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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科52巻11号

1998年10月発行

文献概要

特集 眼科検査法を検証する Ⅱ.角膜・前眼部疾患

角膜変性症の遺伝子診断

著者: 井上幸次1

所属機関: 1大阪大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.97 - P.100

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検査の目的
 角膜変性症の診断は,従来は細隙灯顕微鏡検査による特徴的な所見による臨床的診断と,角膜移植術施行時に得られた角膜移植片を組織学的に検索して,沈着した物質などを検索する病理学的診断の2つがあった。しかし,近年の分子遺伝学の進歩に伴い,角膜変性症の分野でも,その原因遺伝子が明らかにされつつあり,3つめの診断方法として遺伝子学的診断を行うことが可能となった。本稿ではすでに原因遺伝子が判明している疾患について,具体的に遺伝子診断を行う方法について述べる。いまだ原因遺伝子が明らかになっていない膠様滴状角膜変性症や,斑状角膜変性症の原因遺伝子をさぐるノウハウについては,研究として非常に興味深いが,本書の趣旨とはややはずれるので割愛する。
 1997年,Munierら1)は顆粒状角膜変性症,Avellino角膜変性症,Reis-Bucklers角膜変性症,格子状角膜変性症I型の4つの角膜変性症の原因遺伝子が,βig-h3と呼ばれる遺伝子であることを発見し,そのコードする蛋白をkerato-epithe-linと命名した。さらに山本ら2)は格子状角膜変性症3型も,このkerato-epithelinが原因遺伝子となっていること,岡田ら3)はReis-Bucklers角膜変性症がkerato-epithelinの別の部位のpoint mutationでも生じることを報告した。また,Irvineら4)はMeesmann角膜変性症がkeratin3と12の異常で生じることを報告し,西田ら5)がさらにkeratin12の別の部位のpoint mutationでもMeesmann角膜変性症となることを見いだした。表に,現在までに判明している角膜変性症を起こす遺伝子の変異の部位をまとめた。このように,単一の遺伝子のさまざまな場所の変異によって,臨床的には非常に異なる臨床病型を示す疾患が産まれることは驚きに値する。またいずれの疾患も,わずか1個のアミノ酸が置換するだけで,疾患につながっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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