臨床報告
後発白内障の発生に関与する多因子の検討
著者:
安藤展代1
大鹿哲郎2
木村博和3
所属機関:
1安藤眼科医院
2東京大学医学部眼科学教室
3横浜市立大学医学部公衆衛生学教室
ページ範囲:P.91 - P.97
文献購入ページに移動
1989年1月から1997年4月まで同一施設で同一術者が行った白内障手術のうち,透明な後嚢を残して終了した3,316例につき,後発白内障の発生頻度と危険因子を統計学的に検討した。Kaplan-Meier法により求めた累積後嚢切開率は1年2.5%,2年9.5%,3年21.0%,4年27.8%,5年30.4%となり,術後3年を過ぎても後発白内障を生じる症例は少なくなかった。後嚢切開までの生存時問に影響を与える要因を求めるため,CO×比例ハザード回帰分析により多変量解析を行った。有意であった共変量は術前矯正視力(0.15以上/0.1以下)(p<0.001),網膜色素変性症(p<0.001),糖尿病網膜症(p=0.002),眼内レンズの種類(p<0.001)であった。すなわち術前矯正視力0.15以上,網膜色素変性症,糖尿病網膜症のあるものは,後発白内障発生のリスクが,各々1.98倍,4.32倍,1.97倍高かった。1-ピースPMMAレンズ(p<0.001),シリコーンレンズ(p<0.001),眼内レンズなし(p=0.012)の各群は,3-ピースPMMAレンズ群より有意にリスクが高かった。アクリルソフトレンズは1-ピースPMMAレンズよりリスクが低かった(p=0.039)。