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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科53巻11号

1999年10月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

視交叉に関する最近の知見

著者: 若倉雅登

ページ範囲:P.1731 - P.1739

 視交叉に関する最近の話題をレビューした。視交叉の先天的な形成異常では,シーソー眼振など眼球運動異常がみられること,また視交叉付近の病変の視野に関係する話題として,Wilbrand膝が存在しないというHortonの研究を取り上げて解説し,また視交叉に起こる視神経症の存在にも触れた。

眼の組織・病理アトラス・156

網膜と視神経乳頭面の星状膠細胞過誤腫

著者: 猪俣孟 ,   馬場恵子

ページ範囲:P.1740 - P.1741

 星状膠細胞過誤腫astrocytic hamartomasは星状膠細胞から成る膠腫gliomaの一種で,網膜,視神経乳頭面および視神経に発生する。網膜と視神経乳頭面の星状膠細胞過誤腫は,幼児や小児の眼底検査に際して,視神経乳頭周囲網膜または視神経乳頭面に白く半球状に盛り上がった境界鮮明な腫瘤として観察される(図1,2)。
 病理組織学的には,腫瘍は紡錐形あるいは毛髪状に細長く伸びた星状膠細胞(図3),すなわちpilocytic astrocytesまたはfibrous astrocytesから成るので,juvenile pilocytic astrocytomaとも呼ばれる。しばしば顔面皮膚に結節硬化症tuberoussclerosisを伴っているが,必ずしも全例そうとはいえない。眼底の腫瘤は,幼児期にはやや柔らかい感じで白色調も淡く,網膜芽細胞腫との鑑別が難しい。長ずるにつれて,腫瘍内に石灰が沈着して(図4),より白色調が強くなり,多数の白色顆粒が集合したようになる。この状態が「桑の実状」“mulberry appearance”と表現されている。桑の実は黒紫色に熟す。星状膠細胞は血管分布と密接に関係し,腫瘍内には血管が豊富で(図5),臨床的に網膜血管腫あるいは悪性黒色腫などと診断されることがある。

眼科手術のテクニック・118

増殖糖尿病網膜症における増殖膜処理法

著者: 池田恒彦

ページ範囲:P.1742 - P.1743

はじめに
 眼内増殖性疾患における増殖膜の処理法としては,膜剥離術(membrane peeling),膜分割術(membrane segmentation),膜分層術(membranedelamination)の3法が基本である。増殖性硝子体網膜症や黄斑前線維増殖症ではmembrane peelingが主体となり,増殖性糖尿病網膜症などの線維血管性増殖膜を有する疾患では,membrane segmenta-tionやmembrane delaminationが主体となる。増殖性糖尿病網膜症では,増殖膜と網膜の癒着が強固で,membrane peelingを多用すると容易に医原性裂孔を形成することになる。

眼の遺伝病・2

患者の血液採取から遺伝子異常の証明まで

著者: 玉井信 ,   和田裕子

ページ範囲:P.1744 - P.1746

 遺伝病の原因となっている遺伝子異常を発見するためには,患者の協力なくしてはあり得ない。すなわち患者と相対している臨床医一人ひとりの観察が一番大切になる。また,その医師と患者のコミュニケーション,信頼関係がその後の検索を可能にしたり,不可能にしたりする。
 そこで遺伝子検索の手順を述べてみよう。もし身近に検索を希望する患者がおり,それを他の施設に依頼する場合にも,途中までの手順は主治医が行わなければならない。

今月の表紙

斑状角膜ジストロフィ

著者: 水流忠彦

ページ範囲:P.1739 - P.1739

 77歳女性の斑状角膜ジストロフィの左眼前眼部写真で,主として角膜周辺部に灰白色の斑状の混濁がみられる。斑状角膜ジストロフィ(macular corneal dystrophy)は両眼角膜にほぼ対称的に,境界がやや不鮮明な大小の斑状の混濁をきたす稀な常染色体劣性遺伝疾患である。
 1890年,Groenouwにより最初に報告され,Groenouw II型角膜ジストロフィとも呼ばれる。

臨床報告

抗ヒト好中球細胞質抗体関連腎炎に伴った網膜血管炎の1症例

著者: 野村美香 ,   藤尾直樹 ,   石黒俊哉 ,   廣川博之

ページ範囲:P.1747 - P.1751

 56歳男性が,10日前からの左眼視力低下で受診した。右眼は4年前に,網膜中心静脈閉塞症に続発した硝子体出血に対して硝子体手術を受けていた。矯正視力は右0.02,左0.05であつた。右眼眼底に広範な網脈絡膜萎縮,左眼上方の2象限に出血を伴う網膜血管炎があった。全身検査で腎機能が低下し,抗ヒト好中球細胞質抗体myeloperoxidase-antrneutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)が高値であった。腎生検所見と合わせて,ANCA関連腎炎と診断した。内科治療に伴ってANCA抗体値が低下し,左眼眼底所見が改善し,左眼視力は最終的に0.8になった。本症例では,網膜血管炎にANCA関連血管炎が関与していることが推測された。

非穿孔線維柱帯切除術の短期術後成績

著者: 高橋雄二 ,   大久保彰 ,   大久保好子 ,   加来昌子 ,   小口和子 ,   宮入純子 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.1753 - P.1757

 非穿孔線維柱帯切除術(nonpenetrating lamellar trabeculectomy:NPLT)群10例13眼と従来の線維柱帯切除術(penetrating trabeculectomy:PT)群11例16眼の術後短期成績,術後早期合併症について比較した。NPLT群の術前,術後3か月,術後6か月の眼圧は25.1±6.0,13.8±3.1,13.8±3.2mmHg,PT群ではそれぞれ25.5±5.8,12.3±4.2,10.9±4.5mmHgであった。術後早期合併症ではNPLT群では少なく,特に浅前房はPT群では5例に対してNPLT群では1例も認めなかった。NPLTは眼圧下降効果では従来のPTよりやや劣る傾向にあったが,術後合併症が極めて少なかった。

ぶどう膜炎による続発緑内障の治療

著者: 沖波聡 ,   小川明子 ,   大坪貴子 ,   齋藤伊三雄 ,   永岡信一郎

ページ範囲:P.1759 - P.1765

 佐賀医科大学付属病院眼科で3〜186か月(平均44か月)の経過を観察したぶどう膜炎による続発緑内障70例105眼について検討した。開放隅角47眼中の44眼(94%),周辺虹彩前癒着が半周未満の39眼中の35眼(90%),半周以上の6眼中の4眼(67%),ぶどう膜炎発症早期の狭隅角の4眼中の4眼(100%)で最終的に炭酸脱水酵素阻害薬内服なしで眼圧が20mmHg以下にコントロールされた。lris bombeの2眼と白内障手術を単独で行った7眼はすべて眼圧がコントロールされており,105眼中の96眼(91%)が眼圧20mmHg以下にコントロールされた。しかし,治療開始後4〜181か月(平均43か月)では39眼中の20眼(51%)で視野が悪化していた。

脈絡膜欠損に水晶体脱臼と網膜剥離を合併した1例

著者: 土井麻里 ,   池田恒彦 ,   小泉閑 ,   安原徹 ,   中村富子

ページ範囲:P.1767 - P.1770

 鈍的外傷が原因で水晶体脱臼を生じた後に,裂孔原性網膜剥離を併発した脈絡膜欠損の1例を報告した。症例は42歳男性で,網膜剥離に対して硝子体手術を行った。術中所見として,脈絡膜欠損部に隣接した耳側網膜に膜状の硝子体癒着があり,同部位に子午線方向のスリット状の裂孔を認めた。脱臼水晶体はこの硝子体膜上に浮遊しており,周囲の網膜を間接的に牽引していた。手術は,経毛様体扁平部水晶体切除,硝子体切除,経強膜冷凍凝固,輪状締結,ガスタンポナーデを行い網膜の復位を得た。本症例では,脱臼水晶体による異常な硝子体牽引が裂孔形成,網膜剥離発症に関与している可能性が示唆された。

小切開眼内レンズ挿入眼の前嚢切開の大きさと前嚢収縮

著者: 吉田紳一郎 ,   松島博之 ,   高橋和晃 ,   小原喜隆 ,   西尾正哉

ページ範囲:P.1771 - P.1774

 小切開眼内レンズ(IOL)挿入眼90眼について前嚢切開の大きさと前嚢収縮の関係を検索した。前嚢切開は連続円形破嚢(CCC)で行い,超音波乳化吸引とIOLの嚢内固定を行った。IOLには,5.5mmPMMA,6.0mmアクリル,6.0mmシリコーンのいずれかを用いた。前嚢切開窓の面積は,術後次第に減少した。術1週間後を基準とするとき,術3年後の減少率は,PMMAで15.1%,アクリルで4.1%,シリコーンで7.9%であり,PMMAでは他2者よりも有意に高かった。術1週間後の前嚢切開が径6.0mm (28.3mm2)以上であるとき,減少率はPMMAで18.4%であり,アクリルでの3.4%とシリコーンでの4.4%よりも有意に高かった。6.0mm未満のときには,各IOLの間に差はなく,前嚢収縮は切開縁がIOLの光学部の外方にあるときに生じやすかった。前嚢収縮を予防するには,前嚢切開の大きさがIOLの光学直径よりもやや小さい5.5mm程度が妥当である。

硝子体,白内障,眼内レンズ同時手術後,最高視力に達するまでの期間

著者: 熊谷和之 ,   荻野誠周 ,   出水誠二 ,   平根昌宣 ,   渥美一成 ,   田中千春 ,   市岡尚 ,   西村晋 ,   馬渡祐記 ,   石郷岡均

ページ範囲:P.1775 - P.1779

 硝子体手術と眼内レンズ挿入術を同時に行った411眼につき,術後の最高視力が得られるまでの期間を検討した。全例では平均8.3か月であり,黄斑上膜85眼で8.2か月,分層黄斑円孔30眼で7.3か月,可糖尿病黄斑浮腫47眼で6.0か月,その他の黄斑浮腫36眼で7.3か月,黄斑円孔126眼で10.1か月,増殖糖尿病網膜症54眼で8.4か月,網膜下病変17眼で5.8か月,硝子体出血16眼で7.5か月であった。有意差が,黄斑円孔と糖尿病黄斑浮腫間(p=0.0026),糖尿病黄斑浮腫と増殖糖尿病網膜症間(p=0.05)にあった。年齢とは相関しなかった。最高視力の値と相関する因子は,最高視力が得られるまでの期間(R2=0.02)と年齢(R2=0.074)であった。

インドシアニングリーン螢光眼底造影による中心性漿液性網脈絡膜症の長期経過

著者: 渡利浩水 ,   佐久間亮子 ,   嘉村由美 ,   小松仁 ,   森茂 ,   黒沢二郎

ページ範囲:P.1781 - P.1786

 初診時に典型的な中心性漿液性網脈絡膜症を呈し,5年以上経過観察できた9症例にインドシアニングリーン螢光眼底造影を行い脈絡膜循環について検討した。経過中に再発を生じなかった6眼のなかにも3眼に,後期において異常脈絡膜組織染がみられ,脈絡膜静脈の拡張も6眼中3眼にみられた。再発を繰り返した3眼は,異常脈絡膜組織染と脈絡膜静脈の拡張の両方がみられた。今回の9眼すべてに何らかの脈絡膜異常がみられた。これらより,中心性漿液性網脈絡膜症では長期にわたって脈絡膜循環異常が存続し,それが本症の発症の成因に関与する可能性が推定された。

網膜細動脈瘤黄斑部網膜出血に対する硝子体手術

著者: 山田慎 ,   荻野誠周 ,   栗原秀行

ページ範囲:P.1787 - P.1792

 網膜細動脈瘤の破裂による黄斑部網膜出血11例11眼に対し硝子体手術を行った。年齢は61〜88歳(平均78歳),発症から手術までの期間は7〜30日(平均20日),術後経過観察期間は6〜17か月(平均8.6か月)であった。11眼中5眼に組織プラスミノーゲンアクチベーターおよび液体パーフルオロカーボンを用いた黄斑部網膜下出血除去を行った。11眼中9眼で術後視力は改善し,うち4眼で視力0.5以上を得た。しかし黄斑部網膜下出血除去を行った5眼中3眼は術後視力0.1以下であった。また,80歳以上の5眼中,術後視力0.5以上を得たものは1眼のみであった。80歳以上の高齢者に黄斑部網膜下出血がみられる場合,硝子体手術を行っても良好な視力改善を得がたい可能性がある。

Highly active antiretroviral therapyで寛解した進行性多巣性白質脳症

著者: 長瀧重智 ,   八代成子 ,   佐藤信祐 ,   立川夏夫 ,   菊池嘉 ,   安岡彰 ,   岡慎一

ページ範囲:P.1793 - P.1797

 血友病のある40歳男性が,12年前にヒト免疫不全ウイルス感染と診断され,9年前から核酸系逆転写酵素阻害剤であるジドブジンを服用していた。1年半前から核酸系逆転写酵素阻害剤2剤と非核酸系逆転写酵素阻害剤の併用療法を開始した。その1か月後に右同名半盲が生じた。視力は正常であった。磁気共鳴画像検査(MRI)で両側の後頭葉白質にT2延長域があり,造影効果とmass effectがなく,進行性多巣性白質脳症と診断した。核酸系逆転写酵素阻害剤2剤とプロテアーゼ阻害剤を併用するhighly active antiretroviral therapy (HAART)を開始した。4週間後に半盲は縮小し,MRI所見も改善した。以後現在まで,病像は寛解した状態にある。

眼窩内への異物刺入による視神経損傷の1例

著者: 多鹿三和子 ,   中嶋順子 ,   青木佳子 ,   石田洋一 ,   西田保裕 ,   可児一孝

ページ範囲:P.1799 - P.1802

 13歳男児が転倒し,竹の棒が左眼窩下縁で貫通した。その直後に受診した。左眼視力は零で,瞳孔が散大し,対光反応が欠如していた。磁気共鳴画像検査(MRI)で左眼の視神経腫大,球後出血,6mmの眼球突出があった。異物は検出されなかった。副腎皮質ステロイド剤の全身投与を開始し,その直後に光覚弁となり,受傷6日後に0.1,10日後に0.3,最終的に0.6の視力が得られた。穿孔性異物で視神経が直接損傷し,光覚が消失していても,ステロイド剤投与で視機能が回復した例である。

光凝固療法を試みた腎癌原発の転移性脈絡膜腫瘍の1例

著者: 大内雅之 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1803 - P.1808

 42歳女性が右眼の変視症と進行性の視野欠損で受診した。裸眼視力は右1.0,左1.5であった。右眼底の耳側下方に10乳頭径大の黄色の隆起性病変があり,左眼底の鼻側下方に5乳頭径大の黄色の扁平な病変があった。螢光眼底造影で,点状で始まり拡大癒合する過螢光と,その周囲に低螢光があった。超音波とCT検査で充実性の腫瘍陰影が脈絡膜にあった。全身検査で左腎肥大があり,腎摘出の結果,腎原発の転移性脈絡膜癌と診断した。癌転移は,肺.肝臓,副腎にもあった。存命中の視機能保存を目的として,脈絡膜腫瘍へのアルゴンレーザー光凝固を行った。右眼は網膜全剥離で失明したが,左眼は初診から8か月後に死亡する2か月前には1.2の視力,1か月前には0.4の視力が保持できた。本症例は,腎癌が脈絡膜に転移した稀な例であることと,光凝固が有効であったことが注目される。

高齢者に発症した悪性視神経膠腫の1例

著者: 伊田宜史 ,   戸部隆雄 ,   宇山昌延 ,   山本雅清 ,   山内康雄

ページ範囲:P.1819 - P.1823

 76歳の男性に発症した悪性視神経膠腫の1例を経験した。腫瘍は視交叉近傍の左視神経に発生し,視路を前方と後方へ急速に進展した。左眼には腫瘍浸潤によるうっ血乳頭と硝子体出血,右眼には視神経萎縮がみられ,両眼の球後視神経炎と思われた。しかしMRIではT1強調画像で,ガドリニウムで増強された腫瘤が視交叉を含み,左視神経から視放線に拡がっていた。発症後3か月で両眼が失明した。脳外科医による脳内腫瘍の生検で,悪性視神経膠腫と確定診断し化学療法を行ったが,6か月後に死亡した。本症は悪性であり,かつ腫瘍の進行が早いので,画像による早期診断が必要である。高齢者に発症する原因不明の視神経炎では,頭蓋内疾患を十分に検索する必要がある。

Epstein-Barrウイルスの関与が疑われた網膜静脈周囲炎

著者: 佐藤章子 ,   加藤智博

ページ範囲:P.1825 - P.1830

 38歳男性が左眼霧視で受診した。左眼には虹彩炎と硝子体混濁があり,両眼の網膜静脈に沿って白色浸潤があった。眼サルコイドーシスとして副腎皮質ステロイド薬の全身投与を行った。3か月後に網膜血管炎が悪化し,左眼にドライアイが生じた。初診から7年後に,血清Epstein-Barrウイルス(EBV)のIgG抗体価が上昇した。アシクロビルの内服を開始し,左眼に硝子体切除術を行った。硝子体液からEBVウイルス核酸が検出された。以後,血清抗体価は低下し,初診から10年を経過した現在,眼内炎は沈静化し,良好な視力を保っている。両眼性肉芽腫性網膜ぶどう膜炎の原因として,EBV感染が疑われた。

日眼百年史こぼれ話・10

大阪慈恵病院と磐梯山大爆発

著者: 三島濟一

ページ範囲:P.1757 - P.1757

 明治時代は日本が奇跡的に近代化を成し遂げた輝かしい時代と認識されているが,その影に庶民の暗い悲しい生活があったことはあまり知られていない。
 西南戦争は新政府を根幹から揺るがす財政赤字,コレラの蔓延,インフレと,暗い明治10年代の幕開けであった。政府歳入は地祖だけが頼りであったが,実際の地価評価額は信じられないほどの高額で,これに基づき租税は金納を要求されたのである。

追悼

市川 宏先生のご逝去を悼む

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.1816 - P.1817

 本誌の編集顧問であられた名古屋大学名誉教授市川宏先生は,平成11年8月25日午前9時28分,享年77歳でご逝去になりました。ここに謹んで哀悼の意を表します。
 先生は,大正11年3月に東京でお生まれになり,旧制第一東京市立中学校から同浦和高等学校理科乙類に進まれ,昭和20年,名古屋帝国大学医学部をご卒業になりました。直ちに同眼科学教室に入局,翌21年から名古屋鉄道病院眼科に勤務され,22年に東京鉄道病院に転勤し,後に同副医長,36年札幌鉄道病院眼科医長,40年には中央鉄道病院(旧東京鉄道病院)眼科主任医長に昇任され,名古屋大学教授に就任のため49年6月に退職されるまで,28年余にわたり旧日本国有鉄道病院に勤務されました。この間,昭和32年の日本交通医学会での特別講演「色覚異常に関する災害医学的研究」,40年から日本眼科学会評議員,41年第70回日眼総会宿題報告「色覚と職業」の担当,43年国鉄総裁から功績賞・48年日本照明学会賞受賞など,30歳代半ばで色覚分野での本邦の代表的研究者であり,最後には当時の全国鉄病院眼科の最高のポストに就かれていましたが,誰もが感嘆する業績を残されました。

文庫の窓から

伊賀国家里流目書

著者: 中泉行史 ,   中泉行弘 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1832 - P.1833

 筆者らは先に家里流眼科について本誌(32:168〜169,41:412〜413)に記述したが,「眼方秘方傳他家之流」という書外題のついた写本に所載の「伊賀国家里流目書」を紹介する。
 「眼方秘方傳他家之流」は外題の通り伊賀国家里流,當延流,金蔵坊蒸流および夢想善助流など4家の眼病療治の次第,絵図,薬製秘方を書写相伝したものである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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