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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科52巻11号

1998年10月発行

文献概要

特集 眼科検査法を検証する Ⅴ.網膜・硝子体疾患

網膜変性疾患の遺伝子検査法

著者: 中沢満1

所属機関: 1弘前大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.257 - P.259

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検査の目的
 網膜変性疾患に対する遺伝子検査法を考える場合,対象となる疾患は通常,遺伝性網脈絡膜変性疾患であるとか,最近その背景に遺伝的素因が関係しているといわれる加齢黄斑変性ということになる。最近の分子遺伝学の急速な進歩により,遺伝性網膜変性疾患の原因遺伝子が次々と発見され報告されてきている。しかし現在までに明らかになっている原因遺伝子はまだ全体のごく一部でしかなく,むしろ原因不明の症例のほうが依然として大部分であることはよく理解しておかなければならない。また,ある患者やある家系で問題となっている病気の原因遺伝子が新たに発見されたからといって,直ちに適切な治療法を選択できるわけではないため,遺伝子診断は必ずしも本人の直接の利益になるわけではなく,むしろ病態の解明という研究的側面の強いものといえる。
 したがって,このような疾患をもつ患者に遺伝子検査を行おうとする時に最も注意しなければならない点は,まず第一に「遺伝子診断で異常がなかった」ということは,調べたある特定の遺伝子について異常がなかったという意味であり,すべての遺伝子について異常がないというわけではないことを患者によく説明し納得してもらうことと,第二にこの検査は必ずしも本人の直接の利益にはならず,病態解明という研究のためであり,将来の遺伝子殆療などに代表される新しい治療法の開発のためである点を,検者および被検者双方がよく納得しておく必要がある点である。これらの注意点がなおざりにされたまま「遺伝子検査」という美名のもとに検査が進められると,後で思わぬトラブルに進行してしまう危険性があるので,患者には慎重かつ誠意ある対応が要求される1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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