第51回日本臨床眼科学会専門別研究会1997.10.17東京
眼窩
著者:
井上洋一1
所属機関:
1オリンピア・クリニック眼科
ページ範囲:P.976 - P.978
文献購入ページに移動
杉山らは,甲状腺眼症の上眼瞼後退に対するαブロッカー(5%guanethidine)の点眼(2回/日)の効果に関して報告した。点眼前と点眼後1〜3か月の瞼裂幅を比較して効果を判定した。有効と判定された症例の割合は以前の報告と比較してかなり高率であり,効果は,甲状腺のコントロールの状態とは関係なく,また罹病期間との関係もみられないとの結果となった。また副作用に関してはあまり強いものはみられなかった。この種の薬剤に関しては使用している施設がいくつかあり,有効例の多いことに関して,また上眼瞼だけではなく下眼瞼に対する効果などを中心にいくつか質問があった。効果に関しては症状の軽い症例のほうが効果が高いようであった。また反復使用による効果の低下などについても論議されたが,はっきりした結論は得られなかった。
実際に甲状腺眼症の上眼瞼後退に対する治療は,なかなか苦労することが多く,その病因に関しても単純ではない。αプロッカーの点眼のみでこれほど効果が高く,副作用も少なければ,今後もっと一般に普及する可能性があると思われた。また演者らは,現在βブロッカーの効果に関しても検討中とのことである。入手がより容易な点眼薬であるためその結果にも注目したい。