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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科51巻8号

1997年08月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

小口病の原因遺伝子ロドプシン・キナーゼの発見

著者: 山本修士

ページ範囲:P.1411 - P.1415

 小口病(Oguchi disease)は,フォトレセプターの機能異常による劣性遺伝形式の停止性夜盲症のひとつである1)。筆者はハーバード大学Massachusetts Eye & EarInfirmaryのThaddeus P.Dryja博士のもとに留学中,小口病の原因遺伝子のひとつロドプシン・キナーゼを発見するという幸運に恵まれた。この結果は,1997年2月号のNature Geneticsに掲載された2)

眼科図譜・360

網膜下出血が硝子体出血に至った網膜細動脈瘤破裂

著者: 森有紀 ,   南部真一

ページ範囲:P.1416 - P.1417

 網膜細動脈瘤は,Robertson1)により1973年に記載されて以来,その報告が増加してきた。本症は,網膜動脈の第三分枝以内に起こることが多いが,なによりの特徴は,これが破裂するとき,網膜前・網膜内・網膜下それぞれに出血が生じることにある。出血が黄斑に及ぶときには,当然,視力低下の原因となる2〜5)。また,ときにこの出血が硝子体出血になることがある。
 今回呈示する症例は,発症直後から,網膜下出血が黄斑円孔を通って硝子体膜下出血となり,その結果,比較的良好な経過をとった事例である。

眼の組織・病理アトラス・130

前房隅角の発達

著者: 田原昭彦 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.1420 - P.1421

 角膜周辺と虹彩根部に挟まれた前房隅角anteriorchamber angle(図1)の組織を構成する細胞の起源は神経堤細胞neural crest cellとされる。神経堤細胞は,両側の神経ひだが癒合して神経管を形成する胎生3週頃,神経ひだの先端部付近で増殖する神経外胚葉の細胞である。前房隅角は胎生2か月までは形成されていない。胎生3か月の初め頃,角膜と水晶体との間に無細胞性の間隙が形成され,前眼房に発達する。やがて眼杯の前縁が伸びて毛様体の原基である網膜毛様体部ができ,さらに虹彩に発達する網膜虹彩部が形成される。したがって,前房隅角の原形はこの頃発生する。
 前房隅角組織の発達は3つの要素からなる。つまり,隅角の開大,線維柱帯trabecular meshworkの発達(組織化),シュレム管Schlemm's canalの発達である。前房隅角の開大は,その機序は不明であるが,隅角底angle recess(隅角の周辺端)が外後方に偏位していくことで進行する。シュレム管との相対的な位置関係において,隅角底は胎生6か月でシュレム管の内前方に位置する(図2A)が,胎生8か月ではシュレム管の中央部に位置するようになる(図3A)。出生時には,隅角底はシュレム管のほぼ外後方端に位置する(図4A)。隅角の発達は4歳頃までに完了し,隅角底はシュレム管のやや外後方に位置する(図1)。隅角底の完成に伴って,隅角底と毛様体筋とが接近する。胎生8か月頃に隅角底の後方に存在していた毛様体筋(図3A)は,出生時には隅角底の近くに位置して,隅角底を幅広く占めるようになる。

眼科手術のテクニック・93

涙嚢鼻腔物合術の術中トラブルと対処—(3)涙嚢粘膜,鼻粘膜の損傷の回避と発生時の対策

著者: 栗原秀行

ページ範囲:P.1424 - P.1426

 涙嚢鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)の術中,最も困惑するのは吻合弁の損傷である。吻合弁の損傷は,もしそれが広汎かつ大規模であれば手術そのものの目的を失うことにもなり,予後に重大な影響を及ぼすものであるが,同時にこの種の手術を試みる者が多少は経験を余儀なくされる出来事でもある。そこで本稿のはじめに,いかにすれば涙嚢・鼻粘膜の損傷を避けることができるかについて,若干の経験を避べたい。

今月の表紙

卵黄様黄斑ジストロフィ(Best病),偽前房蓄膿期

著者: 宇山昌延

ページ範囲:P.1419 - P.1419

 先天性黄斑ジストロフィの一型で,常染色体優性遺伝形式を示す。両眼性で,小児期に発病し,徐々に進行してさまざまの眼底所見を示すが,通常視力は良い。病変は黄斑部に限局している。初期には卵黄様の名が示すとおり,卵の目玉焼き様(egg yolk)の境界鮮明な円形の黄色斑が中心窩の網膜深層にみられる。やがて,それは崩れて,いり卵様(scrambled egg)になり,それが吸収されると,黄斑部に変性と瘢痕を残して,視力は低下する。卵黄様の病変は網膜色素上皮細胞内にリポフスチン顆粒を主とした異常物質の沈着による。経過の途中で,網膜色素上皮細胞から流出した物質が網膜下に溜まって,写真のように偽前房蓄膿pseudo-hypopyonと呼ばれる所見を示す時期がある。ERGは正常であるが,EOGが著しく低下しているのが診断に役立つ。この症例は16歳男子,視力0.9であった。

臨床報告

自己閉鎖創白内障術後早期の視機能

著者: 中村邦彦 ,   ビッセン宮島弘子 ,   有本華子 ,   勝海修

ページ範囲:P.1433 - P.1436

 自己閉鎖創小切開白内障術後早期の視機能を評価する目的でvariable contrast visual acuity charts(VCVAC)を用いてコントラスト視力を測定し,これに影響すると考えられる前房内炎症をレーザーセルフレアーメーターで,角膜厚をパキメーターで測定した。高コントラスト視標における矯正視力は術後3日目に安定したが,中〜低コントラスト視標では術後5日目に安定した。これはフレア値が術翌日最高で,術後5日目で安定する傾向と一致していた。また角膜厚は術前,術翌日,術後3〜5日目で有意な差がなかった。

片眼性白内障と片眼進行性白内障との水晶体混濁部位の差異

著者: 近藤由佳 ,   大橋千尋 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.1439 - P.1442

 片眼性に発生,進行する白内障を,他眼の水晶体に全く混濁のない片眼性白内障(A群)と,他眼にも混濁の存在する片眼進行性白内障(B群)とに分けて比較検討した。1991年1月から5年間に名古屋市立大学眼科を受診したA群25例,B群63例を対象とした。年齢はA群のほうがB群より有意に低かった(対応のないt検定,p<0.0001)。A群の患眼およびB群の進行眼の水晶体の主な混濁部位は両群とも嚢下が多かった。A群で核混濁が有意に多く(χ2検定,p<0.01),皮質混濁の割合はB群に有意に多かった(同,p<0.05)。B群は混合型の混濁が多くみられた。このように片眼性白内障と片眼進行性白内障の性質に差異があることから,両者は互いに成因の異なる可能性がある。

裂孔原性網膜剥離に対する初回硝子体手術の適応と手術成績

著者: 上村昭典 ,   土居範仁 ,   中尾久美子

ページ範囲:P.1443 - P.1446

 1992〜1995年の4年間に,裂孔原性網膜剥離に対する初回手術として硝子体手術が選択された105眼を対象として,その適応と手術成績について検討した。裂孔原性網膜剥離に対する初回手術に占めた硝子体手術の割合は23%であり,年々増加傾向にあった。硝子体手術の適応となった症例は深部裂孔網膜剥離(50眼)が最も多く,次いで黄斑円孔網膜剥離(23眼),増殖性硝子体網膜症(10眼)などであった。初回手術での網膜復位は90眼(86%)に得られ,最終的に100眼(96%)が復位した。適切な硝子体手術適応の決定と,慎重な術後の経過観察が重要であると思われた。

角膜真菌症の2病型

著者: 石橋康久 ,   徳田和央 ,   宮永嘉隆

ページ範囲:P.1447 - P.1452

 過去20年間の角膜真菌症40例を検討した。外傷の既往があり,植物病原体によるもの20例,Candna属などの常在菌によるもの17例,その他3例であった。この事実から,角膜真菌症を,植物病原菌型(農村型)と常在菌型(都市型)に分類することを提案する。前者は植物の枝や葉による外傷を契機として発症し,抗生物質やステロイド薬に抵抗して進行し、原因菌にはFusarium属が多い。後者は全身的あるいは局所的な免疫不全が基礎にあって発症するもので,角膜全層移植後に発症するものが含まれる。後者は眼科的に濃厚な治療をしているときに好発する。原因菌には腸内や皮膚の常在菌であるCandida属が多く,真の意味での日和見感染である。

眼トキソカラ症の35症例

著者: 吉田雅美 ,   浅井宏志 ,   白尾裕 ,   長瀬博文 ,   中村裕之 ,   荻野景規 ,   赤尾信明 ,   岡沢孝雄 ,   近藤力王至

ページ範囲:P.1455 - P.1459

 過去11年間に,ぶどう膜炎または視神経炎などで眼トキソカラ症を疑われた356症例を検査した。35症例が免疫血清学的な5項目のうち4項目以上に陽性を示し,眼トキソカラ症と診断された。男26例,女9例であり,全例が片眼発症であった。32例(91%)が20歳以上であった。滲出性ないし隆起性の網脈絡膜病変が33眼にあり,後極部にあるもの11眼,周辺部にあるもの16眼であり,双方にあるもの6眼であった。視神経乳頭の浮腫または発赤が8眼にあった。うち7眼では滲出性ないし隆起性の網脈絡膜病変があった。牽引性網膜剥離が4眼にあった。以上の所見は海外で報告されたものとは大きく異なり,眼トキソカラ症の分類の修正が必要であると判断された。

交感性眼炎発症後,進行を停止した増殖糖尿病網膜症の2例

著者: 石田美幸 ,   池田恒彦 ,   澤浩 ,   前田耕志 ,   木下茂

ページ範囲:P.1467 - P.1471

 増殖糖尿病網膜症の片眼に硝子体手術を行った後,交感性眼炎を発症し,その後被交感眼の網膜症の進行が停止した2症例を報告した。症例1では硝子体出血に黄斑外牽引性網膜剥離を合併しており,症例2では黄斑部牽引性網膜剥離を認めたために硝子体手術を行った。両症例とも最終硝子体手術5か月後に交感性眼炎を発症し,いずれも被交感眼は夕焼け状眼底に移行した。交感性眼炎発症時,被交感眼に症例1では網膜および乳頭上新生血管を,症例2では線維血管性増殖膜を認めたが,夕焼け状眼底移行後,いずれも退縮した。交感性眼炎発症後の脈絡膜および網膜色素上皮の代謝変化が,糖尿病網膜症の進行に何らかの抑制効果を及ぼしている可能性が示唆された。

近視性黄斑円孔網膜剥離と後部硝子体皮質前ポケット

著者: 鈴木純一 ,   鈴木治之 ,   盧勇 ,   斎藤哲哉 ,   関根伸子 ,   中川喬

ページ範囲:P.1473 - P.1476

 近視性黄斑円孔網膜剥離の後極部剥離網膜の網膜前膜様組織を硝子体手術術前・術中に検討し,この病因を検討した。対象は男性1眼,女性9眼の連続10眼,年齢は54〜85歳(平均65.2歳)であった。硝子体手術前に2眼でガス注入術が行われていた。術前,Weiss ringを認める後部硝子体剥離は10眼中8眼でみられた。硝子体手術前に網膜前膜様組織は5眼にみられ,手術中に残り5眼中4眼で後部硝子体皮質の癒着が確認された。この組織を剥離して9眼(90%)で初回の硝子体手術で網膜は復位した。網膜上の膜様組織は硝子体皮質の遺残(後部硝子体皮質前ポケットの後壁)組織であり,近視性黄斑円孔網膜剥離は円孔の接線方向の牽引と長い眼軸や網脈絡膜萎縮などの近視性変化によって生じると考えた。

水痘帯状疱疹ウイルスが原因と考えられた網膜血管炎の1例

著者: 蒔苗順義 ,   松橋英昭 ,   木村聡 ,   吉本弘志

ページ範囲:P.1477 - P.1480

 26歳男性が右眼視力低下を主訴に受診した。右眼底の鼻上側に扇状の網膜出血,黄白色滲出物を伴った血管白鞘形成を,また乳頭周囲には血管性増殖膜がみられた。プレドニソロンおよびアシクロビルを投与したが,増殖膜は増大し,牽引性網膜剥離を合併した。増殖膜および鼻上側の無血管野へ網膜光凝固を行ったところ,裂孔原性網膜剥離となった。硝子体手術により網膜は復位した。Polymerase-chain reaction法により硝子体液から水痘帯状疱疹ウイルスおよびEpstein-BarrウイルスDNAが検出された。この症例は水痘帯状疱疹ウイルスによる網膜血管炎と考えられた。水痘帯状疱疹ウイルスは,若年発症の網膜静脈分枝閉塞症の原因の1つである可能性が示唆された。

出血性眼窩リンパ管腫小児例のMRI所見

著者: 橋本雅人 ,   大塚賢二 ,   中村靖 ,   三浦道子 ,   中川喬

ページ範囲:P.1481 - P.1484

 3歳男児で急激な眼球突出を示した出血性眼窩リンパ管腫の1例を経験した。MRI所見によって右筋円錘内に境界明瞭な多房性の腫瘤陰影を認めた。また腫瘤の一部に液面形成を示す亜急性出血がみられた。クレーンライン法による右眼窩腫瘍摘出術を施行し,術中所見では眼窩脂肪組織内に散在する数個の円形で暗赤色の血性嚢腫がみられ,術前MRI所見と合致した所見であった。出血性眼窩リンパ管腫のMRI所見は極めて特徴的であり,小児における急激な眼球突出を示す他の眼窩内病変との鑑別上,有用な検査法であると思われた。

照射径5mmと6mmでのエキシマレーザー屈折矯正手術

著者: 吉田正樹 ,   ,   ,   北原健二 ,   ,  

ページ範囲:P.1487 - P.1492

 60以下の中等度近視を対象として,Summit社製エキシマレーザーを用いて照射径5mmと6mmで屈折矯正手術を施行し,両群の術後成績について比較検討した。術前屈折値を揃えた5mm群45眼,6mm群45眼において,調節麻痺下の屈折値は,5mm群では術後1,3,6か月ともに6mm群より有意に遠視化がみられた(p<0.0001〜p<0.01)。また,術後屈折値のばらつきも,すべての時点で6mm群は5mm群に比べて有意に少なかった(p<0.0001)。Hazeに関しては,術後すべての時点で両群に有意差はみられなかった(p=0.16〜p=0.21)。また,6mm群では術後経過中にhaloの訴えは少ないものの,5mm群に比べcentrai islandの高い発生をみた。術後6か月の時点では両群ともに良好な術後成績が得られた。6mm照射径では,central islandの発生率は高いものの,術後屈折変化,予測性,裸眼視力の早期回復,haloの予防において優れていると思われた。

緑内障治療におけるウノプロストン点眼液の有用性

著者: 山上淳吉 ,   新家真 ,   小関信之

ページ範囲:P.1493 - P.1497

 緑内障78例120眼(平均年齢56.2歳)に対して,ウノプロストン点眼液を既治療に追加または無治療から新たに開始した場合(追加群),もしくは書前治療薬のうちの1剤をウノプロストンに交換した場合(交換群)について,眼圧下降効果の検討を行った。ウノプロストン投与前後3回の眼圧平均を比較し,この平均眼圧が1.0mmHg以上下降した場合を有効,それ未満もしくは投与を中止した場合を無効とした。追加群92眼のうち,53眼(58%)で有効と判定され,有効眼の眼圧は平均3.1mmHg下降した。追加群をピロカルピン併用群(35眼)とピロカルピン非併用群(57眼)とに分けたところ、前者では22眼(63%),後者では31眼(54%)で有効と判定され,有効と判定された眼では,それぞれ2.4,3.4mmHgの眼圧下降を得た。無治療から新たにウノプロストンを開始した21眼において,有効と判定されたものは15眼(71%),同じく3.6mmHgの眼圧下降を得た。交換群28眼では,有効と判定されたものが10眼(36%)で,2.9±1.5mmHgの眼圧下降を得た。副作用として,角膜上皮障害が6眼(5.2%)にみられたが,投与中止により所見は改善した。ウノプロストン点眼は新たに眼圧下降治療を開始するときのみならず,緑内障治療眼においてさらに眼圧を下降させたい場合,また何らかの理由により薬物を交換する場合に約半数の症例で有用である可能性をもち,また,眼圧作用機序の拮抗するピロカルピンとの併用でも眼圧下降を期待することができると考えられた。

放射線照射が著効した転移性虹彩腫瘍の1例

著者: 内田久子 ,   松尾俊彦 ,   松尾信彦

ページ範囲:P.1499 - P.1502

 肺扁平上皮癌患者の虹彩にみられた転移性腫瘤に対して放射線照射を行った症例を経験した。症例は72歳女性で,左眼の流涙,充血を訴え,当科を紹介された。初診時,左眼6〜8時の虹彩面上に2個の灰白色の腫瘤がみられた。前房穿刺により扁平上皮癌細胞が確認された。眼底には異常所見をみなかった。虹彩腫瘤が徐々に増大してきたため,放射線療法(2Gy/日,週5回)を開始したところ1週間後に腫瘤は半分に縮小し,総量30Gyの照射でほぼ消失したが,脳転移とともに再発し,3か月後に死亡した。本症例を含めて1960年以降わが国で報告された39例の虹彩転移腫瘍の予後は悪く,患者の生活の質を考えた治療法が選択されるべきである。

わが国における眼感染症サーベイランスの現状

著者: 内尾英一 ,   日隈陸太郎 ,   青木功喜 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1505 - P.1508

 眼感染症サーベイランスの実状を全国の315定点を対象にした郵送アンケートによって調査した。過去5年間に流行性角結膜炎ないし急性出血性結膜炎の地域流行は37.6%の定点で観察された。それらの定点の82%が流行の際に地域の学校や保健所と連絡を取っていた。3つのウイルス性結膜炎の診断基準は統一されていなかった。臨床所見のみによって診断する定点が62%を占めていた。迅速診断キット(アデノクロン®など)も16.6%の定点での使用にとどまっていた。確実な迅速病因診断法に基づく感染症サーベイランス事業の拡充が望まれる。

脈絡膜骨腫の視力経過

著者: 赤松亮子 ,   松永裕史 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1509 - P.1513

 最近10年間に脈絡膜骨腫6例8眼を経験し,その眼底所見と視力の経過を調べた。脈絡膜骨腫は徐々に拡大した。骨腫が黄斑部中心窩の下に拡大しても視力低下をみなかった。しかし,脈絡膜骨腫の50%に脈絡膜新生血管が発生し,黄斑部中心窩に脈絡膜新生血管が発生すると急激に視力低下を来し視力不良になった。脈絡膜骨腫のみの浸潤では視力は良好であったが,脈絡膜新生血管が発生すると視力が低下することがわかった。

カラー臨床報告

外傷を契機として先天性網膜動静脈吻合症に漿液性網膜剥離を生じた1例

著者: 田邊麻由子 ,   高橋寛二 ,   戸部隆雄 ,   木本高志 ,   松原孝 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1427 - P.1432

 先天性網膜動静脈吻合症(Archer分類1群)で頭部打撲による衝撃が誘因となって動静脈吻合部の血管から血管外漏出をきたし,黄斑部の漿液性網膜剥離を生じた症例を経験した。症例は19歳の女性で,頭部の打撲後4日目に右眼中心暗点発生。右眼眼底には乳頭中央部から蛇行した網膜動脈が黄斑部へ向かい,細動脈を介して網膜静脈と吻合していた。黄斑部には3乳頭径大の漿液性網膜剥離を伴っていた。螢光眼底造影により,動静脈吻合が証明され,吻合部の静脈壁から旺盛な螢光の血管外漏出がみられた。1週間後には自然治癒した。本例では螢光造影の走査型レーザー検眼鏡によって観察し血流動態と本病変の発症機序が詳しく理解された。

眼科の控室

病名

ページ範囲:P.1464 - P.1464

 網膜剥離の患者さんが初診で外来に見えました。その前日に近医を受診され,こちらを紹介されたものです。
 剥離は上方からで,急速に進行中です。乳頭も黄斑もこれに隠れて見えません。4日前に自覚していますが,「あと10日で全剥離になることが必定」という感じなのです。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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