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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科52巻3号

1998年03月発行

雑誌目次

特集 第51回日本臨床眼科学会講演集(1) 学会原著

硝子体手術による視神経乳頭サルコイドーシスの治療

著者: 後藤浩 ,   大下雅世 ,   臼井正彦

ページ範囲:P.245 - P.249

(18-G402-10) ステロイド療法に抵抗する視神経乳頭サルコイドーシスに対して硝子体手術を行い,良好な結果が得られた。症例は29歳のサルコイドーシスの男性で,右眼視神経乳頭上の肉芽腫に対してステロイド薬の局所および全身投与を行ったが全く反応せず,肉芽腫は徐々に拡大していった。滲出性網膜剥離の進行とともに視力も手動弁まで低下したため,硝子体手術を行った。術式はステロイド薬含有灌流液下に硝子体を可及的に切除,液—ガス置換をしつつ,意図的裂孔から網膜下液を排液し,さらに27ゲージ針を用いて乳頭上の肉芽腫内にペタメタゾンを直接注入した。術後,視力は0.6まで改善し,前眼部を除けば炎症の再燃などはみられていない。
 難治な視神経乳頭サルコイドーシスに対して,ステロイドの直接注入療法を併用した硝子体手術は有用と考えられた。

糖尿病網膜症への汎網膜光凝固後に生じた黄斑部の網膜剥離の1例

著者: 橋本浩隆 ,   筑田眞

ページ範囲:P.250 - P.252

(18-P1-23) 糖尿病網膜症への汎網膜光凝固後で,硝子体牽引により黄斑部網膜剥離をきたしたと考えられる1例を経験した。症例は50歳男性。主訴は右眼視力低下。5年前に他院で糖尿病網膜症に対し汎網膜光凝固が施行されている。視力は右0.9。眼底は黄斑部に扁平な網膜剥離を認めた。漿液性剥離を考え内服で経過観察を行ったが改善せず,視力が0.6と低下したため手術を施行した。術中,後部硝子体未剥離と下耳側血管縁に網膜裂孔を確認した。術後1か月で右眼視力は0.9まで改善した。強い網膜光凝固斑に小裂孔を認めたことから,網膜の過剰凝固により脆弱化した網膜に黄斑部からの硝子体牽引が作用し小裂孔が形成され,黄斑部網膜剥離をきたしたと考えた。

先天性ぶどう膜欠損の臨床的検討

著者: 尾関年則 ,   白井正一郎 ,   野崎実穂 ,   池田晃三

ページ範囲:P.253 - P.256

(19-D501-2) 先天性ぶどう膜欠損76例を検討した。定型的欠損は62例で,男性30例,女性32例であり,両眼性28例,片眼性30例,判定不能が4例であった。合併眼異常は小眼球22例26眼,瞳孔膜遺残17例26眼,後部胎生環14例19眼などであり,全身異常は耳介奇形,成長発育遅延,精神発達遅滞各18例,心奇形13例,性腺低形成12例,顔面神経麻痺10例などであった。非定型的欠損は14例あり,男性8例,女性6例,両眼性3例,片眼性11例であった。合併眼異常は小眼球5例8眼,瞳孔膜遺残5例6眼,乳頭周囲ぶどう腫3例5眼などで,全身異常はなかった。先天性ぶどう膜欠損には,神経堤細胞の発生異常が多く合併し,その成立には同細胞の異常が関与していると考える。

ぶどう膜炎に伴う嚢胞様黄斑浮腫に対する硝子体手術の有効性

著者: 福島敦樹 ,   吉田理 ,   小浦裕治 ,   吉田博則 ,   橋田正継 ,   政岡則夫 ,   上野脩幸

ページ範囲:P.259 - P.262

(19-レセ1-8) 嚢胞様黄斑浮腫(CME)を伴うぶどう膜炎の4症例に対して,インフォームド・コンセントを得た後,硝子体手術を行った。4例ともステロイドあるいはシクロスポリンの全身投与に抵抗性を示すか,全身的副作用の問題で継続投与不可能な症例であった。3例ではCMEの著明な改善をみたが,1例では不変であった。視力は全例で改善した。以上の結果から,薬物療法に抵抗するぶどう膜炎のCMEに対して,硝子体手術は一治療手段となりうるものと思われた。

ステロイド大量投与中に急激な片眼の視力低下を生じた原田病の1症例

著者: 小泉範子 ,   多田玲 ,   宮尾洋子 ,   田中康之 ,   池田恒彦 ,   木下茂

ページ範囲:P.263 - P.266

(18-レセ1-31) 両眼に典型的な原田病を発症した40歳女性が,メチルプレドニゾロン200mgを1日量として投与を受けた。6週後に視力が改善した。漿液性網膜剥離が再発したためにステロイドの大量療法が再開された。5週後に両眼とも視力が正常化した。その6週後に左眼の視力が0.3に低下し,プレドニゾロン内服を40mgに増量した。8日後に当科に紹介受診したときの左眼視力は0.08であった。炎症所見はなく,網膜剥離ないし乳頭の発赤はなかった。ステロイドを減量し,アスピリンを投与することで視力は緩慢に回復し,4か月後に左眼視力は0.9に回復した。ステロイド大量投与が視神経ないし網膜の障害の原因となった可能性が推定された。

自己血清に水晶体上皮細胞障害作用がみられたアトピー白内障の2例

著者: 綾木雅彦 ,   ,   ,   馬嶋慶直 ,   馬嶋清如 ,   高坂昌志 ,   東範行

ページ範囲:P.267 - P.270

(19-レセ2-1) アトピー白内障が両眼にある19歳と26歳の患者から採取した血清の水晶体上皮障害効果を検索した。血清を培養液で20倍に希釈してマウス水晶体上皮と3時間培養した後,トリパンブルーで染色した。死滅した上皮細胞の割合は,それぞれ22%と36%であり,33歳の正常者では7%であった。障害因子は大部分が分子量100kDa以上の分画に含まれ,水晶体上皮細胞のホモジネートで中和することで著明に減弱した。血清ヒスタミン濃度は2症例とも高値であった。以上から,ヒスタミンや眼球への鈍的外傷によって血液房水柵が破綻し,抗水晶体上皮細胞自己抗体が前房に侵入して水晶体上皮細胞が障害されたことが白内障の原因である可能性が高いと推定された。

マイトマイシンC併用トラベクレクトミーの長期眼圧下降効果

著者: 八百枝潔 ,   太田亜紀子 ,   原浩昭 ,   福地健郎 ,   白柏基宏 ,   沢口昭一 ,   阿部春樹

ページ範囲:P.273 - P.276

(18-レセ2-3) 原発開放隅角緑内障に対するマイトマイシンC (MMC)併用トラベクレクトミーの眼圧下降効果について,緑内障内眼手術の既往のない19眼(A群)と既往を有する19眼(B群)の間で比較した。術後48か月での眼圧調整率(眼圧≦15mmHg)はA群では無治療で72%,薬物併用で77%,B群では無治療,薬物併用ともに62%で,両群間に有意差はなかった。術後眼圧コントロール良好眼の平均眼圧はA群で7.0〜9.2mmHg,B群で6.8〜10.9mmHgであった。術後合併症は両群間で有意差はなかった。MMC併用トラベクレクトミーは,緑内障内眼手術の既往がある原発開放隅角緑内障でも,有効な眼圧下降効果を示した。

経強膜的網膜剥離手術後の毛様体と前房深度の変化

著者: 釜田恵子 ,   伊野田繁 ,   神原千浦 ,   牧野伸二 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.277 - P.280

(18-D-32) 強膜内陥術を施行した裂孔原性網膜剥離40眼について,術前と術後の毛様体の超音波断層像を超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて経時的に観察し,同時期の前房深度との関係を検討した。術後3日では,毛様体浮腫は40/40眼(100%)に,浅前房化は38/40眼(95%)にあり,毛様体厚と前房深度の間には(r=−0.69,p<0.0001)で負の相関があった。術後1か月には,多くの症例で毛様体浮腫,前房深度とも術前に近い状態まで改善したが,両者の関係には相関がなくなった(r=−0.32,p<0.08)。術後早期にみられる浅前房の主因は毛様体浮腫であるが,術後期にも浅前房が持続する症例では他の要因が関係する可能性がある。

網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の網膜厚解析装置を用いた治療効果判定

著者: 鈴間潔 ,   喜多美穂里 ,   王英泰 ,   山名隆幸 ,   尾崎志郎 ,   高木均 ,   桐生純一 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.281 - P.284

(18-D-33) 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫を網膜厚測定装置を用いて治療効果判定を行つた。アセタゾラミド経口投与,格子状光凝固,高圧酸素療法をそれぞれ10例に行い,治療前後で視力,黄斑部網膜厚を比較検討した。3群ともに,約半数の症例で視力が改善した。アセタゾラミド療法と格子状光凝固の平均黄斑浮腫改善効果はそれぞれ68±19μm (p<0.01),55±14μm (p<0.01)であり,治療前後で黄斑浮腫が有意に減少した。高圧酸素療法では−7.7±6.3μmとほぼ不変であった。黄斑浮腫の治療としてアセタゾラミド療法・格子状光凝固と高圧酸素療法の奏効機序の違いがあることを示す所見である。

超音波カラードプラ検査が有用であった眼窩眼瞼血管腫の症例

著者: 山田利津子 ,   中西実 ,   落合恵蔵 ,   山野辺隆二 ,   真鍋雄一 ,   上野聰樹

ページ範囲:P.285 - P.288

(19-D501-6) 63歳男性が2日前からの左眼瞼周囲の腫脹で受診した。左上眼瞼に15cm×12cm大の黒紫色の腫瘤があった。頭部MRI血管造影で,眼瞼と上眼窩部に顆粒状の陰影が多数あり,炎症を伴う血管腫が疑われた。脳血管造影で,浅側頭動脈前部,中硬膜動脈,眼動脈それぞれから腫瘤部への血液供給があった。超音波パルス法で,同部に動脈の拍動性シグナルが多数あり,カラードプラで乱流が観察された。血管腫眼窩部のacceleration time index (ATI)は網膜中心動脈と眼動脈より高値を示したが,発症から日を経るにつれ著明に低下し,血管構築の改善が考えられた。本症例は,眼窩眼瞼血管腫の破裂であると考えた。

サルコイド性ぶどう膜炎での血清アンジオテンシン変換酵素活性とステロイド薬点眼の関係

著者: 沖波聡 ,   菊地順子 ,   齋藤伊三雄 ,   石郷岡均 ,   鈴間泉 ,   喜多美穂里 ,   種村舞 ,   木花葉子 ,   石田和寛 ,   小林かおり ,   桐生純一 ,   加藤静一郎 ,   岡本好夫 ,   稲田晃一朗 ,   根木昭

ページ範囲:P.289 - P.291

(18-G402-7) 組織診断群のサルコイド性ぶどう膜炎51例について血清アンジオテンシン変換酵素活性の測定結果がステロイド薬点眼によって影響されるかどうかをretrospectiveに検討した。ステロイド薬点眼例と非点眼例で血清アンジオテンシン変換酵素活性上昇例の割合に有意差はなく,ステロイド薬点眼は血清アンジオテンシン変換酵素活性の測定結果に影響しないと考えられた。

老視に対する調節訓練—第6報 5年間の総括

著者: 福與貴秀 ,   山本成径 ,   尾碕憲子 ,   岸恵美子 ,   田中明子 ,   藤井恵子 ,   森戸栄子 ,   星野淳子

ページ範囲:P.295 - P.297

(18-G409-16) 過去5年間に調節訓練を2か月以上継続した40歳台の老視26例を検討した。調節力は2か月後に改善し,トレーニングの継続で2年間良好に維持された。老視の自覚症状も2か月後に改善し,2年間良好に保たれた。また,屈折値は調節訓練前後で変化しなかった。

眼窩内木片異物の1例

著者: 宮平誠司 ,   堀川恭偉

ページ範囲:P.299 - P.302

(18-G409-21) 55歳の男性が木の枝で左眼に受傷し,枝を抜去したが,頭痛,眼瞼下垂,眼球運動障害が出現した。受傷後4日目に受診した。CTで左眼窩内にlow densityの棒状異常陰影があり,木片異物が疑われた。MRIで異物は海綿静脈洞に達していた。後日のhelical CTで当初low densityであった異常陰影は,high densityに変化していた。長さ4cmの木片異物摘出に成功し,眼瞼下垂と眼球運動障害は改善した。木片異物の診断に,CTとMRIが有効であった。

被虐待児症候群にみられた巨大裂孔網膜剥離の1例

著者: 坂谷慶子 ,   伊藤久太朗 ,   井上真知子 ,   高木茂 ,   長田正夫 ,   玉井嗣彦 ,   太田垣綾美 ,   小枝達也

ページ範囲:P.303 - P.307

(17-P1-1) 虐待が原因と考えられる幼児の巨大裂孔網膜剥離の1例を経験した。患児は1歳3か月の男児で,右眼白内障の治療目的に受診した。右眼は全白内障と硝子体出血を伴う巨大裂孔網膜剥離を生じていた。患児は体重増加不良に加えて,10か月時に擦過傷・熱傷跡,多発骨折などの症状が全身にあり,被虐待児症候群の疑いとして入院歴があったが,確定診断には至らず家庭へ復帰していた。眼障害に対して手術を施行し,退院後は両親からの分離をはかった。今後,眼科領域においても虐待の症例の増加が予想される。日常診療に注意を払い,他科との連絡を密にとり,他職種の専門家と連携して診断および治療にあたることが重要である。

内頸動脈狭窄に併発した両眼の網膜動脈閉塞症の1例

著者: 宮村紀毅 ,   大平明弘 ,   上田佳子 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.309 - P.312

(17-P1-12) 脳梗塞と高血圧の既往をもつ70歳の男性が,右眼に網膜中心動脈分枝閉塞症を発症し,3か月後,左眼に網膜中心動脈閉塞症が起こった。螢光眼底造影で左眼網膜中心動脈の造影遅延があり,頭部CTとMRIで小脳梗塞を,頸部MR angiographyで右頸動脈狭窄を,頭部MR angiographyで両側椎骨動脈の狭窄を発見された。本症例は頭頸部の動脈狭窄と脳梗塞があり,網膜動脈に閉塞症を生じやすい素因があって,両側性に病変を起こした可能性がある。当科で両眼性網膜動脈閉塞症はこの1例だけで,網膜動脈閉塞症全体41例の2.4%で,稀である。

脈絡膜新生血管の立体ICG螢光眼底造影所見

著者: 川村昭之 ,   松本容子 ,   矢部浩也 ,   春山美穂 ,   中島正巳 ,   川口笛美 ,   湯沢美都子

ページ範囲:P.313 - P.316

(18-P1-6) 加齢黄斑変性症滲出型29症例30眼に対し平行移動法による立体ICG螢光眼底造影を行い,通常のICG螢光眼底造影(IA)所見と比較した。立体ICG螢光眼底造影では,33個の脈絡膜新生血管(CNM)が検出された。33個のうち30個のCNMは,脈絡膜血管よりも網膜側に造影された。また,通常のIAでは検出できなかった5眼において,立体ICG螢光眼底造影ではCNMが検出された。栄養血管は通常のIAで33個中13個(39%),立体ICG螢光眼底造影を併用すると33個中25個(76%)で検出できた。加齢黄斑変性症滲出型の脈絡膜新生血管の検出に立体ICG螢光眼底造影は有用である。

弁状裂孔網膜剥離に対する一次的硝子体手術の成績

著者: 田中伸茂 ,   白尾裕 ,   西村彰 ,   輪島良平 ,   河崎一夫

ページ範囲:P.317 - P.320

(18-P1-20) 過去29か月の間に,弁状裂孔網膜剥離111例111眼に手術を行った。初回手術は,硝子体手術32眼,強膜内陥術79眼である。初回復位率は,それぞれ97%と89%であり,最終的には全例が復位した。主な合併症は,硝子体手術では術中の医原性裂孔形成と術後の白内障の進行であり,強膜内陥術では黄斑前膜であった。硝子体混濁が強い例,裂孔が渦静脈またはそれよりも後方にある例では,初回手術として硝子体手術が適当であると結論される。

中心窩下脈絡膜血管新生に対する手術成績

著者: 木村英也 ,   万代道子 ,   高橋政代 ,   廣芝直子 ,   宮本秀樹 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.321 - P.323

(18-P1-25) 中心窩下脈絡膜新生血管の摘出術を行つた16例の視力経過を検討した。対象は術後6か月以上経過を観察できた17眼で,加齢黄斑変性5眼,網膜色素線条症5眼,高度近視3眼,特発性4眼である。17眼10眼(59%)に2段階以上の視力改善が得られ,最終視力0.1以上が9眼(53%)であつた。術後視力と術前視力の間には有意な相関があった。加齢黄斑変性の視力転帰は他の疾患よりも不良であった。2眼に再発があった。

原因不明の硝子体出血に対する硝子体手術

著者: 山田浩喜 ,   大庭啓介 ,   北岡隆 ,   大平明弘 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.325 - P.328

(18-P1-43) 原因が不明な硝子体出血に対して硝子体手術を行った15眼を検討した。術後に判明した原因疾患は,網膜静脈閉塞症10眼,裂孔原性網膜剥離2眼,老人性黄斑変性症1眼,網膜細動脈瘤1眼,ぶどう膜炎1眼であった。網膜剥離2眼では手術後に増殖性硝子体網膜症が進行して剥離が再発し,硝子体手術を追加して復位が得られたが,視力転帰は不良であった。網膜静脈閉塞症眼の視力転帰は比較的良好であり,特に網膜静脈分枝閉塞症眼では手術時期が早いほど一般に良い視力が得られた。

収縮した残存水晶体嚢に眼内レンズが完全に包まれた2症例

著者: 渡辺牧夫 ,   松本浩子 ,   大崎恵 ,   上野脩幸

ページ範囲:P.329 - P.332

(18-P2-1) 白内障術後に,著明に収縮した水晶体嚢に眼内レンズ(intraocular lens:IOL)が完全に包まれた2症例を経験した。症例1では,CCC (continuous curvilinear capsulorhexis)が6mmで90°の毛様体小帯の断裂を認め,術後2年で残存水晶体嚢が著明に収縮し,IOLが嚢に完全に包まれた(以下,前嚢の完全収縮と呼ぶ)。症例2では,術前から180°の毛様体小帯の断裂を認め,術中CCCが4mmで術後わずか2週間で前嚢の完全収縮を認めた。2症例とも,強烈な嚢の収縮にもかかわらず,PMMA製1ピースレンズの光学面は平行性を維持しており,YAGレーザーによる前嚢・後嚢切開術により良好な視力を得ることができた。

眼瞼アミロイドーシスの1例

著者: 浜野浩司 ,   徐魁煒 ,   櫻木章三 ,   増田友之

ページ範囲:P.333 - P.336

(18-P2-8) 82歳の男性が,右上眼瞼の腫瘤による開瞼不能を主訴として受診した。右上眼瞼に連続した無痛性の境界明瞭な腫瘤を認め,CTスキャンでは,high densityとlow densityの部位からなる腫瘤陰影が認められた。摘出標本の病理検索では,エオジン染色性の無構造物質の沈着物がみられた。コンゴーレッド染色が陽性で,緑色偏光を持ち,過マンガン酸処理後でもコンゴーレッドに対する染色性は失われておらず,沈着物質は非AA型アミロイドと診断された。全身検査の結果,他部位にはアミロイドの沈着は認められず,眼瞼に限局したアミロイドーシスと診断された。

高齢者に発症した脈絡膜骨腫の1例

著者: 市川琴子 ,   山田潔

ページ範囲:P.337 - P.340

(17-P2-2) 64歳男性の片眼に,軽度のぶどう膜炎と脈絡膜骨腫と思われる後極部病変が生じた。ぶどう膜炎の病因は経気管支肺生検を含む全身検索にもかかわらず,確定できなかった。脈絡膜骨腫は初診時から5×5乳頭径と比較的大きかったため,ぶどう膜炎との関連は明らかではないが,3年半の経過中にもまだ拡大傾向があり,網脈絡膜萎縮巣がないことから,発症機転として炎症に続発した後天性の腫瘍であると推定された。

Candida albicansによる両眼性角膜真菌症の非定型例

著者: 松本光希 ,   安東えい子 ,   根木昭

ページ範囲:P.341 - P.345

(18-P2-37) 非定型的な所見を呈した両眼性のCandida albicansによる角膜真菌症の1例を報告した。症例は76歳女性で,両眼角膜の比較的大きな上皮欠損部に多数の白色隆起性病変がみられたが,毛様充血や細胞浸潤などの炎症反応はみられなかった。角膜ジストロフィなどの非感染性疾患が考えられたが,角膜擦過標本の組織診にて真菌要素が認められ,培養にてC.albicansが同定された。フルコナゾールの点眼・内服などの治療により,右眼は癒着性白斑,左眼はパンヌスを伴った角膜白斑の状態で治癒した。本例はベタメタゾン点眼が使用されていたため,炎症反応を欠く非定型的な所見を呈したものと思われた。

眉毛部静脈瘤の1例

著者: 野村昌弘 ,   中野間旬子 ,   宇津木龍一 ,   村田晃一郎

ページ範囲:P.347 - P.349

(18-P2-10) 体位によって出現する眉毛部の静脈瘤を経験した。症例は35歳の女性で,数年前から顔をうつむきにしていると左眉毛部に腫瘤が出現した。眉毛部は通常は平坦であるが,うつむき姿勢にて約10秒で左眉毛部耳側に約1×2cmの弾性軟の腫瘤が出現した。正面を向くと徐々に小さくなり、約1分で消失した。腹臥位のMRIで,眉毛部にT2強調像でhigh densityの腫瘤が認められ,この部分が耳側において静脈となることが確認できた。これにより,上眼瞼静脈の静脈瘤と診断した。美容的理由から観血的治療を行い,良好な結果を得た。

上部角膜上皮弓状病変を呈したドライアイの症例

著者: 田辺由紀夫

ページ範囲:P.350 - P.352

(18-P2-27) 上部角膜上皮弓状病変を呈した症例を報告した。症例は18歳の女性で,初めてのソフトコンタクトレンズを約15か月の間,蛋白除去をせずに1日約16時間装用し,定期検査も受けていなかった。両眼眼痛を主訴に当院を受診し,上記の病変を認めた。綿糸法にて涙液量を測定したところ8mmと低値で,「ドライアイの疑い」例に相当した。非含水性レンズを処方し,人工涙液の併用にて良好な経過を得ている。本病変はコンタクトレンズと角膜との磯械的摩擦により生じると考えられている。本症例ではドライアイであることが,本病変の発症に影響を与えたと考えた。

棒状異物による下外側結膜嚢打撲から発症した眼窩先端症候群の1例

著者: 中野直樹 ,   古作和寛 ,   森隆三郎 ,   石川弘

ページ範囲:P.353 - P.355

(17-P2-33) 症例は8歳女児で,前かがみになつたとき,玄関の植木の支柱で右眼を受傷し,右眼の視力低下と眼瞼下垂と眼球運動障害が生じた。プレドニゾロンの投与により回復した。受傷状況やCTのガス像から,下外側球結膜から眼窩内に支柱の先端が刺入し,炎症が深部に波及し眼窩先端症候群を発症したものと考察した。

アミオダロン角膜症1例のコントラスト感度

著者: 大川武幸 ,   米田武史 ,   星太 ,   山本浩一郎 ,   河井信一郎 ,   鈴木恒子 ,   河井克仁

ページ範囲:P.357 - P.360

(18-P2-45) 心室性頻拍に対してアミオダロン投与を受け,アミオダロン角膜症により羞明を訴えた1症例を経験し,その臨床像と羞明によるコントラスト感度を検討した。角膜症はOrlandoの分類でGrade IVであった。矯正視力は両眼ともに1.2で,水晶体,硝子体,眼底に異常はなかった。瞳孔領の色素沈着は左眼に強く,コントラスト感度試験では,左眼の低下と両眼の夜間視の中心グレア負荷での低下が認められた。

幼児にみられたFisher症候群の1例

著者: 井庭香織 ,   舩田雅之 ,   飴谷有紀子 ,   馬場高志 ,   玉井嗣彦 ,   田中良直 ,   近藤清彦

ページ範囲:P.361 - P.363

(17-P3-4) 2歳女児で,失調性歩行を初発症状とし,全方向の眼球運動障害,両側の眼瞼下垂,深部腱反射消失を認め,Fisher症候群と診断された1例を経験した。プレドニゾロンの経口投与にて運動失調,眼瞼下垂,外眼筋麻痺は2か月以内に順に回復した。以後経過良好であるが,深部腱反射は発症後1年を経過した時点でも出現していない。3歳未満のFisher症候群の報告例は少ないが,眼症状が先行し眼科を初診する可能性もあることから,幼少児の眼瞼下垂,眼筋麻痺をみた場合,本症候群も鑑別診断の1つとして考慮し,全身検索や小児科紹介の必要があると思われた。

屈折手術施行眼における眼圧の過小評価

著者: 増田あこ ,   清水公也 ,   庄司信行 ,   橋本行弘

ページ範囲:P.365 - P.368

(18-P3-6) Minimally invasive radial keratotomy(mini-RK)施行後,ステロイドが点眼投与された176名310眼でのステロイド反応性眼圧上昇の頻度および時期を検討した。結果はステロイド反応強陽性23眼7.4%,中等度陽性52眼16.8%で,約85%の症例で術後2週目から1か月の間に眼圧上昇をみた。したがってmini-RK術後にステロイド点眼を併用した場合,早期からの眼圧測定が必須と考えられた。さらに,今回の結果を近視眼でのステロイドによる眼圧上昇についての報告と比較したところ,有意に低かった。このことからmini-RK術後眼では眼圧が過小評価される可能性があり,他の屈折矯正手術と同様,眼圧評価は慎重に行う必要があると考えられた。

慢性閉塞隅角緑内障に対する水晶体摘出の影響

著者: 筋野哲也 ,   上野聰樹 ,   青山裕美子 ,   井出尚史 ,   緒方裕治 ,   宮崎正人 ,   落合恵蔵 ,   吉沢利一 ,   王英泰

ページ範囲:P.369 - P.372

(18-P3-8) 超音波吸引術と眼内レンズ挿入術を行った55症例60眼を検討した。全例に慢性閉塞隅角緑内障があった。年齢は平均67.4±4.9歳であつた。術後の眼圧には,術前の眼圧と前房深度との影響が大きかった。術前にPAS indexが75%以下または前房深度2.00mmの27眼中26眼で,全身的薬物投与なしで20mmHg以下の眼圧コントロールが得られた。上記の条件を満たす慢性閉塞隅角緑内障の白内障に対しては,超音波吸引術と眼内レンズ挿入術が第一選択になると結論される。

汎用ソフトウェアを用いた医療画像ファイル転送とテレビ電話による遠隔地医療支援

著者: 井出尚史 ,   伊東靖人 ,   林陽子 ,   緒方裕治 ,   上野聰樹

ページ範囲:P.373 - P.376

(17-P3-25) 汎用通信ソフトウェアと既存のパーソナルコンピュータ(PC)2台を用いて医療画像ファイル転送システムを構築し,病診連携への応用性について検討した。PCをモデムまたはターミナルアダプタを介して,①アナログ内線電話回線,②アナログ一般電話回線,③デジタル一般電話回線で接続し,標準化画像ファイル(163KB)の転送時間を測定した。その結果ファイル転送時間はアナログ回線で約1分,デジタル回線ではやや短縮された。付属するテレビ電話機能の描画速度はコマ送り的なものであったが,画質は白内障手術後前眼部所見を容易に視認できた。このシステムはコストパフォーマンスに優れ,応用範囲も広く,小規模のデータ交換を行う際にはまず試みてよい方法である。

連載 今月の話題

画像ファイリングシステムを利用した眼科診療

著者: 安藤伸朗

ページ範囲:P.233 - P.237

 眼科診療では画像情報が重要で,診断と治療のあらゆる場面で前眼部所見・眼底所見・螢光眼底所見・手術所見などが必要となり,しかもより鮮明な画質が要求される。情報量(写真の枚数)が多くなれば管理・保管に膨大な労力と場所を費やすこととなる。これらの問題を解決するため,院内ネットワークを利用したデジタル画像ファイリングシステムを採用した。劣化することのない良質な画像を利用でき,診察室にいながら眼底所見・螢光眼底所見・前眼部所見・手術所見を閲覧でき,フィルムレス・台帳なしの画像管理を可能にした。本システムは,臨床研究・検討会ばかりでなく,患者とのインフォームド・コンセントに役立つ新しい診療スタイルである。

眼の組織・病理アトラス・137

未熟児網膜症

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.238 - P.239

 未熟児網膜症retinopathy of prematurity (ROP)は,未熟児網膜の血管の未熟性を基盤として,酸素の影響で発症する血管新生性疾患である。1942年にTerryが未熟児の水晶体後方に膜状物を形成する水晶体後部線維増殖症retrolental fibroplasia(RLF)として報告した。その後,RLFは本症の重症瘢痕期病変であることが明らかにされ,1982年に未熟児網膜症が本症の正式名称に決められた。
 未熟児網膜症は,酸素投与によって網膜血管の収縮,閉塞が起こる血管閉塞期と,それに続く血管増殖期(活動期),および瘢痕期に分けられる。生下時体重が1,500g未満の極小未熟児,および1,000g未満の超未熟児では,酸素を投与しなくても網膜症が発症しやすい。

眼科手術のテクニック・100

トラベクロトミー—トラベクロトームの挿入と回転(その2)

著者: 寺内博夫

ページ範囲:P.242 - P.243

 前回の挿入に続き,今回はトラベクロトーム(以下,ロトーム)の回転について解説する。回転に際しては,隅角の局所解剖をよく頭に入れて角膜後面と虹彩表面をロトームの先端で損傷しないように注意する。今回も右利きの筆者が手術しやすい手順で説明するが,左右どちらのロトームから回転しても構わない。

他科との連携 送った患者・送られた患者・3

アスペルギルスが原因であった鼻性視神経症

著者: 湯口幹典 ,   宮本浩行

ページ範囲:P.382 - P.383

 耳鼻科疾患が原因で視機能障害をきたすことはよく知られているが,眼科医も耳鼻科疾患についての知識が必要であり,治療に関しては両科の連携が大切となる。鼻性視神経症の多くは片眼性の球後視神経症の形で発症し,副鼻腔炎が軽度でも視神経に連続的に波及することがあり注意を要する。副鼻腔真菌症が原因であった鼻性視神経症の1例を供覧する。

今月の表紙

瞳孔膜遺残

著者: 小浜真司 ,   清水弘一 ,   「臨床眼科」編集室

ページ範囲:P.257 - P.257

第15回医学写真展から〔1〕
 日本臨床眼科学会の折,日本眼科写真協会が主催する「医学写真展」が開催されています。1997年10月の第15回医学写真展の正確かつ美麗な写真の中から本誌編集委員会が2点を選び,表紙を飾っていただくことにしました。

眼科の控室

誤診

ページ範囲:P.378 - P.378

 病気の診断では,「これこれである」というよりも,「そうではない」と断定するほうが格段に難しいものです。
 今でも記憶しているのが,ベーチェット病で前房蓄膿の第1回目の発作の3週後に受診した患者さんです。前房も硝子体も眼底もほとんど正常なので,「これはなんでもない」と言ったところ,しばらくして次の発作が起こってしまいました。現在なら螢光眼底造影で網膜の血管透過性亢進があるはずなのですが,見事に自信を失いました。

臨床報告

三次元CT画像による眼窩内腫瘍手術支援

著者: 今野伸介 ,   大塚賢二 ,   橋本雅人 ,   中川喬 ,   坂田元道

ページ範囲:P.393 - P.397

 眼窩内腫瘍の2症例につき、三次元CT画像解析により術前の手術手技の検討を行い,全摘手術を行った。術前のシュミレーションで,1例は下方に拡大した側方眼窩切開,他の1例は下方に延長した側方眼窩切開が適当であると判断して腫瘍を摘出した。病理診断は2例とも海綿状血管腫であった。2例とも腫瘍は一塊として摘出でき,術後合併症はなく,経過は順調であった。眼窩内腫瘍摘出を計画する際に,術前の三次元CT画像が有用であった事例である。

新型両眼開放型手持ち自動屈折計

著者: 平井宏明 ,   西信元嗣 ,   岩本昌克

ページ範囲:P.398 - P.400

 乳幼児や身体障害者を対象とし,学校検診での屈折スクリーニングにも使えるように,両眼開放下で測定できる手持ち自動屈折計(GR-M3)を4年前に作製した。処理の高速化と小型計量化を目的として,これを改良した自動屈折計(FR5000)を開発した。この本体重量は5.4kgで小型軽量化され,移動が容易になった。1回の測定時閻は0.49秒,連続9回の測定時間は5秒以下であり,以前の機種の1/3に短縮された。この結果,測定時に体動や眼球運動がある症例の測定が容易になった。

未熟児網膜症の初回検査時期の意義

著者: 秋澤尉子 ,   黄世俊 ,   百野伊恵 ,   土信田久美子 ,   菅本理絵

ページ範囲:P.401 - P.405

 未熟児網膜症の初回検査の時期を検討するため,過去7年間に診察した出生体重1,500g未満の未熟児233名のうち,網膜症のある129名を検索した。生後約3週の初回検査で,49名(38%)に網膜症があった。網膜症のある群は,ない群よりも,出生時の在胎週数と出生体重が有意に大きく,必要治療率が低かった。治療時期には両群間に差がなく,修正在胎週の34から35週であった。初回検査から治療までの期間は,網膜症のある群は11日で,ない群の35日よりも有意に短かった。出生在胎週数が大きい児は,生後3週後に網膜症がすでに発症していることが多いので,生後2週に初回検査を行うことが望ましいと結論される。

後部強膜炎の1例

著者: 前田祥恵 ,   大黒浩 ,   盧勇 ,   静川紀子 ,   鈴木純一 ,   中川喬 ,   木井利明

ページ範囲:P.407 - P.410

 44歳女性が1か月前からの左眼視力低下で当科を紹介された。初診時の左眼視力は矯正0.4であり,左眼の上強膜血管が拡張していた。眼底には黄斑の下耳側に限局性の漿液性網膜剥離があり,螢光眼底造影で斑状の色素漏出と網膜下の貯留があった。CT検査で眼球後面の強膜と脈絡膜が肥厚し,MRlでもこれに相当する所見があった。左眼の後部強膜炎と診断した。ステロイド薬の全身投与で7日後に網膜剥離が減少し,19日目に視力が1.0に回復し,以後1年間安定した状態にある。炎症の場が脈絡膜から網膜に波及したことが網膜剥離の原因であると解釈された。

エキシマレーザーphotorefractive keratectomyの長期臨床経過

著者: 北澤世志博 ,   前川悦子 ,   佐々木秀次 ,   所敬 ,   伊藤清治

ページ範囲:P.411 - P.415

 強度近視23例35眼に対してエキシマレーザーによる光学的角膜切除photorefractive keratectomyを行い,屈折度を術後2年にわたVて追跡した。術前の屈折度は,−8.0Dから−18.75DであVた。矯正量が6D以下の21眼では,屈折が術後6か月以降ほぼ安定しており,矯正量が6Dを越える14眼では緩やかに近視に向かう傾向が続いた。術後6か月以降に6眼で屈折が20%以上変動した。そのうち2眼は眼圧上昇のために副腎皮質ステロイド薬の点眼を中止した症例であり,他の4眼は9D以上の矯正を行った症例であつた。

後頭葉と後頭側頭葉障害患者の運動認知

著者: 中村靖 ,   大塚賢二

ページ範囲:P.416 - P.420

 片側の後頭葉に梗塞または出血のある31歳と59歳の男性と,片側の後頭側頭葉に梗塞のある55歳男性の,モーションディスクリミネーションタスク(MDT)を検索した。目的は,MDTが,第一次視覚野を介して視運動覚の中枢であるmiddle temporal area (MT野)に至る経路と,上丘から第一次視覚野を介さずにMT野に至る経路のどちらをよく反映するかを知ることにある。3症例とも半盲があり,視力と色覚は正常であった。MDTにはランダムドットパターンを用いた。一次視覚野近傍(後頭葉)の障害者ではMDTは正常であり,MT野近傍(後頭側頭葉)の障害者ではMDTの正答率が著しく低かった。この所見は,MDTが外側膝状体と第一次視覚野を経由せずに,視神経から上丘を経由してMT野に至る経路について主に評価していると解釈された。

老視に対する調節訓練—(第5報)2年後の調節力

著者: 福與貴秀 ,   山本成径 ,   尾碕憲子 ,   岸恵美子 ,   田中明子 ,   藤井恵子 ,   森戸栄子 ,   星野淳子

ページ範囲:P.421 - P.423

 調節訓練を4名の老視者に対して行った。訓練開始時の年齢は42歳から48歳であった。屈折と調節幅を訓練開始から2か月と2年後に検索した。屈折は全期間を通じて変化がなかった。調節幅の平均値は2か月後に増加し,2年後も維持されていた。

真性小眼球症に発生した閉塞隅角緑内障

著者: 完山英子 ,   竹内正光 ,   山岸和矢 ,   岡見豊一

ページ範囲:P.425 - P.428

 71歳,女性の真性小眼球症に両眼の閉塞隅角緑内障が発症した。左眼には超音波生体顕微鏡検査(UBM)を行った。前房は非常に浅く,隅角は著しい狭隅角と一部に閉塞がみられ,毛様体扁平部は著しく腫脹していた。本症例の閉塞隅角緑内障の発生機序として,水晶体の眼内における容積率が高いという解剖学的特徴に加えて,強膜が厚く硬いことから,脈絡膜および毛様体にうっ血と浮腫を生じたため,虹彩根部の前方への圧迫,水晶体の前方移動と膨隆による瞳孔ブロックの発生が考えられた。右眼への緑内障,白内障手術後に駆逐性出血が生じた。真性小眼球症で閉塞隅角緑内障を発生しやすい機序をUBMで解明することができた。

網膜無灌流域が消失したインターフェロン網膜症の1例

著者: 荒川明 ,   高塚忠宏

ページ範囲:P.429 - P.433

 63歳の男性が,慢性C型肝炎に対してインターフェロン(IFN)の全身投与を受けた。治療開始後8週目に両眼の眼底に軟性白斑が多発していることが発見され,IFN網膜症と診断されたが,視力は正常であった。その2日後に左右眼とも視力が0.2に低下し,白斑がさらに増加していた。螢光眼底造影で白斑に相当する部位に網膜毛細血管の無灌流域が同定された。さらに2日後に,予定通りにIFN投与が終了した。さらに10週後の検索で,網膜白斑は消失し,無灌流域は再疎通していた。網膜症の発症機序として,血管攣縮と免疫複合体の血管壁への沈着が推定された。

カラー臨床報告

正常人の光学的干渉断層計OCT像の所見と解釈

著者: 萩村徳一 ,   須藤勝也 ,   岸章治

ページ範囲:P.385 - P.391

 光学的干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は可眼底を近赤外線低干渉ビームで走査することで,網膜の断層像を非侵襲的に得る装置である。筆者らはOCTを用いて,正常者8眼,豹紋眼底1眼,原田病1眼を検索した。正常眼の像は,神経線維層,網状層,色素上皮層は高信号で,顆粒層,視神経節細胞層は低信号で表現された。網膜血管は,深層にある網膜外層から色素上皮にかけて暗い低信号帯として表現された。網膜厚測定モードによる中心窩の厚さの精度は,変動係数が2〜9%であった。被験者の顔が左右に向いていると,網膜最外層の低信号帯が,中心窩の耳側と鼻側で異なる厚さで描出された。これらの特性は,OCTの読影に際して留意する必要がある。

第51回日本臨床眼科学会専門別研究会1997.10.17東京

地域予防眼科研究会

著者: 赤松恒彦

ページ範囲:P.434 - P.435

 今回はテーマを持たず自由演題にて募集された。
 第1席「色覚に関する名古屋市教育委員会の対応及び事後措置」について高柳泰世らが発表した。色覚異常を検出した後,学校および家庭では,その児童がどのような色の見え方をしているのか,そのことを知ることによって教育上,生活上の指導に役立てたいとの要望があり,それに応える目的で,色の間違いやすい配列の識別票であるCMT検査票によって実際の間違いやすい色について指導したとの報告であった。質問の中で,このCMT検査票を色覚異常の検出票と間違えている質問があった。また色覚異常について色覚の偏りという言葉が使われていたが,この用語も別の表現がないものかとの提案があった。今後眼科関係者すべてに投げかけられた問題ではあるが,能力の違いをすべて異常として表現している問題について一考を要する。色覚の問題も,今学会での一般演題でスライドに使用する色についての発表があったが,実生活の過ごしやすさを高める色の研究が必要で,その研究成果に基づく対策を眼科から一般社会に発言し,改良していかねばならないと思われる。

視神経

著者: 吉村長久

ページ範囲:P.436 - P.437

 本年の視神経研究会には,広く神経眼科領域,緑内障領域から視神経に関する8題の応募があり,約70名の参加者を得て10月17日の午前中に開催された。この研究会の主眼は,より広い観点から視神経について深く勉強することにある。このため,1題あたり20分の発表・討論時間をとって,できるだけ有意義なディスカッションができるように心がけた。今年の特徴として,近年開発された新しい診断用器械を用いての研究の応募が4題あったのでこれらを後半にまとめた。
 さて,前半4題は,筆者の座長により午前9時から始めた。

テクノストレス眼症・眼精疲労

著者: 青木繁

ページ範囲:P.438 - P.439

 1997年10月17日(金)午前9時30分から定刻通り本専門別研究会はスタートした。はじめに今回の世話人である北里大学の石川 哲教授から最近のVDT関係の諸外国での動向が報告された。従来のものはクラシカルVDT症候群で,最近はSyndrome X,サイバーsyndromeと名称も時代とともに少しずつ変化し,3D(三次元)やバーチャルリアリティーを含んだ眼疲労の解明に方向転換されつつある。さらにelectric magneticfield (EMF)の人体に与える影響も今後も重要な課題であるとされた。
 一般演題は,いつもより少なく3題であった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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