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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科52巻4号

1998年04月発行

文献概要

連載 眼の組織・病理アトラス・138

角膜内皮の創傷治癒

著者: 猪俣孟1

所属機関: 1九州大学医学部限科学教室

ページ範囲:P.458 - P.459

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 角膜内皮細胞corneal endotheliumは角膜の透明性維持に最も大切な細胞である。角膜内皮細胞は神経堤由来であり,ヒトでは一般に増殖能がないといわれている。しかし,in vitroでもin vivoでも,角膜内皮細胞には増殖能があることが実証されている。すなわち,死後の角膜内皮に傷をつけて器官培養すると,3H-thymidineの取り込みが起こり,細胞分裂のためのDNAが合成される。また,角膜中央部を冷凍凝固して内皮細胞を損傷させた後,眼球を摘出して器官培養すると,内皮細胞は3H-thymidineの取り込みや細胞分裂像を示し,増殖能があることがわかる。
 家兎角膜は内皮細胞の再生が活発であるので,角膜内皮の創傷治癒機構の研究は,もっぱら家兎眼を用いて行われてきた。家兎角膜中央部に鋭利な刃物で貫通した切創を作り,創傷治癒の状態を観察すると,角膜上皮細胞側では切創の中に上皮細胞が増殖侵入して2日以内に創面を埋める。角膜実質は実質細胞の増殖によって膠原線維が増生され,創面が接着する。しかし内皮細胞側では角膜実質細胞が侵入せずに,フィブリンが充満する。切創縁に残っている内皮細胞が創傷後24時間で増殖を開始し,創傷後4〜8日で後面の傷を完全に覆う(図1)。再生した角膜内皮細胞は細胞の実質側に新たにデスメ膜を形成する。全層角膜移植でも同様の創傷治癒反応が起こる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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