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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科53巻1号

1999年01月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

色覚異常者への対応

著者: 山出新一

ページ範囲:P.9 - P.12

 学校保健の中で色覚検査が大変軽視されるようになったのは残念であるが,受診した子に対しては十分な対応をしてあげたい。先天色覚異常に必要なのは検査そのものより,むしろ色覚異常についての説明と,どのように対処したらよいかについての助言である。

眼の組織・病理アトラス・147

中枢神経系原発悪性リンパ腫

著者: 猪俣孟 ,   高比良健市 ,   小田由美

ページ範囲:P.14 - P.15

 中枢神経系原発悪性リンパ腫intraocular/central nervous system (CNS) malignant lymphomaは,網膜と頭蓋内に原発する悪性腫瘍で,従来網膜ではreticulum cell sarcoma of the retinaと呼ばれ,頭蓋内ではreticulum cell sarcoma-microgliomaと呼ばれていたものである。さらに,microgliomatosis,perivascular sarcoma,reticuloendothelial sarcoma,malignant reticuloendotheliosisなどの名称も頭蓋内病変に対して使われてきた。網膜病変は,一見ぶどう膜炎を思わせる臨床症状を示し,眼内仮面症候群intraocular masquerade syndromeの代表的疾患でもある。
 中高齢者で,両眼性に炎症細胞の浸潤を思わせる硝子体混濁があり,副腎皮質ステロイド薬が無効である場合には,本症を考える(図1)。硝子体混濁に伴って,眼底には広範囲に地図状の滲出性病変がみられることが多い。

眼科図譜・365

瘢痕性角結膜疾患の所見を呈した眼瞼脂腺癌の1例

著者: 宮川篤子 ,   平野耕治 ,   平岩厚郎 ,   原田智子 ,   長坂徹郎 ,   田中浩人

ページ範囲:P.18 - P.20

 緒言 原発性に角結膜上皮の瘢痕化をきたす一群の角結膜疾患として,眼類天疱瘡,Stevens—Johnson症候群などが挙げられる。瘢痕性の角結膜上皮障害はアルカリ腐蝕などによる化学眼外傷に続発することもよく知られているが,今回筆者らは眼瞼の脂腺癌に伴い,片眼性に同様の所見を示した1例を経験したので報告する。

眼科手術のテクニック・110

トラベクレクトミー:術後管理

著者: 黒田真一郎

ページ範囲:P.22 - P.23

 トラベクレクトミーの術後管理のポイントは,いかに適切に房水を漏らすかということである。創傷治癒という点から考えると,一般に1週目から2週目にかけて,結膜や強膜の癒着が強くなってくるわけであるから,この時点における適切な房水の漏れを確保するよう努めることが重要な点となってくる。適切な房水の漏れとは,この時期の術後眼圧がやや低めである8〜10mmHgくらいを維持し,眼圧と濾過胞と前房深度の関係が合理的である状態である。

今月の表紙

眼白子の女性保因者の眼底

著者: 三宅養三

ページ範囲:P.13 - P.13

 眼白子は,X連鎖性遺伝を示し眼底の低色素,虹彩低色素,中心窩低形成,眼振,低視力などを特徴とする。眼白子症の眼底の低色素の程度は個人差があり,ときに正常に近い眼底を示す場合があるため,診断に迷う場合がある。しかし,女性保因者では低色素部がモザイク状にみられ,極めて特徴的な眼底を示すため,女性保因者の眼底は診断的価値が高い。
 表紙の眼底写真は40歳の女性のものであるが,彼女の息子は低視力で,黄斑形成不全との診断であった。眼底は中心窩反射の消失と眼底のわずかな低色素所見がみられた。母親の眼底の特徴的異常から息子は眼白子症と診断された。

日眼百年史こぼれ話・1

リスターの石炭酸噴霧消毒装置

著者: 三島濟一

ページ範囲:P.20 - P.20

 『日本眼科学会百周年記念誌』の編纂からもう3年を経た。私は明治時代以前の部を担当したが,全国の眼科医,医師会などの協力で集まった膨大な史料の中から記念誌の中に書き込めなかったもの,私の感想などを,肩のこらない短編「こぼれ話」として連載する。

臨床報告

ウノプロストン点眼液使用時に生じた眼瞼部多毛症

著者: 川村昭之 ,   奥村秀 ,   栗原秀行

ページ範囲:P.33 - P.36

 ウノプロストン点眼薬を点眼していた緑内障患者88症例154眼につき,眼瞼多毛症の有無を細隙灯顕微鏡で検索した。うち3例4眼に眼瞼多毛症があり,睫毛も太く長くなっていた。2例では,点眼中止により多毛症は寛解した。片眼のみに点眼していた22例を同様に検索し,うち15例(68%)に下眼瞼のうぶ毛に左右差があり,点眼側で多かった。ウノプロストン点眼は,眼瞼のうぶ毛を増加させ,睫毛を太く長くする可能性がある。

眼症状を呈した再発性多発軟骨炎の3例

著者: 長谷川佳世子 ,   吉田正和 ,   岩本隆司 ,   平野耕治 ,   三宅養三

ページ範囲:P.37 - P.41

 眼症状を伴う再発性多発軟骨炎の3例を経験した。45歳女性,63歳男性,64歳女性であり,眼痛を伴う強膜炎が共通する眼病変であった。1例では結膜浮腫と眼瞼腫脹に乳頭浮腫があり,1例では両眼の虹彩毛様体炎,続発緑内障,乳頭浮腫,髄膜炎が併発していた。経験した3例は,再発性多発軟骨炎が,強膜炎を中軸とする多彩な眼所見を呈することを示している。

Heidelberg Retina Tomographにおける新しい緑内障診断指標の検討

著者: 坪井俊一 ,   中村弘 ,   前田利根 ,   井上洋一

ページ範囲:P.43 - P.46

 正常コントロール群74眼,早期原発開放隅角および正常眼圧緑内障群67眼を対象に,Heidelberg Retina Tomographの新しい診断指標「classification」を検討した。その結果,緑内障眼のうち正しく“glaucoma”と判定したものは64眼(感度96%),正常コントロール群のうち正しく“normal”と判定したものは59眼(特異度80%)であった。正常コントロール群では誤診断となる背景に乳頭面積の影響があった(p<0.01)。両群とも年齢,性別,屈折度,conusの有無は判別に有意な影響を与えていなかった。Heidelberg Retina Tomographにより得られる診断指標は,特異度はやや低いものの感度は高く臨床上有用と考えるが,乳頭面積の影響を考慮する必要がある。

Heidelberg Retina Tomographによる糖尿病性牽引性網膜剥離の観察

著者: 小森秀樹 ,   森和彦 ,   池田恒彦 ,   澤浩 ,   小泉閑 ,   安原徹 ,   木下茂

ページ範囲:P.49 - P.53

 ハイデルベルク網膜断層計Heidelberg Retina Tomographを用いて,糖尿病性牽引性網膜剥離23眼を検索した。増殖膜に牽引された剥離網膜の形状が明瞭に観察され,特に網膜面の傾斜の状態から,網膜と硝子体の癒着部位の同定がある程度可能であった。本装置は,糖尿病性牽引性網膜剥離の硝子体手術の術前の指針を得る装置として有用であった。

格子状変性のある裂孔原性網膜剥離と後部硝子体剥離

著者: 三浦文英 ,   横塚健一 ,   南部真一 ,   岸章治

ページ範囲:P.55 - P.60

 格子状変性を有する裂孔原性網膜剥離422眼について,裂孔の形態と後部硝子体剥離との関係を検索した。年齢分布は,20代に小さな山と60代に大きな山のある2峰性を示した。30歳以下(67眼)では,硝子体は87%で未剥離で,ほとんどが萎縮円孔であった。屈折は近視(平均−7D)傾向を示した。剥離の高さは一般に低かった。51歳以上(239眼)では,硝子体は90%で剥離していた。原因病巣は,弁状裂孔が多く,正視で,剥離が高いことを特徴とした。31〜50歳では両者の中間に位置した。網膜剥離は,高齢者では硝子体剥離に伴う網膜裂孔から生じること,若年者では硝子体が未剥離の状態で発症することが明らかになった。後者の場合,網膜下液の供給源は液化硝子体であり,格子状変性前方の硝子体液化腔が,それが萎縮円孔に達する通路となると推測された。

ケースコントロールスタディによる未熟児網膜症進行因子の検討

著者: 稲田晃一朗 ,   近藤裕一 ,   村田恭啓 ,   根木昭

ページ範囲:P.63 - P.68

 1993〜94年に熊本市民病院NICUに入院した654症例を対象とし,在胎週数と出生体重をマッチさせた18例において,ケースコントロールスタディを行い,重症未熟児網膜症(ROP)の網膜光凝固治療(一部網膜冷凍凝固追加)を行った群と無治療(コントロール)の群で,ROPの進行に関連する因子を検討した。結果は,ROP治療群の78%に慢性肺疾患が,28%に肺性心がみられ,コントロールの61%,11%よりも多い傾向にあった。特にウィルソン-ミキティ症候群が前者の33.3%にみられ,後者の5.6%より有意に多かった。また,治療群の3例に死亡,1例に虚血性脳症がみられた。眼底の無血管野は,治療群のほうがコントロール群よりも広かった。眼球発育の未熟性が強く,かつ慢性肺疾患など呼吸機能障害の強い例にROPの進行がみられたと考えられ,その場合には全身的にも予後不良の例が多く,長期にわたる十分な管理が必要と思われた。

糖尿病黄斑部硬性白斑に対する黄斑下手術の成績

著者: 内藤毅 ,   浅原貴志 ,   賀島誠 ,   塩田洋

ページ範囲:P.69 - P.72

 黄斑下の硬性白斑除去手術を糖尿病網膜症7例8眼に行った。術後全例で黄斑部の硬性白斑はほぼ消失し,黄斑浮腫が著明に軽減した。術前視力は矯正0.01から0.1の範囲であり,術後視力は0.04から0.5の範囲であり,改善が5眼,不変が2眼,悪化が1眼であった。63%で視力改善が得られたことは,本症に対する黄斑下硬性白斑除去手術が有用であることを示している。

筋緊張性ジストロフィの水晶体所見

著者: 金田穣次 ,   佐々木洋 ,   久保田明子 ,   廣瀬源二郎

ページ範囲:P.77 - P.82

 筋緊張性ジストロフィ患者3例6眼と、その疑いがある患者1例2眼の水晶体混濁を,細隙灯顕微鏡による観察と,前眼部画像解析システムで検索した。本症に特有な顆粒状混濁は皮質浅層から成人核外側部にあり,赤道部と瞳孔領に多かった。色素顆粒は浅層にも混在していた。細隙灯顕微鏡による観察では同定が困難な前嚢直下皮質の散乱光が増加が画像解析で全例に確認され,本症の水晶体所見の特徴の1つと考えられた。徹照法で撮影した後部皮質の混濁は,周辺部に向かって先細りするヒトデを呈した。水晶体混濁は,本症とこれが疑われる患者とでは異なっていた。撮影画像の解析で得られる特徴的な所見は,本症の診断に有用であると結論される。

オクトパス視野計のdynamic strategyにおける短期変動と長期変動

著者: 堀越紀子 ,   尾﨏雅博 ,   後藤比奈子 ,   田村陽子 ,   岡野正

ページ範囲:P.85 - P.89

 オクトパス視野計のdynamic strategy (DS)とnorma strategy (NS)による視野結果を比較し,DSにおける短期変動(SF)と長期変動(LF)について検討した。対象は41例57眼(正常者16例16眼,高眼圧症患者3例6眼,緑内障患者22例35眼)で,オクトパス101のG2プログラムをDSとNSで行った。両戦略法ではmean defect,correcte loss varianceに有意差はなかったが,SFはDSで有意に大きくなった(p<0.0001)。DSではNSに比べmean defectの増加に伴いSFがより大きくなった。LFは両戦略法で有意差はなく,DSにおける初回と再検時のSFでは強い正の相関関係(y=0.97×+0.07,r=0.85)がみられた。DSでは視野沈下に応じたSFの基準値の設定が必要と思われた。

後発白内障の発生に関与する多因子の検討

著者: 安藤展代 ,   大鹿哲郎 ,   木村博和

ページ範囲:P.91 - P.97

 1989年1月から1997年4月まで同一施設で同一術者が行った白内障手術のうち,透明な後嚢を残して終了した3,316例につき,後発白内障の発生頻度と危険因子を統計学的に検討した。Kaplan-Meier法により求めた累積後嚢切開率は1年2.5%,2年9.5%,3年21.0%,4年27.8%,5年30.4%となり,術後3年を過ぎても後発白内障を生じる症例は少なくなかった。後嚢切開までの生存時問に影響を与える要因を求めるため,CO×比例ハザード回帰分析により多変量解析を行った。有意であった共変量は術前矯正視力(0.15以上/0.1以下)(p<0.001),網膜色素変性症(p<0.001),糖尿病網膜症(p=0.002),眼内レンズの種類(p<0.001)であった。すなわち術前矯正視力0.15以上,網膜色素変性症,糖尿病網膜症のあるものは,後発白内障発生のリスクが,各々1.98倍,4.32倍,1.97倍高かった。1-ピースPMMAレンズ(p<0.001),シリコーンレンズ(p<0.001),眼内レンズなし(p=0.012)の各群は,3-ピースPMMAレンズ群より有意にリスクが高かった。アクリルソフトレンズは1-ピースPMMAレンズよりリスクが低かった(p=0.039)。

マルケサニ症候群の2症例

著者: 今泉佳子 ,   宮田信之 ,   松本年弘 ,   杉田美由紀 ,   大野重昭

ページ範囲:P.99 - P.103

 マルケサニ症候群の2例を経験した。症例1は小球状水晶体による慢性閉塞隅角緑内障のため,両眼ともに視野が著明に狭窄していた。右眼はレーザー虹彩切開術と点眼薬で,左眼はトラベクレクトミーにより眼圧は良好にコントロールされた。症例2では両眼の水晶体は球状で亜脱臼していたが,経過中に右水晶体が前房内に脱臼したため,水晶体の摘出と眼内レンズの縫着を行い,良好な視力を得た。マルケサニ症候群は,水晶体が球状でチン小帯の張力が弱いため,閉塞隅角緑内障や脱臼などの合併症を伴うことが多い。そのため個々の症例の状態に応じた適切な治療法を選択する必要がある。

高度近視を伴う固定内斜視の手術前後のMRI所見

著者: 原田義弘 ,   河野玲華 ,   田中剛 ,   杉原倫夫 ,   長谷部聡 ,   白神史雄 ,   大月洋

ページ範囲:P.105 - P.109

 高度近視を伴う3例の固定内斜視を対象に,斜視手術の前後に眼窩部MRIを行い,眼球運動障害の矯正と,MRI画像上の外直筋走行の変化との関係を検討した。その結果3例中2例に外直筋の下方偏位がみられ,そのうち1例は術後に外直筋の走行が正常化された。しかしながら,2例とも外転障害の著明な改善は得られなかった。一方,外直筋の下方偏位がみられなかった1例については,外転障害の改善が得られた。結果として,外直筋の下方偏位の改善は必ずしも外転運動の改善を説明するものではないと推論される。

カラー臨床報告

黄斑外に生じた巨大出血性網膜色素上皮剥離

著者: 佐藤拓 ,   飯田知弘 ,   萩村徳一

ページ範囲:P.25 - P.30

 黄斑に異常がなく,眼底周辺部に巨大な出血性網膜色素上皮剥離を生じた4例4眼の臨床像を検討し,以下の特徴があった。発症年齢は58歳から73歳,平均66歳であり,高齢であった。全例が片眼性であり,他眼の黄斑部には加齢性変化がなかった。罹患眼の病変は,6乳頭径以上の大きさであった。全例で硝子体出血が併発した。出血の原因として,フルオレセインとインドシアニングリーン螢光造影から,2眼で周辺部に生じた脈絡膜新生血管が疑われた。全例で出血性の変化が主病変であり,眼底に滲出性変化がなかった。以上の所見は,加齢に伴う出血性網膜色素上皮剥離が,黄斑だけでなく,眼底周辺部にも起こりうることを示している。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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