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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科51巻8号

1997年08月発行

文献概要

連載 眼の組織・病理アトラス・130

前房隅角の発達

著者: 田原昭彦1 猪俣孟2

所属機関: 1和歌山県立医科大学眼科学教室 2九州大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1420 - P.1421

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 角膜周辺と虹彩根部に挟まれた前房隅角anteriorchamber angle(図1)の組織を構成する細胞の起源は神経堤細胞neural crest cellとされる。神経堤細胞は,両側の神経ひだが癒合して神経管を形成する胎生3週頃,神経ひだの先端部付近で増殖する神経外胚葉の細胞である。前房隅角は胎生2か月までは形成されていない。胎生3か月の初め頃,角膜と水晶体との間に無細胞性の間隙が形成され,前眼房に発達する。やがて眼杯の前縁が伸びて毛様体の原基である網膜毛様体部ができ,さらに虹彩に発達する網膜虹彩部が形成される。したがって,前房隅角の原形はこの頃発生する。
 前房隅角組織の発達は3つの要素からなる。つまり,隅角の開大,線維柱帯trabecular meshworkの発達(組織化),シュレム管Schlemm's canalの発達である。前房隅角の開大は,その機序は不明であるが,隅角底angle recess(隅角の周辺端)が外後方に偏位していくことで進行する。シュレム管との相対的な位置関係において,隅角底は胎生6か月でシュレム管の内前方に位置する(図2A)が,胎生8か月ではシュレム管の中央部に位置するようになる(図3A)。出生時には,隅角底はシュレム管のほぼ外後方端に位置する(図4A)。隅角の発達は4歳頃までに完了し,隅角底はシュレム管のやや外後方に位置する(図1)。隅角底の完成に伴って,隅角底と毛様体筋とが接近する。胎生8か月頃に隅角底の後方に存在していた毛様体筋(図3A)は,出生時には隅角底の近くに位置して,隅角底を幅広く占めるようになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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