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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科52巻11号

1998年10月発行

雑誌目次

特集 眼科検査法を検証する

角膜内皮の検査

著者: 秋谷忍

ページ範囲:P.10 - P.10

 研修医の先生方に「スリット・ランプで角膜内皮を観察できますか?」と質問すると,多くの方々が怪訝そうな顔付きをする。それくらい内皮スペキュラーマイクロスコープの発展は素晴らしい。内眼手術の前にスペキュラーマイクロスコープで内皮の状態を把握し,それが手術適応の1つの条件になるほど,日常ルーチンの検査になってしまった。非接触型で顎台に頭部を乗せれば後は自動的に撮影してしまうし,分析も簡単に行える。
 スリット・ランプの検査法の1つに鏡面反射法(specular reflection)がある。しかし,スリット・ランプ観察方法の指導のなかで,もうこの方法は省略されているのかもしれない。本書のなかでもスリット・ランプ検査の基礎という項目があるが,この方法が記載されるかどうか。

巻頭言

眼科検査法の進歩とその検証—何がどのように有用かを知るために

著者: 玉井信

ページ範囲:P.8 - P.9

 最近の臨床医学の特徴は,疾患に関する知識の爆発的な増加もさることながら,それを支える検査法のすさまじい開発,発展と,それに伴う新しい知見の蓄積であろう。眼科も,もちろん例外ではない。それがどれだけ1人ひとりの患者さんを前にして,正確な診断に必要であるかは別にして,とにかく進歩が激しい。
 専門誌と称するものが科学の全分野で10誌,年間の出版物が全世界で数千冊であったという18世紀当時から,その後徐々に増えてはきたものの,20世紀後半まではそれほど急激ではなかった。少なくとも小生が大学院生であった20年前は,まだ専門的な自分の領域を網羅し,先端的な研究に遅れないためには,Nature, Scienceなどのほかは限られた専門誌でことが済んでいた。ところが最近はその数がとどまるところを知らないほど増え続け,たとえコンピュータの助けを借りても,われわれの掌握できる範囲をはるかに超えてしまっているようで,空恐ろしい感じがする。かの有名なNature誌が今年から5誌に分けられ,毎号沢山の新しい知見を満載しているのを見ると,この現象が生物学を含めたあらゆる分野で起きていることがわかる。

Ⅰ.基本的な眼科検査法の検証

視力表の評価

著者: 堀田一樹

ページ範囲:P.11 - P.13

平均など統計学的な扱い方
 人の視機能には光覚,色覚,形態覚を始め各種の機能があり,それぞれ種々の検査法によって評価されている。視機能のうち最も重要な機能の1つが形態覚であり,従来,主として視力で評価されてきた。視力測定には通常,濃淡のはっきりした(高コントラストの)視標を用い,どの程度の細かさまでを識別できるかという最小分離閾値(空間分解能,解像限界)を求めて評価する方法がとられている。1909年の国際限科学会で,標準視標としてLandolt環が採用されたことから,視力表の視標は基本的にはこれらに基づいて構成されている。
 視力は眼科臨床において,比較的簡単に短時間で測定でき,しかも形態覚機能を比較的精度よく反映し得るとの理由で,最も基本的で普及した検査法の1つである。視力表にはLandolt環に加えてアラビア数字や文字(ローマ字,カタカナ,ひらがな)視標が並列されているものが多く使われ,紙製のもの,プラスチック製のもの,投影式のものなどがあり,照明装置とともに視力検査装置として供されているが,基本的にはこの自覚的な最小分離閾値(文字では最小可読閾値)を求めるものである。

小児視力検査法

著者: 野呂充

ページ範囲:P.15 - P.18

 小児の視力検査は,検査に対する慣れや小児自身の心理的,身体的条件の善し悪しで決まることが多く,正確な検査結果を得るためには小児の状態をよく把握することが必要となり,検査を行う人の技術と経験により検査結果がかなり左右される。
 そこで正確な検査を行うための必要条件は,(1)同じ検者,(2)出来るだけ同じ環境(同じ場所・同じ時間帯),(3)年齢に応じた適切な検査法を行うことである。

屈折検査(オートレフラクトメーター)の信頼性

著者: 橋本禎子

ページ範囲:P.19 - P.22

 あらゆる疾患における視力の評価は,屈折異常の有無を把握し,正しい矯正を行ってのち初めて成し得るものであり,屈折検査は眼科臨床検査の中で最も基本的な検査といえる。特に,視覚発達の途上にある乳幼児期においては,異常を早期に発見し,感受性期間内に矯正を開始することが視力の子後を決定するといっても過言ではない。
 近年,開発が進んでいる各種の屈折検査機器は,このような乳幼児の屈折検査の可能率を高め,検診や日常診療の場で活用されてきている。そこで,主な機種である①フォトスクリーナMTI(NEITZ),②フォトレフラクトメーターPR−2000(TOPCON),③ポータブルレフFR−5000(グランド精工),④ハンディレフレチノマックス(NIKON)について,筆者が使用した経験をもとに述べる。

立体視検査法

著者: 矢ケ﨑悌司

ページ範囲:P.25 - P.29

立体視の分類と処理機構
 両眼視機能は,左右眼の網膜上に別々に投影された視印象(retinal image)が視覚中枢において単一なものとして認知される機能である。立体視は両眼視機能のなかで最も高度なものであり,立体視の獲得は弱視,斜視治療の最終目標となる。立体視の視覚情報処理機構は単一なものではなく,2つのチャンネルが並列して関与している。1つは黄斑中心窩に多く分布するβ細胞から外側膝状体小細胞層(parvocellular laminae)を介して後頭葉皮質第一次視覚野に達する経路(P細胞系)であり,もう1つは黄斑周辺部のα細胞から外側膝状体大細胞層(magnocellular laminae)を介して視覚野に達する経路(M細胞系)である。P細胞系で処理される立体視は,両眼で眺めた注視点に対する映像の前後の位置のずれを基にして認知される三次元視覚である静的立体視(static stereopsis)であり,M細胞系で処理される立体視は,注視点の前後方向に動く三次元運動を認知する動的立体視(motion stereopsis)である。
 静的立体視の理論的正常値は,中心窩の大きさから60秒未満と考えられ,中心立体視と呼ばれる。それより大きな立体視は周辺立体視と呼ばれ,黄斑部の大きさより61秒から200秒以下の立体視とそれ以上の大きな値の立体視とに細分される。大まかな立体視(gross stereopsis)はM細胞系で処理される視覚情報で,動的立体視と密接に関連しており,中心立体視を示さない斜視症例においても大まかな立体視を示す症例では動的立体視も認められることが指摘されている。

眼軸長測定および眼内レンズ度数計算式の信頼性

著者: 大鹿哲郎

ページ範囲:P.33 - P.36

 白内障手術の術式そのものがかなりの完成度を有するようになった現在,眼内レンズの度数を正確に決定し,患者の術後屈折異常を最小限に抑えることの重要性は,ますます高くなってきている。術後の大きな屈折度数ずれは明白な合併症である(図1)。本稿では,眼内レンズ度数を正確に予想する上で障害となる諸問題,眼軸長測定,角膜屈折力測定,A定数・予想前房深度,計算式などについてまとめる。

MRI,CTの適応と評価

著者: 西田保裕 ,   井藤隆太 ,   高橋雅士 ,   本多達哉

ページ範囲:P.37 - P.41

 25年ほど前に出現したCTにより画像診断は大きく進歩した。その最大の理由は,薄い詳細な断層像が得られることであった。この画像診断の出現により,生体内での任意組織の病変を詳細な断層像として観察できるようになった。それまで限窩や頭蓋内組織は,内視鏡などを用いることができる腹部や胸部臓器とは異なり厚い骨で覆われているため,非侵襲的に詳細な観察をすることは不可能であった。しかしCTの出現により,これらの組織の分野では大きな恩恵を受けられるようになった。後にCTが断層像での画像診断としてその中核を成すわけであるが,さらに約10年後にはMRIが登場することになり,現在ではこれら両者が断層像の両翼を担っている。CTとMRIは同じ断層像であっても,その画像を構成する要素は根本的に異なっている。すなわちCTは各部位のX線吸収値により濃淡が決定されて画像を構成し,一方MRIは生体内の水素原子の陽子から放出される核磁気共鳴信号を検出し,この情報により各部位の濃淡が決定され画像が作成されることになる。よってCTでは生体のX線透過性が,MRIでは生化学的組成が画像に反映されることになる。今回この2つの異なった方法を比較しながら,眼科領域である眼窩と頭蓋内の画像診断を検証したい。

手術用病理組織検査の実際

著者: 平形明人

ページ範囲:P.43 - P.46

 眼科臨床医は細隙灯顕微鏡検査や眼底検査によって病変を直接観察している。細胞の増殖や欠落,炎症細胞の浸潤,血管の閉塞などを観察すること自体,すでに病理学の肉眼的観察に匹敵している。それにもかかわらず,一般眼科医は眼科手術のなかで悪性疾患を対象とすることが少ないためか,病理組織検査を上手に利用していないようにも思われる。
 病理組織検査は,ホルマリン固定からパラフィン包埋し,切片をヘマトキシリン・エオジン染色して光学顕微鏡で観察するのが基本である。さらに目的に従って特殊染色,免疫組織化学,電子顕微鏡検査などを施行する。最近では免疫学的手法あるいは分子生物学的手法が進歩して,細胞レベルや遺伝子レベルの検索まで行えるようになった。

分子生物学的検査(基礎編)

著者: 伊佐敷靖 ,   大庭紀雄

ページ範囲:P.47 - P.50

 分子生物学的検査の主な標的は,デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid:DNA)またはリボ核酸(ribonucleic acid:RNA)である。これらの核酸は,生命現象の担い手である蛋白を誘導合成する重要な役割を持つ。DNAのうち,蛋白合成に必要な遺伝機能の最小単位を遺伝子(gene,遺伝子DNA)という。遺伝子DNAは蛋白合成の鋳型原本に,RNAは蛋白合成工場の組立ラインに例えることができる(図1)。
 分子生物学的検査の対象として,遺伝病,腫瘍,感染症,炎症などがあげられる。これらのうちの遺伝病に注目すると,最近の十数年間で眼科領域の疾病遺伝子が続々と発見されている。遺伝子検査の臨床応用を加速した大きな要因として,polymerase chain reaction amplification (PCR)法の発見がある。ここでは,遺伝性眼疾患の遺伝子変異検索事例をあげながら,PCR法をベースにした方法を中心に,筆者らの研究室で行っている一連の遺伝子(DNA)検査法を紹介する。

Ⅱ.角膜・前眼部疾患

細隙灯顕微鏡の基礎

著者: 西田幸二

ページ範囲:P.53 - P.57

検査の目的
 細隙灯顕微鏡(スリットランプ)は,眼科疾患を診断するための最も重要で基礎的な眼科検査機器であり,その原理や機種の特徴,使用方法,観察法を上分に理解しておくことが必要である。角膜・結膜などの前眼部から前房,水晶体,前部硝子体まで観察可能であり,前置レンズを用いることにより,隅角,眼底,後部硝子体も詳細に観察することができる。したがって,あらゆる眼科疾患が検査対象となるが,特に,角結膜疾患の診断に重要である。

涙液検査

著者: 小野眞史

ページ範囲:P.58 - P.63

涙液スペキュラー
 1.検査の目的
 涙液は角結膜の表面を覆う非常に少量の体液であり,外界の影響を受けやすく,その性状は常に秒単位で変化している。涙膜の非侵襲的な直接観察による涙液性状の診断を目的とする。

Corneal topographyの検証

著者: 檜垣史郎

ページ範囲:P.66 - P.69

 角膜形状解析機器[オートケラトメータ,pho-tokeratoscope (PKS),videokeratoscope (VKS)]に関して,本書のkey wordである検証という観点から述べたい。
 なお図1,5,7はKeratograph(製造:Oculus社,販売:中央産業貿易株式会社),図3,4,6はORBSCAN(製造:Orbtek, Inc., 販売:キャノン販売株式会社)によるカラーコードマップを表示した。

角膜厚測定

著者: 林仁

ページ範囲:P.71 - P.75

 角膜が視路における透光体として機能するためには,その透明性とともに,安定した立体構築が維持されなければならない。立体構築とは,すなわち角膜前後面の形状と角膜厚とを意味する。角膜厚は角膜内皮細胞によるイオンの能動的輸送(ポンプ機能)と,上皮・内皮のtight junctionをはじめとする物理的バリアー機能によって一定に保たれており,とりわけ内皮細胞機能に大きく左右される。例えば,眼圧上昇や角膜移植後の拒絶反応の際には角膜厚は増大する。
 近年,角膜屈折矯正手術が普及し,注目を集めている。術式はradial keratotomy(RK)やエキシマレーザーを用いるphotorefractive keratectomy(PRK)やlaser in situ keratomileusis(LASIK)などさまざまであるが,術式のいかんにかかわらず,角膜厚測定は術前評価として,特に角膜穿孔を可能な限り回避するために,そして術後の矯正効果の推移を評価する検査として必須のものである。

前眼部フルオロフォトメトリー

著者: 横井則彦

ページ範囲:P.76 - P.77

検査の目的
 フルオロフォトメトリー法とは,フルオレセインをトレーサーとして用い,機能面から眼組織の異常を検出する方法であり,涙液動態,角膜上皮や内皮のバリアー機能,房水循環,血液房水柵,血液網膜柵などの解析に応用されている。本稿では,これらの中で,涙液動態と角膜上皮バリアー機能の検査について述べる。

Corneal microscope

著者: 冨井聡

ページ範囲:P.79 - P.82

 昨今の科学の発達は角膜を細胞レベルで観察する顕微鏡をもたらした。臨床に応用できるこの新しい顕微鏡は,細隙灯顕微鏡による鏡面反射をより高度に利用したスペキュラーマイクロスコープ(以下,スペキュラー)と共焦点系顕微鏡を使用するコンフォーカルマイクロスコープ(以下,コンフォーカル)である。スペキュラーには角膜接触型と非接触型があり,角膜内皮障害や白内障手術,角膜移植術前の角膜内皮用の検査機器として,臨床の場で普及している。一方,臨床に使用されているコンフォーカルは,Tandem scanning con-focal microscopeとConfoScanの2種類がある。今回,このスペキュラーとコンフォーカルという2種類の顕微鏡について,生体角膜組織検査法としての妥当性と,これまで得られた知見について考察してみたい。

角膜断面の生体計測法

著者: 猪原博之

ページ範囲:P.83 - P.85

 角膜前面形状の測定はビデオケラトスコープが一般的な手法として定着しているが,角膜断面形状から後面形状や厚みの分布を含めて,角膜の三次元立体再構築を行う方法として確立されたものはない。ここでは角膜断面の生体計測の手段として,光学的手法のひとつであるScheimpflugカメラ,超音波法のひとつである超音波バイオマイクロスコープの現状について述べる。

ウイルス,クラミジア性眼疾患の病因検査法

著者: 内尾英一

ページ範囲:P.87 - P.90

 外眼部感染症の大部分を占めるウイルスとクラミジア感染症は,しばしば日常臨床で遭遇し,近年,臨床現場でも可能な病因検査法が導入されている。本稿ではアデノウイルス,ヘルペスウイルス,エンテロウイルスおよびクラミジアに対し現在行われている病因検査法について臨床面から検証したい。

細胞診

著者: 稲澤かおり

ページ範囲:P.91 - P.94

目的
 眼科領域の,特に前眼部疾患において,病態を理解し正しく評価するためには,眼表面の観察は不可欠である。眼表面の質的な観察の方法として,細胞診が有用である。細胞診には種々の方法があるが,比較的簡便で少ない侵襲で施行できる代表的な検査方法として,インプレッションサイトロジー(impression cytology)とブラッシュサイトロジー(brush cytology)が挙げられる。各々の検査に長所,短所があり,疾患や検索したい対象によっていずれかを選択することが望ましい(図1)。

角膜変性症の遺伝子診断

著者: 井上幸次

ページ範囲:P.97 - P.100

検査の目的
 角膜変性症の診断は,従来は細隙灯顕微鏡検査による特徴的な所見による臨床的診断と,角膜移植術施行時に得られた角膜移植片を組織学的に検索して,沈着した物質などを検索する病理学的診断の2つがあった。しかし,近年の分子遺伝学の進歩に伴い,角膜変性症の分野でも,その原因遺伝子が明らかにされつつあり,3つめの診断方法として遺伝子学的診断を行うことが可能となった。本稿ではすでに原因遺伝子が判明している疾患について,具体的に遺伝子診断を行う方法について述べる。いまだ原因遺伝子が明らかになっていない膠様滴状角膜変性症や,斑状角膜変性症の原因遺伝子をさぐるノウハウについては,研究として非常に興味深いが,本書の趣旨とはややはずれるので割愛する。
 1997年,Munierら1)は顆粒状角膜変性症,Avellino角膜変性症,Reis-Bucklers角膜変性症,格子状角膜変性症I型の4つの角膜変性症の原因遺伝子が,βig-h3と呼ばれる遺伝子であることを発見し,そのコードする蛋白をkerato-epithe-linと命名した。さらに山本ら2)は格子状角膜変性症3型も,このkerato-epithelinが原因遺伝子となっていること,岡田ら3)はReis-Bucklers角膜変性症がkerato-epithelinの別の部位のpoint mutationでも生じることを報告した。また,Irvineら4)はMeesmann角膜変性症がkeratin3と12の異常で生じることを報告し,西田ら5)がさらにkeratin12の別の部位のpoint mutationでもMeesmann角膜変性症となることを見いだした。表に,現在までに判明している角膜変性症を起こす遺伝子の変異の部位をまとめた。このように,単一の遺伝子のさまざまな場所の変異によって,臨床的には非常に異なる臨床病型を示す疾患が産まれることは驚きに値する。またいずれの疾患も,わずか1個のアミノ酸が置換するだけで,疾患につながっている。

Ⅲ.緑内障

眼圧測定法

著者: 勝島晴美

ページ範囲:P.101 - P.104

 眼圧計の世界にも,自動化あるいは半自動化された機種が急速に普及していて,新旧交代の波が押し寄せている。しかし,シェッツ眼圧計はその精度に問題があるからやむを得ないにしても,スタンダードとされているゴールドマン圧平眼圧計(以下,GAT)を使ったことがない,というようなことが現実に起こっていると聞けば,やはり驚かざるを得ない。眼圧計は,それぞれの特徴と測定精度を知ったうえで使い分けるべきであろう。

隅角検査

著者: 田原昭彦

ページ範囲:P.105 - P.109

検査の目的
 隅角検査(gonioscopy)は,房水の流出路が存在する前房隅角を直接観察する検査法で,緑内障に限らず眼疾患の診療には欠かせない。緑内障では,高眼圧の原因や発症機序の解明,病型分類,治療法の選択や効果判定などを目的に行う。鈍的眼外傷後や各種手術後に隅角の損傷を知る目的で検査することがある。また,ぶどう膜炎などでは,原因の精査,続発緑内障の発症機序の解明を目的として隅角検査を行うことがある。

視野検査

著者: 吉富健志

ページ範囲:P.110 - P.113

 緑内障診断にとっての視野検査の重要性はいまさら言うまでもないが,自動視野計の発達に続いて,さまざまな特徴をもった視野計が登場してきた。これらの視野検査(High-Pass resolution Perimetry, Blue on Yellow Perimetryなど)は,形態覚の閾値や青錐体系の反応を測定することを目的として開発されたものであり,通常の閾値視野測定とは異なる情報が得られるとして注目されている。しかし,これらの特殊な視野計は通常の視野計と比べると蓄積されたデータは少なく,評価も完全に定まっているとはいいがたい。まだ「検証中」の検査であるといえよう。このように網膜の特定の機能を分離して測定しようという試みの他にも,従来の静的自動視野計を改良する研究も行われており,ハンフリーSITAプログラムのように正確な閾値を,より短時間で測定しようという自動視野計のプログラム開発も行われ,患者の負担を軽くする努力が続けられている。また,人間ドックなどのスクリーニングの場で,緑内障患者を効率よく発見するための機器の研究も行われている。このように緑内障の視野計測は診断ばかりでなく,さまざまな角度から検討されている。

乳頭解析,網膜神経線維層厚測定—緑内障の視点から

著者: 久保田敏昭 ,   本田祐恵

ページ範囲:P.114 - P.117

視神経乳頭解析
 1.検査の目的
 視神経乳頭陥凹は立体的なものであるので,三次元的に観察すべきである。網膜と平行に走行してきた神経線維が,視神経乳頭の表面で急に後方にその方向を変える部位を陥凹縁とする。立体眼底カメラや細隙灯顕微鏡と前置レンズによる方法が,乳頭の立体観察には有用である。画像解析装置を用いれば,乳頭パラメーターの計測が可能であり,定量的評価が可能である。
 この項目では画像解析装置の代表的な器具であるHeidelberg retina tomograph(HRT:Heidel-berg Engineering社製)について述べる。

眼循環測定—特に視神経乳頭循環を中心に

著者: 富田剛司

ページ範囲:P.120 - P.123

緑内障における視神経乳頭循環測定の意義
 緑内障患者には心・血管系の障害,糖尿病などの全身疾患の頻度が高く,さらに正常眼圧緑内障では偏頭痛や乳頭部線状出血の頻度が高いことなどが報告されており,緑内障発症に対し全身的,もしくは局所的循環障害要因の関与が古くから指摘されている。このため,緑内障眼における乳頭循環動態を把握することは,その病態を解明する上でも,診療上においても亜要と考えられる。しかしながら,現時点では緑内障眼における乳頭循環動態と病態との関連はほとんど解明されておらず,正常眼においてさえ眼内血流動態に関する知見は未だ乏しい。これは緑内障性視神経障害の本体である視神経乳頭部の血流動態を非侵襲的かつ安全で再現性,精度とも高く測定する確立された技法が未だ存在しないことも一因となっている。現在試みられている各種の計測法はそれぞれ一長短があり,今のところ臨床研究段階以上のものではない。

SLOを用いた前眼部螢光造影

著者: 川崎貴子

ページ範囲:P.125 - P.127

検査の目的
 本検査は,走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscope:SLO)を用い,インドシアニングリーン(ICG)とフルオレセインナトリウム(フルオレセイン)を造影剤に使用して,前眼部の新生血管を検出することを目的としている。過去にも,虹彩および隅角の新生血管を早期に発見するための検査として,フルオレセインを用いた造影検査が行われてきた。フルオレセイン造影は新生血管を鋭敏に検出するが,色素の血管外漏出が早期に生じるため,新生血管の観察を隅角全周にわたり,1回の検査で行うことは困難である。一方,ICGを用いた造影検査では,造影後期に至るまで色素漏出がほとんどないので,血管構築の詳細な観察が可能である。また,撮影にSLOを用いることで,鮮明な画角の広い画像が得られ,ビデオ記録による動的観察も可能である。
 対象疾患としては,血管新生緑内障を高頻度に発症しうる疾患,すなわち眼組織の血液供給不全の状態となる疾患があげられる。代表的なものとしては,網膜中心静脈閉塞症,糖尿病網膜症,内頸動脈閉塞症などである。本検査は,隅角鏡検査で新生血管の存在があるか,存在が考えられる場合に行われ,前眼部新生血管の有無の診断が可能であるとともに,血管新生緑内障の進展を阻止するのに効果的なレーザー治療のガイドとなるものである。

超音波生体顕微鏡(UBM)

著者: 栗本康夫 ,   近藤武久

ページ範囲:P.128 - P.131

 超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscopy:UBM)は,生体眼の主に前眼部をリアルタイムに観察するために開発された装置で1,2),その名にあるように顕微鏡のごとき高解像度をもって,従来観察不可能であった組織の描出が可能となった。特に後房など,虹彩より後ろの状態については,これまで生理的状態における詳細な検査は極めて困難であったし,前房隅角にしても角膜混濁などのために観察ができない場合もしばしば経験されるところであった。しかしUBMでは,このような部位や症例においても高解像度の画像を得ることが可能である。
 UBMの登場は緑内障の臨床においてひとつのbreak throughとなり,緑内障の鑑別診断や病態の解明などに大きな成果を上げつつある。本稿では,まずUBMの原理とUBMが緑内障の臨床にもたらした成果とを概観し,UBMによる前眼部形状の生体計測について検証を行った後,UBMの緑内障臨床応用例を,自検例を中心に実例をあげて解説する。

緑内障の遺伝子診断

著者: 板谷正紀

ページ範囲:P.133 - P.137

 緑内障は,世界で第2位の失明原因の疾患であり,世界規模の疫学調査により,100人に1人の割合で罹患していることが明らかになった。他の眼科疾患に比べ病型が多く複雑で,緑内障診療の初心者を悩ませる原因の1つである。緑内障の病型は発症原因,発症年齢,臨床所見(特に眼圧と隅角)などに基づき分類されてきた。しかし,近年の緑内障原因遺伝子の探索の過程で,例えば慢性原発開放隅角緑内障という1つの病型にも原因遺伝子座が複数あることが明らかとなった。将来,原因遺伝子に基づきより細かに分類されることになりそうである。そして,外来で初心者でも遺伝子変異に基づく確実な診断が可能になる時代がすぐそこに見えてきている。

Ⅳ.ぶどう膜疾患

ヒトリンパ球抗原HLA

著者: 上甲覚 ,   沼賀二郎

ページ範囲:P.139 - P.142

検査の目的
 ヒトの主要組織適合抗原であるhuman leuko-cyte antigens(HLA)は,きわめて遺伝的多型性に富んでおり,免疫応答の根幹を担い,臓器移植・骨髄移植などでの組織適合性に深く関係し,また個人の疾患感受性・抵抗性に重要な役割を果たしている。HLAの遺伝子は第6染色体の短腕上にあり,クラスIとクラスII抗原系に分かれて存在し,クラスIは主にA,B,C,クラスIIはDR,DQ,DPの多重遺伝子で構成され,それぞれの対立遺伝子は多型性を示す。HLAクラスI抗原の構造は,分子量44kDaのH鎖と12kDaのβ2ミクログロブリンが非共有結合した細胞膜抗原である。赤血球,精子を除くほとんど全ての行核細胞上に発現している。HLAクラスII抗原の構造は,分子量33〜35kDaのα鎖と27〜29kDaβ鎖が非共有結合した細胞膜抗原である。B細胞,活性化T細胞,胸腺上皮細胞,ランゲルハンス細胞などの限られた細胞に発現している。
 免疫応答において,T細胞レセプターは,B細胞レセプターと異なり,一般的に遊離の抗原を単独で認識できず,HLA分子と抗原ペプチドが結合した複合体を認識する。近年,特定のHLA分子に結合する抗原ペプチドの構造上の規則性が解明され,特定のHLA分子・抗原ペプチド複合体とT細胞レセプターの相互作用によるT細胞の活性化に関する研究が,自己免疫疾患などで報告されており,治療への応用の研究も急速な進展をみせている。

免疫能

著者: 中村聡

ページ範囲:P.143 - P.147

 ぶどう膜疾患,なかでもぶどう膜炎は免疫応答の異常を基礎とする疾患であるため,診断,病態の把握,治療方針の策定,治療効果の判定などに免疫能の検査は有用であると考えられるが,実際に臨床の場で行われる免疫能の検査は疾患非特異的なものが多く,診断に直接結び付くことは少ないのが現状である。本稿では主に細胞性免疫能の検査法について紹介し,特に細胞表面抗原のフローサイトメトリーによる解析法とリンパ球の幼若化反応の測定について,検査上の注意と行用性を検討する。

アンギオテンシン変換酵素

著者: 安藤一彦

ページ範囲:P.149 - P.152

アンギオテンシン変換酵素(angiotensin con- verting enzyme:ACE)
 1.ACEの作用
 ACEは,血圧調節系の1つ,レニンーアンギオテンシン系の重要な構成要素である。腎臓の傍糸球体細胞から血液中に分泌された活性型レニンは,血液中に存在するアンギオテンシノーゲンに作用して,デカペプチドのアンギオテンシンIを産生する。このアンギオテンシンIは,ACEの作用により,1回の肺循環中に大部分がオクタペプチドのアンギオテンシンIIとなる1)。ACEは,アンギオテンシンIのC末端にある2つのアミノ酸,ヒスチジンとロイシンを加水分解して,血管収縮作用を有するアンギオテンシンIIに変換させる。レニン—アンギオテンシン系の活性物質であるアンギオテンシンIIは全身循環に入り,その強力な昇圧作用を発現する1)。また,ACEは,血管拡張作用のあるブラジキニンを不活化することも知られている2)
 ACEは血管内皮細胞の膜酵素であるが,免疫担当細胞である単球,マクロファージでも産生される。全身性に単球—マクロファージ系の増殖がみられる疾患では,病巣からACEが分泌されて血液中のACE濃度が上昇する。そのため,血清ACE活性は,血管内皮細胞における産生亢進だけでなく,肉芽腫性疾患でも上昇する3)。つまり,サルコイドーシスなどの単球—マクロファージ系の増殖が主体となる炎症性疾患において,血清ACE活性は,全身的な病勢を反映することになる。また,アンギオテンシンIIが,マクロファージの抗原提示能を増強すること,T細胞の化学遊走物質として作用することが報告され,肉芽腫性疾患の病態形成への関与も推測されている4)

一般血液,生化学検査

著者: 高橋義徳

ページ範囲:P.155 - P.158

血算
 血液は血球と血漿に分かれ,血球には赤血球,白血球,血小板がある。血球を調べることで,造血組織や血液に影響を与える全身病変を知ることができる。また体内のいろいろな組織から出てきた病変や物質は血漿に出てくるために,その病変をとらえることができる。血算とは血球数の算定のことであり,赤血球,白血球,血小板の異常の有無を知るために必要な最も基本的な検査である。

ウイルス・原虫・細菌検査

著者: 山内康行 ,   坂井潤一

ページ範囲:P.159 - P.162

 一口に感染性ぶどう膜炎といっても,対象疾患によって検査法および必要となる検体の種類,量が異なる。そこで疾患別に,診断目的にわれわれが実施している検査法を取り上げ,その留意点について主に述べる。
 診断にあたっては問診が大切であるが,とりわけ感染性ぶどう膜炎では,検査をorderする前に詳細な問診をすることが基本となる。例えば犬を飼っている患者さんや生肉を好んで食べる習慣がある人では,トキソカラやトキソプラズマを疑うことができる。梅毒などの性行為感染症は,特に高齢者では見落としがちである。筆者の経験では60歳の女性で(後ろ姿は30代),しつこく聞いて「近所のおじいちゃんとちょっと…‥」と,やっと感染経路が確定した症例もあり,プライバシーに踏み込んだ質問が必要となることもある。

レーザーフレアセルメーターによる炎症の定量化

著者: 加藤聡

ページ範囲:P.163 - P.165

 フレアセルメーターが発売されてから,約10年が過ぎた。その間にフレアセルメーターを使った研究が,臨床応用から基礎的な動物実験に至るまで行われ,眼科雑誌に幾度となく登場してきている。その多くは,今まで主観的,半定量的にしか計測できなかった前房内炎症を定量化し,その結果より,血液房水柵破綻の程度の定量化と結びつけているものである。しかし,報告された中にはフレアセルメーターで測定したフレア値が一人歩きをしてしまい,誤った解釈と思われる例も散見される。フレアセルメーターが測定しているフレア値とは,あくまでも前房内の散乱光強度であり,必ずしも血液房水柵の破綻の程度を表していないことを再確認し,その測定値の解釈を検証したい。

Ⅴ.網膜・硝子体疾患

眼底検査と前置レンズ—1)細隙灯顕微鏡以外の方法による硝子体網膜境界面の観察

著者: 林英之

ページ範囲:P.166 - P.169

なぜ細隙灯顕微鏡以外の方法が必要なのか
 後部硝子体剥離やその他の原因によって生じた網膜硝子体境界面の病的変化により,網膜にさまざまな疾患が生じる。そのうち治療の対象となるのは主に黄斑部疾患であり,特発性網膜上膜,硝子体網膜牽引症候群,特発性黄斑円孔,黄斑浮腫の一部などである。網膜硝子体境界面の変化は,一般にゴールドマン三面鏡,もしくは前置レンズと細隙灯顕微鏡により検査され,その対象は硝子体ゲル,網膜表面,そして網膜内の変化に分けることができる。
 硝子体はほぼ透明な組織なので,細隙光の幅を細くし,斜照明として網膜神経上皮,色素上皮,脈絡膜など,深層からの反射を少なくして観察する方法が多く用いられる。網膜表層の変化は,しわや黄斑部の歪み,あるいは網膜前の白色の膜として観察されやすい。しかし特発性黄斑円孔や一部の黄斑浮腫の症例などに,細隙灯顕微鏡像ではとらえるのが困難な薄く透明な膜が関与していることが硝子体手術の結果から明らかとなっている。そのような微細な変化を細隙光を細くし光学切片として観察する方法があるが,通常の細隙灯では深層からの反射が強く,観察は容易ではない。また,網膜内の変化も深層からの反射と内部散乱のため,詳細な観察は熟練を要する。また細隙光による方法をとるかぎり観察できる画角は狭く,また細隙灯顕微鏡は焦点深度が浅いため,境界面の変化を広範囲にわたってとらえるには,検者の熟練を要する。

眼底検査と前置レンズ—2)レーザー細隙灯顕微鏡

著者: 桐生純一 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.170 - P.172

検査の目的
 眼底後極部における網膜とその硝子体境界面の観察は,黄斑部に起こるさまざまな病態を把握するうえで重要である。とくに最近では黄斑円孔,黄斑浮腫,新生血管黄斑症などの黄斑部への硝子体手術が行われるようになり,後部硝子体と黄斑部網膜の関係を詳細に観察することが要求されつつある。黄斑部疾患の病態の把握には細隙灯顕微鏡による観察が必須であるが,観察に白色光を用いているために,とくにその赤色光成分が網膜色素上皮や脈絡膜からの強い散乱を起こして解像力を低下させ,詳細な観察が困難となる。また細隙光の幅を小さくして光学的切断面の観察を試みても光強度が不十分で難しい。レーザー細隙灯顕微鏡はヘリウムネオンレーザーの特性を応用した,レーザービームによるスリット光による観察系をもち,網膜硝子体境界面や網膜の断層構造の観察と撮影を可能としている。対象は黄斑円孔,黄斑浮腫などの後部硝子体膜に関連した黄斑疾患である。

眼底検査と前置レンズ—3)眼底細隙灯顕微鏡検査と前置レンズの選択

著者: 野田徹

ページ範囲:P.173 - P.176

検査の目的
 眼底観察を細隙灯顕微鏡で行う利点は,詳細な観察,眼底周辺部の観察,細隙光による硝子体・網膜との関係の評価にある。またレーザー治療の多くは細隙灯顕微鏡により行われるため,眼底観察法の正しい理解は治療上も必須であるといえる。

眼底最周辺部の検査法

著者: 田中住美

ページ範囲:P.177 - P.180

 眼底最周辺部の検査法として,有用な情報をもたらすものとして,①強膜圧迫を併用した双眼倒像検眼鏡下眼底検査,②(強膜圧迫子付き) Gold-mann三面鏡を併用した細隙灯顕微鏡検査,③超音波生体顕微鏡検査(ultrasound biomicroscopy)が挙げられる。
 本稿では(1)毛様体皺襞部(毛様体皺襞部裂孔),(2)毛様体扁平部(毛様体扁平部無色素上皮剥離,硝子体基底部前縁裂孔,白色正中線裂孔),(3)鋸状縁近傍網膜の3つの部位の検査について,3つの検査方法の有用性に関して比較検討する。

硝子体観察法

著者: 山本禎子 ,   竹内忍

ページ範囲:P.181 - P.184

 網膜硝子体疾患の病態を把握する上で硝子体の状態を知ることは極めて重要であり,このために種々の検査装置が開発されている。しかし,日常の外来診療では裂孔原性網膜剥離をはじめとして糖尿病網膜症,黄斑円孔と,硝子体観察が要求される症例はおびただしい数であり,各症例ごとに煩雑な準備や操作が必要な検査機器を用いて観察することは不可能に近い。実際,多くの臨床家がルチーンに行っている検査法が細隙灯顕微鏡による観察であり,また,その使用法を熟知すればかなりの情報量が得られるはずである。細隙灯顕微鏡では顕微鏡によって得られる拡大像を直接に観察するので,硝子体中の線維,細胞,色素や網膜,毛様体の正常,異常所見など,他の検査法では観察できない微細な生体組織所見を得ることができる。この点で,細隙灯顕微鏡による硝子体検査法は,現在においてもなお,他の新しい高度な技術を駆使して造られた検査機器に首位の座を譲っていない。ここでは,倒像鏡による眼底,硝子体検査や超音波による観察は他項に譲り,主に細隙灯顕微鏡を用いた硝子体観察法について述べる。

硝子体サンプルの利用法

著者: 阿部俊明

ページ範囲:P.188 - P.190

目的
 手術方法や手術器具の発達,また薬剤の眼内投与などが積極的に行われるようになり,硝子体手術成績は著明に改善してきた。これらは,硝子体の研究が進み,網膜への影響などを詳細に解析できるようになったことにもよる。硝子体の研究は,in vitroの研究とともにin vivoでの解析も当然のことながら重要になり,それらは,眼疾患の病態解明に必要不可欠なものとなる。しかしながら,眼内の硝子体量には限りがあり,また,眼疾患あるいは眼内の状況によっては,さらに採取する量が限られる場合がある。この硝子体サンプルは,重要な情報をもたらしてくれるが,この操作のために,以後の手術操作がやりにくくなったり,合併症を引き起こしては,なんのための硝子体サンプル採取かわからなくなるので,解析に必要な量は安全に採取されなければならない。

網膜断層写真—Heidelberg retina tomograph

著者: 前田利根

ページ範囲:P.192 - P.194

 本装置(図1)はコンフォーカルレーザーを使用し,視神経を含む眼底網膜を三次元的に計測する機器である。光源は波長670nmのダイオードレーザーである。計測時間が短い点,非散瞳でも検査できる点,非接触検査である点,得られたデータを客観的に臨床応用しやすい点で優れている。本器は現在,主に緑内障分野で集中的に活躍している。特にソフトウエアのバージョンアップに伴い,緑内障性乳頭陥凹か否かを判断する判別式が組み込まれ,臨床応用の幅が広がった。一方,網膜・黄斑部の分野では従来計測が困難であった深さ(高さ)の計測とそれに伴う体積の算出から,いくつかの新しい研究が脚光を浴びた1〜7)。今後は臨床面でも本器により網膜病変部体積の経時的変化を捉えたり,またワイアーフレーム像から得られる定性的・客観的網膜表面topogramも,一部網膜疾患では診断をサポートするようになるものと思われる。

網膜厚測定—OCTの解像度と臨床的意義

著者: 萩村徳一

ページ範囲:P.195 - P.198

 光学的干渉断層計(optical coherence tomogra-phy:OCT)は,非侵襲的に眼底の断層像を光学的顕微鏡に近い像で画像化する装置である1)。本装置で,今まで観察することができなかった,生体眼での網膜の内部構造を描出することが可能になった。
 OCT画像は基本的には超音波断層画像に類似する。光源は,波長850nmの近赤外線低干渉ビームで,ビームスプリッターで眼底の観察光と参照光に分けられる。眼底からの反射光と参照光とで干渉現象が起こり,これをコンピュータで空間的,時間的位置関係に換算し,断層像が構築される。解像度は,走査方向で20〜50μm,断層面で10〜20μmである。

視神経乳頭の解析

著者: 内田英哉 ,   山本哲也

ページ範囲:P.200 - P.202

 近年,画像解析装置は眼科領域において,さまざまな眼底疾患の診断またはフォローアップに対して,必要不可欠な機器となりつつある。従来は広角眼底カメラや同時立体眼底カメラを使用し視神経,網膜の記録を行ってきたが,最近ではレーザー走査技法とコンピュータを用いた解析装置が注目されている。単波長のレーザー光を利用し共焦点システムを利用した場合,従来の眼底観察法よりもコントラストの高い画像が得られるだけでなく視神経乳頭,網膜硝子体の立体的な観察がさらに詳細性に行える。
 また解析ソフトを利用することにより,画像解析装置は緑内障における視神経乳頭,網膜・硝子体疾患においても客観的な定量的解析をすすめる上で都合がよい。

螢光眼底検査法の基礎

著者: 小室優一 ,   山下英俊

ページ範囲:P.203 - P.207

検査の目的
 螢光眼底検査は網膜脈絡膜の血行動態,血管や網膜色素上皮などの血液眼柵のバリアー機能を観察するために行う検査である。このために次項で述べるようにフルオレセインナトリウムという螢光色素を静脈内へと注入し,血行性に眼に到達する螢光色素が眼内血管に分布する状態を観察して,眼内血管の形態,機能および血液網膜柵機能に関与する網膜色素上皮のバリアー機能が評価できる。これにより,糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症などの網膜血管病変,老人性黄斑変性症などの脈絡膜血管病変,さらに網膜色素上皮機能の破綻による中心性網膜脈絡膜症,眼内腫瘍などの診断,病態の把握が可能である。

ICG螢光眼底検査法の基礎

著者: 飯田知弘

ページ範囲:P.209 - P.213

 インドシアニングリーン(ICG)螢光眼底造影は,脈絡膜血管造影として1973年に開発された1)。当初は赤外フィルムで記録する方法であり,解像力に乏しかった。本法が臨床的に応用されるようになったのは,1986年に撮影装置にビデオカメラが導人されて,画質が向上してからである2)。さらに最近,デジタルカメラを搭載した眼底カメラや走査レーザー検眼鏡(Scanning laser ophthal-moscope:SLO)を用いることで解像度の高い造影像が得られるようになり,本法はめざましい発展を遂げている3〜6)

Contrast sensitivity

著者: 渥美一成

ページ範囲:P.215 - P.219

 静止視力は,100%コントラスト視標における最小分離域値を示す形態覚機能である。
 一方,コントラスト感度とは,知覚できる物理的な最小コントラスト(明るさ対比)の逆数で平均輝度/輝度弁別域で表される。

視野測定—網膜感度測定

著者: 鈴村弘隆

ページ範囲:P.221 - P.224

検査の目的
 検眼鏡や螢光眼底造影検査,網膜電図などにより疾患の診断が可能である網膜疾患における視野検査の目的は,疾患の発見よりもその病態の把握や経過観察が主眼となる。また,視神経疾患においては,障害の部位や程度を知ることが目的となる。このためには,中心視野の測定だけでは不十分で,視野全体の測定が必要となることもある。

CFF

著者: 松本長太

ページ範囲:P.225 - P.229

 われわれは,光がOn,Offを繰り返す不連続光をみると“ちらつき”として感ずる。このちらつきの頻度を徐々に多くすると,ついには融合して,もはやちらつきは感じられなくなる。この時の頻度をフリッカー融合頻度(critical fusion frequen-cy),略してCFFまたはフリッカー値と呼ぶ。このCFFを測定することにより,視覚の時間的分解能を簡便に評価することができる。臨床的には,固視点のCFFを測定する中心CFF値の測定と,視野の各部位においてCFF値を測定するフリッカー視野とがある。

Color vision

著者: 寺崎浩子

ページ範囲:P.231 - P.234

 色覚検査といえば,先天色盲,色弱を思い浮かべるが,色覚異常は網膜,視神経疾患の際にも多かれ少なかれ伴ってくる。この後天色覚異常を捉えるためには通常,先天異常で用いられる色覚検査表や色相配列検査(パネルD-15など)のほかに,さらに精密な色相配列検査としてFarnsworth Munsell 100-Hue Testや,かなり色覚異常が進行しても異常の型の判定やおおまかな視感度が判定できるLanthony's New Color Testが有用である。しかしながら,これらの検査は中心窩の色覚機能を反映したものであり,もう少し広い範囲に網膜の感度を知りたいものである。
 自動視野計を用いた網膜感度測定は錐体,杆体の総合的な感度を示したものであり,網膜疾患や緑内障,優性遺伝性若年型神経萎縮などに特徴的な,選択的青錐体系の異常だけを捉えることはできない。青錐体系のみの反応を見るためには明るい背景光で杆体を抑制し,緑錐体系,赤錐体系の反応を抑制するために黄色の背景光を点灯して,青色の刺激光により感度を調べる。

暗順応検査

著者: 北勝利 ,   白尾裕

ページ範囲:P.235 - P.238

目的および対象
 1.目的 暗順応検査とは,夜盲すなわち暗所視覚の減弱を検出し,その程度を定量することを主眼とした検査である。例外的に杆体色型色覚のごとく,明所視覚の欠落を証明するためにも施行される。
 暗順応とは明所から暗所へ環境光量が変わる時にみられる光覚閾値の経時的な低下をいい,正常人眼でGoldmann-Weekers 暗順応計(下記)を用いた場合には,入暗後35〜60分程度で光覚閾値は明所におけるそれの約10万分の1に低下する。逆に暗所から明所への変化の際の光覚閾値の上昇を明順応といい,数秒で終わる。暗順応検査とは暗順応の時間経過および最終閾値を,自覚的な応答を指標として測定する検査である。

網膜電図(ERG)

著者: 近藤峰生

ページ範囲:P.239 - P.242

 本稿では,(1)強い白色閃光刺激を用いたERG,(2)錐体系,杆体系ERGの分離記録,(3)局所ERG (特に多局所ERG)の3つのERGについて,その標準的な検査方法を述べつつ記録装置を検証する。

Blue field entoptoscope

著者: 広瀬浩士

ページ範囲:P.244 - P.245

 われわれが日常経験する視覚現象の1つに,内視現象と呼ばれるものがある。例えば,雲ひとつない青空が広がるスキー場で,リフトにゆられて頂上に向かう時など青空をぼんやり眺めていると,眼の前を透き通った虫のようなものがたくさん動いていることを経験したことはないだろうか。
 これは,blue field entopticもしくはfiying cor-puscles phenomenon(以下,FLC)と呼ばれ,430nmの短波長を中心とした小範囲の光学スペクトル領域の青色光を見た時に知覚される内視現象の1つである1)。この現象を知覚させる青色光の明るさは,曇り空を見た時とほぼ同レベルであり,網膜への光照射の最大許容エネルギーよりかなり低い。

黄斑浮腫の捉え方

著者: 堀口正之

ページ範囲:P.249 - P.252

黄斑浮腫の成因
 黄斑浮腫の発生には血液—網膜柵(blood-reti-nal barrier)が関与している。血液—網膜柵には内血—網膜柵(網膜血管間の内皮細胞のtightjunction)と外血液—網膜柵(網膜色素上皮細胞間のtight junction)があり,それぞれの破綻が黄斑浮腫の原因となる。網膜の細胞外spaceは非常に小さく,網膜色素上皮によるactive transportがそれを維持している。血液—網膜柵の破綻により,細胞外spaceに血清蛋白が広がり,結果として細胞外spaceに液の貯留を起こすことになる。この液は黄斑部,特に外網状層と内顆粒層に貯留することが多い。検眼鏡的に明らかなcystを黄斑部に認めることがあり,類嚢胞様黄斑浮腫(CME)と呼ばれる1)(図1)。大きなcystは外網状層にあり,小さなcystは内顆粒層に出現する。なぜ黄斑部に浮腫液が貯まりやすいかは,わかっていない。症例によりCMEを起こす場合とdif-fuseに黄斑浮腫を起こす場合がある。黄斑浮腫の成因と血液—網膜柵の破綻の関係を表に示した。

網膜血流測定

著者: 玉置泰裕

ページ範囲:P.253 - P.255

 糖尿病網膜症,網膜血管閉塞症などの多くの網膜疾患の病態に網膜循環動態の異常が関与していることは,螢光眼底撮影法などにより周知の事実となっている。この網膜循環動態を定量的に解析することが可能となれば,網膜疾患の病態を正確に把握したり,網膜疾患に対する治療の効果を判定したりしていくうえで非常に有用であると考えられる。本稿では,現在開発され用いられている臨床応用が可能な種々の網膜循環測定法について概説する。

網膜変性疾患の遺伝子検査法

著者: 中沢満

ページ範囲:P.257 - P.259

検査の目的
 網膜変性疾患に対する遺伝子検査法を考える場合,対象となる疾患は通常,遺伝性網脈絡膜変性疾患であるとか,最近その背景に遺伝的素因が関係しているといわれる加齢黄斑変性ということになる。最近の分子遺伝学の急速な進歩により,遺伝性網膜変性疾患の原因遺伝子が次々と発見され報告されてきている。しかし現在までに明らかになっている原因遺伝子はまだ全体のごく一部でしかなく,むしろ原因不明の症例のほうが依然として大部分であることはよく理解しておかなければならない。また,ある患者やある家系で問題となっている病気の原因遺伝子が新たに発見されたからといって,直ちに適切な治療法を選択できるわけではないため,遺伝子診断は必ずしも本人の直接の利益になるわけではなく,むしろ病態の解明という研究的側面の強いものといえる。
 したがって,このような疾患をもつ患者に遺伝子検査を行おうとする時に最も注意しなければならない点は,まず第一に「遺伝子診断で異常がなかった」ということは,調べたある特定の遺伝子について異常がなかったという意味であり,すべての遺伝子について異常がないというわけではないことを患者によく説明し納得してもらうことと,第二にこの検査は必ずしも本人の直接の利益にはならず,病態解明という研究のためであり,将来の遺伝子殆療などに代表される新しい治療法の開発のためである点を,検者および被検者双方がよく納得しておく必要がある点である。これらの注意点がなおざりにされたまま「遺伝子検査」という美名のもとに検査が進められると,後で思わぬトラブルに進行してしまう危険性があるので,患者には慎重かつ誠意ある対応が要求される1)

眼科検査法についての私の考え

本当に必要な検査機器とは

著者: 秋山健一

ページ範囲:P.14 - P.14

 私が眼科検査法について雑誌に原稿を書いていたのは今から約20年ほど前のことである。その頃書いていた項目は眼底検査法,細隙灯顕微鏡検査法,螢光眼底造影法などであった。そしてこれらは基本的な検査法であるから,今では雑誌に書かれることはほとんどなくなってしまった。
 そして今,雑誌をにぎわしている検査法といえば,PCR法によるウイルス診断,遺伝子検索によるレーベル病診断,UBMによる前眼部撮影,レーザードップラー法による網膜血流速度の測定,HRTによる乳頭陥凹の立体的計測,網膜厚測定などなど,当時は考えもつかなかったものである。時の流れを感じるとともに,医学の進歩に感心せざるをえない。

高価な検査機器の功罪

著者: 新家眞

ページ範囲:P.23 - P.23

 「眼科検査法について—私の考え」というテーマで小文を寄せてほしい旨の依頼を受けたが,検査法について最近頭をよぎるのは,“私の考え”よりもむしろ“私の恨み?”とでも言うようなのが多い。大変残念なことではある。
 近年のコンピュータやレーザーをはじめとするテクノロジーの進歩により,眼科的な精密な検査法およびそのための機器は飛躍的発展を遂げた。そして次々に新しい検査法とそのためのハイテクノロジーの機器が発売され,そのほとんどが1台,1,000万前後から数千万円と大変高価なものである。清水弘一名誉教授がどこかで,眼科の手術用機器のkgあたりの原価はジェット戦闘機なみと書いておられたと記憶しているが,実にそうであり,国立機関に勤める筆者としては欲しくてもそう簡単には何でも買えず,申請書を毎年空しく書き続ける(大抵当たらない)ことになってしまう。

精度,操作性の良い,患者負担の少ない機器こそ

著者: 澤充

ページ範囲:P.30 - P.31

 検査法は精度以外に操作性および,被検者への負担を考慮に入れる必要がある。良い検査法,装置はこれらの要件を満たしていることがわかる。
 私がフレアセルメーターの開発にあたって常に念頭にあったのはGoldmann細隙灯顕微鏡と石原色覚検査表である。これらの共通点はそれ以前にも同種の装置,検査法があったわけであるが,独創的な発想によってそれまでの検査の欠点を克服した点にある。Goldmann細隙灯顕微鏡以前の細隙灯顕微鏡は,光軸あわせ(芯出し,センタリング)が困難,光源が水平方向にあるため場所をとる,操作性が悪いという問題があった。

人生を変えた双眼倒像鏡

著者: 出田秀尚

ページ範囲:P.42 - P.42

 眼科検査機器は,最近のハイテク技術の発展に伴い急速に進歩し,新しいものが次々と出現し,また古いものは型を変えている。そのような中で双眼倒像検眼鏡は,生まれて以来この50年間,型も変えずに,そのまま有効性を発揮し愛用され続けている。このような機器も珍しい。
 双眼倒像検眼鏡は1940年代の終わり頃,Dr.Charles L.Schepensによって作られた。額帯式で,双眼であるので,手に持った強膜圧迫子で眼球を触れることによって,網膜周辺部を触診することができ,しかも立体的に見ることができる。今まで見ることができなかった網膜最周辺部の病巣が次々と明らかにされ,特に網膜剥離関係の診断に大きく貢献した。

赤外線Fundus Haploscopeとの出会い

著者: 近江栄美子

ページ範囲:P.51 - P.51

 可児一孝教授(滋賀大)が,まだ兵庫医大におられた1979年頃,私のためにFundus Haploscopeを作って下さいましたことが,私にとり,弱視・斜視を深く勉強する手助けになったように思います。
 納入された器械の光源は赤外線ですが,2台の眼底カメラを組み合わせた,目盛りも何もない粗野な,図体の大きなものでありました。私は,それに目盛りを記入し,両眼視検査用のスライドや固視用の視標を作ることに忙しい毎日でした。当時,視覚生理を研究しておられる内外の学者が興味を持ち,何人かが近江眼科まで実験に来て下さったこともうれしいことでした。

超音波検査法

著者: 大島健司

ページ範囲:P.65 - P.65

 最近の画像診断の進歩はまことに目ざましく,CT, MRI,ポジトロンCTなどのきれいに描出された画像を見ると,神経学的所見から病変部位を推定しようと苦労していた頃を思い出して溜め息がでるほどである。
 しかし,眼内の病変や生体計測においては,その精度,簡便性,非傷害性など,どの点からみてもまだ超音波検査が優れている。

検影法とレフラクトメトリーの比較

著者: 大関尚志 ,   木村素子

ページ範囲:P.78 - P.78

 多数の小児に対して,硫酸アトロピン軟膏を1日1回で3日間使用して,調節麻痺下での検影法とレフラクトメトリー(レフ)を比較検討し,一定の傾向を認めた。
 通常の検影法では自然視で検査できる利点があるが,調節の関与と乳頭面上での検影という欠点がある。散瞳—検影法では自然視とは異なるという欠点があるが,調節緩解と黄斑部で検査できる利点もある。

全周隅角鏡の開発と隅角撮影の思い出

著者: 平野潤三

ページ範囲:P.86 - P.86

 緑内障をはじめ前房,虹彩疾患の診療に,隅角検査は不可欠である。眼底検査その他の散瞳前にも私は隅角を見るから,隅角鏡を使わぬ日はない。この際下方だけでなく,常に隅角全周を観察することが重要である。従来の三面鏡は大型で,はめ難く,気泡が入り,不安定で,はずれやすく,全周観察は困難であった。そうした不便を解消するために私は20余年前,全周隅角鏡を開発した(眼臨68:244, 1974)。
 それは①指持部が円筒形で持ちやすく,②有効径8mmと極小で,③底面全周にツバがあり,はめはずしが容易,④62゜ミラー4面をもち,回転を要せず隅角全周が一望できる,⑤ツバの一部を除けば圧迫隅角鏡になる(臨眼31:967, 1977)。そうした点が便利なうえ,太根節直,水野勝義教授のご推賞もあって,内外で急速に普及した。

求められるメーカーと眼科医との連携

著者: 大鳥利文

ページ範囲:P.95 - P.95

 眼科検査機器の功罪についての私の意見は既に述べさせていただいた(日眼会誌101(5):369-370, 1997)が,近年,Goldmann視野計を自分で使いこなせない眼科医が多くなっているのは嘆かわしい限りである。Goldmann視野計による動的視野測定は眼科診療の基本である。
 近年,自動視野計が普及したが,機器の自動化に頼りすぎてデータを読みきれずに使用している眼科医も多いと思われる。自動視野計といえども,検査中は検者が患者に指示や励ましを与えて機器まかせにしないことが肝要である。

眼鏡処方できるかどうか

著者: 柏木豊彦

ページ範囲:P.109 - P.109

 開業してほそぼそとやっていると,自分で矯正視力をはかったり,眼鏡処方をすることがままある。眼鏡市場を,コンタクトレンズなどの市場規模と比較すると,眼鏡はコンタクトレンズの10倍以上の規模となろう。最近はやりはじめた屈折矯正手術の規模と比較すれば1,000倍以上になろうか。
 こんなに規模の大きな市場であるのに,肝心の眼科医の学会などで,眼鏡のことはあまり話題にのぼらない。屈折矯正手術やコンタクトレンズのことは話題になるが,眼鏡のことはもはや眼科医にとってマスターしつくされたことがらであって,議論する余地のないかのような感がある。

美しい映像の眼底写真撮影を求めて

著者: 大西克尚

ページ範囲:P.118 - P.118

 「眼科の機器は手術顕微鏡であれレーザー関係のものであれ,常に他科より10年は早く実用化されている」と学生に話すのを常としているが,眼科の臨床実習に回ってきた学生たちはそれまでに抱いていた眼科のイメージと大いに違うので,一様に驚くようである。
 私が今でもこだわるのは,基本ともいうべき眼底写真と螢光眼底造影写真である。

Get Back!

著者: 大橋裕一

ページ範囲:P.124 - P.124

 この世の中,実にわけのわからない病気が多い。恥ずかしながら,これまで見たこともないような病気の患者に出くわし,はたと困惑することがこの歳になってもよくある。そんな時,診断への手掛かりをわれわれに与えてくれるのが検査である。
 検査により,的確な診断と治療が行えるし,運が良ければ,全く新しい疾患の発見につながることもある。だが,これだけたくさんの検査機器が氾濫するなか,われわれ眼科医ははたしてこれらの機器を適切に運用しているのだろうか?

ERG検査と詐盲

著者: 小口芳久

ページ範囲:P.132 - P.132

 私が医学部の学生時代に,相澤豊三先生という神経内科の教授が「患者を診察する時の心得として,患者が診察室に入ってきて,出て行くまでの行動を注意深く見なさい。私の恩師の西野忠次郎先生は,患者が部屋に入ってくる様子でピタリと神経の病気を診断したものである…」と述べられ,患者を診察する時の心得を強調された。
 私が入局して3年後,後眼部疾患の外来に配属になったある日,身体障害者の1級の患者が身体障害者手帳の更新のため眼科外来を受診した。60歳を過ぎた老人で片眼は戦争中外傷で失明し,他眼もほとんど見えない状態であるという。付き添いの人は誰もおらず白杖をついている。看護婦の介助で椅子に座ったが,一見して盲人らしい。すでに検査した視力の頁をカルテで見ると右光覚なし(無眼球),左光覚弁(+)(矯正不能)と記されていた。患者は座るなり,「自分の眼は戦争中に爆発により右眼は失明し,その時から左眼も見にくくなり,結局右眼は眼球摘出をし,左眼もほとんど見えないので身体障害者手帳をもらって生活保護を受けている。今回は前回診断してもらった医師が転勤でいなくなったので,慶應病院に来た」と,そして「自分はほとんど見えないので身体障害者の1級になるので書類は今日すぐに書いてほしい」と請われた。

Ophthalmic Photography

著者: 金上貞夫

ページ範囲:P.138 - P.138

 19世紀半ばに写真が実用化されたその1年後には,はやくも顕微鏡撮影が行われたという。医学に写真が使われた記録は1852年,Behrendtが整形手術の前後の患者を撮影したものといわれている。1862年に眼底写真が撮影された記録がある。このように写真が医学に貢献してきた歴史は古く,その果たしてきた役割は万人の認めるところである。
 現代において眼科写真は医学写真の中でも特別な領域としてOphthalmic Photographyと呼ばれている。眼底カメラをはじめとしてフォトスリットランプ・スペキュラー・マイクロスコープなど,眼科では専用の撮影機器を使用し,その撮影には相当の熟練を要するものであることがこのような専門職を必要とする所以である。最近ではSLOなど電子機器も加わって,さらにその範囲が広くなっている。

35年間の眼科診療の経験から

著者: 木村肇二郎

ページ範囲:P.148 - P.148

 私が検査において常に心掛けていることを症例を通じて述べてみたいと思います。

器械と人

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.153 - P.153

 臨床では名人芸を発揮しにくくなった。ほとんどを器械が代行してくれるからである。内科では,肺の空洞(カペルネ)だと大きさが3ミリもあれば打診で発見できたという。それが,レントゲンが出現して以来,出番がなくなった。白血球の分画でも,今では専用の器械が自動的にしてくれる。医師の仕事は「データを読むだけ」という感じになってきた。
 眼科でもその傾向が強い。医師の五感に頼る検査法が活躍する機会が減ってきたのである。

手持ち式レチノメーターの効用

著者: 横山実

ページ範囲:P.186 - P.187

 干渉縞視力を測定するレチノメーターは現在かなり普及し汎用されているが,最近手持ち式のハイネ社ラムダ100レチノメーター(HR)が発売され,その軽妙な操作性のゆえに利用者が増えつつあるように見受けられる。1施設内での白内障手術前後におけるHR検査結果の比較検討については,すでにいくつかの報告がなされており,本機が信頼すべき検出能力を保持していることが示されている。それで,今回与えられた機会に,実際にHRを数年間にわたって使用してきた県内の眼科医にアンケートを送って,各施設における効用について検討してみることにした。
 使用されているHRはハロゲン球を光源とし,色フィルターと回折格子を応用した比較的簡単な光路(図)を有するハンディな検査機で,使用に際しては散瞳が前提とされている。網膜視力の検定はSnellen Eに対応する6段階(0.06,0.12,0.32,0.5,0.63,0.8)が用いられている。

“見える”ということは,“見せる”こと

著者: 田中靖彦

ページ範囲:P.191 - P.191

 眼科医には,いろいろな検査所見が数字で呈示されるか,この目で見えないとなかなか納得しない性質がある。「単純」といってしまえばそれまでだが,「であろう」とか「と考えられる」,「と思われる」はどうも隔靴掻痒の感があってすっきりしない,心おちつかない。しかし,そこは医学である。まだまだ簡単に割り切れないところもある。その割り切れないところを「なんとかして割り切れるようにしたい」の願望から,新しい眼科検査機器は生まれてくることになる。
 一方,見えるということは,“見せることができる”ということでもある。すなわち患者さんにも,“みてもらえる”ということである。逆にいえば,結果は明白で隠すことができないのである。このことは,インフォームドコンセントが重要視され,情報開示,カルテの開示などが一般化されつつある今日,眼科はその最先端をきっているといって過言ではない。

目から鱗の眼科検査機器について

著者: 永田誠

ページ範囲:P.199 - P.199

 眼科医になって約半世紀の間に最大の時間と努力を傾注した検査といえば,細隙灯顕微鏡検査である。眼科医になってはじめの5年間は戦前からの細隙灯顕微鏡はあったが,実際には使うことがなかった。検査は専ら集光レンズとルーペによる斜照法で行われた。教室の検査室にはツァイスのコンベルグ細隙灯顕微鏡があったが,新入局員は使うべからずという札がぶら下げてあって,使う気にならなかった。こっそりと仲間で使ってみても,水晶体の前?は見えても後?は見えない。調整も大変だったし,実用的とは感じられなかった。
 Vogtの細隙灯顕微鏡アトラスは図書室にあり,角膜内皮の図もちゃんと書いてあったが,この器械では偉い先生が見てもとても角膜内皮は見えなかったと思う。

高度精密器械の実用化と検証

著者: 林文彦

ページ範囲:P.208 - P.208

 眼球は,感覚器として極めて鋭敏な機能を持っているだけでなく,光学装置として非常に均整のとれた構造を形成している。そのために,視力や視野などの機能検査法,角膜曲率や屈折などの解剖学的構造の検査法のいずれも,他の科におけるさまざまな検査と比べると,はるかに多くの情報を引き出しているように見える。その結果として,眼科医は精密かつ便利な検査法を頼りにするが,一方ではそれに甘えることによって,諸々の検査にはつきものの信頼限界を超えた情報を期待する場合がありそうに思える。
 例えば超音波による眼軸長計測でも,眼内レンズ挿入術後の正視化を求めるため,最近では0.1mm前後のズレさえも問題とする傾向がある。一昔前の開眼手術の時代と比べると,大変せちがらい世の中になったものである。しかし,そのようなIOL予測値の基になる超音波眼軸長検査や,諸々の計算方式に全幅の信頼をおけるものかどうか難しいところである。もちろん,全例が理想的な数値に達するよう努力すべきとしても,誤差の許容範囲についても術者の十分な自覚がほしいところである。

眼科検査の変転と検査点数について

著者: 原田勲

ページ範囲:P.214 - P.214

 1996(平成8)年5月に,日本眼科学会百周年総会が京都で開催された時の最新の器械展示は,まことに壮観であった。しかし,それに劣らず参加者の注目を集めたのは,同時に開催された歴史資料展で,全国から集められた貴重な資料の中に,多くの検査機器もあって,その歴史的な発展を目のあたりにした感動は今も記憶に新しい。それらを見ても,眼科学の進歩とともに検査機器も改良されてきたことがわかるが,とくに,戦後の経済復興とともに,欧米の機器の輸入に始まって,国産品の品質も向上してゆき,さらに健康保険制度の普及によって,医療現場へと拡散していったことは衆知の通りである。とくに近年の急速な進歩は,コンピュータの組み込みや,光学技術の改良や,レーザーの普及などが基礎となっている。しかし一方では,あまりにも急速な進歩によって,最新の機器でないと検査ができないような錯覚にも陥り,従来の手工業的な機器や,それらを扱う技術が忘れられたり,検査の原理が忘れられたりすることも見られた。例えば急速に普及したノンコンタクトトノメータ(NCT)では,それが圧平式眼圧計で,圧搾空気を吹きつける時間を測っていることの誤差に考慮せずに,高コストの機器だから精度も高いと思うようなことである。ちなみに,このNCTは,その普及度の高さのゆえに検査点数が下がった珍しい例である。
 1997(平成9)年の大阪府眼科医会会報136号の『視線』のコーナーで,私は,『板付きレンズが消える?』と題した論説を辞いた。それは,1997年3月で,水尾式(阪大式)板付きレンズの生産が中止されたことをとりあげて,この簡便で合理的な機器が,その利用度の低さのゆえに生産中止になったことへの危惧を呈示した。これに対しては,湖崎 克,楠 研二先生らの共感の寄稿が次号に寄せられた他に,他府県からも,驚いたという反響があった。その時に,私の提起した他の疑問は,屈折や調節の健康保険点数が約20年間も変えられず,検査に要する人件費のことを考えると実質低下したことである。検査点数の下がるようなもので,人手を要することに熱意が薄らぐのは仕方ない点もあるが,人間の自覚的検査が少なくない眼科では,すべてを機械化できにくく,相手の応答に配慮しながら,臨機応変に検査をする部分はどうしても残るであろう。眼科の検査点数は有利であるように言われていたが,検血やCTのように高度に機械化されたものではない人間くさい検査の点数評価は容易なものではない。屈折調節検査のように20年間も改善されないとか,眼底検査のように,内科医が直像鏡でのぞいた時も,網膜剥離の術前検査をした眼科医の点数も,同じく56点などというのは容認できないことである。

マッケイマーク眼圧計

著者: 布田龍佑

ページ範囲:P.220 - P.220

 私が眼科医になりたての頃,眼圧計はまだシェッツ眼圧計の全盛期であった。測定前には眼圧計の可動桿をはずして清掃し,再び組み立てて零点合わせをするといった手のかかる準備が必要だった。さらに仰臥位でしか測定できないため,ベッドにやすんでもらう必要もあり,今から考えると眼圧測定は結構手間がかかる作業であった。もちろん当時すでにゴールドマン圧平眼圧計はあったが,これはいつも細隙灯顕微鏡の引き出しにしまいこまれており,めったに使用することはなかった。入院患者さんの検査の時のみが唯一の使用機会であった。入院時検査では「緑内障チャート」を埋める義務があり,このチャートには視野,眼圧日内変動測定,隅角などと並んで,圧平眼圧値という項目があった。慣れない器械であるゴールドマン圧平眼圧計で測るため,眼圧測定後には角膜には大きな上皮欠損が生じ,しばしば眼痛のクレームがついた。眼圧測定の主流が圧人式から圧平式へと変わっていったのはいつの頃だったろうか。
 当時,ゴールドマン圧平眼圧計を使用する機会は少なかったが,同じ圧平式であるマッケイマーク眼圧計は,とくに小児の眼圧測定に頻用されていた。新人局の私はマッケイマーク眼圧測定係に指名され,その扱いに1昨労した。その頃同年配の先天緑内障の子供たちが4〜5名おり,彼らが受診するたびにお母さんの手を煩わせて,長時間かかって眼圧を測定した。それから20年以上経ち,子供たちもとっくに成人式を迎え,巣立っていった。そのうちの1人,F君の結婚式に先日招待された。F君夫婦の満面の笑顔とお母さんの涙をみたとき,マッケイマーク眼圧計を使用していた当時のことが,鮮明に思い出された。

眼科検査法についての所感

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.230 - P.230

 検査についての思い出や意見を含めてエッセーをということであるが,筆者にはそのような高尚なものを書く才能はないので,日頃思っていることを述べて責を果たしたい。
 思い出といえば,誰でも忘れられないのは苦い悪い思い出であろう。筆者が名大眼科に入局して日も浅い頃,ある他科教授のご夫人が両眼視力低下で受診された。その教授には個人的にお世話になったことがあり,若輩の筆者が予診をとり,教授診を仰ぐことになった。それほど急発した視力障害ではなかったと記憶するが,視力は両眼0.1(n.c.)で,眼圧は正常であった。当時はこれしかなかった河本式倒像検眼鏡で乳頭に異常所見はないように思ったので,まず球後視神経炎を疑い黒板式中心暗点計で20。あたりから20mmの指標を動かし中心暗点を検査したが検出されず,「中心暗点(−)」と記載して患者さんとともに教授診察室に提出した。その結果は,教授から中心暗点の項の丸印が付いたカルテが戻ってきた。これは「中心暗点を再検せよ」ということである。ご夫人を再び検査室に呼び,同様の検査をしてもやはり指標は「全体に見難い」と言われるため,河本式およびU-O (馬詰・太田)中心暗点表でも検査したがやはり出ない。当時はこれだけが中心暗点の検出手段であったので,やむなく教授に報告にいくと,小声で一言「出ないはずがあるか?」とつぶやかれた。こういう教授が当時は多かったのではないかと思うが,筆者の恩師も万事「大学を出た者は自分で勉強せよ」という方針で,手を取って教えられたという記憶はほとんどない。もう一度患者さんにお願いして,今度は黒板の端ぎりぎりの位置から指標を中心に動かしていくと,25°近くで「あ,暗くなりました」という応答があった。予想外に大きい中心暗点であったが,やっと教授の許可が出た次第である。経過観察で,この中心暗点は次第に縮小し,10〜15°に落ち着いたが視力は回復も増悪もなかった。この患者さんは,高名な神経眼科医と神経内科医の診察の結果,診断が多発硬化症と亜急性脊髄視神経症とに分かれて最後まで結論は得られないまま終わってしまった。本当に大きな中心暗点であったか,視力低下のために中心固視ができなかったためかなどと反省したが,単純な検査でも憤重に行わねばならないということを眼科医になって早々に肝に銘じることができ,筆者にとっては誠によい経験であった。

私の眼底検査の歩み

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.243 - P.243

 網膜色素変性症患者の家族から,「あまり眼底検査をやらないほうがよいのでしょう」と言われたことは,再三ではない。光毒性はかなり一般にも広まった知識のようである。
 さて,自分が今まで習ってきた眼底検査法を振り返ってみると,まず学生時代の眼底検査の実習は倒像であり,入局してからの練習は直像鏡と反射鏡と14Dを用いた倒像鏡で始まった。直像はナイツ,倒像用の凹面反射鏡は河本式,光源は暗室灯を使った。当時の剥離手術の時は助手が光源を持った。Bonnoskopeが用いられるようになったのは,しばらく経ってからであった。一時期規模の大きな暗室灯が備え付けられたが,あまり使われなかった。その後Bonnoskopeを経て額帯式の双眼倒像鏡となったが,双眼倒像鏡を使い始めたのは,1972年,マイアミの留学から帰ってきてからである。

検査法の歴史的変遷や原理,目的を考えよう

著者: 三島濟一

ページ範囲:P.246 - P.246

 科学的かつ定量的に検査する方法として,眼科的検査法が発展したのは19世紀後半で,ヘルムホルツによる検眼鏡の発明と生理光学の確立から始まる。また20世紀前半には機械工学の進歩により,検査の原理を性能の良い検査器械に組み立てて利用することができるようになった。しかしこれらの器械は,昔は外から見てもその原理が理解できたし,実際にこれを用いることによって,その性能も理解できるものであったので,検査精度を上げるために多くの努力がなされた。
 最近の器械は非常に良くできており,また多くはコンピュータを用いているので,あまり考えなくても,ちゃんと結果を出してくれるようになった。したがって,検査法の原理をいちいち考える必要がなくなったのではないかと感じている。

ドットカードの誕生

著者: 森實秀子

ページ範囲:P.248 - P.248

 小児眼科が大好きな私にとって,夏休みは患者さんとの出会いの貴重な時であり,長編小説を読むような長い経過を診せていただく,感動の時である。にもかかわらず1987年8月,私どもはスペインへ旅に出た。この旅は,あとでわかったことだが,子育て時代の最後の家族旅行であり,さらに私どもにドットカードを作り出すチャンスを与えた旅であった。
 私どもが帰路についた時,航空会社のover-bookingのため,思いがけずもファーストクラスでオランダ経由という,リッチで長い空の旅を頂いた。ドットカードはこの長い特別席の上で考えついたものだ。隣には当時,眼科学には素人の理工科畑の夫がいた。旅先での諸々の話や家族の話はやがて尽きて,話題はいつのまにか子供の視力評価方法に発展した。当時はまだテラーカードが容易に入手できない事情もあり,3歳以下の子供でもわかる,シンプルで手軽な視力評価方法はないものかという話になった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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