 ,   田中康裕

ページ範囲:P.415 - P.418

 当院では,1992年から白内障手術初心者に対し,1眼目から超音波水晶体乳化吸引術を教育し,最初の症例から全手術過程を執刀させることを目標としてきた。8名の初心者が当院で1,027眼の手術を行った。術中合併症は48眼(4.7%)に生じた。合併症の種類は,後嚢破損42眼(87.5%),チン小帯断裂6眼(12.5%)であった。前嚢破損は全症例中101眼(9.8%)に生じた。これは合併症例48眼のなかで28眼に生じ,58.0%を占めていた。アンケートにおいて研修医は合併症を起こさない要点として,術眼の把握,使用機器・器異の完全な準備,術者と患者の姿勢を慎重に決めることの3点が大切であると答えている。このことは,術前の準備が何よりも重要であるという,当院の手術に対する姿勢が受け継がれているものと思われた。

第50回日本臨床眼科学会専門別研究会1996.10.24京都

視野

著者: 阿部春樹

ページ範囲:P.420 - P.421

 第50回日本臨床眼科学会専門別研究会「視野」は,1996年10月24日(木)午前9時〜正午まで,国立京都国際会館Room B−1にて開催された。
 冒頭に,世話人の阿部春樹(新潟大)より開会の挨拶があり,ただちに一般講演I (第1席〜第4席)のセッションが開始された。このセッションの座長は岩瀬愛子先生(多治見市民病院・岐阜大)にお願いした。続いて一般講演II (第5席〜第8席)のセッションが開始された。このセッションの座長は松本長太先生(近畿大)にお願いした。一般講演IIのセッションの終了後,大鳥利文日本視野研究会会長(近畿大)のご挨拶をいただいて,約10分間の休憩の後,一般講演III (第9席〜第12席)のセッションが開始された。このセッションの座長は,勝島晴美先生(札幌医大)にお願いした。このセッションの終了後に次回世話人の可児一孝教授(滋賀医大)より,閉会の辞と来年の本研究会の抱負が述べられた。

眼科と東洋医学

著者: 仲河正博

ページ範囲:P.422 - P.423

 第50回日本臨床眼科学会が,京都国際会議場にて開催された。専門別研究会である「眼科と東洋医学」部門も昭和60年より実施され,今同で12回を数えるまでになった。竹田 眞先生,山本昇吾先生,小林フミ子先生,酒谷信一先生,その他多くの先生方の御甚力により,多くの発表と教育講演がなされて来た。
 今回も,一般演題7題,教育講演の方式で講演を行った。種々の都合にて今回はプログラム通りの発表が無理となり,聴講に来られた先生方に御迷惑をおかけ致しましたこと,誌上を借りて深くおわび申し上げます。

眼先天異常

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.424 - P.425

 1.染色体検査で異常を認めた瞼裂縮小症候群の1 例 野田航介・他(慶應大) 瞼裂縮小症候群は,両側性の瞼裂狭小,逆内眼角贅皮,眼瞼下垂を3主徴とし,内眼角間隔離を伴うことの多い先天異常である。近年,本疾患における第3番染色体長腕の異常が報告され,また小頭症や精神発達遅滞などと合併する症例が多いことから,本疾患はこれらと隣接遺伝子症候群の関係にある可能性が指摘されている。今回我々は,染色体検査で異常を認めた瞼裂縮小症候群の1例を経験したので,若干の検討を加え報告した。

地域予防眼科

著者: 赤松恒彦

ページ範囲:P.426 - P.428

 本年の地域予防眼科研究会は自由演題によって開催された。石田誠夫座長(石田眼科)によって始められた。
 第1席 榎本洋一ら(国立横浜病院)は「当科における1年間(1995年)の入院患者の分析」について発表。入院の内容は圧倒的に白内障手術目的が多く,その内容も女性が男性に比較して多数であった。近年ますますこの傾向になりつつあり,その原因を長寿社会の到来によるとした。

文庫の窓から

宜禁本草集要歌と眼(2)

著者: 中泉行信 ,   中泉行史 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.430 - P.432

なすびをば初に少しは用べし
 末に過食は目をも損ずるなづな根をすりてしぼりて汁をとり
 うづく目にさし忽にやむなづなみは甘く平也風毒の邪氣を去也
 目を明にするなづなみを卯月八日に実をとり

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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