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文献概要
連載 眼の組織・病理アトラス・126
眼瞼
著者: 猪俣孟1
所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.458 - P.459
文献購入ページに移動 眼瞼eyelidは眼球を保護する組織で,上眼瞼と下眼瞼からなる。上下眼瞼の間隙を瞼裂palpebral fissureという。眼瞼の外側は皮膚で,内側は結膜で覆われている(図1)。皮下には眼輪筋orbicularis oculi muscleが瞼裂を取り巻くように存在する。皮膚縁付近に睫毛eyelashesまたはciliaがある(図2)。睫毛の毛包hair folliculeは他の部位のものと異なって立毛筋を欠く。睫毛には睫毛脂腺またはツアイス腺glands of Zeisが,睫毛間には睫毛汗腺ciliary glandsまたはモル腺glands of Mollが存在する。臨床的に,睫毛を皮膚縁の目安とした場合,皮膚縁と結膜縁との移行部を縁間intermarginal surcus,またはやや灰白色に見えるので灰白線gray lineとも呼ぶ。しかしこの部分は表皮に覆われているので,組織学的には皮膚側である。瞼結膜に密着して,コラーゲン線維が密集した硬い半月状の瞼板tarsal plateがある。瞼板は眼窩縁骨膜の延長であり,眼窩腔内容物と眼瞼を隔てている眼窩隔膜orbital septumの線維が密集したものである。硬くて眼瞼の形状を保つ上で大切な組織である。瞼板の中に多数の瞼板腺tarsal glandsまたはマイボーム腺Meibomian glandsがある(図3)。この脂腺は瞼板縁から縁間部に開口し,角膜の表面に広がって涙の蒸発を防ぐ。瞼板の皮膚側には上眼瞼挙筋levator palpebrae superiorsisが扇形に広がって腱膜aponeurosisとなって瞼板前面に付着している(図1)。
眼瞼の原基は16mm胎児(6週)のころに表層外胚葉の襞として発生する(図4)。この襞の外側は角化する眼瞼皮膚になり,内側は角化しない結膜上皮になる。その間に神経膜由来の組織が侵入して瞼板など眼瞼の間質が形成される。表皮の基底細胞は分化して,毛包hair folliculeや脂腺seba-ceous glandsなどが形成される。結膜上皮からgoblet細胞や涙腺lacrimal glandsが分化する。胎生3か月ころに上下眼瞼が癒着し(図5),6か月ころに上下眼瞼が再び分離する。睫毛,睫毛汗腺,睫毛脂腺,瞼板腺の形成には,上下眼瞼がいったん癒着して再び分離することが大切で,この過程がうまくいかないと無眼瞼ablepharonなどの形成異常になる。
眼瞼の原基は16mm胎児(6週)のころに表層外胚葉の襞として発生する(図4)。この襞の外側は角化する眼瞼皮膚になり,内側は角化しない結膜上皮になる。その間に神経膜由来の組織が侵入して瞼板など眼瞼の間質が形成される。表皮の基底細胞は分化して,毛包hair folliculeや脂腺seba-ceous glandsなどが形成される。結膜上皮からgoblet細胞や涙腺lacrimal glandsが分化する。胎生3か月ころに上下眼瞼が癒着し(図5),6か月ころに上下眼瞼が再び分離する。睫毛,睫毛汗腺,睫毛脂腺,瞼板腺の形成には,上下眼瞼がいったん癒着して再び分離することが大切で,この過程がうまくいかないと無眼瞼ablepharonなどの形成異常になる。
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