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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科52巻9号

1998年09月発行

雑誌目次

特集 OCT 総論

光学的干渉断層検査(OCT)の原理と実際

著者: 高橋寛二

ページ範囲:P.1454 - P.1458

Optical Coherence Tomography
 光学的干渉断層検査(Optical coherence tomography:OCT)は,近赤外光によって生体眼の眼底組織を走査し,反射光の干渉現象によって,高解度像の組織断層像を得る検査である。その原理はマイケルソンの干渉計を応用したもので、光源として波長850nmの低干渉近赤外光を用いて,これを二分して眼組織から反射した光と反射鏡で反射した光の光エコーの時間的ずれとエコー波の強度を検出して電気的信号に変換する。この光学的干渉測定をもって眼底を走査して,二次元的な組織断層像をコンピュータ処理して表示する。OCTは,非侵襲性で,短時間で行え,マイクロメーター(μm)レベルの高解像度の組織断層像を得られる検査であり,今後,診断,病状の把握,治療効果の判定など,さまざまな実用的用途が考えられる。

正常眼の光学的干渉断層計OCT所見

著者: 萩村徳一

ページ範囲:P.1459 - P.1462

 光学的干渉断層計(OCT)は非侵襲的に眼底の断面像を観察する装置である。筆者は本装置を使用して正常眼58眼について,神経網膜像と網膜血管像を観察した。また中心窩厚と屈折,年齢との統計的関係について検討した。その結果,断面像は神経線維層,内網状層,外網状層は高信号に,神経節細胞層,内外顆粒層は低信号に描出された。網膜血管像は網膜深層に低信号として描出された。正常者の中心窩厚は144±20umで分布し,年齢,屈折値に依存しなかった。

各論

特発性黄斑円孔の三次元的観察

著者: 岸章治 ,   高橋秀人

ページ範囲:P.1463 - P.1467

 特発性黄斑円孔48例50眼の三次元構造を光学的干渉断層計と走査レーザー検眼鏡で観察した。第1病期の6眼中5眼は,中心窩での層間分離による嚢胞で,1眼は網膜剥離であった。第2病期(6眼)では,網膜分離が中心窩周囲に拡大し,中心窩では前方に分離した網膜内層に裂隙があった。網膜の外層は中心窩ではみられなかった。第3病期は全層円孔で周囲に網膜の層間分離もしくは嚢胞様浮腫を伴っていた。蓋とそれに付着する硝子体皮質が32眼中15眼で観察された。網膜の層間分離は,走査レーザー検銀鏡ではヘンレ線維の放射状のひだとして観察された。黄斑円孔はほとんどの場合,中心窩の嚢胞で始まり,嚢胞の前壁が蓋となって,円孔が完成することが明らかになった。

光学的干渉断層計による網膜前黄斑線維症の観察

著者: 丸山泰弘 ,   大谷倫裕 ,   岸章治

ページ範囲:P.1468 - P.1470

 網膜前黄斑線維症の網膜断面を光学的干渉断層計OCTで観察した。生理的な中心窩陥凹は,網膜厚の増加により消失していた。偽円孔例では,中心窩の周囲の網膜が厚くなっているため生理的陥凹が修飾され,円筒状に強調されていた。これら症例では,観察光の反射が網膜外層で低下しており,浮腫あるいは膨化があると考えられた。本症では網膜表面の膜形成のみならず,膜による網膜内の構造変化が合併していることがわかった。本症の病態の解釈にOCTは必須である。

中心性漿液性網脈絡膜症の網膜断層像

著者: 飯田知弘

ページ範囲:P.1471 - P.1474

 中心性漿液性網脈絡膜症22例22眼の網膜断層像を,光学的干渉断層計で観察した。急性期の剥離網膜は,全例で隣接する非剥離部や寛解期より厚く,17眼では限局性の低反射領域があった。急性期の中心窩の網膜厚は平均197.6±22.9μmで,寛解期は平均124.5±10.9μmであった。本症では,漿液性網膜剥離だけでなく,網膜そのものの浮腫を合併することが明らかとなった。

裂孔原性網膜剥離の光学的干渉断層計OCT所見

著者: 萩村徳一 ,   須藤勝也 ,   岸章治

ページ範囲:P.1475 - P.1478

 新鮮例の裂孔原性網膜剥離21眼に対して,光学的干渉断層計OCTで剥離した感覚網膜の断面像を観察した。また,その像と発症からの期間,年齢との関係を検討した。その結果剥離した感覚網膜の66%に分離が生じていた。また,その半数に分離した網膜外層が波を打っていた。分離して外層が波を打っている群は,網膜分離のない群と比較して視力が不良であった。網膜分離の有無は発症からの期間、年齢に関係なかった。
 また,この分離した外層が波を打っていることが新鮮例の裂孔原性網膜剥離の視力が不良である一因と考えた。

若年性網膜分離症の網膜断層像

著者: 池田史子 ,   高橋京一 ,   岸章治

ページ範囲:P.1479 - P.1482

 光学的干渉断層計で若年性網膜分離症7例10眼の黄斑部網膜を検索した。中心窩では,網膜の中間層で分離があり,それが中心窩の周囲の網膜外層に連続していた。走査レーザー検眼鏡では,網膜深層にヘレン線維層の隆起を示す放射状の襞があった。中心窩周囲の網膜には,分離した内層網膜に神経線維層と内網状層を示す2層の高反射帯があり,網膜分離は外網状層にあると考えられた。分離した網膜はミュラー細胞と思われる柱状の組織で連絡されていた。

黄斑浮腫の経過と網膜断層像

著者: 大谷倫裕 ,   丸山泰弘 ,   岸章治

ページ範囲:P.1483 - P.1488

 黄斑浮腫の経過を光学的干渉断層計OCTによって観察した。対象は黄斑浮腫があり,OCTで6か月以上観察した17眼(糖尿病網膜症14眼,網膜中心静脈閉塞症2眼,網膜静脈分枝閉塞症1眼)である。びまん性黄斑浮腫(13眼)の主病巣は網膜外層の膨化であり,膨化の改善により黄斑浮腫は消退した。網膜浮腫の吸収過程で,ときに漿液性網膜剥離が生じた(10眼中3眼)。嚢胞様黄斑浮腫CMEでは,網膜外層の膨化部位が嚢胞化した。CMEの消失した5眼中3眼では,中心小窩での嚢胞が平坦になり,それに続いて周囲の嚢胞が消失した。

網膜色素上皮剥離・網膜色素上皮裂孔のOCT所見

著者: 高橋寛二

ページ範囲:P.1489 - P.1493

 網膜色素上皮剥離,網膜色素上皮裂孔の光学的干渉断層装置(OCT)による観察所見について述べた。網膜色素上皮剥離は,OCT上,網膜色素上皮を表す高反射層と感覚網膜のドーム状の挙上として極めて明瞭に検出され,剥離した網膜色素上皮下に存在する物質によって,その後方の網膜色素上皮下腔,脈絡膜の反射はさまざまな態度を示した。網膜色素上皮裂孔は,OCT上,網膜色素上皮を表す高反射層の断裂として明瞭にみられ,網膜色素上皮の欠損と網膜色素上皮弁の状態を詳細に観察できた。この両疾患の病態把握において,OCTは今後極めて重要な検査となりうることがわかった。

黄斑ジストロフィのOCT所見

著者: 南部裕之

ページ範囲:P.1494 - P.1496

 黄斑ジストロフィのうち,中心性輪紋状脈絡膜萎縮症と先天性網膜分離症のOCT所見を示した。中心性輪紋状脈絡膜萎縮症では、黄斑部網膜が菲薄になり,神経線維層も薄くなっていた。先天性網膜分離症の中心窩分離症の部位では,架橋形成を伴った網膜内層の分離がみられたが,その他の部では内層および外層の層構造は保たれていた。これらの所見は病理組織学的所見に一致するものであり,黄斑ジストロフィの病態の把握にOCTは有用であった。

胞状網膜剥離の光学的干渉断層計(OCT)所見

著者: 岡野正

ページ範囲:P.1497 - P.1500

 胞状網膜剥離(Gass)では,色素上皮からの透過性亢進によって,眼底後極部に色素上皮剥離と胞状網膜剥離が生じる。OCTによる検索で,急性期には色素上皮剥離,網膜剥離,浮腫による網膜膨化が観察され,治癒後にはこれらが消失していた。

加齢黄斑変性のOCT所見

著者: 福島伊知郎

ページ範囲:P.1501 - P.1509

 Optical coherence tomography (OCT)で加齢黄斑変性の症例を観察した。漿液性網膜剥離や網膜色素上皮剥離,網膜下血腫、網膜浮腫,軟性ドルーゼンはOCTで特徴的な所見を示し,それらを明瞭に区別できた。脈絡膜新生血管は網膜色素上皮と脈絡膜毛細血管に一致する高反射層の肥厚と断裂,そして前方への突出としてみられた。また,フルオレセイン螢光眼底造影で検出不能であった新生血管が,OCTではfibrovascular PEDとして検出され,色素上皮下に新生血管の存在が疑われた。OCTは,加齢黄斑変性の滲出性病変と脈絡膜新生血管の評価に有用であった。

中心性滲出性脈絡網膜症のOCT所見

著者: 永井由巳

ページ範囲:P.1511 - P.1513

 中心性滲出性脈絡網膜症では黄斑部網膜の深層に滲出斑を生じ,活動期にはその部に脈絡膜新生血管をみる。光学的干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)を用いて観察すると,1)病巣に一致して網膜下の塊状またはドーム状の高反射像をみた。2)病巣は網膜色素上皮と脈絡膜毛細血管板による高反射層と連続していた。3)病巣部での神経網膜の挙上と,浮腫,少量の網膜下液を有する網膜剥離をみた,などの所見を得た。

卵黄様黄斑変性のOCT像

著者: 本間理加 ,   宇都木憲子 ,   丸山泰弘 ,   岸章治

ページ範囲:P.1515 - P.1518

 卵黄様黄斑変性の2例4眼の断層像を光学的干渉断層計で検索した。卵黄期では,網膜色素上皮と脈絡毛細管板を示す高反射帯が紡錘形の肥厚として観察された。炒り卵期では,網膜下に2層の高反射帯があった。下方の高反射帯は網膜色素上皮と脈絡毛細管板の高反射帯に連続していた。卵黄期のOCT所見からは,網膜下の物質貯留,色素上皮自体の肥厚,または色素上皮下での物質貯留の可能性が考えられた。炒り卵期では網膜下の物質貯留の可能性が示唆された。

続発性黄斑変性のOCT所見

著者: 阿部友厚 ,   米谷新

ページ範囲:P.1519 - P.1521

 半側網膜中心静脈閉塞症に対してレーザー治療前後の網膜の変化をOCT検査で検討した。半側網膜中心静脈閉塞症では黄斑部を境に閉塞領域側に黄斑浮腫が存在した。OCTでは黄斑浮腫は中心窩の嚢胞と,網膜下液による網膜剥離が描出された。レーザー治療後3か月で浮腫は吸収されたものの,浮腫が存在した黄斑部では網膜の厚さが減少した。5か月後にはさらに網膜は薄くなり,特に網膜神経線維層と網膜色素上皮および脈絡毛細管板が減少していた。

網膜中心静脈閉塞症のOCT像

著者: 林篤志

ページ範囲:P.1523 - P.1525

 網膜中心静脈閉塞症の1症例を光学的干渉断層計(Optical coherence tomography:OCT)を用いて黄斑部網膜の形態的変化を経時的に観察した。発症時の螢光眼底所見では,後極部網膜に著明な螢光色素の漏出および網膜浮腫を認め,OCT所見においても黄斑部網膜内に低信号域を認め,著明な網膜浮腫を形態的に確認した。内服治療により経過観察を行い,発症後6か月の時点で,螢光眼底検査で網膜浮腫の軽減を,また視力の改善を認め,OCT所見においても黄斑部網膜内の低信号域は縮小していた。OCTは,網膜の形態的変化を非侵襲的に測定できることから網膜浮腫などを経時的に検討するのに有用であると考えられた。

網膜静脈分枝閉塞症のOCT像

著者: 林篤志

ページ範囲:P.1527 - P.1530

 黄斑部を含む網膜静脈分枝閉塞症の2例について,OCTを用いた網膜の形態的変化の検討を加えて経過観察を行った。1例は上耳側の陳旧性網膜静脈分枝閉塞症で,網膜光凝固治療により網膜静脈閉塞領域に認められた網膜浮腫が著明に改善し,浮腫で肥厚した中心窩網膜厚が正常者の網膜厚近くまで改善するとともに視力改善が得られた。また,他の1例は,下耳側の網膜静脈分枝閉塞症で,網膜静脈閉塞領域に著明な網膜浮腫に加えて滲出性網膜剥離の存在をOCT像で認め,経過観察中に乳頭上新生血管および虹彩ルベオーシスを生じた。これらの症例では,OCT所見が従来の検査法に加えて,網膜の形態的変化を示すことから治療経過の把握および予後の推定に有用であることを示唆している。

網膜動脈閉塞症のoptical coherence tomography所見

著者: 和田光正

ページ範囲:P.1531 - P.1534

 網膜動脈分枝閉塞症または網膜中心動脈閉塞症の光学的干渉断層計OCTによる検索では,急性期には網膜内層に幅の広い高反射帯がみられ,網膜内層が厚くなっていた。慢性期には,網膜は菲薄化していた。この所見は,病理組織学的に得られた所見と合致していた。

糖尿病網膜症のOCT所見

著者: 岡野正

ページ範囲:P.1535 - P.1542

 糖尿病網膜症では,眼底後極部がOCT検査の対象になる。これにより,網膜浮腫,出血,白斑,硝子体剥離,網膜剥離,色素上皮剥離,網膜層間分離,黄斑前膜,増殖膜などの同定が可能である。浮腫が強いと網膜が膨化して厚みを増し,浮腫部は低反射で暗く写る。嚢胞状浮腫では,黄斑部網膜の膨隆が強く嚢胞内容は暗い。白斑は白色ないし赤色の高反射を呈して網膜内に存在する。白斑の後方は暗く表れる。網膜剥離では,軽症でもOCTで確認できる。網膜層間分離では,層間の裂開部は低反射を示す。OCTを使うことで,病変の精密な観察が可能となる。これは非侵襲的な検査法であるので,頻回の経過観察にも有用である。

眼底病変に対する光凝固治療前後の光学的干渉断層計所見

著者: 植田真未

ページ範囲:P.1543 - P.1547

 眼底病変に対するレーザー光凝固治療前後に光学的干渉断層計(Optical coherence tomography:OCT)撮影を行い,その治療効果の判定と組織に与える影響について検討した。加齢黄斑変性では脈絡膜新生血管板は網膜色素上皮・脈絡膜毛細血管板に連続する高反射帯としてみられ,レーザー治療によりその縮小がみられた。網膜静脈閉塞症に対する中等度凝固では,直後には白色の凝固斑を示した部で網膜内層に強い反射がみられ,その後方には強い後方散乱がみられた。また,時間が経過すると内層の強い反射は消失し,網膜外層および網膜色素上皮・脈絡膜毛細血管板の反射が厚くなった。中心性漿液性網脈絡膜症に対する弱度凝固斑は検出されなかったが,黄斑部の漿液性網膜剥離の消失と網膜の変化がOCT像で明瞭に判読できた。OCTは疾患の治療効果の判定や,光凝固後早期からの組織変化を観察できる非常に有益な検査法である。

網膜細動脈瘤のOCT所見

著者: 阿部友厚 ,   米谷新

ページ範囲:P.1548 - P.1550

 網膜細動脈瘤の2症例をOCTで観察した。網膜細動脈瘤は,破裂直後の新鮮例では,動脈瘤の内腔は開存しているため低反射領域として描出された。また,その治療後では高輝度の反射を示す塊として観察された。これは,動脈瘤の壁の肥厚,または血栓の器質化が進行した状態を反映した所見と考えられる。OCTにより,網膜細動脈瘤は螢光造影およびインドシアニングリーン螢光造影との併用により,詳細な状態把握が可能となった。

強度近視眼に合併した網膜分離症

著者: 高野守人 ,   丸山泰弘 ,   岸章治

ページ範囲:P.1551 - P.1553

 光学的干渉断層計で,強度近視(37眼)の網膜断層像を観察した。後部ぶどう腫のない5眼では,網膜は正常の厚さと層構造を示した。後部ぶどう腫の浅い4眼では,網膜は正常の層構造を示したが,厚さが減少していた。後部ぶどう腫が深い28眼中11眼では黄斑に網膜分離があり,うち9眼では中心窩に限局した網膜剥離を伴っていた。残りの17眼では網膜分離はなかったが,網膜の菲薄化と層構造の消失があった。後部ぶどう腫眼では,網膜分離症と網膜剥離が高頻度に生じていることが明らかになった。

網膜過誤腫の網膜断層像

著者: 田村卓彦 ,   岸章治

ページ範囲:P.1555 - P.1557

 光学的干渉断層計(OCT)を用いて,網膜の過誤腫の断層像を観察した。症例1は16歳の男子で,結節性硬化症があり,両眼に多発性の神経膠腫があった。乳頭黄斑間の腫瘤は桑実様であった。症例2は40歳男子で全身の異常はない。網膜の過誤腫は片眼性で,孤立性であった。腫瘤は灰白色で網膜からわずかに隆起し,表面は平滑であった。OCTでは,両者とも腫瘤は充実性で,神経線維層に限局し,神経線維層と同じ程度の反射を示した。

脈絡膜腫瘍のoptical coherence tomography所見

著者: 尾辻剛

ページ範囲:P.1558 - P.1562

 脈絡膜腫瘍をOptical coherence tomography (OCT)で観察し,その画像を検討した。脈絡膜血管腫のOCT像は,腫瘍部は中等度の後方散乱を示し,網膜の多数の小さいcystic spaceと,網膜の膨化および反射の亢進がみられた。脈絡膜悪性黒色腫では,隆起した色素上皮—脈絡膜毛細血管板の高反射領域の反射が亢進し,脈絡膜の後方の反射はみられなかった。転移性脈絡膜癌では,腫瘍部の反射は低下しており,腫瘍周囲に網膜剥離がみられた。脈絡膜骨腫では,腫瘍部網膜の反射の低下と,網膜色素上皮—脈絡膜毛細血管板の反射の低下がみられ,骨腫の後方の散乱が減弱していた。それぞれの腫瘍で腫瘍の病理組織学的性状によって特徴的な所見を示し,OCTは脈絡膜腫瘍の補助診断の1つとしての有用性が示された。

Vogt—小柳—原田病の急性期OCT所見

著者: 丸山泰弘 ,   大谷倫裕 ,   岸章治

ページ範囲:P.1563 - P.1566

 光学的干渉断層計OCTを用い,急性期Vogt—小柳—原田病の眼底病変を観察した。その結果,剥離網膜に浮腫があること,非剥離部網膜にも浮腫があることが日月らかになった。またOCT断層像によると,眼底病変は単なる網膜剥離だけでなく,網膜内の液体貯留や膨化・浮腫による網膜剥離様の眼底の隆起の場合があつた。また従来の検査法では観察困難であつた色素上皮剥離の合併が検出できた。

ベーチェット病の網膜断層像と電気応答

著者: 司英杰 ,   岸章治

ページ範囲:P.1567 - P.1570

 ベーチェット病2例3眼で,網膜断層像と網膜電気応答の関係を,光学的干渉断層計(OCT)と多局所網膜電図(mERG)で検索した。滲出性網膜剥離の発作があった1例1眼では,OCTで網膜剥離と白血球の浸潤に一致した高反射域があった。視力は1.0から0.03に低下し,中心窩の電気応答が消失していた。網膜が復位した10日後も,視力と電気応答の回復はなかつた。3か月後に視力は0.2となり,電気応答もわずかに回復した。過去の発作により視力が30cm指数弁になった1例2眼では10CTでは,1眼に嚢胞様黄斑浮腫があり,他眼は正常の断層像を示した。mERGでは両眼とも中心窩の電気応答が消失していた。ベーチェット病では,網膜が復位したのちも,電気応答の低下と視力障害を残すことが明らかになった。これは,発作時の白血球による視細胞の破壊に起因すると考えられる。

地図状脈絡膜炎のOCT所見

著者: 桑原敦子

ページ範囲:P.1571 - P.1572

 地図状脈絡膜炎をOCTで観察した。瘢痕萎縮病巣では,脈絡膜反射の増強と,網膜色素上皮および脈絡膜萎縮の二次的変化としての感覚網膜の菲薄化がみられた。活動病巣では,網膜深層の黄白色滲出斑の部に一致して,脈絡膜実質内の高反射領域をみた。本症では,発病初期の滲出斑は網膜色素上皮の浮腫混濁とされている。色素上皮レベルのこの異常が,その後方の高反射領域として描写された。

緑内障手術の前眼部OCT所見

著者: 秋山英雄 ,   木村保孝

ページ範囲:P.1574 - P.1575

 光学的干渉断層計OCTで緑内障に対する濾過手術後の所見を観察した。マイトマイシン併用の線維柱帯切除術を行った11眼では,濾過胞の結膜の菲薄化,強膜弁下の間隙,濾過胞内の線維様組織が観察された。線維柱帯切開術を行った4眼では,トラベクロトームによる線維柱帯の裂隙が同定できた。OCTでの所見は超音波生体顕微鏡よりも深達性については劣るが,解像力がはるかに優れていた。

緑内障の網膜神経線維層欠損と視神経乳頭陥凹のOCT所見

著者: 岡田正喜

ページ範囲:P.1577 - P.1580

 光学的干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)ではレーザー光の眼底走査において円周走査と直線走査が可能である。円周走査は網膜神経線維層厚の測定に応用でき,直線走査は視神経乳頭の断層的観察に応用できる。そこで緑内障眼の網膜神経線維層欠損と視神経乳頭陥凹とをOCTを使って観察した。OCTによる網膜神経線維層厚の解析は簡便,迅速かつ再現性が高く,緑内障の診断と管理に有用と思われた。

今月の表紙

OCT(網膜断面検査)でみた先天性網膜分離症の黄斑部

著者: 宇山昌延

ページ範囲:P.1510 - P.1510

 先天性網膜分離症(若年性網膜分離症)ではほとんど常に(約90%),黄斑部に中心窩分離症foveal schisisと呼ばれる病変を伴う。本症の小児が視力不良である原因である。
 検眼鏡的には中心小窩を中心に放射状の襞形成がみられる。しかし螢光造影を行っても螢光色素の貯留をみないし,その他の異常所見はない(本年7月号の表紙写真および本号1479頁参照)。

連載 眼の組織・病理アトラス・143

オンコセルカ症

著者: 猪俣孟

ページ範囲:P.1588 - P.1589

 オンコセルカ症onchocerciasisは,糸状虫の1種である回旋糸状虫Onchocerca volvulusの感染によって生じる寄生虫病で,ブユblackfly(Simulium)によって伝搬する。アフリカと中南米に分布し,全世界で約2,000万〜3,000万人の患者がいるといわれる。川の周辺で発病し,眼も冒されて失明するので,「河川盲目症」river blindnessとも呼ばれる。
 オンコセルカの雌雄成虫は皮下などにできたオンコセルカ腫瘍onchocercomaの中に数匹が絡み合って寄生している(図1)。雌の体長が50〜100cm,雄はわずかに2.5〜5.0cmである。その仔虫であるミクロフィラリアの体長は約300μmである(図2)。終宿主はヒトが主体で,通常は体表に近いリンパ腔に入っている。中間宿主である雌のブユが終宿主のヒトから吸血するときに,感染幼虫が刺孔から侵入し,成長して皮下に腫瘤を作る。これがオンコセルカ腫瘤である。感染幼虫はヒトの皮下で成熟して結合組織に包まれて,10〜15年くらいはそこで生きている。腫瘤内の雌から生み出されたミクロフィラリアが自力で周囲を動き回り,皮膚炎(図3)などの皮膚病や眼病を起こす。ミクロフィラリアの寿命はブユで吸い取られないかぎり6〜30か月である。

眼科手術のテクニック・106

トラベクロトミー—シュレム管が見あたらない時の対応

著者: 寺内博夫

ページ範囲:P.1592 - P.1593

 今回はシュレム管が見当たらない2例を紹介し,その対応について解説する。
 ただこの方法は,シュレム管のあるべき位置やその特徴を知っている術者には比較的簡単な操作であるが,初心者にはお勧めしない。

臨床報告

眼瞼下垂と顔面片側過形成を伴った先天性虹彩外反症候群の1例

著者: 田辺和子 ,   林みゑ子 ,   大川多永子

ページ範囲:P.1599 - P.1603

 28歳女性が左眼緑内障で受診した。矯正視力は1.0,眼圧は薬物投与下で42mmHgであった。左眼の瞳孔縁の全周に先天性虹彩外反,隅角全周にわたる虹彩高位付着,緑内障性乳頭陥凹があり,先天性虹彩外反症候群と診断した。左側に顔面片側過形成と眼瞼下垂があった。マイトマイシンCを併用した線維柱帯切除を行い,眼圧は正常化した。右眼には全く異常はなかった。本症例は,先天性虹彩外反症候群に同側の顔面片側過形成と眼瞼下垂が併発した本邦では最初の報告である。

走査型レーザー検眼鏡による角膜ヘルペスの初期病型

著者: 田中隆行

ページ範囲:P.1605 - P.1610

 角膜のフルオレセイン染色で,単純ヘルペス角膜炎の初期病変を解析した。所見の記録には,走査型レーザー検眼鏡(SLO)を用いた。自覚症状発症後2日以内の124眼は,その臨床像から以下の7型に分類された。樹枝状53眼,地図状10眼,辺縁型13眼,点状22眼,帯状9眼,びまん性13眼,上皮剥離型6眼である。これらに共通して観察された螢光所見は,約20〜50μmの微細な螢光点の樹枝状配列である。上皮剥離型は,小規模で微小な樹枝状を呈する病巣に広範囲な角膜上皮剥離が伴った新しい病型である。SLOによる角膜染色法を使うことで,単純ヘルペス角膜炎の初期病変が細胞レベルで観察でき,角膜疾患の今後の解析に寄与することが期待される。

ぶどう膜悪性黒色腫が疑われた特発性駆逐性出血の1例

著者: 佐藤章子 ,   加藤智博 ,   木村毅 ,   小池信宏

ページ範囲:P.1611 - P.1615

 69歳男性に左眼の結膜嚢から血性分泌物があり,角膜穿孔として紹介された。眼窩のCT検査で硝子体腔に造影効果のない不均一な異常陰影があり,眼内悪性腫瘍を疑って眼球を摘出した。眼内に駆逐性出血があり,腫瘍はなかった。光顕で,硝子体,毛様体,網膜下,脈絡膜に大量の出血があり,毛様体にメラニン色素を含む大型の異型細胞群があり,核分裂像があった。電顕で,網膜下出血巣内のマクロファージの細胞体内に幼弱なmelanosomeがあり,ぶどう膜悪性黒色腫が疑われた。

寛解した網膜中心静脈閉塞症での脈絡膜への静脈血流出路

著者: 高橋京一

ページ範囲:P.1617 - P.1624

 網膜中心静脈閉塞症が寛解した後の血行動態を知るために,寛解した網膜中心静脈閉塞症17眼(虚血型7眼,非虚血型10眼)を検索した。全例にインドシアニングリーン(lCG)螢光眼底造影を行い,パノラマ網脈絡膜血管像を作成して,乳頭部の血流動態と眼底広範囲の網脈絡膜の血管構築の変化を観察した。乳頭上にループ状血管のあった14眼では,ループ状血管を介して網膜静脈と脈絡膜静脈の間に,側副血行路形成が全例で検出された。網膜静脈血はループ状血管を経由して拡張した脈絡膜静脈に流出し,最終的には主に鼻側の渦静脈に還流されていた。側副血行路の数は虚血型では2〜6本,非虚血型では1〜2本であった。1眼で側副血行路の形成前後のICG像をとらえることができた。ループ状血管のない3眼では側副血行路の形成はなかった。網膜中心静脈閉塞症が寛解する機序は単一ではないが,乳頭にループ状血管のある例では,脈絡膜への側副血行路がその寛解の主因であると結論される。

偽Foster Kennedy症候群を呈した両眼性前部虚血性視神経症の1例

著者: 錦織修道 ,   坂本恵美 ,   白井堯子 ,   松林光太 ,   田淵昭雄

ページ範囲:P.1627 - P.1631

 59歳女性が左眼の視力低下と視野狭窄で受診した。患眼には乳頭浮腫があり,螢光眼底造影で乳頭の過螢光があった。前部虚血性視神経症(AlON)と診断し,ステロイド薬全身投与を行ったが,視神経萎縮になった。左眼発症から7か月後に右眼の白内障手術が行われ,さらにその5か月後に右眼の視力低下が生じ,乳頭浮腫が発見された。頭蓋内病変はなく,両眼のAlONによる偽Foster Kennedy症候群と診断した。ステロイド薬の全身投与で右眼の視力は改善した。白内障手術とAlONとの因果関係は不明であった。

カラー臨床報告

銭型角膜炎の6症例

著者: 井尾晃子 ,   松田彰 ,   田川義継

ページ範囲:P.1595 - P.1598

 過去12年間に銭型角膜炎(Dimmer)の症例を6例経験した。男性3例,女性3例で,年齢は6〜66歳(平均36.7歳),両眼性が2例,片眼性が4例であった。数個の小円形病巣(銭型病変)が全例にみられ,周囲に細胞浸潤を伴っていた。軽度から中等度の結膜充血もみられた。5例はステロイド薬点眼で,1例は抗生物質と角膜保護薬で治癒した。3例に再発がみられたが,予後は良好であった。

第51回日本臨床眼科学会専門別研究会1997.10.17東京

「画像診断」印象記

著者: 中尾雄三 ,   林英之 ,   管田安男 ,   岸厚至 ,   坂口仁志 ,   西川憲清 ,   能勢晴美 ,   咲山豊 ,   山田泰生 ,   林理

ページ範囲:P.1632 - P.1633

 今年も多彩で興味深い内容の一般演題が口演された。また林 英之先生による教育講演も熱演でまことに好評であった。
 以下,座長を担当された先生方に各演題の印象について述べてもらった(第4席は座長代理で中尾)。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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